表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/82

表彰式と宴会とスカウト

決勝戦の熱気が冷めやらぬまま、領民たちは広場に設けられた特設舞台へ集まった。

壇上に立つのは、グランツ侯爵とショウイチ――そして司会役の文官が高らかに宣言する。


「第一回グランツ侯爵領 格闘大会――優勝者、男爵ショウイチ!」


拍手と歓声が爆発する。

侯爵自ら、重厚な銀のトロフィーを手渡しながら笑った。

「若造、お前は今日、四十年ぶりに俺に土をつけた男だ」

「……四十年?」

「そうだ。二十歳で初めて武術大会に出てから、負けたことがなかった」

会場がどよめく。誰もが知っていた侯爵の強さだが、その連勝記録の長さに改めて驚かされた。


そのまま広場は宴会会場に早変わり。

大鍋で煮込まれたシチュー、串焼き肉、香ばしい焼きたてパン、そして大樽から注がれる濃いエール。

参加者も観客も、立場を忘れて笑い合い、杯を交わす。


やがて、侯爵は珍しく顔を真っ赤にし、酒の匂いをぷんぷん漂わせながらショウイチの肩に腕を回してきた。

「なぁ、ショウイチよぉ……あれは…偶然だろ? な? もう一回やろうじゃねぇか、今すぐ!」

「いや、侯爵。今は宴会中で…」

「宴会? こんなのは前哨戦だ! 真の決着はこれからだ!」

周りの騎士たちが大笑いしながら止めに入るが、侯爵は子供のように「やらせろー!」と暴れる。


結局、侯爵はエールのジョッキをもう一杯飲んだところで、椅子に座ったまま豪快に寝落ち。

「ぐがーっ……」という豪快な寝息が響き渡り、場の笑いをさらに誘った。


その夜の宴は夜更けまで続き、

「四十年無敗の侯爵を破った男爵ショウイチ」の名は、さらに領内で広まることになった。


宴会が終わり、片付けも一段落した深夜。

まるふく商店の裏口で、涼しい夜風に当たりながらショウイチはグランツ侯爵と二人きりで話していた。


「侯爵、この大会……もっと大きくできますよ」

「ほう?」

「スポンサーを集めて賞金を増やす。領内外から腕自慢が集まれば、ただの見世物じゃなく、有望な人材を発掘できます」

「ふむ……確かに、あの盛り上がりは金を生む」

侯爵の目が静かに光る。金の話になると、この領主は意外と現実的だ。


「それに、今回見えたでしょう? 騎士団の士気も上がるし、一般人の腕利きも炙り出せる」

「……なるほどな。お前の言う通りだ、ショウイチ」

侯爵は頷き、大きく笑った。

「よし、次も俺は必ず出る! お前もだぞ!」

「え、俺も毎回?」

「当たり前だ! 優勝者が続けて出なきゃ面白くねぇだろうが!」


結局、その場で「次回大会の開催」は正式に決定。

賞金額は倍増、遠方の領地や街からも挑戦者を募る方針となった。


だが一つだけ問題が残った。

「なぁ……人材スカウトは誰がやる?」

二人はしばらく黙り、同時に視線を逸らす。

「お前だろ?」

「いや、侯爵がやるべきだろ?」


結局、どちらが担当になるかは、次の会議まで持ち越しとなった。

しかしこの夜、グランツ侯爵領に新たな恒例行事の芽が確かに芽吹いたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ