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氷泥棒逮捕

捕らえられた三人の工作員は、衛兵詰所の地下牢に放り込まれた。

鉄格子の前には近衛騎士が二人、常に監視の目を光らせている。


翌朝、俺とリナはグランツ侯爵に呼ばれた。

「お前たちも来い。直接聞くことになるだろう」

侯爵の声は静かだったが、瞳の奥は鋼のように冷たかった。


尋問室。

机を挟んで座る侯爵の前に、一人の工作員が椅子に縛り付けられていた。

すでに軽く痛めつけられたのか、頬は腫れ、呼吸は荒い。


「……話せ。命までは取らん」

侯爵の低い声が響く。

沈黙が数秒続いた後、男は乾いた笑いを漏らした。

「……どうせ死ぬ。だったら言わん」


その瞬間、リナが一歩前に出る。

目は笑っていない。

「じゃあ、あなたが死ぬのは今日。でも口を割れば……少なくとも、仲間は助かるかもしれない」

その声音には、相手の背骨を凍らせるような冷たさがあった。


男はわずかに喉を鳴らし、そして吐き捨てた。

「……バスティアン子爵だ。氷の技術を奪えと命じられた」


部屋の空気が一変した。

バスティアン――以前、長男のギルバートが俺と揉めた、あの子爵家だ。

侯爵は机の上で指を組み、低く言う。

「やはりあの家か……」


そこから先は早かった。

侯爵は密かに子爵家の資産と人脈を洗い出し、裏で王都の監察官へ報告。

証拠は氷室襲撃の件だけでなく、過去の密貿易や賄賂まで芋づる式に出てきた。


そして三週間後――

王都からの勅命により、バスティアン子爵は領地剥奪の上、家族ごと追放処分。

重罪に問われた本人は、城門前の広場で首を刎ねられた。


その日、グランツ侯爵は俺とリナにだけ静かに言った。

「お前たちの功績だ。あの氷は、この領の命脈そのものだ」


俺は苦笑し、リナは小さく頷いた。

だが、これで終わりではない――

氷室と保存食の存在は、まだ他領に知られてはいないはずだが、

いつかまた、狙われる日が来るだろうと俺は感じていた。

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