『税と爵位、そして新たな責任』
問題もなく、保存食工場はフル稼働を続け、まるふく商店の飲食事業も、雑貨屋も順調に回っていた。
昼間は店前の路面にテーブルを並べるほどの賑わいを見せ、昼食時の風景はすっかり地域の名物となっていた。
しかし、工場は熟練の職人にしか操作できない設備ばかり。人手は足りないが、誰でもいいわけではなく、慎重に人材を選び育てていた。
こうしてまるふく商店異世界支店が誕生してから一年が経過。
遂に、その日が訪れた。
「ショウイチ様、帳簿はこれで完璧です!」
リナは手にした帳簿を嬉しそうに抱え、顔を輝かせていた。
「へえ、そんなに嬉しいか?」
ショウイチは笑いながら訊く。
「はい! 超高額納税者になると爵位が与えられるんです。…なんと、あなたはそのラインに入っているらしいですよ!」
その言葉にショウイチは驚いたように目を丸くした。
「まさか俺が爵位か…」
彼はその足でグランツ侯爵の館へ向かい、直接税金を納めた。
侯爵は重厚な笑みで迎え、堂々たる態度で言った。
「ショウイチ殿、貴殿の商才と尽力には感服する。異世界に来てからの貴殿の功績は、我が領にも大きな恩恵をもたらした」
「これより貴殿は正式に爵位を授かる。これに伴い、責任も増すことを心得よ」
ショウイチは礼を尽くしながらも内心では思った。
「隠居はまだ遠いな…」
しかし、その目には新たな覚悟の光が宿っていた。
グランツ侯爵の館での納税式典は、格式高いものであった。
侯爵は厳かな声で告げた。
「ショウイチ殿、貴殿の納税額は年間およそ二百枚の金貨に上る。これは領の所得税に加え、保存食事業にかかる特別税を含んでいる」
「これにより、貴殿を正式に『騎士』として叙勲する。これは我が領における名誉ある地位だ」
ショウイチは一礼し、思わず心の中で呟いた。
(所得税と特別税を合わせて、年間二百枚か…20万円換算で約4,000万円。まるふく商店も工場も、かなりの規模になったもんだな)
侯爵は続けた。
「だが、爵位には責任が伴う。商人である貴殿は、今後も領の繁栄に貢献し、民のために努めよ」
ショウイチは重みを感じつつも、少しだけ笑みを浮かべた。
「任せてください、侯爵様」
こうして、ショウイチは騎士の称号を授かり、新たな一歩を踏み出したのだった。




