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佐古下悠理は行方不明 『臙脂色の紫陽花』編  作者: はるたろー
臙脂色の紫陽花
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塩原も呼び出し、南雲以外の全員で食堂に集まった。

齋藤、蒼野、塩原、堂山、佐古下、霜村の六人である。

蒼野が全員にコーヒーを配ると堂山が語りだした。

「六月八日の二十二時から六月九日の二時の間に、河野はあの裏館で死んだ。発見したのは六月九日の夕方頃だ。翌日六月十日、河野の死体が消失した。依然として見つかっていない。そして今日六月十一日、染島が命を落とした。死亡推定時刻は今日の三時頃から五時頃だろう。死後硬直が始まっていなかったから時間はかなり絞り込める」

堂山は時系列を並べただけだった。手にはいつの間にか黒革の手帳があった。刑事といえば、という七つ道具の一つである。

河野の死因は不明。現場に梁に架かった縄があり、一見して自殺と見える状況だった。それが消失したということは誰かが故意に運び出したということに他ならない。

現場は特殊な一室で、扉は地下道から梯子で登る必要がある。それ以外には現在出入口は見つかっていない。河野の死体がどこへ行ったのか?

当面の課題はそこだったのだが、今朝それは突然打ち切られた。

染島が自死をしたのである。彼女は自室のベッドに眠るように横たわり絶命していた。床には備蓄倉庫から引っ張り出したのか、七輪が置いてあり炭が焚かれていた。

部屋の扉は内側からしか掛けられない鍵が掛かっており、窓も同様だった。つまり外部からの侵入及び外出ができない状況がそこにはあったのである。

死亡時刻は三時頃からの時間であるが、その時間では仮にもアリバイなるものがある人物はいないだろう。

恐らく昨晩一番最後に染島と一緒にいたであろう南雲からはもう証言は得られそうにない。

何者かの作為は存在している。それは河野の自殺偽造と消失により決定的となった。何故死体を隠したのか?

考えられることは二通り。隠す行為が目的だったのか、若しくは過程だったのか。

目的の場合は死体を隠すことで何らかの発覚を防ぐ為と考えられる。隠す、衆目から離す意図がある。つまり河野の死体には殺人犯に直結する証拠が残っており、簡単には消せないものとなっていた。それを恐れた殺人犯が河野を隠したということである。

過程の場合は隠すことで目的が達成した訳ではなく、その隠したことで二次的に起こることを目的としているということだ。例えば異常な考え方だし、偏向によるものではあるが、河野に好意を寄せていた。河野は殺人犯の想いを無下にしていた。殺人犯は河野の思考や精神、のような目に見えないものではなく形、造形を愛していた。愛する造形から精神を切り離したことで、自身の思い通りにできるようになった。それで好きな所に隠した。という理屈である。

突飛な考え方ではあるが、その線も絶対に有り得ない訳では無いと思う。

ただ、いずれにしても河野の死体はどこへ行ったのか。

森の中か、それとも館の中なのか。

そして染島は本当に自殺なのか、それとも他殺なのか。

佐古下の脳内では目まぐるしく思考が展開し、様々な方向へ拡散していた。

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