十
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その現場はかなり特殊だった。
市が運営している二十四時間開放している自然公園。
その中の広葉樹が生え揃った林の中でそれは見つかった。
まだ艶がありハリのある肌。短く切り揃えられていたが、艶のある髪質は見て取れる。
滑らかな首筋には牡牛座の紋章が刻まれていた。
中学生である年端も行かぬ少女は、動かぬ時の中で虚空を見つめて絶命していた。
見開かれた瞳は僅かに飛び出しており、顔面は鬱血している。首には何かで締められた索条痕があった。
「――死亡推定時刻は昨夜二時から五時頃。死因は首を絞められたことによる窒息と見られています。遺体の首にあの印があることから、連続殺人鬼ゾディアックの犯行と酷似しています。目下犯人を捜索中ですが、他の現場同様、被害者以外の持ち物や指紋などは見つかっておらず、人物の特定には至っておりません」
被害者は平成十六年生まれの十五歳、申年のおうし座生まれ。黄道十二門で云うところの金牛宮に相当する。
首が締められて殺害されているというのも金牛宮が表す身体部位を指し示していた。金牛宮は性別を女性とし、星を金星、つまり金曜日を示す。
被害者である女子中学生の山路玲香は、申年のおうし座生まれで金曜日に首を絞められ殺害された。
六車星奈は現場にいた数人の鑑識のうち、顔見知りの長尾一茂から状況見聞のおおよその結果を聞いていた。
十三年先輩のベテランの堂山がパーマなのか癖毛なのか判別のつかない髪を揺らしながら現場へとずかずかと足を踏み入れる。
「ちょっと!まだ鑑識は終わってませんよ!」
「分かってるよ!邪魔しねーから!」
堂山の無作法な所業に吠えた鑑識の一人を、野獣の如き眼光で睨みつけた。
通常こういった現場での立場は鑑識の方が圧倒的に強い。現場をできる限り保存し、そこからあらゆる証拠になりうるものを慎重に捜索するからだ。
細かい技術のない刑事課の人間が、鑑識の終わっていない現場に足を踏み入れるなど言語道断である。
しかし堂山にはそんなことは通用しなかった。
県警捜査一課の中でも破天荒と呼ばれ、一緒に仕事をしたがる人はいなかった。
二十一歳で同課に配属された星奈は、幾度となく堂山の行動に悩まされていた。課長から堂山に付くように命令が下されたのは、堂山を知る者は彼と組みたがらないからだとあとから知った。
彼とのバディは一年と続かない。
星奈は堂山と組んで四年が経つ。課内ではすっかり堂山の女房役として認知されていた。
星奈はため息を付きながら鑑識の邪魔をせぬよう、堂山を呼び止めた。
「ちょっと堂山さん!邪魔しちゃ悪いですよ!」
凛とした声色は女性特有の澄んだ響きを持ち、だが力強い意思も感じる。
星奈のことを良く表していると言えた。
「うるせえ!それよりお前も見ろ!……まただ」
星奈は鑑識の面々に頭を何度も下げながら遺体へと歩みを進める。




