十一
「そう」
それは館に訪れる直前で見た金属製の四角い蓋だった。地面に埋め込まれており、館と何らかの形で繋がっているのは間違いなかった。
佐古下は腰を下ろし、至近距離で金属製の扉を見つめる。
「ねえ、見て」
言って佐古下は地面に指を指した。
「金属製の扉を囲うように水分の含まれた土がめくれ上がってる。地表の乾いた土の下にある水分を含んだ土が、扉を開けることでめくれ上がったみたいに。……周りのシロツメクサも押しつぶされたようになってる。誰かが足を踏み入れたのかも」
「それって、誰が?何のために?」
佐古下の言葉に対し染島は明らかにギョッと表情を固くした。南雲も相変わらず不安そうな顔であった。
「そんなの分からない。でもこのままグズグズもしていられないし、見てみる価値はあるんじゃない?」
「え、本気ですか?」
「もちろん。このままここで暮らしたくないでしょう?貴女が言っているこの狭間の世界?から出るヒントがあるかもしれないよ」
そう言って佐古下は金属製の扉の取手に手をかけて、中腰になりながら思い切り引いた。彼女が言うように僅かに周囲の土をめくりながらそれは重々しく口を開いた。
溢れた土がその中へ落ちていく。
僅かな間を空けて、下から土砂が落下した際の音がこだまする。
下方に向かって多少距離があるようだ。梯子が降りているのが見えるが、三メートル先ぐらいからは深淵がそれを飲み込んでいた。
「下水道じゃなさそう。降りましょう」
佐古下は南雲にお願いして制御室の扉横に備え付けてあった懐中電灯を持ってきてもらってから、それを手に取り先に足を下ろした。
五メートル強だろうか、ようやく足がコンクリート製の床を捉えた。
佐古下は自身が手に持つ懐中電灯を奥へと差し向ける。
階下へと続く梯子周辺はコンクリートで舗装された造りだったが、奥へと続く道は洞窟のように凸凹だった。
とても人工的な介入があったような雰囲気ではない。
この通路は元々自然に出来ていたものなのだろう。
右に向かう通路は確実に館の方へと延びていた。反対の左側にはすぐそこに鉄格子が嵌められていた。
その奥からは僅かにごうごうと音が響いている。地下水脈でもあるようだ。水の流れる音が木霊していた。
浄化槽で濾過された排水などはその地下水脈と合流しているかもしれない。
「大丈夫!降りてきて」
佐古下は覗き込む二人に向かって電灯を向けた。南雲、続いて染島が降りてきた。
並んで歩くには狭かった。佐古下が先頭を行きながら染島、南雲と続いた。
距離としては二百メートルほど戻っただろう。先程同様の造りで梯子が見つかる。灯りを向けて見上げると、倍の十メートルほど先に小さく金属製の扉が見えた。
山の勾配のせいだろう。先程よりも高低差がある。うっすらかいた汗も乾かぬうちに、佐古下は袖をまくって再び梯子に足を掛けた。頂上まで到着すると壁で背中を支えながら器用に扉を押し開ける。




