五
佐古下は自分の推論を早口に捲し立て、堂山を見下ろした。堂山は黙ったまま煙草の煙を吐き出して、佐古下の瞳を見た。
佐古下は堂山の獣のようにも見える瞳と視線を交差させると、口元の端を上げて微笑んだ。
一瞬前まで無表情のフランス人形のようだったのが、息を吹き込まれて生き物となり、女王のような庶民に向けた微笑みで堂山の意識を奪った。
堂山は僅かに固まった。そして視線を逸らした。
「これは凄い洞察力だ。そう、今ここには七人いる」
「この館で過ごしているんですか?」
「俺はまだ来たばっかの新参者だ。古参の奴だと二ヶ月弱ぐらいになるんじゃないか?ほら、ニュースでやってるだろ?それだ」
「やっぱり。貴方のこともニュースで取り上げられていましたよ。堂山心さんですよね?」
「そうかい。こりゃ参ったね。有名人になっちまったか」
堂山はわざとらしく天井を仰いた。そこまで驚愕している風ではなかった。彼の挙動は全てわざとらしい。この男は何か隠している。佐古下は漠然とそう思った。
「なんつーかな。俺達は何も示し合わせてここでのんびり暮らそうって訳じゃないんだ。俺だってこんな辛気臭いところからは早く帰りたい。自分の部屋で優雅に映画でも観たいね」
堂山は背もたれにもたれて仰け反った。
一々大仰な態度をとるのは彼の癖かもしれない。
「だけどな、帰れないんだ」
堂山はその言葉と共に真剣な顔つきになった。
「知っています」
「そりゃまたどういうことだ?まあ、座れよ」
佐古下は無言で堂山の正面の席にかけた。
「未成年かい?アルコールにするか?」
堂山は佐古下が腰を下ろすのを確認すると、反対に立ち上がり、サロンの壁際にあるカウンターへ向かった。
「私は水でお願いします」
少しして堂山は自身の空きグラスを再びウイスキーで満たして、片手に氷の入った水のグラスを持ち戻ってきた。
「ありがとうございます」と言ってから佐古下はグラスに口をつけた。
堂山はその様子をまじまじと見ている。彼も無言でグラスを傾けた。グラスの中の氷が回っていた。
「君は何を知っている?」
「私はここからの脱出方法を知っています。でもここがどこだか、皆さんがどんな人たちなのか、それは分かりません」
「ますます分からないね。脱出方法を知っている、ってことは君がこの行方不明事件に関わっている、ってことじゃないのか?」
「いいえ。違います。私はこの行方不明事件には関係ありません。まあ、今さっき関わり始めたことには否定しませんけど」
佐古下は微笑んだ。
「貴方は覚えていますか?過去に報道されてきた行方不明事件の行末を。当時は大々的に報道された行方不明事件事故も数年経過したあとも、どういった事件があって、どう終息したのか覚えていますか?」
「行方不明、事件。何を言っている?」
「年間で行方不明になる人は八万人にもなると言われています。その中には数年以上消息が掴めない人も含まれているんです。




