報告
推しカプのイチャイチャを書こうとしてここまできました 何故……?
坑道の確認には、それほど時間はかからなかった。
残っていた術式は三つ。
一つは坑道内部の遮蔽。
一つは侵入者の検知。
もう一つは、先ほどルドルフを動かしていた術式へ魔力を供給するためのものだった。
アルバートは順番に切った。
特に難しいものではない。特にヴァルターの術式と比べれば。
「勇者殿」
後ろから声がする。
「何?」
「こちらにも術式があります」
振り返る。
兵の一人が、壁際に埋め込まれた魔石を示していた。
近づいて確認する。
「それは切らなくていい」
「危険は?」
「今はない。記録取った方がいい」
魔石の周囲には細い術式線が残っている。
何かを保存していた形跡。
魔力。映像。音。あるいは別の情報。
どちらにせよ、破壊すると消える可能性がある。
アルバートは通信術式を開いた。
――旧鉱区内部に術式設備あり。
ネクロマンシー使用を確認。
術式一部保存。解析班を送って。
送信。
「触らないで、そのまま」
「承知しました」
兵が頷く。
――次、坑道の奥。
倉庫。搬送路。
両者ともに使われた形跡あり。
箱。空になった魔石の容器。簡易的な寝床。
最近まで人がいた形跡だ。
アルバートは一つずつ見る。
「他に人はいない?」
「確認中です」
「逃げた跡は?」
「こちらに」
複数の足跡。新しい。
アルバートはしゃがむ。
「三人以上」
「分かるのですか」
「多分ね」
重さ。歩幅。靴底。総合して最低三人はいるだろう。
「逃走先は山側のようですね」
今からなら追える。面倒だが。
アルバートは立ち上がる。
「追う」
「魔王陛下から、深追いは避けるようにと」
止まる。
……ヴァルター。
アルバートは通信術式を見る。
確かに追加の連絡が入っていた。
――現地状況の確保を優先。
追跡は増援到着後に行え。
単独で山へ入るな。
今追えば捕まえられる可能性がある。
ただし、相手の人数も能力も分からない。
分かっているのは、ネクロマンシーを使うことだけだ。
自分だけなら討伐しきれずとも帰還はできる。
ただ、ヴァルターが止めている。
……今すべきなのは証拠保全、現地兵の安全確保、そして逃走先の封鎖。
そちらを優先した方がいい。
「分かった。追わない」
兵が少し安心した顔をした。
*
解析班が来るまでの間、アルバートは坑道の入口に戻った。
師匠――ルドルフの身体がある。
布が掛けられている。
「……」
嫌だったことを今考えても結果は変わらない。
*
魔王城へ戻ったのは夕方だった。
転移陣を抜ける。
見慣れた城。見慣れた廊下。
アルバートは少しだけ息を吐いた。
――戻ってきた。
先に報告をしようと執務室へ向かう。
扉を開けると、ヴァルターがいた。
机に資料を広げている。
「一時間ごとに休んだ?」
最初に確認する。
ヴァルターが顔を上げた。
「……お前は帰ってきて最初にそれを訊くのか」
「大事だから」
「休んだ」
「本当に?」
「宰相に監視された」
「ならいい」
息を吐くとヴァルターがこちらを見る。
少し長い。
「怪我は」
「ない」
左腕の傷も悪化していない。新しい傷もない。
問題ない。
「報告する」
アルバートは机の前まで行く。
「旧鉱区に拠点があった。痕跡的に三人以上はいる。術式と魔石は残してきた。今は解析班が見てる」
「分かった」
「あと相手にネクロマンサーがいる」
「ネクロマンサーが?」
「わざわざ北部戦線の死者を蘇生させて使役していた。関係者かも」
師匠が死んだのは北部戦線だった。南部にいるはずがない。
ヴァルターの表情が変わる。
「死者と遭遇したのか?」
「うん。すぐに倒した」
「そうか」
そう言うと、ヴァルターが少しだけ息を吐いた。
「今日はもう休め」
「ヴァルターも?」
「俺は」
「一時間」
「……分かっている」
アルバートは少し笑った。
「じゃあいい」
*
部屋に戻る。
聖剣は既に収納してある。
椅子に座る。部屋は静かだった。
何もすることがない。
そこで初めて師匠の顔を思い出した。
穏やかな笑顔。声。剣。
……最後の言葉。
――上手くなったな。
「……」
嫌だった。殺したくなかった。
会えて嬉しかった。
さっきと同じ。何も増えていない。
アルバートは少し考える。
悲しい。それで合っている。
「悲しいな」
口に出す。それだけだった。
少しだけ、胸の奥が重かった。
アルバートは寝台に横になる。
明日になれば、またやることがある。
今日は休む。
ヴァルターがそう言ったから、それでいいと思った。
アルバートしんじつその2
認識したときにはすでにおわっていることが昔から多い




