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勇者と魔王とお前と俺。  作者: 雪空
やりたいこと、できること
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19/23

再会

推しカプをいちゃつかせるのが難しすぎる

グラーツェに着いたのは朝だった。


南部の都市らしく、空気が少し乾いている。

遠くに山が見えた。

街の外れには魔石の精製所が並んでいる。


アルバートは転移陣を降りる。


同行してきた兵が三人。

現地の警備隊から二人。


全部で六人。


「まず商会?」

「はい。搬入記録の確認からです」

「分かった」


歩き出す。街の様子は案外普通だった。


人がいる。荷車が通る。店が開いている。

……事件の気配はない。

アルバートは周囲を見る。

魔力の痕跡は多い。

鉱石を扱う街だから当然だった。


加工前の魔石。精製中の魔石。

魔道具。術式。色々な痕跡が混ざっている。

その中から、城で使われたものと似た魔力を探す。

……できなくはない、少し面倒なだけで。

アルバートは渋面になった。


     *


商会の記録は残っていた。


祭具として納品された三点。

仕入れ元。加工所。担当者。

アルバートは地図を見る。


「ここが出処?」


街の南側にある精製所を示す。


「はい。ただ、三点とも通常品として出荷されています」

「魔石の産出先は同じ?」

「そこまでは。規格として同一のものではありますが」

「なら、直接魔力を見に行った方がいいね」


アルバートは紙を返し、地図にある場所に向かった。

     *


精製所でも大きな異常はなかった。


記録もある。在庫も合う。

担当者も嘘をついているようには見えない。

ただ、一つだけ気になるのは魔石だった。


「この魔石」


アルバートが棚の端を指差す。

作業員が見る。


「それが何か?」

「ちょっと違う」

「違う?」


アルバートは近づく。

魔力の流れを触らずに見る。

……微妙に濁っている。

通常の魔石とは違う。

城で見た残留魔力と、少し似ている。


「これ、どこから?」


作業員が記録を見る。


「……旧鉱区ですね」

「旧鉱区?」

「今は使っていません。採掘量が落ちたので」

「人は?」

「ほとんど入りません」


アルバートは振り返る。

同行してきた兵を見る。


「行く」

「勇者殿、まず本部へ報告を」

「しながら行けばいい」


通信術式を開く。相手は城の調査班だ。


――旧鉱区にて事件への関与が疑われる魔石あり。

現地確認へ向かう。


「行こう」


     *


旧鉱区は街から少し離れていた。街というよりはどちらかといえば山に近い。

使われなくなった坑道。崩れた倉庫。誰も使っていないはずの搬送路。

異様なまでに静かだった。


アルバートは止まる。


「ここから先、少し離れて。誰かいる」


兵が止まる。

アルバートは少しだけ息を吐く。

――知っている気配だった。でも今は関係ない。


「勇者殿?」

「俺が先に行く」


聖剣を出し、坑道の奥へ進む。


一歩。二歩。


間違いなく知っている。


会いたかったのかもしれない。

会いたくなかったのかもしれない。

どちらでも構わない。使わない情報だった。


     *


奥に人影がいた。

背が高い男だ。

肩幅。立ち方。剣の位置。


全て分かる。


「……ルドルフ」


かつての師の名前を呼べば、男が顔を上げた。

最後に見た時と同じ、穏やかな笑顔だった。死んだ人間は歳を取らない。


「アルバート」


嫌なことに、声まで同じだった。

男の周囲に術式がある。

――ネクロマンシー。

死体を動かすための術式。

魔力経路を外から補っている。


生前の魔力残滓。

記憶。動作。

どこまで本人なのかは分からない。

死んだ師匠がここにいて、術式が動いている。


……それで十分だった。

聖剣を構える。


「帰ろう、アルバート。ここはお前がいるべき場所じゃない」


語りかける声も昔のままだ。

剣を持ったばかりの頃。初めて一本取った時。

アルバートが勇者と呼ばれたばかりの頃。

だからこそ、アルバートは返す。


「帰らない。魔王城にいるから」

「魔王のところか」

「うん」


男の表情が変わる。


「なら、なおさらだ」


魔力が動く。アルバートも構える。


「あれを殺せ」

「嫌だ」


昔なら、必要がないから、と答えただろう。

今は違う。嫌だ、殺したくない。


師匠の剣が抜かれる。


速い。知っている軌跡。

右肩が先に動く。次に腰。そして踏み込み。


アルバートは避け、そのまま聖剣を返す。


一合。二合。三合。


……懐かしい。楽しい。


「速くなったな」


師匠の剣は変わらない。

アルバートはあの頃から変わっている。

結果は当然だった。


聖剣を振る。首ではなく胸の術式の核。

見える。切れる。

師匠の身体が止まる。


「……必要だから、死んでくれ」


目が合う。昔と同じ目。


「……上手くなったな、アルバート」


師匠の声が少し掠れている。

アルバートは何も言わない。


師匠の身体が崩れる。

倒れる前に受け止める。

重い。生きていた頃と同じくらい。


「ルドルフ」


返事はない。

脈もない。魔力も消えていく。


アルバートは少しだけ目を閉じる。

嫌だった。殺したくなかった。

会えて嬉しかった。


今はまだ、周囲の確認が先だ。

顔を上げる。


「終わった」


後ろの兵へ言う。


「周辺確認して。術式まだ残ってるかもしれない」


問題ない。そう思った。

アルバートしんじつその1

判断に関係ないことを後回しにするクセが有る

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