Season 2 - Episode 7: After the Show (公演後)
登場人物
田所家
健一/元ハリウッド映画主演、原作者
カヨ/健一の妻、カリスマ、管理魔
トシキ/健一の息子、パン屋でバイト
シンディ・ゴールドバーグ/トシキの彼女、カヨの弟子、ルイーズの娘
ルイーズ・ゴールドバーグ/シンディの母、UCLA教授、マッドサイエンティスト
アラン・ゼンズバーグ/詩人、ルイーズの兄
ジェイク・ケンドリック/作家、詩人、アランの親友
サーシャ(アレクサンドラ・カラマゾヴァ)/ベーカリー三姉妹三女、心優しいカトリック、神様憑き
ミーチャ(ドミトリア・カラマゾヴァ)/ベーカリー三姉妹長女、陽気な店の看板娘
ブレイディ・ヴァーデン/役者の卵、おバカ
スティーブン・シュピーガー/ハリウッド巨匠監督
他
シーン1: 楽屋訪問
楽屋
ブレイディと健一、着替えている。
ブレイディ、まだ興奮している。
汗だく。
健一、疲れている。
頭を押さえている。
ドアをノックする音
「Come in!(どうぞ!)」
ブレイディが答えた。
ドアが開いた。
エマとルピタが顔を出した。
「Brady, that was insane! Eight characters on one stage!(ブレイディ、ぶっ飛んだ演技だったわ!8人分を舞台でやっちゃうんだから!)」
ブレイディは、照れくさそうに笑った。
「Thanks! I can’t believe you guys came!(ありがとう、あなた達に来てもらえるなんて、信じられないよ)」
エマが、健一に近づいた。
「And Kenichi — you were incredible! The way you took those bat hits! I never thought I’d see something like that!(ケンイチ、あなたも最高よ!バットの殴られ方も完璧!こんなの見れるなんて思わなかったわ!)」
「The way I took them…? I’m never doing a role like this again.(殴られ方って…こんな役、もうゴメンだよ)」
健一、苦笑い。
「My head still hurts.(まだ頭が痛い)」
ルピタが、笑った。
ドアが、また開いた。
スティーブン・シュピーガーが入ってきた。
楽屋、一瞬静まり返った。
ブレイディは、目を見開いた。
「Steven…(スティーブン…)」
スティーブン・シュピーガーは、微笑んだ。
「Brady, Kenichi. That was…something that’ll stay with me.(ブレイディ、健一。あれは、心に残る演劇だったよ)」
楽屋に入ってきた。
ブレイディは、緊張している。
「You…you really think so?(本当に、そう思われますか?)」
「Absolutely. I’ve seen a lot of stages. But this was different from all of them. Not just a comedy, not something I’ve seen before. And it was full of pure energy.(もちろん、そう思った。今まで色々な舞台を見たが、どれとも違っていた。ただのコメディではないし、お決まりの見た事があるような作品とも違う。そして純粋なエネルギーに溢れていた)」
「I…thank you. That means…everything.(ありがとうございます。最高のお言葉です)」
「You committed to every single character. No hesitation, no holding back — all those personalities, on one stage. It was thrilling to watch.(君は全てを演じていた。迷いも躊躇いもなく、多くの人格を演じきったんだ。それも1つの舞台で。見ていて興奮したよ)」
ブレイディは、言葉を続けようとしていたが、続きが出てこなかった。
スティーブン・シュピーガーが、少し考えた。
そして。
「Brady. Can I be honest with you?(ブレイディ。正直に言ってもいいか?)」
「Of course.(もちろん)」
「You’re not a film actor.(君は映画俳優じゃない)」
数秒の沈黙
ブレイディの笑顔が、少し固まった。
「I… what?(え…何ですか?)」
スティーブン・シュピーガーが、優しく続けた。
「You’re a stage actor. A theatre actor. That’s where you shine.(君は舞台俳優だ。演劇俳優だ。そこで君は輝ける)」
ブレイディ、少し困惑している。
「But… I’ve been auditioning for films. TV. For years.(でも…映画のオーディションを受けてきました。テレビも。何年も)」
「I know. And you’ll probably keep trying. But Brady… your energy is too big for a camera. You need space. You need a live audience. You need to feel their reaction in real time.(分かってる。そしてこれからも挑戦し続けるだろう。でもブレイディ…君のエネルギーはカメラには大きすぎる。君には空間が必要だ。ライブの観客が必要だ。リアルタイムで彼らの反応を感じる必要がある)」
ブレイディ、少し考えた。
「So… you’re saying I should give up on film?(それは…映画を諦めろって言うことですか?)」
「No. I’m saying you should focus on what makes you great. Tonight, you were GREAT. You owned that stage. Every second. That’s where you belong.(いや。君が最も素晴らしく輝けるものに集中しろと言ってる。今夜、君は素晴らしかった。舞台を支配した。公演中ずっと。そこが君の居場所だ)」
ブレイディ、少し笑った。
でも、複雑な表情。
「I… I don’t know what to say.(何て言えばいいか…分かりません)」
「You don’t have to say anything. Just… think about it.(何も言わなくていい。ただ…考えてみて)」
スティーブン・シュピーガーが、ブレイディの肩に手を置いた。
「You have a gift, Brady. Don’t waste it trying to fit into something you’re not made for.(君には才能がある、ブレイディ。自分に合わないものに無理に合わせようとして無駄にするな)」
ブレイディ、少し涙目。
でも、笑顔。
「Thank you. Really. That… that means a lot.(ありがとうございます。本当に……そう言ってもらえると救われます)」
スティーブン・シュピーガーは、微笑んだ。
「You’re welcome.(どういたしまして)」
そして、健一に向き直った。
「And Kenichi — that must have been tough up there.(それから健一、君は舞台では…大変だったな)」
「It was. Keeping up with everything that was happening…(そうですね、起こっている事に対応するのが大変で)」
「I could tell. But that’s exactly what made this production memorable. It only worked because you were there.(見ていて分かったよ、だけどそれが逆にこの舞台を印象的なものにしていたんだ。君がいたからこそだ)」
「Thank you. Though I have to say…it’s a complicated feeling. I think I’ll stick to writing from now on.(ありがとう。少し複雑な気分です。今後は執筆に専念すると思います)」
「That might be wise.(そうだね、それもいいかもな)」
スティーブン・シュピーガーは、笑った。
エマが、言った。
「Kayo and the others are waiting outside. Can we all come in?(カヨたちが外で待ってる。みんな入っていい?)」
ブレイディが、頷いた。
「Of course! Please!(もちろん!どうぞ!)」
シーン2: 楽屋、全員集合
ドアが開いた
カヨ、トシキ、シンディが入ってくる。
アラン、ジェイクも続いた。
ルイーズも入ってきた。
カヨが、健一に近づいた。
「がんばったわね」
「ありがとう。でも、もうこりごりだよ」
カヨは、笑った。
「分かってる」
トシキが、ブレイディに声をかけた。
「That was incredible! So much power!(すごかったよ!ものすごくパワフルだった!)」
シンディも頷いた。
「I’ve never seen anything like it!(あんなの今までワタシ、見たことない!)」
「Thanks… I’ve never been told that before.(ありがとう、そんな風に言われたの初めてだよ)」
アランが、前に出た。
「Brady! Pure chaos — and it was brilliant!(ブレイディ!本当にカオスだった!素晴らしい!)」
ジェイクも頷いた。
「Yeah. Power and sensitivity at the same time. And not a single moment felt fake — it was completely raw.(そうだな、パワーと繊細さを両方とも感じる演技だった!そして嘘くささを全く感じないんだ、まさにありのままだった!)」
「Thank you. For you two to say that…!(ありがとうございます。あなた達に、そんな風に言ってもらえるなんて!)」
ルイーズが、タブレットを見ながら言った。
「Fascinating performance. You maintained a high level of intensity throughout — and at some point it felt like you shifted into another gear entirely. I’d love to analyze what triggered that. Was it something external, or were you in a flow state? I want to hear about it later.(興味深い演技だったわ。ずっと高いテンションを維持していた、そして途中でもう一つギアが上がったように感じたわ。何かキッカケがあったのか、それともゾーンに入った状態だったのか、その辺りの分析も是非したいわ。後で話を聞かせて)」
トシキが、小声で。
「Your mom… she’s something else.(君のママ、本当にすごいよね)」
ルイーズ、気づいた。
「Oh. Sorry. We can talk about this later, Brady.(ああ、悪かったわね。この話は後にしましょ、ブレイディ)」
「Sure. Thanks, Louise.(わかった、ありがとう)」
その時。
ドアをノックする音
少し控えめ。
「Come in!(どうぞ!)」
ドアが開いた。
ミーチャとサーシャが入ってきた。
ブレイディ、笑顔で駆け寄った。
「Mitya! Sasha!(ミーチャ!サーシャ!)」
ミーチャ、微笑んだ。
「Sorry we’re late. We wanted to come earlier, but the crowd…(遅れてごめん。もっと早く来たかったけど、人が…)」
「No! It’s OK! You came! That’s… that’s amazing!(いや!大丈夫!来てくれた!それだけで…嬉しいよ!)」
ブレイディ、かなり興奮している。
サーシャが、静かに言った。
「You were wonderful, Brady. So much power.(素晴らしかったわ、ブレイディ。ものすごくパワフルだった)」
「That’s right — I couldn’t take my eyes off you.(そうね、あなたの演技から目が離せなくなったもの)」
「Thank you. Honestly… when I saw you in the audience, something shifted. I know that’s what pushed me.(ありがとう。実は君たちが来るのが見えて、自分の中でギアが上がったんだ。それは間違いないよ)」
ミーチャが、少し笑った。
「I had a feeling. You kept glancing over.(なんだか意識してるような気がしたわ、やっぱりね!)」
「Sorry. I just… I’m really glad you came.(ごめん、本当に、来てもらえて嬉しかったんだ)」
「We wouldn’t have missed it. You were truly incredible.(来ない訳ないでしょ!本当に素晴らしかったわ)」
ブレイディはものすごく嬉しそうな笑顔。
楽屋、温かい雰囲気。
健一が、小声でカヨに。
「こういうの見てると、こっちも幸せになってくるな。」
「ええ。ブレイディは頑張ってたからね」
シーン3: Dharma Beansへの誘い
楽屋、温かい雰囲気の中。
アランが、声を上げた。
「Alright, let’s celebrate!(よし、これから打ち上げにするか!)」
ジェイクも頷いた。
「Agreed. Our people just put on one hell of a show. Dharma Beans?(そうだな、仲間達が最高の舞台をやったんだ。ダルマ・ビーンズでいいか?)」
「Yeah. We’ve got drinks, tea, sake — and how about some poetry? Right, Jake?(そうだな。アルコールもお茶もあるからな!それに詩も読むか!な、ジェイク)」
「You always do this.(いつも唐突だな)」
「You’re always ready.(お前はいつでも準備万端だろ?)」
ジェイクは、肩をすくめた。
「Fine. I’ll figure something out.(まあいいさ、何か考えるよ)」
エマが、興奮した。
「I’m in! I actually want to listen properly this time!(ワタシも行くわ!今日はちゃんと聴きたいし)」
ルピタも頷いた。
「Me too. Last time I didn’t really get it.(ワタシも。前回は、よく分からなかったから)」
アランが、笑った。
「You don’t have to get it. If it felt confusing, meaningless — that’s valid. Meaning is something you find yourself.(別に分かろうとする必要はないよ。よく分からない、意味不明、そう感じたなら、それでいい。意味は自分で感じればいいんだ)」
スティーブン・シュピーガーが、言った。
「I’d love to come. Today has been truly unforgettable.(是非行きたい。今日は本当に記憶に残る1日だ)」
「Perfect. You’re more than welcome, Steven.(完璧だ!歓迎するよ、スティーブン)」
そして、ルイーズを見た。
「Oh, Steven. Let me introduce you. This is my sister, Louise.(ああ、スティーブン。紹介させてくれ。これが俺の妹、ルイーズだ)」
ルイーズが、前に出た。
タブレットを持ったまま。
「Hello, Mr. Schpieger. I’m Dr. Louise Goldberg. UCLA professor of psychology. I specialize in behavioral analysis, cognitive patterns, and social dynamics in unconventional environments.(こんにちは、シュピーガーさん。UCLA心理学教授、ルイーズ・ゴールドバーグです。行動分析や認知パターン、そして特殊な環境下での社会的ダイナミクスを専門にしています)」
スティーブン・シュピーガー、驚いた様子。
「A pleasure to meet you, Dr. Goldberg.(お会いできて光栄です、ゴールドバーグ博士)」
握手した。
ルイーズが、続けた。
「I’ve been documenting this group for research purposes. Tonight’s performance provided excellent data on high-stress creativity, external motivation triggers, and interpersonal dynamics under public scrutiny. I’d be happy to share my findings if you’re interested.(このグループは研究目的で記録しています。今夜のパフォーマンスでは、高ストレス下での創造性や、外部からの動機づけ、そして人前に立つ状況での対人関係の動きについて、とても有益なデータが取れました。もしご興味があれば、私の分析結果をお見せします)」
スティーブン・シュピーガー、少し笑った。
「That sounds… fascinating.(それは…興味深い)」
アランが、割り込んだ。
「Yeah, she’s brilliant. But also completely insane.(ああ、彼女は頭がいい。でも完全にキ◯ガイだ)」
ルイーズ、振り返った。
「I prefer ‘unconventionally focused.’(独自の集中スタイルって呼んでくれないかしら)」
「You collect data on people like they’re lab rats.(人をまるで実験用ラットみたいにデータ収集する)」
「Observation is the foundation of science, Allan.(観察は科学の基礎よ、アラン)」
「You documented my last poetry reading and called it ‘performative existential crisis with audience manipulation tactics.’(俺の前回のポエトリー・リーディングまで観察して、「観客を操る実存パニック劇」とか言ってたよな)」
ルイーズ、少し考えた。
「That was accurate.(正確だったわ)」
アラン、溜息をついた。
「See? Insane.(ほら?キ◯ガイだ)」
スティーブン・シュピーガーは、笑った。
「I think I like her.(彼女、気に入ったよ)」
ルイーズが、データを取り始めた。
「Subject expresses positive affinity despite awareness of my analytical tendencies. Interesting.(被験者は私の分析的傾向を認識しているにもかかわらず肯定的親和性を示す。興味深い)」
トシキが、小声でシンディに。
「Your mom just called Schpieger a subject.(君のママ、シュピーガーさんを被験者って言っちゃってるよ)」
「I know. She’s just…incredible.(そうね、ママは…すごいの……)」
カヨが、言った。
「ダルマ・ビーンズ、行きましょうか。みんなで」
健一も頷いた。
「賛成。ここにいると頭が痛くなる」
ブレイディ、相変わらずテンションが高い。
「Yes! I’ve never been! I can’t wait!(是非行きたい!初めていくよ!)」
ミーチャが、サーシャを見た。
「We should go too.(私たちも行きましょ)」
サーシャも頷いた。
「I’ve never heard a poetry reading before.(詩の朗読なんて聞いたことないわ)」
「Same! This is going to be incredible!(オレも!すごく楽しみだ!)」
アランが、宣言した。
「Alright! Dharma Beans in 20 minutes! Let’s move!(よし!20分後にダルマ・ビーンズで!移動だ!)」
シーン4: 楽屋を出る
楽屋のドア
全員、楽屋を出始めた。
健一とブレイディ、最後に出る。
ブレイディ、まだ興奮している。
「Kenichi. Tonight was the best night of my life.(健一さん、今夜は人生で最高だ)」
「I’m glad. You were incredible up there.(よかったな、君はすごかったよ)」
「Mitya came. And she meant every word.(ミーチャが来てくれて、心から褒めてくれたんだ)」
「I know. And that’s because of what you put in.(そうだな、君の努力あっての事だろ?)」
「But you’re the one who gave me the chance.(だけどあなたがチャンスをくれたんだ)」
「Not everyone can take a chance and run with it. That was all you.(誰でもチャンスを活かせる訳じゃない。つまり君の力だよ)」
「Thank you. Really. From the bottom of my heart.(本当にありがとう!)」
「Alright, alright. My head still hurts — keep it down.(分かったよ、まだ頭が痛いんだ、大声は勘弁してくれ)」
二人も店に向かった。
次回、シーズン2の最終回です。




