Season 2 - Episode 5: Opening Night (初日の夜)
登場人物
田所家
健一/元ハリウッド映画主演原作、影が薄い
カヨ/健一の妻、カリスマ、管理魔
トシキ/健一の息子、パン屋でバイト
シンディ・ゴールドバーグ/トシキの彼女、カヨの弟子
ブレイディ・ヴァーデン/役者の卵、レッドブル依存、おバカ
アラン・ゼンズバーグ/詩人、シンディの叔父
※アレン・ギンズバーグではありません
ジェイク・ケンドリック/作家、詩人、アランの親友
※ジャック・ケルアックではありません
スティーブン・シュピーガー/ハリウッド巨匠監督
※スピルバーグではありません
エマ、ルピタ/ ハリウッド女優
劇団
デヴォン・クロス/若手演出家
クレア、マーカス、ジャスミン/劇団員
☆なんちゃって参考文献
アレン・ギンズバーグ「HOWL」
ジャック・ケルアック「路上」
ウィリアム・バロウズ「裸のランチ」
※読んでなくても大丈夫!
シーン1: 公演2日前、カヨとエマの電話
田所家、夜
カヨの携帯が鳴った。
エマからだった。
「Hello, Emma(こんにちは、エマ)」
「Kayo! How are you? Rachel told me about Brady’s play!(カヨ!元気?レイチェルからブレイディの劇のこと聞いたわ!)」
「Good. You?(元気よ。あなたは?)」
「Great! I heard Kenichi is in it! Playing Ray again!(もちろん元気!健一が出るって聞いた!またレイを演るんですって!)」
カヨは、少し笑った。
「Yes. Brady asked him(ええ。ブレイディに頼まれたの)」
「That’s AMAZING! What kind of play is it?(すごいじゃない!どんな劇なの?)」
「It’s… Brady plays a character with multiple personalities, and Kenichi plays Ray. He goes up against all these different personalities. Something like that(ブレイディが多重人格の役で、健一はレイの役、そしていっぱいある人格と対決する?そんなお話)」
「WHAT!? That’s wild! I don’t really get it, but I HAVE to see this! When is it?(何それ!?ぶっ飛んでるわね!よくわからないけど、絶対見にいくわ!いつあるの?)」
「This Saturday. But Emma, it’s a very small theatre. Maybe 50 seats. And it’s… very experimental. Kenichi gets hit with a toy bat(今週の土曜日。でもエマ、とても小さな劇場よ。多分50席くらい。それと…とても実験的。健一がおもちゃのバットで叩かれたり)」
「WHAT!?(何!?)」
エマは、笑い出した。
「That’s PERFECT! I HAVE to see this! Can I come?(それ完璧!絶対見ないと!行っていい?)」
「Of course. But you’ll definitely stand out(もちろん。でもあなた、絶対目立つわ)」
「I don’t care! Wait, can I tell Lupita? She’ll love this!(気にしないわ!待って、ルピタも誘っていい?彼女、大喜びするわ!)」
「Sure」
「And… Steven would probably love this too. Should I invite him? We still talk about you, you know. What do you think?(スティーブンもきっと興味持つと思うわ、誘ってみようか?それに彼と今でもあなたの話をするし、どう?)」
カヨは、少し笑った。
「If he comes, I’m sure everyone would be happy. But it really is a tiny venue. And Kenichi mostly just stands there getting hit(彼がきてくれるなら、きっとみんな喜ぶと思うわ。だけどほんとに小さい舞台よ。それに健一はほとんど立ってて、叩かれてるだけ)」
「That makes me want to see it even more! He’s going to love it! I’ll message you later!(ますます観たいわ!彼もきっと大喜びよ!じゃあ後でメッセージするわね!)」
電話を切った。
健一が、リビングから出てきた。
「誰だった?」
「エマ。あなたの劇に来るって。多分ルピタも。もしかしたらスティーブンも」
健一は、溜息をついた。
「見られちゃうのか…」
「何か問題?」
「いや。ただ…変な劇だろ?基本的に立っておもちゃのバットで叩かれてるだけ。少なくともデジタル・ゴーストではそれっぽく見えた。タイピング。タブレットをスワイプ。そして今回は?ただ…立ってブツブツ言ってるだけ」
カヨは、笑った。
「スティーブンの時もほとんどタイピングだけだったじゃない。バットで叩かれるあなたを見たらきっと楽しんでくれるわ?」
「変な比較だな」
「でもその通りじゃない?」
健一は、苦笑いした。
シーン2: 公演前日、スティーブン・シュピーガーにも連絡が行く
翌日、午後
エマから、スティーブン・シュピーガーにメッセージが届いた。
「Steven! Are you free this weekend?(スティーブン!今週末空いてる?)」
「I’m in San Francisco this weekend. What’s up, Emma?(週末はサンフランシスコだよ。どうした、エマ?)」
「Kenichi has a show in LA. He’s playing Ray again, like in Digital Ghost. It’s experimental theatre!(健一の舞台がLAであるの。デジタルゴーストのレイの役みたい。実験演劇だって!)」
「Digital Ghost… as a play? Kenichi?(デジタルゴーストの演劇?健一が?)」
「I don’t really get it either, but it’s basically like Jekyll and Hyde, apparently(よくわからないけど、基本はジキルとハイドみたい)」
「I can probably drive down. I’m curious what he’s up to. And I’d like to see Kayo too(多分車で行けると思う。彼が今何をしてるのか興味もあるしな。カヨとも会いたい)」
「Perfect! See you there this weekend!(完璧!それじゃあ週末会いましょう!)」
シーン3: 公演当日、劇場の楽屋
小さな劇場、楽屋
健一とブレイディ、準備中。
健一は、黒いフード付きジャケット。
レイの衣装。
デヴォンが、楽屋に入ってきた。
「How are you feeling?(気分はどう?)」
「Good! Ready!(いいよ!準備万端!)」
ブレイディが答えた。
健一の携帯が鳴った。
カヨからメッセージ。
「We’re here. Emma, Lupita, and Steven arrived. They’re excited.(着いたわ。エマ、ルピタ、スティーブンが来た。みんな興奮してるわ)」
健一は、溜息をついた。
「…まいったな」
「What?(何?)」
ブレイディが聞いた。
「Emma, Lupita, and Director Schpieger are here(エマ、ルピタ、それとシュピーガー監督が来てる)」
数秒の沈黙。
そして。
ブレイディ、驚いて健一を見た。
「REALLY!?(本当に!?)」
「…Yeah?(ああ?)」
「Steven Schpieger is coming!? I get to perform in front of him again!?(スティーブン・シュピーガーが来るの?また彼の前で演技ができる?)」
ブレイディは興奮して言った。
健一は、意外そうな表情。
「You okay with that?(大丈夫か?)」
「Are you kidding!? I’m EXCITED! He told me to keep going with theatre, remember!? And now I get another chance to show him!(もちろん!興奮するよ!彼は以前、演劇を続けろって言ってくれたでしょ!そしてまた見てもらえるチャンスじゃん!)」
デヴォンも目を丸くした。
「Wait, you MET Steven Schpieger before!?(待って、前にスティーブン・シュピーガーに会ったことあるの!?)」
「Yeah! Kenichi took me to his studio! I did Hamlet for him!(うん!健一が彼のスタジオに連れて行ってくれたんだ!ハムレットをやった!)」
「You did HAMLET for STEVEN SCHPIEGER!?(スティーブン・シュピーガーにハムレットを!?)」
デヴォンは、パニック状態。
「Why didn’t you TELL me this!?(なぜそれを言わなかったの!?)」
「You didn’t ask!(聞かなかったじゃん!)」
ブレイディは、リュックを掴んだ。
「I need Red Bull! Where’s the vending machine!?(レッドブル飲まなきゃ! 自販機どこ!?)」
「Brady, no Red Bull before the show!(ブレイディ、公演前にレッドブルはダメだ!)」
デヴォンが止めようとした。
「I NEED IT! Steven Schpieger is HERE! I need ENERGY!(必要だよ!スティーブン・シュピーガーが来てる!エネルギーは必要だろ!)」
楽屋を飛び出した。
健一は、呆然としていた。
「He’s actually excited(本当に興奮してる)」
デヴォンは、楽屋を走り回り始めた。
「Steven Schpieger! THE Steven Schpieger! This is SO META! A real Hollywood director watching an experimental deconstruction! I need to… the lights! The sound! EVERYTHING!(スティーブン・シュピーガー!あのスティーブン・シュピーガー!これ超メタ!本物のハリウッド監督が実験的脱構築を見るなんて!準備を…照明!音響!全部!)」
楽屋を飛び出した。
数秒後。
クレアが、楽屋に飛び込んできた。
「STEVEN SCHPIEGER IS HERE!(スティーブン・シュピーガーが来てる!)」
完全にパニック。
マーカスも続いて入ってきた。
「And Emma! And Lupita! HOLLYWOOD IS HERE!(それとエマ!ルピタ!ハリウッドが来てる!)」
息が切れている。
健一は、深呼吸をした。
「Everyone, calm down. They’re just here to watch. Do your job(みんな、落ち着いて。見に来ただけだ。自分の仕事をすればいい)」
「But… STEVEN SCHPIEGER!(でも…スティーブン・シュピーガー!)」
クレアが叫んだ。
「I know. I worked with him. He’s nice. Just do the show(分かってる。一緒に働いてた。いい人だ。ただ劇をやればいい)」
でも、二人とも落ち着いていない。
その時。
廊下から、ブレイディの声。
「Got it! Three cans!(手に入れた!3缶!)」
ブレイディが、レッドブル3缶持って戻ってきた。
「Brady, NO!(ブレイディ、ダメだ!)」
クレアが止めようとした。
でも、ブレイディは1缶目を開けた。
プシュッ!
一気飲み。
「Ahh! Perfect!(ああ!完璧!)」
2缶目も開ける。
「Brady, you’ll crash during the show!(公演中にクラッシュするわよ!)」
マーカスが言った。
「I won’t! I’m performing for STEVEN SCHPIEGER! I need MAXIMUM ENERGY!(しない!スティーブン・シュピーガーが見てるんだ!最大限のエネルギーを補充しなきゃね!)」
2缶目も一気飲み。
健一は、頭を抱えた。
「This is going to be a disaster(これは大惨事になるだろ)」
3缶目を見た。
ブレイディが、3缶目を開けようとした。
健一が、手を伸ばした。
「Brady. Stop. Two is enough(ブレイディ。やめろ。2缶で十分だ)」
「But—(でも—)」
「Trust me. You’re excited. That’s good. But three cans? You’ll be shaking on stage(信じろ。興奮してる。いいことだ。でも3缶?舞台で震えるぞ)」
ブレイディは、真剣な表情で頷く。
そして、3缶目を置いた。
「…OK. You’re right. Two is enough(分かった。君が正しい。2缶で十分)」
「Good. Now, breathe. Steven came because he’s curious. He’s supportive. Just do your show(いいぞ。さあ、呼吸して。スティーブンは興味があるから来た。応援してる。ただ劇をやればいい)」
ブレイディは、深呼吸した。
でも、目がギラギラしている。
レッドブル2缶の効果。
「I’m ready. I’M READY!(準備できた。いつでもいける!)」
クレアが、小声で言った。
「…He’s going to be insane on stage(舞台で狂ったようになるわ)」
マーカスも頷いた。
「Yeah. This is going to be… something(うん。これは…何か起こる)」
健一は、溜息をついた。
「なんか変な緊張してきた…」
シーン4: 開演前、ロビーでの出会い
劇場のロビー、開演30分前
スティーブン・シュピーガー、プログラムを見ている。
ロビーのドアが開いた。
カヨ、エマ、ルピタが入ってくる。
トシキとシンディも一緒。
エマが、スティーブン・シュピーガーに気づいた。
「Steven!(スティーブン!)」
スティーブン・シュピーガーは、微笑んだ。
「Emma. Lupita. Good to see you both(エマ。ルピタ。君たちに会えて嬉しいよ)」
ルピタが、カヨに近づいた。
「Kayo! It’s been a while!(カヨ!久しぶり!)」
「Hello, Lupita. Thank you for coming(こんにちは、ルピタ。来てくれてありがとう)」
スティーブン・シュピーガーが、カヨに近づいた。
「Kayo. How have you been?(カヨ。元気だった?)」
「Good. Thank you for coming, Steven. I know it’s a small production(元気よ。来てくれてありがとう、スティーブン。小さな公演だけど)」
「I wouldn’t miss it. Kenichi doing experimental theatre? I had to see it(見逃せないさ。健一が実験演劇?それは見ないとね)」
エマが、笑った。
「He gets hit with a toy bat, apparently!(おもちゃのバットで叩かれるらしいわ!)」
「Even better(なおさら見逃せないね)」
その時。
ロビーのドアが、また開いた。
アラン & ジェイクが入ってくる。
スティーブン・シュピーガーが、二人を見た。
数秒。
そして。
「…No way. Jake Kendrick? Allan Zensberg?(まさか。ジェイク・ケンドリック?アラン・ゼンズバーグ?)」
アランとジェイク、振り返った。
アランが、目を丸くした。
「…Holy shit. Steven Schpieger?(マジか。スティーブン・シュピーガー?)」
ジェイクも驚いている。
「THE Steven Schpieger?(あのスティーブン・シュピーガー?)」
スティーブン・シュピーガーは、前に出た。
「Yes. I can’t believe it. Jake Kendrick. ‘The Naked Dinner.’ Allan Zensberg. ‘HEARD.’ I read both. Late ’70s. They changed everything for me(ああ。信じられない。ジェイク・ケンドリック。『裸の晩御飯』。アラン・ゼンズバーグ。『HEARD』。両方読んだ。70年代後半。僕の全てを変えた)」
ジェイクは、驚いている。
「You… you actually read them?(君が…本当に読んだのか?)」
「Read them? I devoured them. A friend gave me ‘The Naked Dinner’ first. Small press edition. Raw. Honest. Painful. About loss and guilt. I’d never read anything like it. Then ‘HEARD’ came out. The crawfish. The crows. The Zen in a 7-Eleven parking lot. It was… insane. Brilliant(読んだ?貪り読んだよ。友人が最初に『裸の晩御飯』をくれたんだ。小さな出版社版のね。生々しかった。正直で、痛々しかった。喪失と罪悪感…あんなものは読んだことがなかった。それから『HEARD』が出た。ザリガニ。カラス。セブンイレブンの駐車場の禅。あれは…狂ってた。すごかった)」
アランが、小声で言った。
「Man… Steven Schpieger read our work(おい…スティーブン・シュピーガーが俺たちの作品を読んでた)」
スティーブン・シュピーガーが、続けた。
「You two started the Beat movement. ‘The Naked Dinner’ broke through first. Then ‘HEARD’ expanded it. You didn’t hide anything. No filter. Just truth. That honesty… I tried to bring it to my films(君たち二人がビート運動を始めた。『裸の晩御飯』が最初にブレイクした。それから『HEARD』がそれを拡大した。何も隠してない。フィルターも存在しなかった。ただ真実だけを。その正直さ…それを映画に持ち込もうとした)」
ジェイクは、少し照れくさそうだった。
「I… I didn’t know anyone in Hollywood even knew about us(俺…ハリウッドの誰かが俺たちのことを知ってるとは思わなかったよ)」
「Underground literature reaches further than you think. Especially when it’s real(地下文学は思ってるより遠くまで届く。本物なら尚更だ)」
エマが、割り込んだ。
「Wait, wait! Allan and Jake? You’re THOSE poets?(待って、待って!アランとジェイク?あの詩人たち?)」
カヨが、頷いた。
「Yes. We actually went to their poetry reading together, remember? At Dharma Beans(ええ。一緒にポエトリー・リーディングを聞きに行ったでしょ?ダルマ・ビーンズで)」
ルピタも、思い出したように声をあげた。
「Oh! I remember! You read that… thing about crawfish!(ああ!覚えてる!あなたがザリガニについてのあれを読んだ!)」
アランが、笑った。
「‘HEARD.’ Yeah. That was me(『HEARD』。ああ。それが俺だ)」
エマが、正直に言った。
「I didn’t understand it. But it was… interesting?(意味は分からなかった。でも…面白かった?)」
カヨが、笑った。
「That’s what I said too(私もそう言ったわ)」
ジェイクが、肩をすくめた。
「That’s the point. You don’t understand it. You feel it(それがポイントだ。理解するんじゃない。感じるんだ)」
スティーブン・シュピーガーが、頷いた。
「Exactly. That’s what I learned from your work. Emotion over logic. Something real over structure(まさに。それが君の作品から学んだことだ。論理より感情。構造よりリアルな何か)」
アランが、興奮した。
「So our work… influenced your films?(じゃあ俺たちの作品が…君の映画に影響を?)」
「Indirectly, yes. You taught me to take risks. To strip away the polish and show the raw truth. I’ve carried that with me for decades(間接的に、そうだった。リスクを取ることを教えてくれた。洗練を剥ぎ取って生の真実を見せることを。何十年もそれを持ち続けてきた)」
ジェイクは、少し笑った。
「This is… surreal(これは…現実なのか?)」
スティーブン・シュピーガーが、続けた。
「After the show, can I come to your cafe? I’d like to see it. And talk more(公演後、カフェに行ってもいいかな?見てみたい。それにもっと話したい)」
アランとジェイク、顔を見合わせた。
「Seriously?(マジで?)」
「Absolutely. It’s not every day I meet the men who helped shape my career(当然。僕のキャリアを形作るのを手伝った男たちに会えるのは、そうそうない)」
ジェイクが、肩をすくめた。
「Sure. But fair warning. It’s a mess(もちろんだ。でも警告しとく。めちゃくちゃだ)」
「Perfect(完璧だ)」
トシキが、小声でシンディに言った。
「This is insane(狂ってる)」
「I know. Steven Schpieger is talking to Allan and Jake like they’re legends(分かる。スティーブン・シュピーガーがアランとジェイクを伝説みたいに話してる)」
月木曜日8時更新




