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第二十三話 美稀達の約束事

美緋を抱えたまま、帰宅した。

怪我しているんだけど…考慮はしてもらえなかった。

流石に疲れたので、すぐにでも寝たいのだけど…聞きたいことが残ってる。


とりあえず、美稀の部屋に戻り、美緋をベッドに座らせる。

単刀直入に要件を切り出すことにした。


「おい、美緋。少し質問してもいいか?」


「構わぬぞ。聞きたい事はなんじゃ?」


「お前は美稀の敵ではないんだな?そしていったい誰なんだ?そして目的は?」


「美稀は此方のしもべみたいなものじゃ。敵なわけなどないわ。いや…僕とは少し違うな。そうじゃな…美稀と緋莉は此方の依り代じゃな。此方は美緋じゃ、それ以上そなたが知る必要はない。目的とな?美稀と緋莉に力を授ける事かのう…」


正体については、詳しく話すつもりはない様だ。

おいおい聞いていくしかないだろう。

目的は…どうだろう?暫く様子を見るしかないか。

思考を止めて、改めて問いかける。


「緋莉がやはり関係しているのか…。緋莉はどうなってるんだ?」


「此方の依り代として、美稀の力だけでは足りぬのだ。その分を緋莉が補っておるのじゃ」


「なるほど…。では質問を変える。光属性を使おうとすると、美緋が今後も現れる。そういう解釈でいいのか?」


「それで構わぬ。暫くは美稀では無理じゃろう。して、他はもうないのか?」


「それじゃ…美緋が出現する事により、美稀と緋莉に不都合はあるのか?あと、ちゃんと美稀に戻ることは可能か?これで聞きたい事は終わりだ」


「不都合は美稀にあるな…此方が闘うと、身体に負担があるのじゃ。明日は動けまいな、おそらく。それぐらいじゃな。と、戻る事は可能じゃ。美稀が意識を失っておらぬ状況であればな。今宵は此方も疲れたからな…そろそろ身体を美稀に戻すとしようかの…。颯、もうよいか?」


「ああ…美緋、ありがとう。知りたい事がまたあるかもしれないが、その時は美稀に聞けばお前に伝わるだろうからな。それじゃ、今後も宜しく頼む。ゆっくり休んでくれ。おやすみ」


「またすぐに会うじゃろうてな。では、颯…。またの」


そういうと美緋は瞳を閉じ、ベッドに倒れ込んだが、すぐに身体を起きあがらせて、抱きついてくる。


「颯…大丈夫⁉︎」


「美稀…大丈夫じゃない。痛い、痛くてダメかもしれん…」


美稀…が目を覚ました様だ。

それはいいのだが、手加減ぐらいは出来ないのか?


「ごめん、ごめん」


そう言うと、美稀は抱きしめていた腕の力を緩める。

これで少しは話が出来る。


「美稀、身体は大丈夫か?」


「私は大丈夫。颯こそ怪我してるんだから急いで治療しないと」


そう言って、俺の服を脱がし始めようとする。

瞳に変な光を宿している気がするのは俺の勘違いではないだろう。

そんな美稀を嗜める。


「それはまだ大丈夫だから、先に聞かせてくれ。緋莉も無事なのか?」


「緋莉は今は寝てるみたいだけど無事よ。でも、緋莉に負担を随分かけてしまったわ。私が成長するまでは、こんな感じで緋莉に負担がかかると思うわ。それだけ美緋の力は凄いみたい」


「そうか…無事なら良いんだ。なぁ美稀、彼女は敵じゃないんだな?」


念の為、美稀にも同じ質問をする。


「大丈夫よ。美緋の話した事に嘘はないわ。颯?美緋もこの話はしっかり聞いてるからね?疑ったりして機嫌を損ねたら後が大変よ。それに…やっぱり何でもないわ」


うわっ…聞いてるんだ。美稀の言う通り、余計な事は言わない様にしよう。面倒はごめんだ。

それと、美稀の歯切れが悪いのが引っかかる。


「美稀、何を言いかけたんだ?最後までしっかり話せよな」


「話すのはいいけど、怒ったり呆れたりしない?」


「それは聞いてから考える。とりあえず聞かせろ」


怒ったり呆れたりする様な事?

美稀の言葉についつい身構えてしまう。


「実は颯が天音と話している時にね?美緋から颯について色々聞かれたのよ」


「・・・・・・・・」


「最初は私と緋莉も颯の良い所や悪い所を冷静に話していたんだけど…ちょっとエスカレートしちゃって」


「聞くのが怖いが、どうエスカレートしたんだ?」


「先に言っておくけど、私のせいじゃないわよ?緋莉ちゃんが、颯に自分がどれだけ愛されてたか自慢を始めるから…私も颯との色々をついね…」


この時点で、ただならぬ予感がするが最後まで黙って聞くしかない。


「そしたら…緋莉が拗ね始めてね。宥めるのが大変で…ついちょっとした約束をしちゃったのよ」


視線を逸らしながら、小声で語る美稀…。

その態度に、やっぱり聞くのを止めたくなるがそういう訳にもいかない、なかなか悩ましいなこの状況。

そんな思考を振り払い、美稀に目で続きを促す。


「余裕のある時に、身体を貸してあげるって。緋莉も颯とデートしたいんだって。一応、私もOKしたけど…ちゃんと節度ある行動しなさいよ。変な事したら、分かってるでしょうね?」


本当にOKしたのだろうか?声が…怒気を帯びている。


「それで…緋莉だけズルイって、美緋も言い出して。『仲間外れは嫌じゃ』って駄々をこねるもんだから、これまた宥めるのが大変でね。仕方なく、美緋にも身体を貸してあげる事になったのよ」


「・・・・・・・・・」


「そういう事だから、颯。美緋とも遊んであげてね。美緋にも変な事したら許さないからね」


自分で勝手に話を決めておいて、そんな態度を取れる美稀に、感動を覚える。

悪い意味で…ではあるが。


「そんな事はしない。身体は美稀といえ、妹とよく知りもしない奴だぞ?そんな事になるわけあるか‼︎」


俺はハッキリと言い切った。

だが…


「あ〜、知らないよ?今ので少なくとも緋莉に火が付いたからね。『兄が私の魅力に抗うなんて出来るわけない』とか言ってるよ。颯…私は『浮気』は絶対に許さないからね。身体が私だからなんて言い訳は通用しないわよ?念の為、最後にもう一度釘を刺しておくわ」


緋莉を刺激してしまった様だ。

面倒な展開になった…口は災いのもと、ってまさにこの事だな。

これからは少し気をつけないといけないと思った。


「分かったよ。それじゃ、そろそろ休もうか。流石に疲れたしな」


「傷の治療が終わったらね」


そう言って、美稀は俺の服をもう一度脱がせようとしてくる。

されるがまま…というのも癪だが、疲れてるので任せる事にする。



って、おい。傷の治療でパンツまで脱がせようとするなっ!

しかも、それを注意したら何でそんなに不満顔なんだよ…。

そんな美稀に、げんなりしながらも傷の治療をしてもらい、その日は眠りについた…。

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