おっぱいの大きさと魔力消費量の関係について
簡単に荷物をまとめて城を出た。乗合馬車の停車場に向かおうとすると、ニュウニュウが「城の馬車を使えばいいんじゃね?」と言う。喜んでお言葉に甘えさせてもらうことにした。ニュウニュウは旅慣れているのか、軽装だった。小さなリュックを背負っているだけだ。「のほほ〜! ヘイシュリグなんて、久しぶりやなぁ!」とハイキングに出かける子供のようにはしゃいでいる。
馬車は4人掛けだった。俺とハーディーが隣同士、ニュウニュウの横には荷物を積んでいた。首都を出て間もなく、そこにニュッと裸のコンティニュアスが登場した。
「ああ、やっとあいつから離れることができたぞ。やれやれ。おい、服を貸してくれ」
髪を整えながら、ブツクサ言っている。
「ほお、これが万物の源か!」
ニュウニュウは全く驚きもせず、むしろ身を乗り出して遠慮なくコンティニュアスをじろじろと観察した。
「さっきから近くにデカい魔力の塊があると思っていたら、こいつか!」
逆にコンティニュアスが驚いている。ハーディーはコンティニュアスの生尻の下から自分のリュックを引っ張り出すと、シャツとズボンを取り出して渡した。
「そうそう、こいつや、こいつ。ウチはあんたのこと、最初に会った時から感じてたで。へえ、ちゃんとチンポコもついとるんや。なんや? 道具やのにオシッコするんか? それとも別の用途か? ん?」
初対面なのに、遠慮がない。ニュウニュウは腰を浮かせて、座席の上で窮屈な格好で着替えている様子を見ている。コンティニュアスは道具のくせに、顔を赤らめて「そ、そんなに見ないで……」と照れた。
「おい、なんで照れてるんだ。道具なのに恥ずかしいという感情があるのか?」
シンプルに疑問に思ったので、聞いてみた。
「当たり前だろ。俺は道具だけど、意志があるんだ。うれしいとか楽しいとか感じるように、恥ずかしいって感情もあるんだよ!」
コンティニュアスは指先を震わせながら、シャツのボタンを止めている。ニュウニュウはそれをのぞき込みながら「乳毛を生やしている意味はあるのか?」と言った。ロリババアに生着替えをガン見されて、照れるアラサーのイケメン。こんなニッチなシチュエーション、どこに需要があるのだろう。
「畜生、こいつ、魔族だろう! 人間じゃねえ!」
コンティニュアスはニュウニュウをにらんで、今更なことを言った。ニュウニュウは後頭部で手を組むと、アハハと笑いながら「さすがにわかる? わかるよなぁ」と言った。
その時、俺はとんでもないことに気がついてしまった。ニュウニュウが後頭部で手を組んで胸を張った時、意外におっぱいがあることに気がついてしまった。なんだ、こいつ?! こんなチビのくせに、一丁前にデカいじゃないか! ライラのようにプルンプルンしているわけではない。だが、背が低いので勝手につるぺたか、さもなくばテイラー以下の極貧乳だと思っていたので、そのギャップに驚いた。
『ニュウニュウ殿は火竜でござる。それに、見た目と違って長生きしているのでござる』
衝撃を受けている俺をよそに、ハーディーがコンティニュアスにニュウニュウを紹介した。
「なんやおっさん、ウチが火竜ってわかるんか?」
ニュウニュウはコンティニュアスから目を離し、ハーディーの方を向いた。
『はい。拙者、高精度の魔力探知能力を備えているがゆえ、ニュウニュウ殿から強い火の魔法の力を感じるのでござる。ご自身で竜だと名乗られたゆえ、火竜であろうと。この力で氷竜や雷竜はないのでござる』
「ほほぉ! さすが、タイタンはんが作った魔人は違うなぁ!」
ニュウニュウは目を丸くした。
『タイタン殿から授かった力もあるのでござるが、拙者はロリアンドーロの出身ゆえ、剣士とはいえ、魔法に詳しいのでござる』
ハーディーはうなずいた。
「それに、おっさんは一人と違うやろ? 魂が2つあるのが見えるわ!」
ニュウニュウはハーディーの前にやってきて、ポンと飛び上がって膝の上にまたがった。
『それがわかるのでござるか? その通り、拙者の中には主君である姫がおられるのでござる。その方も、実に魔法にお詳しい方なのでござる』
ハーディーはニュウニュウが膝から転がり落ちないように、そっと手を添えた。ニュウニュウの瞳がキラキラと輝き出す。パアッと笑みが、さらに広がった。
「頼もしい、頼もしいやんけ! 魂が2つの魔人剣士に、万物の源に、火竜の魔法使い! ザ・レジェンドに勝るとも劣らない組み合わせかもしれへんでぇ!」
ニュウニュウは興奮して、ピョンピョンとハーディーの膝の上で飛び跳ねた。馬車がグラグラと揺れる。
「いや、ちょっと待って。俺が入ってないじゃん!」
そうだ、リーダーの俺が入ってないぞ。ニュウニュウは思い出したかのように、俺を見た。一瞬、間があってから眉をキリッと引き締めて「普通の人間!」と言った。
「いや、確かにそうなんだけど! なんか傷つくな!」
なんとなく、ニュウニュウに対して遠慮する必要はないと思えてきた。最初はお城付きの魔術師……いや、魔法使いだから、偉い人なのだろうと気を遣っていたが、気さくな人だし、俺が出会ってきた魔族と一緒でフランクな性格だ。ツッコむところはツッコんでいこう。
「クリスは普通の人間だけど、引きは俺たちよりずっと強いぜ。何しろ普通に冒険していたら絶対に出会わないような、こんなメンツを集めたんだからよ。そこは胸を張ってもいいんじゃねぇの?」
コンティニュアスが褒めているのか貶しているのか、よくわからないことを言う。確かにハーディーとコンビを組んでから、面白いように個性的な面々と出会っている。ライラと初めて一緒に冒険に行くことができたし、運命がいい方向に転がり出しているのは感じている。
アンの説明をすると、ニュウニュウは「ぜひ会いたい」と言って、ハーディーの胸に目がけて魔力を放出し始めた。車内がどんどん熱くなる。俺が汗でビショビショになってもアンは出てこない。ニュウニュウはコンティニュアスに向かって「兄ちゃん、ちょっと魔力を放出してくれへんか」と言い出した。
「やめろ! こんなところでコンティニュアスが力を使ったら、みんな吸い込まれてしまうぞ!」
さすがに止めた。コンティニュアスも呆れた顔をして「やらねえよ。さっきあんたがやった以上の魔力を使ったら、あんたたちが倒れちまう」と拒否した。
「なんや、おもんない。うーん。意外にハードルが高いんやな。どうしたらポンポコ出て来られるようになるんや?」
ニュウニュウは真剣な顔をして、ハーディーの胸を触りまくっている。
『フフッ、ニュウニュウ殿。くすぐったいのでござる』
ハーディーはニュウニュウを抱き上げて、俺との間に座らせた。
『それに、アン様が出てくると、拙者は意識がなくなるのでござる。その間、戦えないのでござる。アン様を出すのであれば、どこかもっと安全なところにしてほしいのでござる』
父親が子供に言い聞かせるように、ハーディーは優しく話した。こういう話し方をするから、テイラーはすぐ心を許したのだろう。
「えっ、アンが出てきたら、おっさんの胸は張り裂けるんやろ? その時、痛みを感じたりするのか?」
ニュウニュウはハーディーの言葉を無視して、質問を続けた。ハーディーはすぐに返事をしなかった。少し口籠もっている。
『ううん……。まぁ、痛いといえば痛いのでござるが、拙者は姫をお守りする立場ゆえ、そこは痛いとは言っていられないのでござる。むしろ、せっかく姫が出てこられるのに、意識がある状態でおそばにいられないことに、忸怩たる思いを抱いているのでござる』
「あ、そうなんや」
ニュウニュウはフーンとうなずいた。見た目がすごく痛そうなのでそうだろうと思っていたが、やはり痛いのか。ハーディーは少しごまかしたけど、たぶんアンが出てくる時は、いつも激痛に襲われているに違いない。だって、生きたまま胸が裂けるんだもの。
『それはそうと、ニュウニュウ殿はドラゴンの姿に戻ることはできるのでござるか?』
ハーディーが逆に質問した。ニュウニュウは腰を浮かせて、ストンと座り直す。狭いので早くコンティニュアスの隣に帰ってほしいのだが、さっきからここで話し込んでいるので、なかなか言い出せない。
「戻れるで。でも、ドラゴンの姿になると、魔力の消費量が桁違いに増えるねん。だから、普段はこの姿やねん。こっちは見ての通りチビなので、消費量が少ないんや」
マントの胸元をつまんで、パタパタとした。自分が小さいことをアピールしているのかもしれないが、逆に胸の膨らみが浮かび上がって、おっぱいがそれなりにあることを強調してしまっている。
『なるほど。それで、子供の姿なのでござるな』
ハーディーはうなずいた。
「いや、それならもっと、子供になったらいいんじゃないの?」
さっきからおっぱいが気になって仕方がない。どうして極貧乳にしなかったんだ。体が大きいほど魔力を消費するのであれば、おっぱいは要らないだろう。俺が胸をチラ見しているに気がついて、ニュウニュウは自分の胸を見下ろした。
「子供? ここもということか?」
自分のおっぱいを下からムニュッと持ち上げる。おおっ、こいつ、意外にデカいではないか! ロリ巨乳か!
「そうだッ!」
遠慮がなくなった勢いで、俺はおっぱいを指差して断言した。ニュウニュウは自分の胸をもう一度、見下ろす。俺の顔と見比べて、急に眉をキリッと引き締めた。
「あのなぁ、クリス。ウチはこう見えてもメスなんや。これは、メスとして必要なものやねん!」
見ているうちに、次第にほほが赤くなっていく。照れているのか? 自分でおっぱいだけ大きくしたくせに?
「そこの分だけ、魔力消費が多くなったりしてないの?」
「ええやんけ! これくらい見逃せや!」
ニュウニュウは真っ赤になって、俺の胸に逆水平チョップを叩き込んだ。チビのくせに意外に力が強くて「うっ」と息が詰まる。そんな俺たちを見つめながら、コンティニュアスが面白そうに「フフッ」と笑った。




