IX — ショッピングモール
結局、デレクの言ったとおりだった。地図が示していたような静かなショッピングモールでは、決してなかった。
小屋を後にした俺たちは、空港を目指して東へ進み続けた。地図には、数時間ほど先にショッピングモールがあると記されていた。何か使えるものが残っていないか確かめるため、俺たちは道をそれることにした。これまでの経験を考えれば、食料や衣服、医薬品、燃料を手に入れられる可能性のある場所なら、どこであろうと立ち寄る価値があった。
道中の大半は、静かなまま過ぎていった。デレクが運転し、俺は助手席で地図を確認していた。サムは後部座席で窓の外を眺め、ブリサはその隣に座っていた。時折、デレクとブリサが視線を交わすのが見えたが、そのやり取りはいつもすぐに終わった。空港で再会して以来、二人の間には何かしっくりこないものがあった。何があったのかは知らなかったが、俺たちの誰も聞いていないと思っているときに、二人が小声で言い争っているのを何度か耳にしていた。俺やサムに腹を立てているようには見えなかった。二人の間の問題だった。そして、俺の見る限り、まだ解決できていないようだった。
「あとどれくらい?」とサムが尋ねた。
「あと二時間くらいだ」と俺は答えた。
デレクが大げさにため息をついた。
「最高だな。あと二時間、地図を眺めながら息をしているジェイコブの声を聞くわけか。子どものころからの夢だったよ」
サムが小さく笑った。
「じゃあ、黙って運転すればいいじゃない」
「いや。俺はこのグループの娯楽担当だからな」
ブリサは窓の外を見たまま、何も言わなかった。デレクもそれ以上は続けなかった。
ようやくショッピングモールに到着すると、俺は入り口の一つの前にピックアップトラックを停めた。三階建ての巨大な建物で、完全に死んだように静まり返っていた。駐車場には動いている車も、明かりも、人の声もなかった。そこにあったのは、埃と植物に覆われた放置車両だけだった。
俺たちは武器を手にして車を降りた。正面玄関は何本ものロープで封鎖されていた。俺はマチェーテを抜き、ロープを一本ずつ切っていった。
「いい兆候ね」とサムが小声で言った。
「どの辺が?」と俺は尋ねた。
「誰かがわざわざドアを閉めておいたってこと」
俺は彼女を見た。
的外れな指摘ではなかった。
俺たちは中へ入った。
一階には衣料品店、時計店、家電やテクノロジー関連の店、ゲームショップ、カフェ、小さな商店が所狭しと並んでいた。シャッターが上がったままの店もあれば、こじ開けられた店もあった。床には服が散乱し、ガラスは割れ、棚は空っぽだった。エレベーターは動かず、エスカレーターも止まっていた。
俺たちは店の間を慎重に進んだ。かなりの物資が持ち去られていたが、まだいくらか残っていた。
「服を持っていけそうね」とブリサが言った。
「死体みたいな臭いがしないものが見つかればな」とデレクが答えた。
「全部が死体みたいな臭いってわけじゃないでしょ」
「今のところはな」
サムが棚のそばにしゃがみ込み、空の水のボトルを拾い上げた。
「ここには、すでに誰かが来ているわね」
「ああ」と俺は言った。「しかも、それほど前のことじゃない」
俺たちは進み続けた。
そのとき、口笛の音が聞こえた。
もう一度。
さらにもう一度。
俺は顔を上げた。
口笛はショッピングモールのあちこちから聞こえてきた。
「今の聞こえたか?」と俺は尋ねた。
全員が同時に武器を構えた。
階段を上っていると、そいつらが現れた。
手すりの陰に一人。バルコニーに一人。店と店の間に二人。それから、さらに何人も姿を現した。
俺は素早く数えた。
十人。
もっといるかもしれなかった。
全員がマスクを着け、弓かクロスボウで武装していた。さまざまな場所から俺たちに狙いを定めている。撃ち返そうとすれば、次の段にたどり着く前に誰かが倒れてもおかしくなかった。
「武器を下ろせ!」と、そのうちの一人が命じた。
俺はデレクを見た。
彼はすぐに意図を理解した。
俺たちは武器を下ろした。
「入るなと警告したはずだ」と男が続けた。「ここは俺たちの縄張りだ」
俺はゆっくりと両手を上げた。
「誰かと勘違いしているんだと思う」
別の男が、俺たちに話しかけた男のそばへ近づいた。
「こいつらは違う、クラレンス」
命令を出した男は、数秒間俺たちを観察した。
「お前らはライダーズの仲間だな」
「誰のことだ?」
あまりにも素直に尋ねたせいか、何人かが互いに顔を見合わせた。
マスクを着けた少女がクラレンスに近づいた。
「この人たちはライダーズじゃない。信じて」
クラレンスは、まだ俺たちを見つめていた。
「なら、お前たちは何者だ?」
「こいつはデレク。彼女はブリサ、こっちはサム。俺はジェイコブだ。物資を探しに来ただけだ。ここが占拠されているとは知らなかった」
男の一人が首を横に振った。
「信用できない」
サムは、俺たちに向けられた武器を見ながら、少しだけ視線を落とした。
「選択肢はあまりなさそうね」と彼女がささやいた。
そのとおりだった。
クラレンスが合図をすると、数人の男たちが近づき、俺たちを取り囲んだ。
「店まで連れていく。そこで話をする」
俺たちは武器と装備を取り上げられ、衣料品店の中に閉じ込められた。金属製のシャッターが下ろされ、外では二人の男が見張りについた。
その後の数時間で、俺たちはこのグループが何かにひどく怯えていることを理解した。彼らは絶えずライダーズの話をしていた。数日以内にショッピングモールを襲撃してくるという。俺たちが内部の人数を調べるために送り込まれた偵察要員なのではないかと疑っている者もいた。
水と少しの食料は与えられたが、武器を持たないまま、閉じ込められていることに変わりはなかった。
寒さが耐えがたいほどになってきた。
「寒いわ」とサムが手をこすりながらつぶやいた。
「簡単に解決できるぞ」とデレクが言った。
彼は立ち上がり、棚まで歩いていくと、ジャケットを一着取り出して自分で着た。
「問題解決」
サムが彼を見た。
「それ、女性用よ」
デレクはジャケットを見下ろした。
「俺、ウエストが引き締まって見えるだろ?」
何時間も経って初めて、ブリサが笑顔を見せた。
俺はもっと厚手の服を探し、見つかったものをみんなに分けた。大した量ではなかったが、少なくとも震えずに済むようになった。
何時間も経ってから、ようやくクラレンスが四人の男を連れて戻ってきた。
シャッターが開いた。
「お前たちがライダーズの仲間じゃないことは分かった」とクラレンスが言った。
だが、俺には続きがあると分かっていた。
「でも……」と俺は答えた。
クラレンスは腕を組んだ。
「だが、俺たちにはお前たちの助けが必要だ」
クラレンスの説明によると、ライダーズは二十四時間以内に襲撃してくるという。人数が多く、武装も整っていて、すでに何度も彼らを脅し、ショッピングモールから追い出そうとしていた。クラレンスのグループは、ここにとどまりたかった。この場所には食料や医薬品があり、かなり長い間生き延びられるだけの物資がそろっていたからだ。
「連中は略奪者だ」とクラレンスは説明した。「盗み、殺し、誘拐する。すべてが崩壊したのをいいことに、好き勝手やっている。俺たちはただ生き延びたいだけだ」
サムが口を挟んだ。
「どうして私たちがあなたたちを信じなきゃいけないの?」
クラレンスは彼女を見た。
「信じる必要はない」
サムは視線をそらさなかった。
「そうね」
その返答が気になった。彼女は相手を何かで責めているわけではなかった。ただ、誰かに話を聞かされたからといって、それを受け入れるつもりはなかったのだ。
クラレンスは俺のほうを向いた。
「お前の日記を読んだ。写真も見た。お前たちがどれほどの経験をしてきたか知っている。俺たちには、プレッシャーの中でも冷静に動ける人間が必要なんだ」
俺はデレクを見た。
彼はゆっくりとうなずいた。
「何をしてほしい?」
「防御を固める。罠を仕掛ける。入り口を塞ぐ。連中が来たときに備えるんだ」
俺は引き受けた。
クラレンスを完全に信用していたからではない。あの店から出て、武器を取り戻す必要があったからだ。
俺たちは作業を始めた。
デレクと俺は、入り口の近くに板や釘、ロープを配置した。クラレンスの部下たちは、あらかじめ用意していた罠のいくつかを教えてくれた。サムとブリサは二階へ上がり、木材や金属板で縁を補強した。一階を見下ろし、援護できる位置を確保するためだった。
作業中、二人のそばを通りかかったとき、話し声が聞こえた。
「ここに残るべきじゃない」とサムが言った。
ブリサが彼女を見た。
「どうして?」
「この人たちのことを知らないから」
「私たちを助けてくれているわ」
「それに、私たちの武器を取り上げて、閉じ込めたのもこの人たちよ」
ブリサはすぐには答えなかった。
「それは、私たちが誰なのか分かる前のことよ」
サムは静かに首を横に振った。
「悪い人たちだと言っているわけじゃない。ただ、どんな人たちなのか分からないって言っているの」
それ以上は言わず、彼女は作業を続けた。
俺は数秒間考えてから、デレクのもとへ戻った。
夕方になると、俺たちは武器と弾薬を確認した。クラレンスは俺たちの装備を返してくれた。川で失ったMP5はもう手元になかったため、クラレンスは防衛用に拳銃を貸してくれた。デレクは自分の武器を取り戻し、サムとブリサも同じようにした。
俺たちは配置を決めた。クラレンスと部下五人、それに俺が一階に残る。デレク、サム、ブリサは二階を担当し、第二防衛線を担うことになった。
「連中が入ってきたら、階段のほうへ後退する」と俺は説明した。
「もし上がってきたら」とデレクが言った。「歓迎してやろう」
俺は彼を見た。
「愛情たっぷりにか?」
「もちろんだ」
少し離れたところにいたブリサにも聞こえていたが、何も言わなかった。
デレクも、それ以上冗談を続けなかった。
すでに夜になっていた。
外は完全な暗闇に包まれ、何も見えなかった。
ライダーズが戻ってくるとは聞いていたが、正確にいつなのかは誰にも分からなかった。
そのとき、エンジン音が聞こえた。
全員が動きを止めた。
大型トラックが正面玄関の前に現れた。
後退した。
「何をするつもりだ?」と男の一人が尋ねた。
トラックが加速した。
衝撃で建物全体が揺れた。
正面玄関が一部破られ、いくつものガラス片が床に落ちた。
そのあと、静寂が訪れた。
クラレンスは武器を強く握りしめた。
「来たぞ」
外から男の声が聞こえた。
「俺は普段、物分かりのいい男なんだ。チャンスも与える。だが、お前たちは自分たちのためになる話を聞こうとしない」
クラレンスは一瞬、目を閉じた。
「あいつだ」
声は続いた。
「武器を下ろして、ショッピングモールから出ていけ。誰も傷つかずに済む」
クラレンスは息を吸った。
「くたばれ、このバカ野郎!」
二階の第二防衛線から、デレクが俺を見た。
「どうやら外交交渉のチャンスは失ったらしいな」
思わず笑みがこぼれた。
そのとき、トラックの後部ドアが開く音が聞こえた。
最初に一体。
次にもう一体。
そして、何十体も。
感染者たちがトラックの荷台から次々と出てきて、入り口へ向かって進み始めた。
「防衛しろ!」とクラレンスが叫んだ。
二階から最初の矢とクロスボウのボルトが放たれた。
ライダーズは外から銃撃を始めた。
ショッピングモールは騒音に包まれた。
銃声。
叫び声。
砕け散るガラス。
感染者たちがドアを叩き、クラレンスの部下たちは必死に押しとどめようとしていた。
クラレンスが俺に近づいてきた。
「ジェイコブ」
「何だ?」
「裏に非常口がある。そこから出ろ」
俺は彼を見た。
「どうして?」
彼はポケットからポラロイド写真を取り出し、俺に手渡した。
「ライダーズが俺の弟を捕まえている。ロバートという名前だ」
写真には二人の男が写っていた。左側がクラレンスで、もう一人がロバートだった。
「連中の車の一台に監禁されている。そこから救い出してほしい」
「誰が一緒に来る?」
「フランシスだ」
武装した男が近づいてきた。
クラレンスは外を指さした。
「リーダーは白い服を着て、ベレー帽をかぶっている。見れば分かるはずだ」
俺は最後にもう一度、写真を見た。
「必ず連れ戻す」
俺たちは非常口から外へ出た。
外は混乱の極みだった。
ライダーズはピックアップトラックや貨物車両でショッピングモールを取り囲んでいた。何人かは窓に向かって発砲し、ほかの者たちは感染者を抑え込もうとしていた。
別のトラックが目に入った。
最初のものとほとんど同じだった。
「まだあるのか……」と俺はつぶやいた。
フランシスは俺の視線を追った。
「ああ」
その中にも感染者が詰め込まれていた。
そこで、俺はライダーズの計画を理解した。
連中は自分たちが先頭に立って突入するつもりではなかった。
感染者を利用して、俺たちの防御を崩そうとしていたのだ。
遠くに、白いスーツを着てベレー帽をかぶった男が見えた。そいつはピックアップトラックのそばに立っていた。
そして、別の車の中にロバートがいるのが見えた。
「あいつだ」
フランシスがうなずいた。
「どうやって近づく?」
俺は感染者でいっぱいのトラックを見た。
「考えがある」
フランシスが俺を見た。
「その顔は気に入らないな」
「どんな顔だ?」
「馬鹿なことをしようとしている人間の顔だ」
「じゃあ、そのとおりだ。そういう顔をしている」
俺たちはトラックに近づいた。
ライダーズの一人が俺たちに気づいた。
「おい!」
そいつが銃を構えた。
俺は撃った。
弾がそいつの脚に当たり、男は地面に倒れた。
「トラックを開けろ!」と俺は叫んだ。
後部ドアまで走り、ロックを切断した。
そして、ドアを開けた。
感染者たちが一斉に飛び出してきた。
負傷した男は後ずさりしながら、地面を這い始めた。
「助けてくれ! 助けて!」
感染者たちが男に襲いかかった。
フランシスは一瞬、動けずにいた。
「動け!」と俺は叫んだ。
ライダーズが感染者たちに向かって発砲し始めた。
陽動は成功した。
俺たちはロバートがいるピックアップトラックへ走った。
ドアを開けた。
「お前、誰だ?」とロバートが尋ねた。
「兄貴に頼まれた。行こう」
ロバートは立っているのもやっとだった。
「クラレンス……」
「生きている。ここを出るぞ」
俺は彼が降りるのを手伝った。
そのとき、銃声が響いた。
フランシスが俺の隣に倒れた。
俺は彼を見た。
動かなかった。頭に穴が開いていた。
胃の中が空っぽになったような感覚に襲われた。
顔を上げた。
白いスーツの男が、数メートル先から俺に拳銃を向けていた。
そいつは笑った。
「もうパーティーからお帰りか?」
俺は銃を構えて撃った。
弾はそいつの顔に命中した。男は地面に倒れたが、死んだようには見えなかった。
確かめている時間はなかった。
ロバートをつかみ、俺たちは走り始めた。
「行くぞ」
「無理だ……」
「できる」
俺は彼の腕を支え、非常口まで連れていった。
中へ入った。
戦闘の騒音は、相変わらず耳をつんざくほどだった。
「ロバート!」と一階からクラレンスが叫んだ。
「ここだ!」
ロバートはどうにか二階へ上がった。俺はクラレンスのところへ走った。
「助け出した」
クラレンスは信じられないという顔で俺を見た。
「成功したのか?」
俺はうなずいた。
「上にいる」
彼の表情がすぐに変わった。
「フランシスは?」
俺は答えなかった。
クラレンスは理解した。
彼はうつむいた。
「そんな……」
「すまない」
外にはまだ感染者が残っていた。だが、ライダーズは撤退を始めていた。
連中が用意した二台目のトラックは、彼ら自身が連れてきた感染者たちに取り囲まれていた。自分たちの戦略が、逆に自分たちへと牙をむいたのだ。
クラレンスの部下の一人が、最後に残っていた感染者を撃った。
その体が倒れた。
静寂。
クラレンスは入り口のほうを見た。
「勝ったぞ」
誰も答えなかった。
確かに、俺たちは勝った。
だが、フランシスは死んだ。
そして、外には何十もの遺体が転がっていた。
その夜、俺たちは入り口を片づけ、周囲に残った感染者の死骸を運び出した。建物から離れた場所に積み上げ、火をつけて燃やした。
そのあと、クラレンスは全員のために夕食を用意した。
厳密には、祝賀会というわけではなかった。
俺たちは、食べる必要があったから食べた。
ロバートは夜の間ずっと兄のそばにいた。サムはほとんど口を開かなかった。ブリサも同じだった。
デレクが俺の隣に座った。
「いやあ」と彼が小声で言った。「地図が約束していたような静かなショッピングモールじゃ、間違いなくなかったな」
俺は彼を見た。
「地図は何も約束していない」
「そのとおり。だから地図なんか信用するもんじゃない」
俺は小さく笑った。
それから、ほかの仲間たちを見た。
サムはクラレンスの部下たちを観察していた。
恐れているわけではなかった。
注意深く見ていたのだ。
まるで、彼らの顔を記憶に刻み込もうとしているかのように。
俺は何も言わなかった。
10月5日――隔離令発令から十九日目。
翌朝、俺たちは正面玄関の修理を手伝い、襲撃で損傷した入り口のいくつかを塞いだ。
クラレンスは、もう一日ここに滞在しないかと提案してきた。
休息が必要だった。
何週間もあちこちを移動し続け、時間も問題になり始めていた。俺たちの目的は変わっていない。東へ進み続け、空港にたどり着くことだった。
作業をしながら、俺は前夜に起きたことを考えていた。
俺たちは物資を探しに来た。
その結果、知らない建物を守り、見知らぬ集団と戦い、さらに、これまで会ったこともない男を救い出すことになった。
善良かもしれない人々を助けたのだ。
だが、すでに明らかになりつつあることも分かった。
この世界では、人間のほうが感染者よりも予測しにくいことがある。
そして、俺たちはまだ先へ進み続けなければならなかった。
結局、デレクの言ったとおりだった。地図が示していたような静かなショッピングモールでは、決してなかった。




