VII — 川のほとりで
このページを誰かが見つけたなら……きっと、俺はもう死んでいる。感染者に殺されたか、出血多量か、飢え死にしたか。
昨日、燃料を運んでいたトラックに乗っていた男たちに、山小屋の桟橋で襲われた。
目を覚ましたのは川岸だった。すぐそばには、俺を噛めないようにしていた植物に絡まって身動きが取れなくなった感染者がいた。すぐに分かった。桟橋で撃った男と同じだった。出血多量で死んでいた。起き上がろうとしたが、全身に激痛が走った。何が起きたのかを思い出すまで、数秒かかった。襲撃。銃撃。転落。水に流される感覚。本能的にMP5を探したが、見当たらなかった。川の流れに持っていかれたのだ。
ずぶ濡れで震えながら、川のそばに座り込んだ。腕には切り傷があった。落ちたときに石で切ったのだろう。服は水を吸って重くなっていた。どれくらい意識を失っていたのか分からなかった。空を見上げて時間を推測しようとしたが、手がかりは何もなかった。時計は壊れていた。分かっているのは、まだ生きているということだけだった。
川の下流に、廃墟になった廃屋を見つけ、どうにかそこまでたどり着いた。立っているのもやっとだった。中に入り、壁にもたれて座り込んだ。ひどく腹が減っていて、全身に疲労が広がり始めていた。水に落ちてから、三時間ほど経っていた。家の残骸を調べると、紙切れと鉛筆が見つかった。ナイフもまだ持っていた。わずかではあったが、書き残すには十分だった。
背後から尾行されていると、もっと早く気づいていれば……。
誰かがこの紙を見つけてくれるのかどうか、分からなかった。書き終えるころに自分がまだ生きているのかさえ分からない。それでも、死ぬことになったときのために、記録を残しておく必要があった。何が起きたのかを整理し、何よりも、自分がどこへ向かうべきなのかを忘れないようにしたかった。
家の近くでベリーを見つけた。食べられるものかどうか確信はなかったが、あまりにも腹が減っていたので、危険を承知で口にした。川の水も直接飲んだ。おそらく良い考えではなかっただろう。それでも、そのときは後で病気になることより、生き延びることのほうが大事だった。
最後に地図を見たときの記憶が正しければ、川を下流へ進めば、いずれ道路に出るはずだった。落ちてからどれほど流されたのか分からなかったが、川の流れは俺を東へ運んでいた。幹線道路を見つけられれば、そこを西へ進むだけで山小屋に戻れる。
賭けに出ることにした。
家を出て、川沿いに進み続けた。今が何時なのか分からなかった。時計は壊れ、太陽は少しずつ位置を変え始めていた。
どれくらい歩いたのか、もう分からなくなったころ、エンジン音が聞こえた。
足を止めた。
待った。
音は木々の向こうへ消えていった。
どうにかして高い場所まで登り、道路を見渡せる地点にたどり着いた。しかし、そこに着いたときには、車はもういなかった。それでも、必要なものは見つけた。道路があった。
あとは、それをたどるだけだった。
数秒間、誰もいない道を見つめた。人影はなかった。車もなかった。ほとんど物音すらしなかった。ほんの数週間前なら、こんな道路は車で埋め尽くされていたはずだと思うと、不思議な気分になった。
歩き続けた。
腹が減って仕方なかった。
脚は重く、腕の傷もますます痛み始めていた。何時間も歩いたころ、感染者の大群が道路を塞いでいるのが見えた。数が多すぎて戦うことはできなかったし、銃も持っていなかった。森へと進路を変え、注意を引かないように木々の間を進んだ。二体ほどに気づかれたが、数キロ先でどうにか振り切った。
さらに六時間ほど歩き続けた。正しい方向へ進んでいるのかも分からなかった。太陽はとっくに沈んでいた。
そのとき、遠くに明かりが見えた。
車だった。
俺は立ち止まった。
車はゆっくりと近づいてきた。
もう戦う力は残っていなかった。誰が乗っているのか、何人いるのか、何をするつもりなのか、何も分からなかった。助けてくれるかもしれないし、殺されるかもしれなかった。
そのときには、もうどうでもよくなっていた。
どうせ、俺はもう死んだも同然だった。
俺は抵抗するのをやめた。
乗っていた人たちは俺に気づくと車を止め、三人が降りてきた。立ち上がろうとして、ナイフを抜いた。視界はぼやけていた。車のライトが目をくらませ、まっすぐ立つことさえ難しかった。
「落ち着いて。助けるから」
そのうちの一人がそう言った。
そのときのことは、ほとんど覚えていない。
9月28日――隔離令発令から十四日目。
車の中で目を覚ました。
女が三人いた。二人は前の座席に座り、もう一人は俺の隣にいた。俺は後部座席にいて、両手を縛られていた。隣の女は拳銃を持っていた。
数秒間、何が起きているのか理解できなかった。
やがて、道路でのことを思い出した。
手を動かそうとすると、手首に巻かれたロープの感触があった。
考えることはなかった。
体が先に動いた。
両手を縛っていたロープを使い、隣にいた女の首に巻きつけて拳銃を奪った。そして彼女を自分の体に引き寄せ、頭に銃口を突きつけた。
「車を止めろ!」
運転していた女はすぐにブレーキを踏んだ。俺も含め、全員が車から降りた。俺は人質にした女に銃を向けたままだった。
「俺に何の用だ、クソ野郎ども!」
運転していた女が両手を上げた。
「落ち着いて、落ち着いて……。道路でひどい状態のあなたを見つけたの。助けようとしているだけよ。私たちは街へ向かっているの。あそこなら安全だから」
俺は銃を下ろさなかった。
「私はパウラ」と彼女は言った。「こっちはマリアで、あなたの隣にいる子はフアナ。あなたの名前は?」
俺は答えなかった。
まだ彼女たちを信用していなかった。
だが、そのとき自分の腕が目に入った。
傷には包帯が巻かれていた。
もし彼女たちが俺を殺すつもりだったなら、意識を失っている間に殺せたはずだ。
「分かったわ」とパウラが言った。「時間をあげる。でも、私の友達を放してくれる? 私たちはあなたに何もしないから」
俺は彼女を解放したが、拳銃は手放さなかった。
「大丈夫」と、俺が人質にしていた女が言った。「どうせ弾は入っていないから」
俺は銃を見た。
弾倉を抜いた。
空だった。
一発も入っていなかった。
自分が馬鹿らしくなり、同時に失望した。撃てもしない銃のために、すべてを危険にさらしたのだ。
銃を返した。
「街へ行っちゃ駄目だ。感染者だらけだ。安全じゃない」
「いいえ。録音されたメッセージを聞いたの。まだ人がいるわ。大勢ね」とパウラが答えた。
「嘘だ! 俺はそこから来たんだ!」
自分でも思っていた以上に大きな声が出た。三人は緊張した様子になった。俺は深く息を吸い、気持ちを落ち着かせようとした。
「悪かった……」
数秒間、沈黙が続いた。そのとき、自分のナイフがマリアの手にあることに気づいた。彼女たちは素人には見えなかったが、何をすべきか正確に分かっているようにも見えなかった。俺と同じように、彼女たちも途方に暮れていた。
水と食べ物を分けてもらった。あまりに急いで食べたので、自分で止めなければならなかった。その後、彼女たちは街について話し始めた。そこには物資があるらしく、道路にとどまるよりも安全だという。
俺は言い争う気になれなかった。
「西へ行く必要がある。友達があっちにいるんだ」
パウラが俺を見た。
「川のほう? それで、どうしてここにいるの?」
「襲われて、川に落ちたんだ」
パウラは地図を取り出し、車のボンネットの上に広げた。
「分かった……。ここから十七キロくらいのところに分岐点がある。そこまで送れるわ。私たちはそのまま街へ向かう」
それが俺にとって最善の選択だった。
「分かった」
移動中、彼女たちは自分たちのことを少しずつ話してくれた。パウラは四十一歳、マリアは二十六歳、フアナは十七歳だった。彼女たちも物資に余裕があるわけではなかった。道路から二キロほどのところにスーパーマーケットを見つけていて、食料を手に入れるため、そこに立ち寄るつもりだった。
到着すると、パウラは車のエンジンを切った。
彼女は拳銃を取り出し、残りの二人はナイフを手に取った。
「ここで待っていて」とパウラが言った。「まだあなたを信用していないから」
「手伝える」
「あなたの助けは必要ないわ。そこにいて」
彼女たちは店の中へ入っていった。
五分が過ぎた。
そのとき、叫び声が聞こえた。
俺は走り出した。
スーパーマーケットに入ると、感染者が三体いた。一体がフアナの上に覆いかぶさっていた。マリアは完全に硬直しており、パウラは銃を構えていたものの、フアナに当ててしまうのが怖くて撃てずにいた。
考えている時間はなかった。
マリアに近づき、ナイフを奪ってフアナのもとへ走った。感染者の服をつかみ、全力で引っ張った。そいつは後ろへ倒れ、起き上がろうとしたが、俺は足で地面に押さえつけ、頭にナイフを突き立てた。
残りは二体。
棚が並ぶ通路を、ゆっくりとこちらへ進んできた。
二体目が俺に近づいてきた。そいつを引きつけ、目にナイフを突き刺した。倒れたが、刃が頭蓋骨に引っかかって抜けなくなった。引っ張ったが、びくともしなかった。
最後の一体は、三メートルほど先にいた。
時間がなかった。
ナイフのことは忘れた。
まだ膝をついたまま、そいつの腰をつかんだ。乱暴に持ち上げて床に叩きつけ、頭を潰そうとした。
それだけでは足りなかった。
額を押さえ、頭を床に叩きつけた。
一度。
二度。
三度。
動かなくなるまで、何度も叩きつけ続けた。
数秒間、その上に覆いかぶさったまま、荒い息をしていた。
三人はまだ動けずにいた。
フアナを見た。
ひどく出血していた。腕には深い切り傷があった。
立ち上がった。全身が血まみれで、手が震えていた。一言も発さず、二体目の感染者の頭に刺さったままのナイフを回収し、車へ向かった。
腹が立っていた。
彼女たちに、というわけではない。
この状況に。
何をしているのかも分からないまま、あんな場所に入っていったことに。
すべてに。
車に戻ると、彼女たちは水と布でフアナの傷をきれいにした。車内は血で汚れていた。フアナはひどくめまいを起こし、動揺していた。残る二人は、彼女を落ち着かせようとしていた。
「大丈夫。少し痛むかもしれないわ」とパウラが言った。「気を失っても、無理に起きていようとしないで。そのほうがいいから」
パウラは針を取り、糸を通して、傷を縫い始めた。
フアナはもう耐えられなかった。
気を失った。
彼女が意識を失っている間も、残る二人は処置を続けた。十分後には傷を縫い合わせ、消毒し、ガーゼを当て終えていた。
俺は血まみれの自分の手を見つめながら、黙って座っていた。
やがてパウラが近づいてきた。
「助けてくれてありがとう。ナイフを奪われたとき、私たちまで襲われるんじゃないかと思ったわ」
「行こう。スーパーマーケットから持てるだけ持って、ここを離れるんだ」
それから、俺たちは再び移動を始めた。
道中、パウラに医療の知識について尋ねた。
「医者なのか?」
「看護師よ。独学で覚えたの」
それで、あの傷の処置ができた理由が分かった。
俺たちは分岐点へ向かい続けた。到着すると、パウラは車を止め、俺が進むべき道を指さした。
「ここでお別れね。あなたは右へ行くんでしょう?」
「そうだ」
「助けてくれてありがとう。あなたが助けてくれなかったら、フアナは生きていなかったわ。目的地まで行けるように、食料と水を入れたリュックを渡すわね」
彼女たちは、俺たちがブリサと出会った街へ向かうつもりのままだった。
「まだ間に合う。あそこへ行くのはやめてくれ。俺たちは仲間と一緒に東へ向かっている。安全な場所まで連れていってくれる飛行機があるんだ。一緒に来てくれ」
パウラは首を横に振った。
「ありがとう。でも、私たちは行かなきゃならないの。意地を張っているわけじゃない。あそこに家族がいるのよ」
俺は渡されたリュックを持って車を降りた。
ドアを閉めようとしたとき、フアナが車から降りてきた。
「あっ、このナイフ、あなたのよね」
彼女はそれを手渡してくれた。
別れを告げるためにも、降りてきたのだった。
「スーパーマーケットで助けてくれてありがとう。最初は怖かったけど、今はもう大丈夫」
俺はうなずいた。
「名前を教えてくれなかったよね」
数秒間、地面を見つめた。
「ジェイコブだ」
フアナは微笑んだ。
彼女は車に戻り、三人は窓越しに手を振ってくれた。走り去るときには、クラクションまで鳴らしてくれた。
「また会えるといいね!」
俺も片手を上げた。
それから再び歩き始め、途中で休憩を挟みながら数時間進むと、小さな町のような場所にたどり着いた。車を見つけられればいいと思い、いくつかの家のガレージを調べ始めた。道路には車が一台もなかったが、まだ動くものが残っているかもしれなかった。
太陽は最後の光で、町をかろうじて照らしていた。
ある家に近づくと、ガレージのドアの窓越しにバイクが見えた。開けようとしたが、鍵がかかっていた。別の入り口を探したものの、結局、窓を割って家の中へ入った。
物音に注意を払いながら、ゆっくりと室内を進んだ。部屋の中で感染者に出くわしたくはなかった。家中を探してバイクの鍵を見つけようとしたが、見つからなかった。引き出しやテーブル、普段なら鍵を置きそうな場所まで調べた。それでも何もなかった。
ガレージへ向かった。
そこにもなかった。
立ち去ろうとしたとき、外からうなり声が聞こえた。
振り返った。
感染者が家の近くを歩いていた。
黒いバイク用ヘルメットをかぶり、革のジャケットを着ていた。
そいつが目の前を通り過ぎるのを待ち、背後から近づいた。ヘルメットを脱がせ、首の後ろにナイフを突き刺した。
そいつは地面に倒れた。
ポケットを調べた。
鍵が見つかった。
ガレージへ戻り、バイクに鍵を差し込んでみた。
使えた。
久しぶりに、安堵に似た感情が込み上げてきた。
寒かったので、革のジャケットとヘルメットを手に入れた。それから、放置されていた車からホースを使って燃料を抜き、バイクのタンクを満たした。
家の中で地図を見つけた。
シートの上に広げ、山小屋へ戻るために進むべき道を頭の中で確認した。
それからバイクのエンジンをかけた。
静寂の中に、エンジンの唸りが響いた。
暗闇の中を走る危険を避けるため、その晩はそこで過ごすことにした。
10月1日――隔離令発令から十五日目。
そして翌朝、俺は旅を再開した。
ヘルメットをかぶり、山小屋へ続く道に入った。
川に落ちてから、どれくらいの時間が経ったのか分からなかった。正確な時刻も分からなかった。ただ、戻りたいという気持ちだけは確かだった。
山小屋まであと百メートルほどのところで、道の向こうから車が近づいてくるのが見えた。
見覚えのある車だった。
デレクだ。
俺が横を通り過ぎると、ほとんど同時に、俺たちは互いにブレーキをかけた。
「デリバリーです! ピザを注文した人はいますか?」俺は笑いながら言った。
ドアが開いた。
最初にデレクが降りてきた。
そのあとにブリサが見えた。
そして、サムがいた。
バイクから降りる力さえ残っていなかった。
デレクとサムが俺に向かって駆け寄ってきた。
ブリサも車から降りてきた。
数秒間、俺はただ彼らを見つめていた。
みんな、生きていた。
彼らも俺を見つめていた。
本当に俺がそこにいるなんて、信じられないというように。
デレクが力いっぱい俺を抱きしめた。
サムは泣いていた。
俺も何か言おうとしたが、息をするのがやっとだった。
あれほどのことがあったあと、森の中で一人きりで死ぬかもしれないと思いながら何時間も過ごしたあとで、再びみんなに会えた。それだけで十分だった。
何も言う必要はなかった。
俺は戻ってきた。




