XXX — 再び一緒に
まもなく出発するので、また状況を知らせる。
11月4日 — 隔離命令から50日目
日記に、これまでに起きたことをすべて書き終えた。あの日々に起きたすべてを、これで閉じ込めようとするかのように、僕は慎重にノートを閉じた。それをリュックにしまい、しばらくの間、その上に両手を置いたままじっとしていた。
それから、左手に目を向けた。
右手で左手を支えながら、ゆっくりと指を動かし、火傷の跡に残ったざらついた傷痕をなぞった。この間ずっと、その傷の手当てをしてくれていたのはローラだった。彼女はいつも時間を見つけては包帯を確認し、痛みがあるか尋ね、ガーゼを交換してくれた。
今は、自分で何とかするしかない。
そして、もう誰も僕の手の具合を尋ねてはくれないのだと分かっていた。
車の窓に頭をもたせかけた。外では森が速い速度で流れていった。淡い夜の光に照らされた松の木々が左右へと滑るように過ぎ去り、長い影を作っては幹の間に消えていった。
前方では、二人の兵士が小声で話していた。
僕の隣にはデレク、ブリサ、サムがいた。後方を走る車列には、エミリーとクラウディオがほかの兵士たちと一緒に乗っていた。
エンジンがうなり、森が目の前を流れ続けるなか、数分が過ぎた。そのとき、助手席の兵士が持つ無線機から、雑音が弾けるように鳴った。
「こちら司令部、地上部隊ILA-3へ。指示を変更する。北海岸にあるベータ5キャンプへ向かい、生存者の有無を確認せよ。キャンプとの通信が途絶えた。最後に派遣した分隊とも連絡が取れなくなっている」
兵士はマイクを手に取った。
「こちらILA-3。了解。連絡が途絶えた分隊の識別情報を求む」
短い沈黙があった。
「タバタ・ベネット軍曹の分隊だ」
それまで、僕は無線の内容に注意を払っていなかった。
頭はあまりにも遠くにあった。失ったもののすべてに囚われていたのだ。だが、その名前を耳にした瞬間、胸の奥で何かが突然燃え上がった。
僕は無線機へ顔を向けた。
「繰り返す。タバタ・ベネット軍曹の分隊は、ベータ5キャンプの状況を確認するために派遣された。現在、連絡が途絶えている。生存者を捜索し、空港へ撤退せよ。命令を確認せよ」
兵士が応答した。
「こちらILA-3、命令を確認」
車両は道路脇に停車した。
兵士たちは降り始め、武器や地図を確認した。僕も車から降り、隊長のところへ近づいた。
「そのキャンプはどこにあるんですか?」
隊長は冷ややかな目で僕を見た。
「その情報は機密事項だ」
「僕はタバタ・ベネットと一緒にいました」と答えた。「数日前に陥落した軍事基地で。あなたたちのために、ケースを回収するのも手伝いました」
隊長は数秒間、僕を観察した。嘘をついているのか見極めようとしていた。
やがて、彼はため息をついた。
「ベータ5は北海岸近くにある小規模な軍事キャンプだ。最初の数日間に船で脱出した難民を救助するために設置された。多くの船が海岸近くで座礁し、救助を求め始めたからな」
彼は地図を指さした。
「キャンプは救助拠点として機能していた。そこから民間人をレッドウッドの街へ移送していた」
その名前には聞き覚えがあった。
「レッドウッドは感染者であふれている」と隊長は続けた。「だが、解決策は見つけた。街の地下には古い排水路がある。トンネルは五本。そのうち、実際に使っているのは二本だ。一つは海岸につながり、もう一つは街の入口につながっている」
別の兵士が地図を広げた。
「トンネルの出口は空港から約1キロの地点にあります。おかげで、街全体を横断せずに民間人を移動させられました」
僕は地図を見つめた。
「僕も一緒に行きたい」
兵士の一人が首を横に振った。
「トラックではベータ5へ続く未舗装路を通れない。感染者が多すぎるうえ、地形も厄介だ。少人数のチームで行く必要がある」
「なら、そのチームに加えてください」
隊長はしばらく僕を見つめた。
「武器の扱いは分かっている。それに、ベネット軍曹とも面識がある」
彼はうなずいた。
「よし。同行を許可する」
トラックは道路脇に停車したまま、数人の兵士と僕の仲間たちによって警護されることになった。
ハンヴィーに乗り込もうとしたとき、デレクが僕の肩を軽く叩いた。
「気をつけろよ」
「ああ」
エンジンがうなり、僕たちは出発した。
三十分後、森が開け始めた。空はすでに明るくなり、夜明けの光が道を照らしていた。そして、ようやくベータ5キャンプに到着した。
何かがおかしかった。
周囲にいる感染者が、あまりにも少なかった。
少なすぎる。
僕たちは感染者を手早く排除し、基地の内部へ進んだ。
施設は驚くほど原形を保っていた。監視塔はまだ立っており、軍用テントも張られたままだった。何台かの車両も、最後に停められた場所にそのまま残っていた。
だが、地面に転がる遺体が、すべてを物語っていた。
死んだ兵士たち。その中には感染者に変わった者もいれば、そうでない者もいた。
僕は遺体の一つのそばにしゃがみ込んだ。
銃創はなかった。
顔は完全にひどく損壊していた。まるで何かが素手で引き裂いたかのようだった。数メートル先には、胸を切り開かれ、腕を引きちぎられた別の遺体があった。
背筋に冷たいものが走った。
僕はゆっくりと立ち上がった。
「危険です」
隊長が眉をひそめた。
「なぜだ?」
僕はもう一度、遺体を見た。
「普通の感染者がやったことじゃありません」
あの傷痕を、僕はよく覚えていた。
「ここにはリーパーがいる」
隊長は信じられないという顔で僕を見た。
「それは何だ?」
僕は答える前に深く息を吸った。自分の目で見たことのない人間にとって、これから話すことがどれほど馬鹿げて聞こえるか、分かっていた。
「以前、遭遇したものです」と僕は言った。「普通の感染者とは違います」
地面に横たわる、損壊した遺体を指さした。
「これを研究していた科学者が、死ぬ前に説明してくれました。そこら中で見かける普通の感染者……真菌が人間だった頃の能力の半分にも満たない部分しか奪っていないそうです。五十パーセントか、それ以下ということです。でも、リーパーは違う。人間の能力の八十パーセント以上を持っています。僕たちと同じように走り、同じように登る。疲れないし、眠らない……殺すためだけの機械です」
周囲の兵士たちは黙って話を聞き、気まずそうに互いの顔を見合わせた。
隊長は数秒間考えた。
「なら、撤退するのが最善だろう」
僕は首を横に振った。
「いいえ。タバタの分隊がここにいるかどうか、確認しなければなりません。生きていても、死んでいても」
そのとき、キャンプの反対側から兵士の叫び声が聞こえた。
「隊長! こちらに地下壕があります!」
僕は彼のほうを振り向いた。
「地下壕?」
隊長はキャンプの中央付近にある、半ば地中に埋まった低いコンクリート構造物を指さした。
「この場所は古い地下壕の上に建てられている。医療区画と小規模な指揮所がある。そのため、ここにキャンプが設置されたんだ」
「なら、そこへ行きましょう」
隊長はためらったが、最後にはうなずいた。
「慎重にな」
兵士の一人が入口に残って警戒し、僕たち四人は地下へ降りることになった。動かなくなっていた重い鋼鉄の扉を押し続け、ようやく開けた。
中は完全な暗闇だった。
僕たちはライフルに取り付けられたライトを点灯させてから、階段を下りた。
最初に気づいたのは、臭いだった。
強い金属のような臭い。
廊下には遺体があふれていた。至るところに兵士の死体が転がっていた。まだゆっくり動いている感染者も何体かいたため、僕たちはナイフで静かに始末した。ここにいるほかの何かに気づかれないようにするためだった。
僕たちはゆっくり進み、部屋や遺体、装備を調べながら、タバタの分隊や生存者の手がかりを探した。
だが、見つかるのは死ばかりだった。
数分後、廊下の突き当たりにある医療区画へたどり着いた。
扉は内側から閉ざされており、二人の兵士がかりでこじ開けなければならなかった。
ようやく扉が開くと、懐中電灯の光が壁にもたれて座る男を照らした。
彼は血まみれだった。
呼吸は苦しそうだった。
それでも、生きていた。
隊長が近づいた。
「身分を名乗れ」
兵士は苦労して顔を上げた。
「ダニエル・ハリス伍長……です、閣下……」
「ここで何があった?」
男は唾を飲み込み、力を振り絞ろうとした。
「分かりません……突然現れたんです……普通とは違う何かが……もっと強いものが……全員を殺し始めました。食べることも……感染させることもなく……ただ殺していったんです」
隊長は眉をひそめた。
「今はどこにいる?」
兵士は僕たちの背後にある、暗い廊下へ目を向けた。
「ここに……中にいます」
その瞬間、地下壕の入口から銃声が聞こえた。
短い連射音。
続いて、見張りに残っていた兵士の、痛みに引き裂かれるような叫び声が響いた。
そして、その直後、僕には一瞬で分かる甲高い叫び声が聞こえた。
ひどく恐ろしい、耳をつんざくような叫びだった。脳が危険を理解するより先に、全身の肌が粟立つような声だった。
「奴だ……」負傷した兵士がつぶやいた。
僕たちは全員、ライフルを構えて廊下に照準を合わせた。
銃声の反響が、トンネルの中でゆっくりと消えていった。
数秒間、聞こえるのは僕たちの呼吸だけだった。
やがて、廊下を何かが走ってくる音が聞こえ始めた。
あり得ないほどの速さだった。
荒々しく重い呼吸音が、壁を震わせているように響いた。
兵士の一人が、目に見えて怯えながら後ずさりした。
「駄目だ……俺はここから逃げる……」
隊長が止めるより先に、彼は廊下へ駆け出した。
「持ち場に戻れ!」隊長が叫んだ。
だが、怪物のほうが早かった。
リーパーが暗闇から現れ、反応する間もなく兵士を空中で捕らえた。
指が男の胸に深く食い込み、まるで重さなどないかのように地面から持ち上げた。
兵士は、怪物に片手でつかまれたまま叫んだ。
次に、怪物はもう一方の手を男の首にかけ、凄まじい力で頭を体から引きちぎった。
遺体が地面に落ちた。
怪物は僕たちを見て、咆哮した。
僕たちは同時に発砲した。
弾丸が胴体に命中しても、怪物は凶暴な速度で突進してきた。
一秒後には隊長の目前に迫り、凄まじい一撃を叩き込んで壁に吹き飛ばした。
続いて僕に向き直り、手の甲で殴りつけた。まるでハンマーで殴られたかのように、僕は床へ叩きつけられた。
もう一人の兵士が撃とうとしたが、リーパーはそれよりも早く彼に追いついた。
腕をつかみ、一気に引きちぎると、痛みに叫ぶ男を床へ投げ飛ばした。
隊長と僕は、ほぼ同時に立ち上がった。
「脚を狙え!」僕は叫んだ。
僕たちは再び発砲した。今度は低い位置を狙った。
弾丸が膝や足に命中し、怪物のバランスを崩した。
リーパーは怒りのうなり声を上げながら前のめりに倒れた。その瞬間、僕たちは弾倉が空になるまで、頭に向けて撃ち続けた。
ようやく動かなくなった。
腕を引きちぎられた兵士は、数秒後、床に血を流しながら息絶えた。
ハリス伍長はまだ生きていたが、ほとんど意識がなかった。そこで隊長と僕は二人で彼を持ち上げ、肩を貸し合うようにして支えた。
医療区画を出て、階段へ向かって走った。
地下壕の入口にたどり着くと、最初に見張りをしていた兵士が見つかった。
彼は死んでいた。
扉のそばに倒れ、ライフルをまだ手に握っていた。
外では、夜明けの光がすでにキャンプを照らしていた。
外周の柵には感染者が何体も集まり、戦闘の音に引き寄せられて中へ入ろうとしていた。
彼らはまだ突破できていなかった。
僕たちはハンヴィーまで走り、車内へ飛び込んだ。
エンジンがうなり、土埃を巻き上げながらキャンプを離れた。隊長は信じられないという顔で後方を見つめていた。
「一体、何だったんだ……?」彼はつぶやいた。「一体、何だったんだ?」
ハンヴィーは、トラックと仲間たちを残してきた地点へ向かって加速した。
帰り道、誰も口を開かなかった。
僕の胸には、まだ衝撃の痛みが残っていた。防弾ベストのおかげで肋骨が折れることはなかったが、呼吸するたびに、十分すぎるほど強い痛みが存在を主張していた。
ようやく車列のトラックが停まっている道路に到着すると、車両は急ブレーキをかけた。
僕たちはほとんど同時に降りた。
僕が地面に足をつけると、何人かの兵士が駆け寄ってきた。部隊の衛生兵の一人が、開いたリュックを背負ってまっすぐこちらへ向かってきた。
「傷を見せてください」
彼はまず、最も状態の悪いハリス伍長を診た。
その後、隊長と僕を調べた。
僕の胸に防弾ベスト越しに手を当て、打撲の具合を確かめた。
「打撲だけです」と、彼はようやく言った。「ベストが衝撃のほとんどを吸収しました」
僕は何も言わずにうなずいた。
そのとき、仲間たちが近づいてくるのが見えた。
サム、デレク、ブリサ、エミリーが、緊張した顔でこちらへ歩いてきた。
「何があった?」デレクが尋ねた。
僕はキャンプで見つけたものを、簡単に説明した。遺体、地下壕、そして怪物のこと。
詳しいことまでは話さなかった。
僕の顔を見れば、簡単な出来事ではなかったと分かるはずだった。
サムは僕の全身を見た。
「噛まれたの?」
僕は首を横に振った。
彼女の顔から、少しだけ緊張が抜けた。
「よかった……」彼女は安堵して言った。
話していると、兵士の一人が隊長に近づく声が聞こえた。
「閣下、少し前に通信を受信しました」
それを聞いたサムは、僕が気づいたことに気づき、すぐにこちらを向いた。
「ジェイコブ……伝えなきゃいけないことがあるの」
僕は彼女を見た。
「何があった?」
サムは深く息を吸った。
「あなたが出発して数分後、無線通信を傍受し始めたの。少し歪んでいたけど……誰の声かは、はっきり分かった」
胸の奥が締めつけられた。
「タバタだった」
僕は勢いよく顔を上げた。
サムは続けた。
「彼女はまだ生きていると報告していた。分隊に残っていた人たちは、ベータ5キャンプが崩壊する前に、何人かの民間人を救出できたそうよ。彼らは海岸へ撤退し、海へ通じる下水トンネルから入った。レッドウッドの地下を通り、空港につながるトンネルまで民間人を連れていったの」
僕は黙って聞いていた。
「主要な飛行機はもう出発した」とサムが付け加えた。「でも、あと一機残っている。民間人のための最後の便よ。明日、出発する」
「タバタは?」
「彼女たち軍人は、二日後に出発する別の飛行機に乗るそうよ」
サムの話では、彼女は無線でタバタ本人とも直接話したらしい。通信を担当していた兵士はそれを止めようとしたが、タバタはサムの声を聞いた途端、彼を制止したという。
二人がどんな言葉を交わしたのか、一言一句までは教えてくれなかった。だが、大事なことは分かった。タバタは僕がそこにいると知っていた。僕がキャンプの近くで任務に出たことも知っていて、僕が生きて戻ってくると確信していたのだ。
問題は別にあった。
タバタが使っていたトンネルの出口、空港の近くに出る出口が、感染者で埋め尽くされていた。彼らは車を使って入口を塞いでいたが、突破されるのは時間の問題だった。
もし突破されれば、彼女たちは海岸へ向かい、別のルートを探さなければならない。
サムの話が終わると、僕は隊長のもとへ向かった。
「次はどう動きますか?」
隊長はトラックのボンネットに広げられた地図を見た。
「下水路からレッドウッドに入る。そのトンネルは街の地下を通り、空港の近くに出る。そこから君たちは民間機に乗れるはずだ」
僕は顔を上げた。
「あなたたちは?」
「我々の部隊は安全地帯へ撤退する。おそらくベネット軍曹の分隊と合流することになるだろう。その後、二日後に最後の軍用便で避難する」
僕はうなずいた。
「なら、すぐに出発しましょう」
隊長が命令を出した。
僕たちは装備をトラックに積み込み、車列はレッドウッドへ向けて動き始めた。
道のりは長かった。
混乱が始まった最初の日々から放置された車両や即席のバリケード、感染者の集団を避けるため、脇道をゆっくり進みながら、街に到着するまでほぼ三時間かかった。
ようやく指定された地点に着くと、高い建物に挟まれた狭い路地で停車した。
「ここだ」と隊長が言った。
僕たちは車両から降り、リュック、武器、懐中電灯など、装備をすべて持ち出した。
そこから排水システムの入口の一つへ向かった。
重い金属の蓋を持ち上げ、一人ずつ下へ降りた。
臭いはひどかった。
だが、耐えられないほどではなかった。
懐中電灯を点け、歩き始めた。
暗い水路を進む間、足音がトンネルの中で反響していた。ほぼ一時間、僕たちは立ち止まることなく地下道を進み、壁沿いを流れる水の遠い音を聞いていた。
あるとき、サムが僕の隣に並んだ。
「私たち、やり遂げたね」と彼女は小声で言った。「あとはタバタと再会して、空港に着いて、あの飛行機に乗るだけ」
僕は彼女を見た。
そして、久しぶりに笑った。
「ああ……もう大丈夫だ」
僕たちは進み続けた。
そのとき、遠くに、トンネルの暗闇の中で暖かな光が見えた。
トンネルの出口に光を見た瞬間、すぐに分かった。
彼らだ。
タバタの分隊だった。
僕は何も言わず、走り始めた。
疲れも、胸の痛みも考えなかった。
ただ、その光に向かって走った。
背後では、僕が急に速度を上げたのを見て仲間たちも動き出し、走り始める音が聞こえた。車列の兵士たちも僕たちの後を急ぎ、湿ったトンネルの壁に足音が反響していた。
通路はさらに数メートルまっすぐ続いていたが、光は左側の分岐から差し込んでいた。
僕は速度を落とさず、そちらへ曲がった。
そして、目にした。
接続路だった。
レッドウッドの地下を通り、海岸から空港へとつながるトンネル。
タバタが民間人を避難させるために使った、あのトンネルだった。
しかし、二つの側の間には障壁があった。
太い鉄格子が、コンクリートに深く埋め込まれていた。
動かすことは不可能だった。
そして、その向こう側に彼女がいた。
タバタは格子のそばに立っていた。僕たちの足音が反響して聞こえたため、誰が来たのか確かめようと近づいてきたのだ。
僕が通路から姿を現すと、彼女の表情がすぐに変わった。
彼女は笑った。
安堵に満ちた、大きな笑顔だった。
胸の奥で何かが壊れるのを感じた。
僕は格子まで走った。
彼女も素早く近づき、鉄格子の前にたどり着くと、僕たちは同時に腕を伸ばした。
思いどおりに抱きしめることはできなかった。間には金属があった。
それでも、僕たちは格子の隙間から腕を差し入れ、強く抱きしめ合った。
何も言えなかった。
何かを話そうとした。何でもいいから、言葉を口にしようとした……
でも、声が出なかった。
涙だけが出てきた。
止めようとしても、次々と頬を伝って落ちた。
タバタの目も潤んでいた。唇の端にある特徴的な傷痕を浮かべた笑顔で、隠そうとしていたけれど。
「エミール……ローラ……」僕は、どうにか言葉を絞り出した。
彼女は優しく僕を遮った。
「ええ。分かってる」
悲しみと愛情が入り混じった目で、僕を見つめた。
「全部、分かってるわ」
脚から力が抜けていくのを感じた。
僕は格子の前に膝をつき、彼女も腕を離さないまま、向こう側で同じように膝をついた。
「もう終わったわ」と彼女は小声で言った。「全部、終わったのよ」
その声は力強く、それでいて優しかった。
「よく頑張ったわ、ジェイコブ。できる限りみんなを守った。無理だと思える状況でも生き延びた。エミールのことも……ローラのことも……エンリケ、ロサ……失ったみんなのことも……あなたのせいじゃない」
僕は首を横に振ったが、彼女はさらに強く僕の腕を握った。
「聞いて」と彼女は言った。「あなたにできることは全部やったの。もう休んでいいのよ」
僕は深く息を吸い、気持ちを落ち着かせようとした。
「飛行機は……?」
タバタはうなずいた。
「明日の朝、空港に到着するわ。キャンプにいる民間人が先に乗る。その数時間後に、あなたたちが乗る。それが民間人の最後の避難便よ」
安堵と空虚さが入り混じった、不思議な感覚がした。
「君は……?」
彼女の笑顔が少し柔らかくなった。
「私たちはあの飛行機には乗らないわ。二日後に、残っている軍部隊を回収するヘリコプターが来るの」
「なら、僕も君と一緒に行く」と、考えるより先に口にしていた。
タバタはすぐに首を横に振った。
「駄目」
「タバタ……」
「駄目よ、ジェイコブ」と彼女は落ち着いて繰り返した。「私だってそうしたいけど、許可できない。あなたたちが空港へ向かう頃には、このトンネルは安全ではなくなる。私たちは海岸へ出て、別の回収地点を探さなければならないの」
彼女は僕の目をまっすぐに見つめた。
「私を探すためだけに、もう一度レッドウッドを横断してほしくない」
彼女はため息をついた。
「二日……もしかしたら三日。そうしたら基地で会いましょう」
そのとき、仲間たちが僕の後ろに到着した。
最初に格子へ近づいたのはサムだった。
「タバタ……」
「サム」と彼女は安堵した声で答えた。「みんなに会えてうれしいわ」
ブリサ、デレク、エミリー、クラウディオも近づいてきた。
「あなたたちが失った人たちのこと、本当に残念に思うわ」と彼女は言った。「でも、ここまでたどり着いた。あなたたちはやり遂げたのよ」
そのとき、隊長も近づいてきた。
彼とタバタは、真剣な表情で挨拶を交わした。
「向こう側へ行けないのは残念だ」と隊長は言った。「だが、どうやら我々には、まだやるべきことがあるらしい」
タバタはうなずいた。
「ええ。朝になったら海岸へ向かい、安全なルートを探すわ。あなたたちも同じように行動して。いずれまた会いましょう」
隊長は踵を返し、ほかの兵士たちのところへ戻っていった。
タバタの後ろには、彼女と同じ軍服を着た分隊の兵士たちが見えた。男女が入り混じり、何人かは負傷していた。全員が疲れ切っていた。
「食料はあるのか?」僕は尋ねた。
タバタは小さく笑った。
「十分あるわ。何でもかんでも心配するのはやめて」
それから、少し優しい表情で僕を見た。
「座って。休んで、少し眠って。体力を回復する時間は一日あるわ……それに、話す時間もね」
彼女は鉄格子の間から僕の手を優しく握った。
「明日、太陽が昇ったら……あなたたちはここを出て、空港へ向かうのよ」
タバタと僕は、トンネルのそれぞれの側で床に座った。僕は湿った壁に背を預け、左肩を格子に近づけた。彼女も向こう側で同じように右肩を寄せた。
冷たい金属が僕たちの間にあったが、それでも、できる限り近くにいられた。
格子の隙間から腕を伸ばし、手を握り合ったまま、しばらく黙って座っていた。これまでに経験したすべての重みを感じながら。
タバタは、火傷した僕の手に残る傷痕を、指先でそっとなぞった。
彼女の触れ方は慎重だった。
最初、彼女は何も言わなかった。
聞こえるのは、トンネルの中を流れる水の遠い響きと、後方にいる兵士たちの小声だけだった。
その後、僕たちは話し始めた。
彼女は、最後に会ってから何があったのかを教えてくれた。彼女の部隊が僕を撃たずに済むよう、僕をキャンプに残していった後、彼女たちは北へ向かったという。あの基地とベータ5キャンプの間にある、即席の小さな軍事拠点を見つけた。防御は手薄だったが、そこに二日ほど留まってから、再び移動した。
その後、ベータ5に到着し、しばらく滞在した。そして、生存者を探すため、海岸へ向かい始めた。
それから、すべてが崩壊した。
キャンプは襲撃され、彼女たちはトンネルへ撤退しなければならなかった……その先のことは、もう僕も知っていた。
彼女が自分の話を終えると、僕を注意深く見つめた。
今度は僕がすべてを話した。
見つけた犬のこと。建物から飛び降りて自殺した少年のこと。道でデレクの残した看板を見つけたこと。そして、仲間たちと再会した瞬間のこと。
エミール、ロサ、エンリケ、ローラの死についても話した。
橋のこと、トンネルのこと、最後に会ってから起きたことを、一つ残らず伝えた。
何も省かなかった。
僕が顔を上げるたび、彼女の目に涙が浮かんでいるのが見えた。
声を上げて泣いてはいなかったが、潤んだ瞳が、彼女の感じていることをすべて物語っていた。
「あなたが恋しかった」と、ついに彼女は小さな声で言った。
彼女は格子の間で僕の手を、もう少し強く握った。
「あなたが何をしているのか、一日だって考えない日はなかったわ」
彼女の視線が、最後に会ったときに僕へ渡したシュマグへと落ちた。
「ちゃんと身につけているのね」
「ああ」と僕は答えた。「でも、もう君の匂いは残っていない」
彼女はかすかに笑った。
「今は別のものを使っているんだな、と僕は言った。
「リュックに何枚か入っているわ」と彼女は答えた。「傷痕を人に見られたくないの」
「それでも、ここに着いたときはスカーフを下ろしていた」
「どうしてそうしたのか、自分でも分からない」と彼女は答えた。「傷痕を見せるのは恥ずかしい……でも、あなたを見たときは、無意識にそうしていたんだと思う。その後、あなたの仲間や隊長が来たときには、また上げたわ」
僕たちは、もうしばらく黙っていた。
気づかないうちに、時間が過ぎていった。
トンネルで話す声が少しずつ静まり、やがて夜がその場所を包んだ。水の流れる音とトンネルの反響が、僕たち全員に積み重なった疲労と混ざり合っていた。
いつの間にか、僕たちは眠りに落ちていた。
格子を挟んだまま、壁にもたれて座っていた。それでも、金属越しに相手の重みを感じられるほど、互いに寄り添っていた。
銃声が、僕たちを眠りから引き戻した。
僕は目を見開いた。
「今のは何だ?」
タバタはすでに立ち上がり、彼女側のトンネルの奥を見つめていた。
彼女の分隊の兵士たちが、空港へ続く暗い通路に向かって発砲していた。
「ジェイコブ……」彼女は不安と悲しみの入り混じった声で言った。「私たちは行かなきゃ」
僕はすぐに立ち上がった。
「どうしたんだ?」
「向こうから感染者が大量に近づいてきているの」と、彼女はM4を手に取りながら答えた。「海岸へ引き返さなければならない」
彼女は最後にもう一度、僕を見つめた。
「空港に着くと約束して。二日間、私を待っていて。浜辺から出て、安全な場所を探すわ」
僕はうなずいた。
「また会おう」
彼女は一瞬ためらい、それから笑顔を浮かべたまま、格子の間で僕の手を強く握った。
「三日後に……」
その後、彼女は振り返り、分隊のもとへ走っていった。
ほんの数秒後、感染者たちがトンネルに姿を現し始めた。
何体かが、僕を見つけると格子に激突し、うなり声を上げながら手を伸ばしてきた。
ほかの感染者たちは、すでに撤退を始めていたタバタたちのいる通路の奥へ進み続けていた。
隊長が僕のところへやってきた。
「移動するぞ」と彼は言った。「別の群れに囲まれる前にな」
僕は、タバタが姿を消したトンネルを最後にもう一度見つめた。
それから、うなずいた。
僕たちは自分たちがいる通路を進み続けた。
懐中電灯を掲げて歩くうちに、水路はゆっくりと右へ曲がり始め、タバタがいたトンネルから遠ざかっていった。
数分後、出口を示す標識が見え始めた。
ようやく、地上へ通じるハッチにたどり着いた。
慎重に蓋を開け、一人ずつ地上へ出た。
外では、夜はまだ静かだった。
道路に停められた二台の軍用ハンヴィーが目に留まった。
「あなたたちの車ですか?」僕は隊長に尋ねた。
「そうだ」と彼は答えた。「前回このトンネルを使ったとき、ここに置いていったものだ。明日はこれで空港へ向かう」
隊長は人影のない道路を見渡した。
「角の家に避難しよう。今夜はそこで過ごす。明日の朝、空港へ向かう」
僕たちはライフルを構え、角を一つずつ警戒しながら進んだ。
いくつかの路地から遠いうなり声が聞こえてきたが、誰にも遭遇しなかった。
家に入り、扉を閉め、窓を固定した。
「休め」と隊長が命じた。「交代で見張りを立てる。六時に空港へ出発する」
僕は居間にあった木製のテーブルに座った。デレクとサムもそばにいた。
しばらく話を続けたが、やがて眠気が二人を襲い始めた。
サムは部屋の隅にあった古いマットレスに横になり、ほとんどすぐに眠りに落ちた。
デレクはもう少しだけ起きていて、僕と小声で話していたが、最後には疲労に負けて眠ってしまった。
僕だけは起きていた。
タバタのことが心配だった……
それでも、同時に安心していた。
彼女なら、きっと切り抜けると分かっていた。
いつだって、そうしてきたのだから。
僕はリュックから日記を取り出した。
そして、その日に起きたことをすべて書き始めた。眠気が僕を襲い始めるまで。
最後の一行を書き終え、ノートを閉じた。
たぶん、明日は書けないだろう。飛行機の中では、なおさらだ。おそらく、軍事キャンプでタバタと再会したときに、また書くことになる。
きっと、すべてうまくいく。
いや……
そうなると確信している。
まもなく出発するので、また状況を知らせる。




