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XXVIII — バス

いつになったら、少しでも平穏な時間を過ごせるんだろう……?


11月2日 — 隔離命令発令から48日目

森の鳥たちのさえずりが遠くから聞こえるなか、日の出とともに新しい一日が始まった。これまでに起きたことを思えば、あんなにも生き生きとした音を耳にするのは不思議だった。誰もあまり話さなかった。みんなの目には冷たさと疲労が浮かび、口にする言葉も少なく、低く乾いた声で発せられた。僕たちは全員、同じ重荷を背負っていた。ローサとエミールを失った悲しみは、まだあまりにも生々しかった。

残念ながら、そこにとどまるわけにはいかなかった。食料は乏しく、時間を無駄にする余裕もなかった。空港までは、あと数日という距離だった。ハンヴィーの燃料をさらに確保できれば、数日の余裕を持って到着できる。そうでなければ、歩いてぎりぎり間に合うか、あるいは手遅れになるかもしれない。そんな危険を冒すわけにはいかなかった。

僕たちは急がず、それでも立ち止まることなく出発の準備を整えた。出発する前に、僕は最後にもう一度エミールの墓標へ近づいた。その前にひざまずき、家の庭から摘んできた花を一輪置いた。しばらく黙ったまま、できる限りの別れを告げた。別れを告げたからといって傷が癒えるわけではない。それでも、少なくとも再び歩き出す助けにはなる。そうわかっていた。


「準備できたぞ、ジェイコブ」と、リュックと武器を手にしたデレクが近づいてきて言った。

「行こう」

クラウディオが運転席に座った。ほかの僕たちは狭い車内に押し込まれ、居心地の悪さと、これまでに起きたすべてのことがもたらす精神的な重みに耐えていた。

「もうそんなに遠くない」と、デレクは道に集中しながら言った。

ローラは窓の外を眺めていた。

「これまでのことを考えると、軍人をまだ信じられない……」

「そう思うのも当然だ」とクラウディオが答えた。「一人でも見つけたら、俺が殺す」

ローラはゆっくりと彼の方を向いた。

「それは、ちっとも安心できる発言じゃないわね」

「誰かを安心させるためにここにいるわけじゃない」

「それはもうわかってるわ」と彼女が小声でつぶやいた。

エミリーは視線を落とした。

「でも、到着したら何が待っているんだろう?」

デレクは数秒考えてから答えた。

「わからない。でも、きっと今よりはましだ。置いてきたものよりひどいことなんて、そうそう起きないだろう」

エンジンが数秒間うなり続けたあと、サムが沈黙を破った。

「話は変わるけど、食料があまり残ってない。今日一日もつかどうかってところだよ」

「確かに」とローラが言った。「道路沿いのスーパーに寄らないと」

ブリサは地図に目を落とし、両手でそれを支えた。

みんなが僕の返事を待っていることはわかっていた。車内に生まれた沈黙から、それを感じていた。でも、僕の頭は別の場所にあった。記憶に囚われ、まともに考えることができなかった。心配そうな視線を感じたが、誰も僕を急かさなかった。誰も無理に答えを求めなかった。みんなは黙って進み続けることを選び、僕が考えを整理し、ようやく口を開けるようになるまでの時間を与えてくれた。

僕たちは再び東へ向かって道路を進み続けた。燃料計の針は一キロ進むごとに下がり、それと同じように不安も膨らんでいった。誰も何も言わなかったが、みんな横目で燃料計を見て、もう少しだけ持ちこたえてくれることを願っていた。

突然、車体がガクンと揺れた。

エンジンが止まった。

速度は少しずつ落ち、やがて道路の真ん中で完全に停止した。突然、静寂が訪れた。聞こえるのは風が木々を揺らす音と、タイヤがアスファルトの上で軋むのをやめたあと、冷えていく金属のきしむ音だけだった。何人かが疲労と苛立ちを込めてため息をついた。

誰も一言も発することなく車を降りた。必要最低限の荷物を持ち、ドアを閉め、歩き始めた。もう僕たちについてくることのできないものを、また一つ置き去りにして。

数分歩いたところで、遠くの道路上に人影が見えた。慎重に近づくにつれ、その姿がはっきりしてきた。年老いた夫婦と、そのそばにいる二人の子供だった。孫らしく見えた。彼らは身を寄せ合ったまま、じっと立ち尽くしていた。少しでも動けば状況が悪化するかのように。

「私たちは何も持っていません……」と老人が言い、妻と幼い子供たちの前に立った。自分の体で彼らを守ろうとしていた。

クラウディオは、彼らが持っている食料入りの袋を指さした。

「その袋が欲しい」

老人は子供たちを強く抱き寄せた。

「やめてください、お願いです」

僕は二人の間に割って入った。

「問題を起こすつもりはありません。僕たちはただ、自分たちの道を進みたいだけです」

クラウディオは侮蔑するような目で僕を見たが、何も言わなかった。

「どこへ向かっているんですか?」と僕は老人に尋ねた。

「知り合いと合流する予定なんです。彼はバスで人々を救出しています。空港へ向かっているんです。飛行機が民間人を避難させているそうです」

周囲の仲間たちが一斉に緊張するのを感じた。

「僕たちも同じ場所へ向かっています。その知り合いは、ほかの人も乗せてくれるんですか?」

「バスがどれくらい混んでいるかはわかりません。でも、空きがあれば……一緒に行けるかもしれません」

「僕たちも同行していいですか?」

老人は不信感をあらわにしてクラウディオを見た。彼の視線も、武器の持ち方も気に入らないのが明らかだった。

「ええ……問題ありません」

僕たちは再び歩き始めた。

「つまり、向こうで待っている人たちがいるんだな」とデレクが言った。

「そういうことです」と老人は答えた。「すべてが始まったとき、友人がバスに避難するという賢い考えを思いつきましてね。最後に聞いた話では、救助されるために空港へ向かっているところでした。それまでの間、自分と同じ場所へ向かう人々を乗せているそうです。数日前、どこかの放送局から無線で連絡してきたので、そこにいることは確かです。彼は、そこへ行くと言っていました」

サムは少し歩く速度を落とし、僕の隣に並んだ。

「彼の話が本当なら、思っていたよりずっと早く到着できるね、ジェイコブ」

「そうだな。だから、この機会を逃すわけにはいかない。僕たちは人数が多いし、移動手段も不足している」

サムは数秒間、僕を見つめた。

「今、どんな気分?」

「わからないよ、サム。あまり考えたくない。思い出すと気が散るし、何もできなくなる」

彼女はそっと首を横に振った。

「あなたは役立たずなんかじゃない」

僕は答えなかった。

「何もあなたのせいじゃないって、わかってるよね?」

僕は彼女の目を見つめ、歪んだ短い笑みを無理に浮かべた。彼女を安心させたくて、うなずいた。

でも、本当は僕自身が安心できていなかった。

僕たちは数分間、黙って歩き続けた。

「全部、お前のせいだ」とクラウディオが突然言い、僕をじっと見た。「お前がルートを変えなければ、彼女は今も生きていた」

サムがすぐに振り向いた。

「二度とそんなことを言わないで」

「みんなが思っていることを言っているだけだ」

「私の気持ちまで勝手に代弁しないで」とエミリーが割って入り、一歩前に出た。

クラウディオは彼女の方を向いた。

「そうか? じゃあ、お前はどう思ってるんだ?」

エミリーは一歩後ずさった。

「こんなことを言っても、何も解決しないと思う」

クラウディオが近づいた。

「そんな目で俺を見るな。怖くないとでも言うつもりか?」

デレクがすぐに反応し、二人の間に割って入った。

「彼女から離れろ」

彼はクラウディオを後ろへ押した。

クラウディオは乱暴に押し返し、デレクを強く突き飛ばした。デレクは足をもつれさせ、アスファルトの上に倒れた。

ブリサがすぐに動いた。

「何を考えてるのよ!?」

彼女はデレクの前に立った。

クラウディオはすでにナイフを手にしていた。

考えるより先に体が動いた。

僕は彼に飛びかかり、顔面に拳を叩き込んだ。

彼は地面に倒れた。

手首を強く踏みつけ、ナイフを落とさせた。

もう一発殴った。

さらにもう一発。

「ジェイコブ、もういい!」サムが近づき、僕の腕に手を置いた。「もういいから」

僕は動きを止めた。

荒々しく息をしていた。

ローラが一歩前に出て、まずクラウディオを、次にデレクを、最後に僕を見た。

「あなたたち、正気なの!?」

祖母は子供たちを連れて後ずさりしていた。祖父は自分の体で二人をかばっていた。

血を吐くクラウディオを見下ろした。

「もう終わりだ」と僕は言った。「お前の最低な態度にも、責任をなすりつけるのにも、もううんざりだ」

デレクを見た。

「それから、お前も拳で何かを証明する必要なんてない」

再びクラウディオを見た。

「僕たちは一緒に行動している。ローサとエンリケの死がつらいなら、今ここで犯人探しをするな。出ていきたいなら、出ていけばいい。でも、僕たちと一緒に歩く間は、仲間の一員として振る舞え」

誰も答えなかった。

「行くぞ」

僕たちは再び歩き始めた。今度の沈黙は、さっきよりも重かった。誰も言い争いを蒸し返したくなかったし、ほかの誰かの顔を長く見つめることも避けていた。やがて町が前方に現れた。まるで見捨てられた死体のようだった。空っぽの通り、風に揺れるブランコ、壁に打ちつけられるシャッター。

「駅はこの大通りの突き当たりです」と祖父が震える手で指さした。

僕たちは隊列を組んで進んだ。先頭はデレクと僕。サムとブリサが両側を警戒し、ローラは子供たちに気を配っていた。クラウディオは後方を歩き、顔を上げようともしなかった。

角を曲がったところで、それが見えた。

二階建てのバスが、古い駅の前に停車していた。

地面に座っている人もいれば、近くの店を調べている人もいた。何人かは、ただ虚空を見つめていた。

五十歳くらいの男がこちらへ歩いてきた。灰色の髪に、疲れ切った目をしていた。

「エルネスト」と男が言い、手を差し出した。「もう来ないかと思ったよ」

「トーマス……」

祖父は目に見えて安堵した様子で答えた。

男は話し始める前に、僕たちをじっくりと観察した。

「トーマス・アギーレです。空港へ向かうんですか?」

「そうだ」とデレクが答えた。「僕たちは一つのグループだ」

「誰が判断を下すんです?」

デレクは僕を指さした。

「ジェイコブだ」

僕は一歩前に出た。周囲の視線の重みを感じた。

「東へ向かっています。空港で避難が行われるという放送を聞きました。途中で仲間を失い、移動手段が必要なんです」

トーマスはゆっくりとうなずいた。

「すべてが始まったとき、私はこのバスに避難しました。誰にも頼らず移動できると思ったんです。そのあと、東の空港から飛行機が出るという無線放送を聞きました。それ以来、そこへ行きたい人を乗せています。明日の夜明けに出発する予定です」


車内には家族連れがぎっしりと乗り込んでいた。胸にリュックを抱きしめる人々。疲れ切った顔。

僕は荷物を積み込む手伝いを始めた。

僕たちの荷物の一つを持ち上げたとき、何かが地面に落ちた。

小さなおもちゃが、ほこりの上に仰向けに転がっていた。

エミールが組み立てたおもちゃだった。

祖父の孫娘が、僕より先にそれを拾い上げた。

「落としたよ」

彼女はそれを差し出した。

僕は彼女を見た。

一瞬、周囲のすべてが消えたように感じた。

エミールを思い出した。

「ありがとう」

僕はおもちゃを受け取り、大切にしまった。

そのあと、人混みの中からサムを探した。

「町を調べてくる。食料をもっと確保しないと」

「私も行く」と彼女は迷わず答えた。

デレクが一歩近づいた。

「急いでくれ。この場所は気に入らない」

「すぐ戻るよ」

僕たちはドアが開いたままの小さなスーパーに入った。棚は半分ほど空になっていた。湿気と腐敗の臭いが漂っていた。感染者が二体、棚の間をうろついていた。いつまでも背筋を凍らせる、あの不気味でぎこちない動きだった。

サムが僕を見た。

僕はうなずいた。

僕たちは音を立てずに動いた。

僕のマチェーテが一体目の頭蓋骨の付け根に深く食い込んだ。サムも二体目を同じように仕留めた。二つの体が鈍い音を立てて倒れ、再び静寂が僕たちを包み込んだ。

素早く店内を調べ、保存食や水のボトル、まだ無事に残っていたものを片っ端からリュックに詰めた。壊れた箱の中にチョコレートバーが二本あるのを見つけた。僕はそれを一瞬見つめてから、しまった。

荷物をいっぱいにしたリュックを背負い、バスへ戻った。

二階へ上がり、通行の邪魔にならないように、僕たちの荷物を座席の下に収めた。それから再び下へ降り、エルネストと妻のところへ近づいた。

「子供たちに何かあげてもいいですか?」

「もちろんよ、坊や」と女性が答えた。

チョコレートバーを二本取り出し、子供たちに渡した。

「ありがとう」と祖父が言った。

「どういたしまして」

少女は包みを開け始める前に、もう一秒だけ僕の目を見つめた。

僕はその場を離れ、再びバスに乗り込んだ。

座席を見つける人が増えるたび、バスは軋んでいた。外の町は相変わらず静まり返っていた。

明日、僕たちは東へ向かう。

太陽が沈み始めた頃、僕たちはバスに乗り込んだ。ほとんどの人が、リュックを調整したり、座る場所を譲り合ったりしながら、どうにか落ち着こうとしていた。

自分の席を決める前に、僕は運転席で何かを確認しているトーマスに気づき、近づいた。

デレクが後ろからやってきた。

ローラも一緒だった。

「これからの計画を知りたいんです」と僕は言った。

トーマスはハンドルに片手を置いた。

「空港へ直行するわけじゃない。ここから四時間ほどのところに町がある。無線で、そこにも大勢の人が待っていると聞いた。まだそこにいるなら、拾っていくつもりだ」

デレクは腕を組んだ。

「遠回りしても安全なんですか?」

「安全なことなんて何もない」とトーマスは答えた。「でも、できる限りのことをして人を置き去りにはしたくない」

ローラが首を傾げた。

「バスには、あと何人くらい乗れますか?」

トーマスは、人と荷物で埋まった通路に目を向けた。

「あと二人、頑張って三人というところだな。それ以上は無理だ。誰を乗せるか、慎重に選ばなければならない」

「なら、注意しておかないと」と僕は言った。「満員になったら、面倒なことになるかもしれない」

トーマスは僕の目を見た。

「だから、君のグループには秩序を保ってもらいたい。これ以上乗せられないと言ったときに、言い争いを起こしてほしくないんだ」

僕はうなずいた。

「わかりました」

割り当てられた座席の近く、バスの後方に仲間たちを集めた。

「聞いてくれ。リュックは手元に置いておけ。通路に物を置くな。周囲に気を配れ。ここには知らない人間が大勢いるし、スペースにも限りがある」

クラウディオが鼻を鳴らした。

「誰が息をしてるかまで監視するのか?」

「必要なら、そうする」

サムは背もたれに肘を置いた。

「これ以上、人を乗せるのは賛成できない。人数が増えるほど、動きづらくなる」

「仕方ないさ」とデレクが言った。「トーマスが決めることだ。僕たちが口を出すわけにはいかない」

ブリサがうなずいた。

「私は、どこに座れと言われても大丈夫よ」

エミリーも小さな声で言った。

「私も」

「サムの隣に座ってくれ。ローラは僕の隣。デレクとブリサは後ろ。クラウディオとエミリーは通路の反対側だ。僕は前の方にいる。何かあればすぐ動けるようにしておく」

クラウディオが、口元を歪めて僕を見た。

「問題が内側から起きたらどうする?」

「そのときは、内側で解決する」

ローラはしばらく僕を見つめた。

「あなたたち同士で殺し合わなければ、それだけでも進歩ね」

何人かが短く笑った。面白かったからというより、緊張を紛らわせるためだった。

エンジンが深く震えながら始動し、バスが動き出した。町の家々が後方へと遠ざかっていった。

景色が窓の外を流れ始めると、僕はローラの隣に座った。

彼女は何も言わずに僕の手を取った。

「見せて」

黒ずんだ包帯を見た。

「よくなってる」

「今のところはうまくいっているわね」と彼女が答えた。

ローラは信じられないという顔で僕を見た。

「ジェイコブ、自分で治そうとして手の皮膚を剥がしかけたでしょう」

「でも、剥がれてはいない」

「そういう問題じゃないの」

僕は笑った。

彼女は慎重に布をほどき、火傷を調べた。

「傷は順調に塞がっているわ。もう開いた組織もない。いい兆候よ」

「跡は残るかな?」

ローラは顔を上げて僕を見た。

「残ると思わないの?」

「でも、ずっと残るのか?」

「ええ、ずっと残るわ」

僕はうなずいた。

「手がなくなるよりはましだ」

ローラはかすかに笑った。

「相変わらず楽観的ね」

彼女は再び手に包帯を巻いた。

その動きは慎重で、ほとんど無意識に行われているようだった。僕たちは長い間こうしてきたので、相手が何をしているのか、いちいち説明する必要もなかった。

「タバタのこと、何か聞いた?」と彼女が突然尋ねた。

僕は首を横に振った。

「いや。空港で見つけられるといいんだけど」

ローラは最後の結び目を整えた。

「きっと見つかるわ」

「そんなに確信があるのか?」

「ええ」

「どうして?」

ローラは肩をすくめた。

「あの女性は、見た目以上にタフだから」

「それはよく知ってるよ」

彼女は数秒間、黙っていた。

「それに、あなたはまだ彼女を待っているから」

僕は彼女を見た。

「待っているからといって、見つけられるとは限らない」

「そうね。でも、まだ待つものがあるということよ」

僕は黙り込んだ。

ローラは座席の背もたれに寄りかかった。

「エミールのことだけど……」

その言葉が胸に突き刺さった。

僕は視線を落とした。

「その話はしたくない」

「わかったわ」

彼女はそれ以上、何も言わなかった。

数秒が過ぎた。

「でも、一つだけ伝えたいことがあるの」

「何?」

「私の前では、いつも強くあろうとしなくていいのよ」

僕は彼女を見た。

ローラは道路に目を向けたままだった。

「ほかの人たちの前では、強がりたければそうすればいい。決断を下して、命令して、すべてが自分の思いどおりになっているふりをすればいい。でも、私の前ではそんな必要はないわ」

何と答えればいいのかわからなかった。

「ありがとう」

彼女は肩で僕を軽く小突いた。

「友達っていうのは、そういうものでしょ、あんた」

僕は笑った。

「手を治すためだけに一緒にいるのかと思ってた」

「それもあるわ。調子に乗らないで」

後ろでは、デレクがエミリーにルートについて小声で話していた。サムはリュックを置く場所をめぐってクラウディオと言い争っていた。ブリサは黙って窓の外を眺めていた。

数分間だけ、旅はまるで普通のもののように思えた。

エンジンが一時間近く絶え間なく唸り続けた頃、僕は座席から立ち上がった。

ローラはまだ窓の外を見ていた。

「ちょっと車内を回って、誰か困っていないか見てくる」と僕は言った。

「必要のないことに首を突っ込まないで」

「命令か?」

「忠告よ」

「考えておく」

ローラは首を横に振った。

僕は通路を進んだ。

人々はささやくように話していた。眠っている人もいれば、床に答えでもあるかのように見つめている人もいた。

後方のドア近くで、空色、灰色、白の迷彩服を着た男が目に入った。背筋はまっすぐだったが、疲労が肩にのしかかっているようだった。

「周囲によく気を配っているな。どこから来たんだ?」

男は最初、不信感をあらわにして僕を見たが、すぐに表情を和らげた。

「トーマスに警察署で拾ってもらった。俺の部隊は初日に壊滅した。それ以来、できることをしている。空港まで人を護衛するくらい、最低限のことだ」

彼の武器を見た。

「弾薬が少ないようだな」

彼は短く息を吐いた。

「節約しているところだ。少し前に小さな群れに襲われて、弾倉を二つ近く撃ち尽くす羽目になった」

「何ミリを使ってる?」

「9ミリだ」

僕は自分の席に戻り、リュックを開けて三十発入りの弾薬箱を取り出した。それを持って彼のところへ戻り、差し出した。

「これが役に立つと思う」

警官は心から驚いた様子で受け取った。

「どう礼を言えばいいのかわからない」

「バスを守ってくれればいい」

男は手を差し出した。

「ニコライ・ペトロフ」

「ジェイコブだ」

僕たちは握手を交わした。

「俺も武装している。警備のことなら、俺も頼りにしてくれ」

「助かる」

僕は運転席まで進んだ。

トーマスは道路から目を離さずに運転していた。

「車内を見て回ったんですが」と僕は言った。「みんな、かなり落ち込んでいます。安心できる雰囲気もありません。僕たちのグループが一番武装しています。警備は僕たちが引き受けます」

トーマスは道から目を離さずにうなずいた。

「ありがとう。ここを混乱状態にはしたくないんだ」

彼は数秒間、黙っていた。

「初日に妻を失った」と、やがて彼は言った。「すべてが始まったとき、妻を探しに行かず、ここに避難することにしたんだ。それが一番賢明だと思った。あれ以来、一度も会えていない。もう生きてはいないんだろうな」

僕は横顔を見た。

「パニックに陥ると、人は冷静に考えられなくなります。あれは冷静に選んだ結果じゃない。生き延びるための行動です」

トーマスはハンドルを強く握った。

「そう自分に言い聞かせているよ」

そのとき、バスが突然急ブレーキをかけた。

何人かが座席につかまった。

「どうしたんです?」

トーマスが前方を指さした。

道路の真ん中に、男女が立っていた。

男と女。

動かずに。

僕が先に降りたとき、デレクも立ち上がっていた。ペトロフが後ろからついてきた。彼は武器を低く構えていたが、誰にも照準を合わせていなかった。

「落ち着いてください」と僕は近づきながら言った。「撃つつもりはありません」

男は両手を上げた。

「俺はイバン。彼女はルシアだ」

女性は立っているのもやっとという様子だった。

「何日も食べていないんです」とイバンが付け加えた。「少し前に襲われて、ほとんど全部奪われました」

僕は二人を観察した。

汚れていて、疲れ切っていた。

「武器は持っていますか?」

「いいえ」とルシアが答えた。

「噛まれた傷は? ほかに怪我は?」

二人は首を横に振った。

ペトロフが手早く二人を調べた。

何もなかった。

窓越しにトーマスがうなずいた。

「乗ってくれ」

イバンはバスを見上げた。

「ありがとうございます」

「慌てずに乗ってください」と僕は言った。「食料も水もあります」

僕たちは二人を車内へ案内した。

何人かの乗客が警戒するような目で二人を見た。僕たちは座席を確保し、水のボトルと食べ物を渡した。

二人は抑えきれないほどの空腹を抱えながらも、どうにか落ち着いて食べた。

「東の空港へ向かっています」と僕は説明した。「明日、もう一度立ち寄る予定です」

「ありがとうございます」とルシアがかすれた声で言った。

太陽が沈み始めた頃、僕は自分の席へ戻った。

ローラが僕を見た。

「問題なかった?」

「ああ」

「本当に?」

「本当だ」

「よかった」

彼女は頭を窓ガラスに寄せた。

「だって、顔にはまったく逆のことが書いてあるもの」

「君の顔には疲れたって書いてあるぞ」

「疲れてるもの」

「じゃあ、意見は一致だな」

ローラは笑った。

夜はゆっくりと、重苦しく訪れた。

数時間後、トーマスは道路脇にバスを停車させた。人々は足を伸ばすために降りた。即席の毛布の上に座る人もいれば、用を足すために森へ数メートル入り込む人もいた。

夜の空気は、少しだけ息苦しさが和らいだように感じられた。

僕は周囲を警戒しながら、外周を歩き回った。

ペトロフも反対側で同じように見回っていた。

そのとき、バスの中で開いているはずのないものに気づいた。

後部の荷物室だった。

近づいてみると、

いくつかの荷物がなくなっていた。

「誰がここを開けた?」

誰も答えなかった。

人々の間からイバンとルシアを探した。

二人の姿はなかった。

嫌な予感が背筋を走った。

車両の周囲を回った。

三本のタイヤがパンクしていた。

切り口はまっすぐだった。

沈黙が、これまでになく重くなった。

デレクが僕の後ろに現れ、タイヤの一つを調べた。

「事故じゃないな」

「わかってる」

「まっすぐ切られてる」

彼は暗い森へ目を向けた。

イバンとルシアがもういないことは、二人ともわかっていた。

懐中電灯を使い、周辺を二十分近く探したが、二人の痕跡は見つからなかった。残っていたのは、木々の間へ消えていく足跡だけだった。

バスに戻ると、トーマスはダッシュボードに広げた地図を見つめていた。

「タイヤが三本パンクした」と彼は苛立った様子で言った。「しかも予備がない」

「それでも進めますか?」

「ああ……でも、荷物を減らさないといけない。全員を乗せたまま走れば、車軸が壊れる」

ローラは地図に両手を置いた。

「一番近い修理場所はどこですか?」

トーマスは数キロ先の地点を指さした。

「古いバスターミナルがある。運がよければ、近くに修理工場もあるはずだ」

「なら、歩こう」と僕は言った。

人々の列は、懐中電灯の光を頼りに道路をゆっくり進んだ。バスは僕たちの後ろをゆっくりと進み、ほとんど空っぽだった。みんな疲れ切っていて、不満を口にする気力さえなかった。

ペトロフと僕は、デレクやサムとともに列の両側を警戒しながら歩いた。

「右側に感染者」とブリサがささやいた。

感染者が二体、森から現れた。

光に引き寄せられ、体を傾けながら歩いていた。

デレクが最初に反応した。彼のナイフが一体目のこめかみに突き刺さった。僕は二体目が家族連れの一人に近づく前に立ちはだかった。

「歩き続けて」

残りの道のりも同じようなものだった。絶え間ない緊張、木々の間を動く影、息を潜める人々。

僕たちは真夜中近くにターミナルへ到着した。

そこは古い建物で、何台ものバスが放置されていた。

トーマスはバスを停め、懐中電灯を手に降りてきた。

「適合するタイヤが見つかれば、ここで修理できる」

彼は紙を取り出し、必要なものを書き始めた。

「同じ直径のタイヤが三本。大型の油圧ジャッキ。インパクトレンチ、なければ頑丈な十字レンチ。見つかればエアコンプレッサー。タイヤが傷んでいた場合に備えて応急修理用のパッチ。それからナット一式だ」

彼はリストを僕に渡した。

「一番近い修理工場は、二つ先の通りにあるはずだ」

「行こう」

デレクはすでに準備を整えていた。

ローラも同行すると言い張った。

「私も行くわ」

僕は彼女を見た。

「無理に来る必要はない」

「わかってる」

「じゃあ、どうして来るんだ?」

ローラはリュックを背負い直した。

「一人で行かせたら、どうせ何か馬鹿なことをするでしょう」

「信用されてるな」

「あなたのことはよく知ってるもの」

デレクが小さく笑った。

「それについては、反論できないな」

修理工場の入口は板と金属板で塞がれていた。窓も内側から封鎖されていた。

「要塞みたいだな」とデレクがつぶやいた。

僕はドアを押した。動かなかった。

隙間の一つに近づき、内部をのぞいた。影の間で何かが動いていた。あまりにも多くの動きだった。

「感染者がいる」

ローラは僕の隣に立ち、隙間から中を観察した。数秒間、黙って数を数えていた。

「多すぎる……最低でも二十体ね」

僕たちは数歩後ろへ下がった。

「ドアを開けたら、全員出てくるぞ」とデレクが言った。

そのとき、工場の前に停められたピックアップトラックが目に入った。古い四輪駆動車だったが、頑丈そうだった。荷台の後ろには太い牽引ロープがぶら下がっていた。

考えが浮かんだ。

「デレク、手伝ってくれ」

二人でロープをドアまで運んだ。金属製の取っ手に結びつけ、反対側をトラックの後部に固定した。

デレクはロープを見てから、ドアに目を向けた。

「これがうまくいったら、お前は天才だな」

ローラは答えなかった。駐車場を見回し、周囲の状況を確かめていた。

「ドアを開けるだけじゃ不十分よ」と彼女が言った。

僕は彼女を見た。

「何を考えてる?」

彼女は駐車場の近くに並ぶ放置車両を指さした。

「感染者がどこから出てくるか、制御しないと。狭い通路を通らせることができれば、一体ずつ倒せる」

デレクは車両を見てうなずいた。

「漏斗みたいな通路を作るわけだ」

「そういうこと」とローラが答えた。

僕たちは車を押して動かし、即席の通路を作った。ローラは片方の端に狭い出口を残し、デレクと僕は重い車両を動かした。作業が終わると、感染者が一度に一体か二体しか進めないほどの幅になった。

ローラは最後にもう一度、通路を確認した。

「離れないで。横から抜けてくるものがいたら、すぐに知らせて」

それからトラックを見た。

「準備はいい?」

「いいぞ」と僕は答えた。

四輪駆動車に乗り込み、キーを回した。エンジンは何度か不満げな音を立てたあと、荒々しい唸り声を上げて始動した。

「準備完了だ」

アクセルを踏んだ。

ロープが猛烈なきしみ音を立てて張り詰めた。トラックは数センチ進んだが、ドアは耐えた。

一秒。

二秒。

やがて金属が軋んだ。

ドアが轟音とともに吹き飛び、駐車場全体に響き渡った。

感染者たちが出てき始めた。

デレクは通路の片側に陣取った。

僕はトラックから飛び降り、反対側についた。

ローラは数メートル後ろに立ち、背後と車両の間の隙間を警戒した。

最初の一体が走ってきた。

デレクが倒した。

二体目はその死体を乗り越えようとしたが、僕のマチェーテが首に食い込んだ。

すぐ後ろから、また一体が現れた。

「左!」とローラが叫んだ。

僕は間一髪で振り向き、二台の車の間から抜け出そうとする感染者を見た。ローラが前に出て、そいつが僕たちに届く前に倒した。

「もう一体!」

デレクがとどめを刺した。

感染者たちは数分間にわたって押し寄せ続けた。狭い空間は僕たちに有利だった。彼らは回り込めず、一体ずつ進むしかなかった。

ローラは動きを止めなかった。感染者が横へそれようとするたび、彼女が食い止めるか、僕たちが気づく前に知らせてくれた。

ついに最後の一体が地面に倒れた。

静寂。

聞こえるのは荒い呼吸と、エンジンから立ち上る煙の音だけだった。

僕はトラックのエンジンを切った。

デレクはしゃがみ込み、車体の下をのぞいた。

「もう動かないと思うぞ」

僕は再びエンジンをかけようとした。

乾いた音がしただけで、エンジンは止まった。

もう一度試した。

何も起こらなかった。

「こいつは終わりだ」

ローラは熱くなったボンネットに手を滑らせた。

「まあ、ドアを開ける役には立ったわね」

僕たちは修理工場に入った。

中には、まさに必要としていたものがあった。適合するタイヤ、頑丈な油圧ジャッキ、手動のインパクトレンチ、携帯用コンプレッサー、そして工具箱がいくつも。

デレクはそれらを見て、息を吐いた。

「これを手で運ぶのは無理だな」

ローラは脇の出口を見つけ、外をのぞいた。

「裏に路地があるわ」

僕たちはそちらへ向かい、放置された金属製のスーパーのカートをいくつか見つけた。三人で工場まで運び、タイヤや工具、残りの資材を積み始めた。

タイヤの一つが、僕の手から滑り落ちそうになった。

ローラが地面にぶつかる前に支えてくれた。

「気をつけてよ、あんた」

「持ってるよ」

「そうね。見ればわかるわ」

デレクは別のタイヤを積み終えながら、短く笑った。

「お前たちが互いを殺す前に、ここを出よう」

カートを押し、ターミナルへ戻った。

到着すると、トーマスが懐中電灯をつけて待っていた。

彼はタイヤを見てから、ほかの資材にも目を向けた。

「完璧だ」と彼は言った。「これなら何とかなる」

ローラはカートの取っ手に手を置き、深く息を吐いた。

「タイヤがちゃんと使えることを祈るわ」

トーマスは笑った。

「大丈夫だ」

何時間ぶりかに、あの忌々しいバスをここから動かせるかもしれないという希望が湧いた。

みんなが休んでいる間、トーマスと僕たちのグループで油圧ジャッキを使ってバスを持ち上げ、傷んだタイヤの交換を始めた。

デレクがナットを締め、ローラが懐中電灯で照らしていた。

「もう少しこっちだ」とデレクが言った。

ローラが光を動かした。

「これでいい?」

「完璧だ」

「どういたしまして」

「礼は言ってないぞ」

「わかってるわ」

「ずいぶんな態度だな」

「長く一緒にいすぎたのよ」

彼女は横目で僕を見た。

「それでも、あなたは生きてる」

「君のおかげだ」

「大げさね」

「大げさじゃない」

ローラは笑い、再び光を当てた。

作業にはほぼ一時間かかった。

最後のタイヤがしっかり固定されると、トーマスは車体を下ろし、満足そうに眺めた。

「よし。これで進める」

修理が終わると、トーマスはターミナルの中央で声を張り上げた。

「みなさん、少し聞いてください! 決めなければならないことがあります」

会話が少しずつ静まった。

「今すぐ出発することもできるし、ここで休んで夜明けに出発することもできます」と彼は続けた。「駅は安全そうです。周囲に動くものは見当たりません。ただ、みなさんがどうしたいか聞いておきたい」

ざわめきが広がった。

「休もう!」と後方の誰かが言った。

「今すぐ出発しよう!」と別の誰かが答えた。

デレクが僕の方へ少し身を傾けた。

「僕なら進む。空港に着くのは早いほどいい」

僕はうなずいた。

僕も同じことを考えていた。

だが、ほとんどの人はここに残ることを選んだ。

トーマスは両手を上げた。

「わかりました。今夜はここで休みます。出発は夜明けです」

ターミナルは即席の避難所になった。マットレスや毛布、寝袋など、休めそうなものを探しに出る人もいた。ほかの人々は自分のリュックに入っているものを使った。ほどなくして、メインホールは共同の寝室に変わった。ドアや窓を閉め、入口にはできる限りのものを寄せて塞いだ。

乗客の中に、以前料理人をしていた男がいた。彼はカウンターの後ろに隠されていた缶詰の箱をいくつか見つけ、みんなのために温かい食事を作ると申し出た。

食べ物の匂いが漂うと、みんなの気持ちが少しだけ明るくなった。

それでも、これまでの出来事の重みは消えなかった。

僕は壁にもたれ、床を見つめながら座った。

疲労は思考を押し流してくれなかった。

エミール。

イバンとルシアの裏切り。

無線から聞こえたタバタの声。

ローラが近づいてきて、僕の隣に座った。

「手を見せて」

僕は軽く首を横に振った。

「大丈夫だ。今、確認する必要はない」

ローラは手を差し出した。

「ほら。意地を張らないの」

彼女は僕の手を取ろうとした。

僕はそっと手を引いた。

「本当に大丈夫だ。心配なのは傷じゃない」

ローラは注意深く僕を見た。

「わかってるわ」

「じゃあ、どうして見たいんだ?」

「傷なら何かできるからよ。それ以外のことは、どうにもできないもの」

僕は彼女を見つめた。

ローラはため息をついた。

「ジェイコブ……もうすぐよ。もうすぐ、すべてが終わる」

僕は答えなかった。

「あなたは本当によくやってきたわ」と彼女は続けた。「ここまでずっと。いつも先頭に立って、ほかの誰も引き受けたがらない決断を下してきた」

僕は首を横に振った。

「エミールは死んだ」

ローラは視線を落とした。

「ええ」

「ローサも死んだ」

「ええ」

「それなのに、僕はまだここにいる」

ローラは再び僕を見た。

「あなたは生き続けなければならなかったからよ」

「それだけで十分なのか、わからない」

「十分よ」

彼女は数秒間、黙っていた。

「それに、あなたのせいじゃない」

「ローラ……」

「いいえ。聞いて」

彼女の声が力強くなった。

「エミールのことも、ローサのことも、軍のキャンプで起きたことも。あなたが望んで起こしたことなんて、一つもない」

「でも、僕は決断を下した」

「そうよ。あなたは先頭に立っているんだから」

「なら、その責任も背負わなければならない」

「責任を背負うことはできるわ」と彼女は答えた。「でも、誰かが死ぬたびに、それを自分への判決に変えてはいけない」

僕は彼女を見つめた。

ローラは少し声を落とした。

「誰かを責めたいなら、世界を責めればいい。軍人を責めても、感染者を責めてもいい。好きなものを責めればいい。でも、自分自身を敵に回さないで。そうなったら、誰かに殺される必要すらなくなるわ」

思わず小さく笑ってしまった。

「ちょっと大げさな言い方だな」と彼女が言った。

「わかってる」

「でも、本当にそう思ってるのよ、ジェイコブ」

「ありがとう」

「ほら、こっちへ来なさい、馬鹿」

そう言いながら、ローラは両腕を広げて僕を抱きしめようとした。

「きっと全部うまくいくわ。まったく、くそったれね」

彼女は僕を離した。

「さあ、今度こそ手を見せて」

ローラは再び僕の手を取った。

今度は引っ込めなかった。

「見せて」

「わかったよ」

彼女は慎重に包帯をほどいた。

「ちゃんと治ってきてる」

「前にもそう言ったよ」

「今もそうだからよ」

「跡は?」

「それも残ってるわ」

処置を終えると、彼女は再び手に包帯を巻いた。

「空港に着いたら、タバタを探すのよ」

「ああ」

「それで、見つけたら……」

「何?」

ローラは僕を見た。

「自分が生き延びたって伝えるの」

「きっともう知ってるよ」

「それでも伝えるの」

僕はうなずいた。

「わかった」

ローラは笑った。

「それから、もう一つ覚えておいてほしいことがあるの」

「何だ?」

「あなたは一人でここまで来たわけじゃないってこと」

僕は周囲を見回した。

「わかってる」

「いいえ、わかってないわ」

彼女はほかの仲間たちを指さした。

「デレク。サム。ブリサ。エミリー。それにクラウディオだって。時々、ぶん殴ってやりたくなるけどね」

僕は低く笑った。

彼女は余った包帯をしまった。

「だから、全部を一人で背負わなきゃいけないみたいに振る舞うのはやめなさい」

「人の扱い方がうまいな」と僕は笑いながら言った。

「四十七年も生きてれば、タダじゃ済まないってことよ」

久しぶりに、胸にのしかかっていた重荷が少しだけ軽くなった気がした。

そのとき、何かが聞こえた。

僕は顔を上げた。

「聞こえるか?」

ローラは眉をひそめた。

「何が?」

僕たちは黙った。

再び音が聞こえた。

遠くから響く、低い唸り音。

ローラが顔を上げた。

「そうね……うん。今は聞こえる」

何人かが立ち上がり始めた。

空を見るためにドアの方へ向かう人もいた。

音が大きくなった。

ヘリコプターだった。

町の上空に現れ、ふらついていた。軍用なのか民間機なのか、誰にも見分けがつかなかった。不安定に旋回していた。

「落ちるぞ!」と誰かが叫んだ。

ヘリコプターは急降下し、建物の向こうへ姿を消した。

一秒後、爆発が空を照らした。

町の上に炎が立ち上った。

数秒間、誰も反応できなかった。

そのあと、別の音が聞こえた。

森の中で何かが動いていた。

木々の間から影が現れた。

何十体も。

さらに増えた。

感染者だった。

「全員、バスへ!」と僕は叫んだ。「荷物は置いて、今すぐ乗れ!」

パニックが広がった。

「トーマス、エンジンをかけろ!」

「すぐに!」

「戦える者はバスを囲め!」

デレク、エミリー、ブリサが子供たちを乗せるのを手伝っていた。サムは年配の女性を支え、最初のステップを上がらせた。クラウディオは、動けなくなっていた男二人を押して進ませた。

感染者たちが何十体も森から現れた。

事故現場へ向かうものもいた。

僕たちにまっすぐ向かってくるものもいた。

「急げ!」とデレクが叫んだ。

僕は小さな男の子を乗せた。

次に老人を乗せた。

「ジェイコブ、乗って!」とドアからサムが叫んだ。

僕は首を横に振った。

「ほかの人が先だ」

周囲を見回した。

もう誰も残っていないように見えた。

僕はバスへ一歩踏み出した。

そのとき、叫び声が聞こえた。

「孫娘がいない!」

祖母だった。

「ここにいないの!」

その叫び声が胸を貫いた。

何が起きたのか理解し終える前に、少女の悲鳴が聞こえた。

僕は音の方を振り向いた。

数メートル先の地面に、少女がいた。両手を使って、どうにか後ずさりしていた。

彼女の前には、倒れた木製の椅子があった。盾のように使っていた。その向こう側では感染者が腕で椅子の背もたれを押し、少女に手を伸ばそうとしていた。顎は歪んで垂れ下がり、ほとんど外れかけていた。口を開くたびに、ぶらぶらと揺れていた。

押されるたび、木が軋んだ。

もう長くは持たない。

そして、その瞬間、すべてが蘇った。

エミール。

あの目。

ベッド。

血。

僕が間に合わなかった、あの瞬間。

今度も間に合わなければ、まったく同じことを繰り返すことになる。そんな気がした。

僕は走った。

椅子が崩れる寸前に、少女のところへたどり着いた。

拳を握り、感染者の顔面に一撃を叩き込んだ。

衝撃で相手は後ずさったが、倒れなかった。

再び襲いかかってきた。

僕は両腕を押しのけ、垂れ下がった顎を見つけると、手でつかんで全力で引っ張った。

湿った音を立てて骨が折れた。

顎が外れた。

僕はそれをハンマーのように握り、感染者の頭に最初の一撃を叩き込んだ。

もう一発。

さらにもう一発。

一撃ごとに、乾いた音が夜に響いた。

五発目で、体が地面に倒れた。

だが、胸の中にあった怒りは、それで止まらなかった。

僕は殴り続けた。

一度。

もう一度。

手の中で顎が砕け、拳が相手の顔面に降り続けるまで。

そのとき、すすり泣く声が聞こえた。

顔を上げた。

少女は祖母にしがみつき、祖母の胸に顔を埋めていた。

老婆は僕をじっと見つめていた。

好奇心からの視線ではなかった。

恐怖だった。

僕に対する恐怖だった。

サムが走ってきて、僕の腕をつかんだ。

「ジェイコブ……もういい。死んでるから」

僕は深く息を吸った。

彼女たちの向こうに目を向けた。

木々の間で、さらに多くの影が動いていた。

数え切れないほど。

音と炎に引き寄せられ、僕たちへ向かってきていた。

「行こう!」とサムが言った。

祖母が先にバスへ乗り、少女を引っ張り上げた。

そのあとサムが乗った。

僕は、近づいてくる暗闇をもう一秒だけ見つめた。だが、群れの轟音に急かされ、ようやく我に返った。

階段を一気に駆け上がった。

最初の感染者たちが車両に到達した瞬間、ドアが鈍い音を立てて閉まった。

感染者たちが車体を叩き始めた。

一撃ごとに、車両全体が揺れた。

運転席から、トーマスが動かそうとしながら悪態をつく声が聞こえた。

「進めない! 前に多すぎる!」

僕は一階の人混みをかき分けた。

泣いている人もいた。

窓に顔を押しつけ、外に群がる影を見つめている人もいた。

階段にたどり着くと、二階へ上がった。

デレクが横の窓から外を見ていた。

「囲まれてる」

外を見た。

彼の言うとおりだった。

何十体もの感染者が、あらゆる方向からバスを押していた。

「息子がいない!」と、一人の女性が声を震わせて叫んだ。「見つからないの!」

その後ろから年配の男が現れた。

「俺の息子もだ!」

二人とも、僕なら何とかできるとでもいうように見つめていた。

「外にいるはずよ」と女性が強く訴えた。

「探してくれ!」と男が言った。

デレクが僕の方へ身を傾けた。

「ジェイコブ……」

彼を見た。

「ローラも乗っていない」

胸の内側で何かが張り詰めた。

ドアを見た。

ローラはいなかった。

どこにいるのかもわからなかった。

その瞬間、ほかのすべてが消え去った。

トーマスが階段を上がってきた。

「何もできない。完全に囲まれている」

行方不明の少年の母親がドアへ走った。

「私が探しに行く!」

トーマスはすぐに反応した。

「やめろ!」

彼女がドアの機構に触れる前に、腕をつかんだ。

「ドアを開けたら、全員が入ってくる!」

女性は彼と揉み合い始めた。ほかの人々が彼女を落ち着かせようとしていた。

僕はその場で動けずにいた。

叫び声。

窓を叩く音。

うなり声。

すべてが遠くなっていくように感じられた。

僕はゆっくりと自分の席へ歩いた。

リュックを開けた。

照明弾拳銃と、二発の弾を取り出した。

二階の小さな階段を上がり、屋根のハッチを開けた。

上がろうとしたとき、デレクが追いついた。

「何をする気だ?」

僕は彼を見た。

「信じてくれ」

車内を指さした。

「みんなに、窓のカーテンを閉めるよう伝えてくれ。全部だ。それから、照明も消すように」

デレクは眉をひそめた。

「ジェイコブ……」

「信じてくれ」

彼はうなずいた。

僕は屋根に上がり、後ろでハッチを閉めた。

夜の空気には煙と、感染者たちがいつもまとっている腐ったような臭いが充満していた。

上からなら、状況をよりよく見渡せた。

バスは完全に包囲されていた。

後方にはピックアップトラックが停まり、その先には小型車があり、さらに向こうには放置車両が列を作っていた。

僕は深く息を吸った。

バスの後方まで歩いた。

助走をつけた。

跳んだ。

金属音を立ててトラックの屋根に着地すると、近くにいた感染者たちがすぐに反応した。

彼らは顔を上げた。

僕の方へ動き始めた。

走った。

トラックから、その後ろの車へ飛び移った。

さらに別の車へ。

感染者たちが次々と僕を追い始めるなか、バスから遠ざかった。

周囲の死体が少ない場所を見つけると、地面へ降りた。

一番近くにあった車を叩き、警報が鳴るまで続けた。

音が夜を切り裂いた。

それから照明弾を取り出し、空へ向けた。

発射した。

赤い光が町の上空で炸裂し、強烈な光で周囲を染め上げた。

僕のいる場所から、遠くのバスが見えた。照明は消え、カーテンはすべて閉じられ、僕が頼んだとおり、完全に暗闇に包まれていた。

最初、感染者たちはためらった。

そのあと、ゆっくりと僕の方へ向き始めた。

まず数体。

次に、もっと多く。

そして、全員が。

僕はその場に立ち尽くし、最初の照明弾が落ち始めるのを見つめた。群れの進路が変わり、音と光の新しい発生源へと集中し始めた。バスから離れていく。

照明弾が消え始めたとき、僕は銃を持ち上げ、二発目を撃った。

空が再び赤く染まった。

感染者たちはうなり声を上げ、歩みを速めた。

そのとき、待ち望んでいた音が聞こえた。

バスのエンジンだった。

僕は振り返った。

群れの中をゆっくりと進み、感染者たちが車両から離れて僕の方へ向かうなか、バスが死体を押しのけて道を切り開いていた。

バスは走り去り始めた。

少しずつ遠ざかっていった。

やがて、テールランプが道路の向こうに消えた。

僕はその場に立ち尽くした。照明弾拳銃をまだ手に握っていた。

群れ全体が、あらゆる方向から僕に迫っていた。

そのとき、右側から声が聞こえた。

「ジェイコブ!」女性の声がささやいた。「こっちよ!」

僕は勢いよく振り向いた。

ローラだった。

放置車両の陰に半分隠れ、必死にこちらへ手招きしていた。

僕は何も考えずに彼女へ走った。

たどり着くと、彼女は僕の腕をつかみ、車の間を抜けて走り始めた。照明弾を撃った場所に感染者たちが集まっていくなか、僕たちは大通りから離れていった。

「バスに乗ったと思ってた」と、走りながら彼女が言った。

「僕も、君が乗ったと思ってたよ」

ローラは首を横に振った。

「バスに乗れなかった男の子を二人見つけたの」

そのとき、二人の姿が見えた。

彼女の後ろを走ってくる若い男が二人。一人は十九歳くらい、もう一人も二十歳には届かないだろう。顔色は悪く、体はほこりにまみれ、息を切らしていた。

詳しく尋ねる必要はなかった。

おそらく、バスの中で叫んでいた両親の息子たちだろう。

燃え盛るヘリコプターの光から遠ざかるため、僕たちは町の通りを走り続けた。

「どうするの?」とローラが息を切らしながら尋ねた。

町に沿って広がる森を見た。

「バスが進んだのと同じルートをたどる。でも、まずは群れを迂回しないと。森から感染者が出続けている間は、道路に近づけない」

ローラはうなずいた。

「なら、ここから離れましょう」

僕は空を指さした。

「ヘリコプターも、警報を鳴らしている車も、照明弾も。全部、感染者を呼び寄せてる」

僕たちは木々の間へ入った。

森は暗く湿っていた。足元で枝が折れる音が、必要以上に大きく響くように感じられた。

数メートル進むごとに、幹の間をさまよう感染者が現れた。

三体。

五体。

ときには一体だけ。

避けられるものは避け、ほかに選択肢がないときは、素早く静かに倒した。

数分後、ようやく町の反対側へ抜けた。

そこで、道路を歩いている二人を見つけた。

四十歳くらいの男と、二十歳にもなっていないように見える女性だった。

二人は僕たちを見て立ち止まった。

「バスに乗れなかったんです」と男が、まだ息を切らしながら言った。

「混乱が始まったとき、取り残されてしまって」と女性が付け加えた。

ローラが僕を見た。

「みんな一緒に行動した方がいい」と僕は言った。

これで六人になった。

僕たちは道路を進み続けた。

ローラは僕の隣を歩いていた。

数分間、誰も何も言わなかった。

やがて、彼女が口を開いた。

「大丈夫?」

「いや」

「よかった」

僕は彼女を見た。

「よかった?」

「ええ。さっきのことを経験して、何ともないなんて言われたら、そっちの方が心配だもの」

僕は小さく笑った。

「相変わらずだな」

「それはいいこと?」

「ああ」

「じゃあ、忘れないでね」

僕たちは歩き続けた。

ローラが後ろを振り返った。

「バスは逃げ切れたと思う?」

「ああ」

「どうしてそんなに確信があるの?」

「わからない」

「それじゃ答えになってないわ」

「あいつらのことは知ってる」

ローラは笑った。

「私も、あの人たちを信じてる」

「僕もだ」

空の色がゆっくりと変わり始めるまで、僕たちは歩き続けた。

11月3日 — 隔離命令発令から49日目

新しい一日が始まっていたが、夜はまだ僕たちにつきまとっていた。

僕たちは森の物音に注意を払いながら、道路を速足で進んだ。

それほど進まないうちに、アスファルトの真ん中に何かが落ちているのが見えた。

リュックだった。

僕はそれを拾い、慎重に開けた。

中には無線機と、折り畳まれたメモが入っていた。

デレクの字だと、すぐにわかった。バスが揺れるなかで書いたかのように、歪んでいて乱雑だった。

「ジェイコブ。無線機を置いていく。可能になったらすぐ連絡してくれ。先へ進むけど、危険が見当たらないときは道路脇で待つこともできる」

メモをしまい、無線機の電源を入れた。

「デレク、聞こえるか?」

雑音しか返ってこなかった。

何度か繰り返した。

何も聞こえなかった。

「離れすぎてるんだと思う」とローラが言った。

「ああ。無線が届く範囲に入るまで、道路を進もう」

さらに数分歩くと、前方に何かが見えてきた。

仮設の医療キャンプだった。

黄色いテントがいくつも並び、道路の両側には軍の施設がいくつか設置されていた。キャンプが道を塞いでいたが、森へと逸れてその周囲を回り込む土の道があった。


僕はしゃがみ込み、地面を調べた。

土に残るタイヤの跡は新しかった。

「バスはあそこを通ったんだ」

ローラはキャンプを見渡した。

「中に入る?」

少し考えた。

「役に立つものが見つかるかもしれない」

僕たちは注意深くテントの間を進んだ。

救急車の近くに、防護服を着た感染者が二体うろついていた。黄色い生物災害用のスーツが動きを妨げているのか、一歩一歩が遅く、ぎこちなかった。

僕たちは音を立てずに近づき、素早く倒した。

キャンプは静まり返った。

僕たちは少し座って息を整えた。

僕は再び無線機を取り出した。

「デレク、聞こえるか?」

雑音が数秒間鳴った。

そのあと、声が聞こえた。

「……ジェイコブ……聞こえる」

何時間ぶりかに笑みが浮かんだ。

「僕たちは無事だ。ローラも一緒だ。それから、男の子が二人いる」

「両親に伝えるよ」とデレクが答えた。「心配してたんだ」

「今、どこにいる?」

「そのまま進んでる。ヘリコプターの事故のあと、トーマスがパニックになったんだ。まだバスを止めたくないらしい」

キャンプの周囲を見回した。

テントの近くに停められた救急車は、まだ使えそうだった。

「心配するな。ここで車を見つける。次の町で合流しよう」

短い沈黙があった。

「連絡を続けてくれ」とデレクが言った。

「そうする」

無線機の電源を切った。

東の空が、少しずつ明るくなり始めていた。

ローラは地平線を見た。

「もうすぐ夜が明けるわ」

僕はほかの人たちを見た。

みんな疲れ切っていた。

「日の出まではここにいよう。懐中電灯もないのに、暗闇の中を歩くわけにはいかない」

ローラはうなずいた。

僕たちは医療用テントの一つに避難し、入口を慎重に閉じた。中は空っぽで、折り畳み式の担架と医療用品の箱がいくつかあるだけだった。

僕は布の壁にもたれて座り、ノートを取り出した。

ローラは僕の近くに腰を下ろした。

何も言わなかった。

僕も何も言わなかった。

外では、森が静まり返っていた。

日の出までは、あと二時間もなかった。

すべてがうまくいけば、太陽が昇る頃には、再び道路へ戻ることになる。

エミールとローサを失ってから初めて、まだ進むべき道が残されているのかもしれないと思えた。

あとどれくらい続くのかはわからない。

でも、ローラはここにいる。

そして、この夜を越えるには、それだけで十分だった。


いつになったら、少しでも平穏な時間を過ごせるんだろう……?



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