XXVII — ……
もう言うことは何もない……
正直なところ、何が起きたのか、どう説明すればいいのかわからない。すべてうまくいっていると思っていた。
僕たちはあの連中の武器庫を開け、役に立ちそうなものをすべて持ち出していた。ショットガン、弾薬、食料、飲み物、薬。ようやく出口のドアを開けたとき、説明されていた感染者の大群が待ち構えているものと思っていた。
だが、一体もいなかった。
「ここには何もいないな」と、デレクが左右を見回しながら言った。
「私たちは騙されたんだ」とブリサが答えた。
僕は首を横に振り、地面を覆う足跡のそばにしゃがみ込んだ。
「いや。あいつらは本当のことを言っていた。これを見てくれ」
足跡は至るところに残っていた。新しいものもあれば、いくつも重なり合ったものもあった。
「ものすごい数だ」と僕は続けた。「この先に別の出口を見つけたんだろう」
僕たちは武器を構えたまま、暗い通路を進んだ。あれだけの話を聞かされたあとでは、静けさが妙に不気味だった。聞こえるのは自分たちの足音と、服が壁に擦れる音だけだった。
しばらくすると、遠くに光が見えた。
自然の光だった。
「感染者たちは、ここから逃げたんだな」とデレクが言った。
「そうだろうな。慎重に進もう」
出口を抜けると、僕たちは街からほんの数メートルの場所に出た。周囲には木々が生い茂っていた。計画は単純だった。ローサが通信を失う前に伝えてきた場所まで行き、エミールと一緒にいる彼女を見つけ、それから空港へ向かう。
簡単そうに思えた。
だが、簡単そうに見えることほど、ひどい結果を招きやすいと、僕はすでに学んでいた。
街の端まで来たところで、クラウディオが突然しゃがみ込んだ。
「伏せろ!」と彼はささやいた。
僕たちは全員、身を隠した。
遠くの道路に、三人の兵士がいた。
数秒間、誰も何も言わなかった。
彼らがまだ民間人を排除する命令を受けているのか、僕たちにはわからなかった。キャンプで起きたことを考えれば、確かめる気にはなれなかった。
「くそ……どうする?」とデレクが尋ねた。
僕は兵士たちを観察した。タバタの部隊の兵士ではなかった。
「今、あいつらと衝突するのは得策じゃない。この辺りには、ほかにも兵士がいるはずだ」
それでも、心のどこかでは彼らに近づきたいと思っていた。
タバタについて尋ねたかった。
彼女がどこにいるのか、何が起きたのか、まだ生きているのかを知りたかった。
だが、あの男たちに近づくのは自殺行為かもしれないとわかっていた。
僕たちは兵士たちが視界から消えるまで待った。そして、通りに誰もいなくなったのを確認すると、こっそり街へ入り込んだ。
感染者を避けながら進み、ショッピングモールにたどり着いた。三階まで上がると、放棄された小さなファストフード店を見つけた。ローサとエミールが正確にどこにいるのかを突き止める間、しばらくそこに身を隠すことにした。
デレクがテーブルの上に地図を広げた。
「たぶん、この辺りだ」
彼は街の一角を指さした。
彼とクラウディオが位置を割り出そうとする間、ほかの僕たちは役に立ちそうなものがないか、店内を調べていた。
サムは棚の一つを開け、小さな金属製のプレートを調べ始めた。
「ジェイコブ、見て」
僕は近づいた。
「どうした?」
サムがプレートを一枚持ち上げた。
そこには名前が刻まれていた。
エミール。
思わず笑みがこぼれた。
「見つけたら、きっと喜ぶだろうな」
「それ、どこで見つけたの?」
「ここだよ」
彼女は棚を見せてくれた。アルファベット順に並べられたプレートが、何十枚も置かれていた。
「うわ……すごい数だな」
サムはもう一枚手に取り、誰もこちらを見ていないことを確かめるように周囲を見回した。
「手を出して」
「何……?」
彼女は何かを僕の手のひらに置き、僕の指を閉じさせた。
もう一枚のプレートだった。
「会えたら、渡してあげて」と彼女は笑顔で言った。
僕も彼女を見て微笑んだ。
それは、タバタの名前が刻まれたプレートだった。
「ジェイコブ」と、テーブルからデレクが呼んだ。「居場所がわかったと思う」
僕はプレートをしまった。
「確認しよう」
デレクが地図を指さした。
「ローサは、十二階建ての建物に避難していると言っていた。この街で、その条件に当てはまるのは、この三つだけだ」
クラウディオが地図に身を乗り出し、街にある十二階建ての建物を三つ指さした。
「ここ、ここ、それからここだ」
「よし。そこへ行こう。よくやった」
喜んでいる暇はなかった。
店のドアが開いた。
三人の兵士が、まるでここには誰もいないと信じ切っているかのように、互いに話しながら入ってきた。
そして、僕たちを見つけた。
彼らは動きを止めた。
僕たちも動かなかった。
誰もどうすべきかわからなかった。
最初に銃を抜いたのはクラウディオだった。
兵士たちは即座に反応した。
デレクと僕も武器を抜いた。
最初の銃声が静寂を破った。
そのあと、銃声が次々と響いた。
兵士二人が床に倒れた。
残る一人は階段へ向かって逃げ出した。
「逃がすな!」とデレクが叫んだ。
「みんなはここにいろ。クラウディオ、デレク、行くぞ!」
僕たちは全速力で階段を駆け下りた。
銃声が感染者を引き寄せていた。通りのあちこちで動き回る音が聞こえた。
一階に着くと、兵士が路地に逃げ込むのが見えた。
「デレクは右へ。クラウディオは左だ。僕は路地に入る。出口で追い詰めよう」
二人は別々の方向へ走った。
僕は路地に入った。
数メートル走り、奥にいるはずの兵士を探したが、姿が見えなくなっていた。
そのとき、コンテナの陰から兵士が飛び出してきた。
僕に襲いかかった。
拳銃を向けようとしたが、相手は銃身をつかみ、僕の顔を殴りつけた。鋭い痛みが走り、僕は後ずさった。膝を相手の腹に叩き込むと、兵士はなんとか僕を引き離した。
僕は再び銃を構えた。
引き金を引いた。
兵士は間一髪で銃身を持ち上げた。
弾丸は空へと飛んでいった。
轟音が建物の間に響き渡った。
僕が反応するより早く、兵士は僕の腰を強く蹴りつけた。
僕は横向きに倒れた。
路地の両端から感染者たちが近づいてきた。
兵士は逃げようとした。
だが、長くは逃げられなかった。
三体の感染者が彼に襲いかかった。
一体が肩に噛みついた。
もう一体が太ももに噛みついた。
三体目は腰に歯を食い込ませた。
僕は彼らに向かって走り、感染者たちを引き離すまで発砲した。
兵士は地面に横たわっていた。
「た、助けてくれ……」
声は、かすかなささやきにしかならなかった。
路地の出口からデレクとクラウディオがやってきた。二人は感染者たちを追い払っていた。
クラウディオは拳銃を持ち上げ、兵士の頭に狙いを定めた。
「待て」
僕は男のそばにひざまずいた。
彼は苦しそうに息をしていた。血が軍服を濡らしていた。
「聞いてくれ」と僕は言った。「友人の女性と、一人の子供を探している。君が僕たちを助ける理由なんてないのはわかってる」
男は僕を見た。
「君はもう助からない。自分でもわかっているはずだ。でも、あの子に何が起こるかは、まだ変えられる。あの子は僕たちを待っている。きっと怖がっているだろう。だから、頼む……何か知っていることがあれば……」
兵士は唾を飲み込んだ。
「ゆ、昨夜……仲間が、黒人の女性を撃った……」
胃が締めつけられるような感覚に襲われた。
僕はデレクを見た。
「地図を」
彼が地図を渡してくれた。
僕は再び兵士を見た。
「どこへ行ったのか、指させるか?」
もしローサが死んでいたのなら、残る疑問は一つだけだった。
エミールはどこにいる?
「ジェイコブ」とクラウディオが言った。
彼は路地の入口を指さしていた。
感染者たちが近づいてきていた。
「わかってる。待ってくれ」
兵士は震える手を持ち上げた。
血にまみれた指で、地図上の通りを指さした。
「そこだ……」
彼の手が落ちた。
それきり動かなかった。
血のついた指紋が、紙の上に残された。
ローサの最後の居場所だった。
「ここを離れないと」とデレクが言った。
僕は立ち上がった。
何も言わなかった。
感染者を避けるため、いくつかの通りを迂回してその場を離れ、仲間たちのもとへ戻った。
得られた情報は、僕たちをその建物へ導いた。
地図によれば、その一帯にある十二階建ての建物はそこだけだった。およそ二十ブロック先にあった。
間違えようがなかった。
歩きながら、僕たちはわずかな情報をもとに、起きたことを組み立てていった。
ローサはおそらく、食料を探しに外へ出たのだろう。
兵士たちは彼女を見つけた。
そして、撃った。
建物に到着すると、周囲には何体もの感染者の死体が転がっていた。かなり前からそこにあったものもあった。
僕たちは中に入った。
階段を上った。
一階、また一階。
誰も立ち止まらなかった。
十二階には、四つのアパートしかなかった。
そのうち三つのドアは開いていた。
中は空っぽだった。
荒らされていた。
残る一つだけが閉じられていた。
僕はそのドアを見つめた。
ローサは、きっとそこにいる。
僕たちは力任せにドアを開けようとしたが、鍵はびくともしなかった。
「ショットガンを貸してくれ!」と僕はデレクに言った。
彼は銃を渡した。
僕は装填し、鍵に狙いを定めて発砲した。
銃声が廊下全体に響き渡った。
木材が砕け散った。
肩でドアに体当たりして押し開け、銃を前方に構えながら中へ入った。
狭いアパートで、長い廊下が続いていた。
右手にはキッチンがあった。
そして、そこにローサがいた。
僕は動けなくなった。
もうローサではなかった。
彼女は感染者になっていた。
変異したあと、アパートの外へ出られないように、自分の手をキッチンのパイプに縛りつけていたのだ。
だが、考え込んでいる時間はなかった。
立ち止まるわけにはいかなかった。
エミールは、この部屋のどこかにいる。
僕は進み続けた。
「エミール!」
廊下の突き当たりに、少し開いたドアがあった。
僕はそれを押し開けた。
そして、その瞬間、すべてが止まった。
ショットガンが手から滑り落ちた。
床に落ちた。
息ができなかった。
まばたきすらできなかった。
エミールがベッドの上にいた。
白いシーツは血で染まっていた。
小さな体は動かずに横たわっていたが、僕たちを見ると、
両腕を持ち上げた。
うなり声を上げた。
起き上がろうとした。
サムが僕の後ろから部屋に入ってきた。
彼女は両手で口を覆い、その場にひざまずいた。
泣き声が、抑えようとしても止まらずにあふれ出た。
ローラが彼女の後ろに現れた。
「そんな……」
声が途切れた。
エミールは再び僕たちを見た。
その目は、もう以前のものではなかった。
灰色だった。
空っぽだった。
それでも、彼はエミールだった。
少なくとも、彼の一部はまだそこに残っていた。
僕はゆっくりと近づいた。
一歩進むたびに、まるで一トンもの重さが足にかかるようだった。
ベッドの前にひざまずいた。
「エミール……」
彼は口を開き、僕に飛びかかってきた。
噛みつかれる前に、僕は彼を抱きしめた。
歯が右肩に届いた。噛みつきは、かろうじてジャケットを貫く程度だった。
僕はさらに強く抱きしめた。
「落ち着いて……」
なぜそう言ったのか、自分でもわからなかった。
彼に聞こえているのかどうかもわからなかった。
それでも、言わずにはいられなかった。
「ここにいるよ」
涙が頬を伝って落ちるのを感じた。
背後で、鈍い音がした。
そのあと、ローサのうなり声が消えた。
クラウディオがキッチンにいた。
手にはナイフを持っていた。
「俺がやる」
僕は首を横に振った。
「いや」
デレクが自分のナイフを僕に渡した。
クラウディオは動きを止めた。
何も言わなかった。
僕はエミールの頭に手を置いた。
一瞬、焚き火を囲んでいた夜を思い出した。
あの会話を。
彼を見つけるという約束を。
サムが見つけたプレートを。
「ごめん……」
エミールが再びうなった。
僕は一瞬、目を閉じた。
そして、彼に残された命を終わらせた。
彼の体は動かなくなった。
どれほど長い間、そのままでいたのか、覚えていない。
ただ、静寂だけを覚えている。
サムは泣いていた。
ローラの顔は涙で覆われていた。
エミリーはドアのところで立ち尽くし、目をそらすこともできずにいた。
クラウディオでさえ、身動きひとつしなかった。
デレクがゆっくりと近づき、僕の肩に手を置いた。
「二人を連れて帰ろう」と彼は静かに言った。「きちんと埋葬してやる」
僕は答えなかった。
ベッドを見つめた。
血に染まったシーツの間に、おもちゃがいくつかあった。
彼の小さな兵隊のおもちゃ。
彼は変異していく間も、それを握っていたのだ。
そのとき、今でも書き記すのがつらいことを理解した。
世界は終わってしまったのかもしれない。
僕たちは街全体を、家族を、友人を、家を失うことだってある。
それでも、いくつかの喪失は、すべてが始まったばかりの頃と同じように痛み続ける。
デレクは軍用ハンヴィーを探しに外へ出た。
僕はエミールのそばに残った。
一人にしたくなかった。
数分後、彼が戻ってきた。ほかの仲間たちにも手伝ってもらい、僕たちは遺体を車に積み込んだ。
ローサとエミールは毛布で覆われた。
移動中、誰も口を開かなかった。
ハンヴィーのエンジン音は、もう何も言うことのない僕たちには、あまりにも大きく聞こえた。
街の郊外にある、小さな木造の家に身を寄せることになった。
太陽は沈み始めていた。
光はオレンジ色を帯びていたが、風は冷たかった。
僕たちはハンヴィーの側面に固定されていたシャベルを取り出した。
穴を掘り始めた。
二つの穴。
二つの墓。
誰も一言も発しなかった。
言葉は必要なかった。
女性たちは家の中に残り、静かに泣きながら、夜を過ごすために手元にあるわずかな物資を準備していた。
僕たちは遺体を下ろした。
毛布で覆った。
そして、土をかけ始めた。
一杯。
もう一杯。
さらに一杯。
作業を終えると、僕はシャベルを地面に突き立てた。
エミールの小さな墓の前に立ち尽くした。
すべてがこんな形で終わるなんて、信じられなかった。
一度くらいは、物事がうまくいき始めたと思っていた。
仲間たちと合流できた。
二人の居場所もわかった。
進むべき道もあった。
それなのに今、ローサとエミールは土の下にいた。
デレクやクラウディオたちは、少しずつその場を離れ始めた。
僕を一人にしてくれた。
僕は首を横に振った。
泣いた。
そして、もう一人の自分が現れた。
いつも犯人を探そうとする自分が。
トンネルの連中に、もっと厳しく接していれば。
一つひとつの行動を、もっと綿密に計画していれば。
もう少しだけ、他人を疑っていれば。
もしかしたら、すべて違っていたのかもしれない。
あるいは、そうではなかったのかもしれない。
わからなかった。
墓の前にひざまずいたまま、一時間以上が過ぎたと思う。
掘り返されたばかりの土に両手をついていた。
冷気が服を通して体に染み込み始めた頃、背後から足音が聞こえた。
デレクだった。
「ジェイコブ……」
僕は答えなかった。
「これを聞いてほしい」
僕はゆっくりと立ち上がり、彼についてハンヴィーまで歩いた。
デレクがドアを開けた。
彼は動きを止めた。
「待って、聞いてくれ」
車内にはローラ、サム、エミリー、ブリサがいた。
みんな心配そうに僕を見ていた。
デレクが無線機の電源を入れた。
最初は雑音しか聞こえなかった。
そのあと、声がした。
何千人の中にいても聞き分けられる声だった。
「こちら、タバタ・ベネット軍曹。地域内のすべての軍用周波数に向け、継続送信を行う。『敵対者を排除せよ』という命令は撤回された。繰り返す。『敵対者を排除せよ』という命令は撤回された。残存部隊は、避難のためセクターB2へ集合せよ」
僕は動けなくなった。
彼女だった。
タバタ。
生きていた。
彼女は命令を撤回させることに成功していた。
送信は雑音に途切れながら続いた。
「空港へ、ジェイコブ……」
最後に、そんな声が聞こえた。
信号が途切れ始めた。
「こちら、タバタ・ベネッ……軍曹……」
デレクが無線機の電源を切った。
誰も何も言わなかった。
僕はハンヴィーの座席に腰を下ろした。
笑うことができなかった。
泣くこともできなかった。
ただ、考えることしかできなかった。
タバタのこと。
エミールのこと。
ローサのこと。
僕たちがしてきたこと。
失ってきたもの。
そして、もう二度と変えられない、数々の決断について。
サムが近づいてきた。
彼女は僕の肩に手を置いた。
「ジェイコブ……」
僕は彼女を見た。
「きっとうまくいくよ」
僕は答えられなかった。
デレクが静かに口を挟んだ。
「そっとしておいてやろう。頭が落ち着いてから、自分で決めるさ」
一人、また一人と、みんな家の中へ戻っていった。
空は灰色に変わり始めていた。
車のドアの一つから風が吹き込み、僕の顔を打った。
僕は一人きりでそこに座り続けた。
無線機を見た。
それから、小さな丘の方へ目を向けた。
掘り返されたばかりの土の上に、二つの木製の墓標が突き出ていた。
僕は再び無線機の電源を入れた。
「こちら、タバタ・ベネット軍曹……」
目を閉じた。
また涙があふれた。
彼女の声を何度も何度も聞いた。
同時に、エミールとローサの墓を見つめていた。
二人を失った。
だが、もう一人が生きていることを知ったばかりだった。
痛みと希望は、同時に存在できるのだと、僕は初めて理解した。
もう言うことは何もない……




