↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/31

XIX — 「ヒーロー気取りはやめて、馬鹿」

ジェイコブがほかの人たちのために命を危険にさらし、姿を消すたびに、誰かが代わりに記録を書かなければならない。もう珍しいことでもないと思う。

戻ってきたら、平手打ちを食らわせてやる。

たぶん、二発。

彼なら何が起きたのか書き残してほしいと思うだろう。だから、最初から話すことにする。

私はタバタ・ベネット。重要な情報が入ったブリーフケースを回収するため、石油プラットフォームへの潜入任務に派遣された。サディアス博士から渡された紙には、3つのコードが書かれていた。3355、6710、6711。

すべては罠だった。

午前10時。

基地を出発した。

出発する前に、ジェイコブに別れを告げた。そのときは、彼と丸一日以上も会えなくなる最後の機会になるとは思っていなかった。

分隊はマルコ、ジャック、サラ、ケン、そして私で構成されていた。施設に侵入し、ブリーフケースを回収し、日が暮れる前に戻るために必要な装備を携行していた。

午後1時。

プラットフォームのある海域に到着した。

車両は木々の間に隠し、そこからはボートで進んだ。海は穏やかだった。これから目にするものを考えれば、あまりにも穏やかすぎた。

午後1時20分。

到着。

プラットフォームは死体で埋め尽くされていた。

感染者、科学者、軍人。ロシア人もいれば、私たちの部隊の人間もいた。

マルコは数秒間、その光景を見つめた。

「ひどい有様だな」

私は答えなかった。

「周囲を確保し、中央コンピューターを探して」と命令した。

「了解しました、軍曹」

私たちは分かれた。

海の真ん中に、これほど静かな場所があるとは思わなかった。水の上に造られた砂漠のようだった。太陽が金属の構造物を照らし、風が緩んだ金属板を揺らしていた。波がプラットフォームの支柱にぶつかり、絶え間ない音を立てていた。

数分間、そこはほとんど穏やかだった。

穏やかすぎた。

ジャックから無線が入った。

「中央コンピューターを見つけました。どうぞ」

「コマンドを起動し、ブリーフケースを探して、撤収して。どうぞ」

サラが小さく笑った。

「思っていたより早かったわね」

彼女の言うとおりだった。

太陽が真正面から照りつけていた。カモメがプラットフォームの周囲を飛び、風が金属の構造物の間を吹き抜けて口笛のような音を立てていた。

そのとき、ケンの声が聞こえた。

「軍曹……こちらのコンテナから、内部で妙な音が聞こえます。どうぞ」

私は足を止めた。

「どんな音?」

返事はなかった。

再び無線が入った。

「コード起動……」

通信が途切れた。

その直後、爆発が起きた。

続いて、もう一度。

さらにもう一度。

プラットフォーム全体が揺れ始めた。

「一体何が起きたのよ!?」私は無線に向かって叫んだ。

構造物の間から煙が上がった。

次に、炎。

そして、感染者たち。

「軍曹、感染者がそこら中にいます!」マルコが叫んだ。

「全員、中央へ! 今すぐ!」

私は何度も繰り返した。

私たちは走った。

全員がたどり着けたわけではなかった。

爆発に巻き込まれた者もいれば、感染者に襲われた者もいた。

私たちはどうにかプラットフォームの中央部に集まった。

脇には、階段のついた小さな塔があった。感染者から距離を取り、高い場所を確保するため、私はサラと一緒に上った。

そのとき、叫び声が聞こえた。

「助けてくれ!」

ケンだった。

負傷していて、足を引きずりながら走っていた。

彼が塔へ向かってくる間、サラと私は銃を撃ち続けた。

「頑張って、ケン!」

彼はどうにかたどり着いた。

構造物にもたれかかるように倒れ込んだ。

サラが彼のそばにひざまずいた。

「大丈夫?」

「脚に金属片が刺さった」

私は彼を見た。

ズボンには、すでに血が染み込み始めていた。

「どうしてこうなったの?」

「コンテナの爆発だ」

「サラ、出血を止めて。金属片は基地で取り除いてもらう」

「了解しました、軍曹」

私は無線機を手に取った。

「ジャック? マルコ? 応答して。そちらの状況は? どうぞ」

数秒間、雑音しか聞こえなかった。

ケンは苦しそうに息をした。

「ジャックは中央コンピューターのところにいた……部屋全体が吹き飛んだ」

私は一瞬、目を閉じた。

「くそっ」

「マルコは?」

「見ていない。周囲を確認していた。ほかは何もわからない」

私はもう一度、通信を試みた。

「ジャック? マルコ? 応答して。どうぞ」

返事はなかった。

青空が煙の向こうに消え始めていた。

炎が海面に映っていた。

波の音に代わって、感染者たちのうなり声が響いていた。

午後3時。

ジャックとマルコから、いまだに連絡はない。

午後4時。

最後の爆発がプラットフォームを揺さぶった。

どうやら、C4爆薬の一つがほかの爆薬と同時に爆発しなかったらしい。

これで、私たちが閉じ込められたことに疑いの余地はなくなった。

午後6時。

増援が来るかどうか、わからない。

ハミルトンと大尉のことを考えると、おそらく来ないだろう。

数日後には、彼らは空港へ移動する予定だ。

つまり、私たちは自力で生き延びなければならない。

午後7時。

太陽が沈もうとしている。

感染者たちは下にいる。

立ち去ろうとしない。

午後8時。

いつか誰かがこれを読んで、なぜ私たちが下へ降りなかったのか疑問に思うかもしれない。

答えは簡単だ。私たちは包囲されている。

半数を始末するだけの弾薬すらない。

爆発のとき、ケンはライフルを失った。

サラの弾は20発。

私の弾は14発。

ケンを援護するために、あまりにも多くの弾を使ってしまった。

午後9時。

選択肢がなくなりつつある。

午前1時。

話をすることだけが、私たちの心を落ち着かせてくれている。

あとどれだけ耐えられるのか、わからない。

サラはケンの隣に座っている。

「きっと助けが来るわ」と彼女は言った。

ケンは海を見つめた。

「もう4時間くらい前には着いているはずだったのに……」

サラが私を見た。

「軍曹?」

「何?」

「いえ、何でもありません」

私は彼女を見つめた。

怖がっている。

私たちは全員、怖がっていた。

「何を言おうとしたの?」

サラは視線を落とした。

「怖いんです」

私が答える前に、無線機が作動した。

「タバタ? 誰か聞こえるか? どうぞ」

私は動きを止めた。

どこで聞いても、その声を聞き間違えるはずがなかった。

「ジェイコブ!?」

「聞いてくれ。時間がない。合図を出したら、ヘリポートのプラットフォームまで走るんだ。どうぞ」

私は下を見た。

感染者が多すぎた。

「無理よ! 周りを囲まれている! どうぞ」

「やるしかない。合図を出したら、道を切り開いて進め。いいな? どうぞ」

私はサラとケンを見た。

「わかった。どうぞ」

通信を切った。

「準備して」

サラが私を見た。

「どうするんですか?」

「合図が来たら、着陸地点まで道を切り開いて進む」

「もし、たどり着けなかったら?」

私は彼女の目をまっすぐ見た。

「たどり着くわ」

ケンは首を横に振った。

「俺は走れません、軍曹」

「サラ、彼をできるだけ速く移動させて。あなたは撃って、彼を援護して」

私は階段を指さした。

「私が先頭に立つ。必要なら後退して、二人を援護する。離れないで」

サラはうなずいた。

「了解しました、軍曹」

ケンも同じようにうなずいた。

私たちは階段の前に並んだ。

そして、待った。

どれくらいそこにいたのか、もうわからない。サラが口を開いた。

「この音は何?」

遠くから、ヘリコプターのローターが風を切る音が聞こえた。

「ヘリコプターか?」ケンが尋ねた。

そのとき、無線機が再び作動した。

「今だ!」

ジェイコブの声だった。

私は持っていた唯一の赤い発煙筒を取り出し、できるだけ遠くへ投げた。

赤い光が、私たちから離れた場所に落ちた。

感染者たちが分散し始めた。

「今よ!」

私たちは階段を下りた。

ヘリポートまでの道を塞ぐものすべてに向かって発砲した。

ローターの音が、秒ごとに大きくなっていった。

「走って! 走って!」私は叫んだ。

一発一発が重要だった。

ケンは苦労しながら進んでいた。

サラは彼を支えながら発砲していた。

私たちは階段にたどり着いた。

Hの文字が描かれた緑色のヘリポートは、すぐ上にあった。

感染者たちが階段を上り始めた。

二体ずつ。

「弾切れだ!」ケンが叫んだ。

サラが下を見た。

「上がってくるのが速すぎる! 間に合わない!」

そのとき、大口径の銃による連射が階段をなぎ払った。

上ってきていた感染者たちが倒れた。

それでも、まだ数が多すぎた。

私は後ろを振り返った。

風が吹き、髪が舞い上がった。

ヘリコプターのライトがヘリポートとプラットフォームの広い範囲を照らした。

そして、そこに彼がいた。

ジェイコブ。

彼は銃座を離れ、ライフルを手に私たちのほうへ走ってきていた。

軍服を着て、血に染まった白い毛布を持っていた。

「上がれ!」彼が叫んだ。

私はケンが上がるのを手伝った。

サラがその後に続いた。

私たち3人が上に着くと、ヘリコプターは上昇を始めた。

そのとき、ジェイコブがまだ下にいるのが見えた。

「だめ!」

私はパイロットのところへ駆け寄った。

「戻って! 彼がまだ乗っていない!」

ハリーが通信するためのヘッドセットを私に渡した。

「引き返せません、軍曹! あいつには計画があるんです!」

「引き返しなさい! 命令よ!」

「私はすでに大佐の直接命令に背きました。もう一度背くことはできます。でも、ジェイコブの計画を台無しにはできません」

私は歯を食いしばった。

「ハリー!」

「すみません」

ヘリコプターは上昇を続けた。

私は下を見た。

ジェイコブの姿が、どんどん小さくなっていった。

そして、煙の中に消えた。

その後、何が起きたのかはわからない。

それが、何よりも私を腹立たせる。

私はヘッドセットを操作パネルに叩きつけた。

壊れた。

もう一度彼の姿を見ようと窓に近づいたが、すでに不可能だった。

そこに残っていたのは、炎の光と感染者たち、そして闇だけだった。

キャンプに到着すると、武装した分隊が私たちを待ち構えていた。

彼らはハリーを拘束した。

サラとケンは、そのまま医務室へ連れていかれた。

私はハミルトンのところへ向かった。

入室の許可を待つつもりはなかった。

「今すぐ戻る必要があります! ジェイコブがまだあそこにいます!」

ハミルトンは、私をさらに苛立たせるほど落ち着いた様子で見つめた。

「ベネット軍曹、まず第一に、私に対してそのような口の利き方をするべきではない」

私は答えなかった。

「第二に、あの馬鹿には何もするなと警告しておいた。あいつは無許可でヘリコプターと武器を盗み、自分勝手な『作戦』を実行するという厚かましい真似をした」

「彼はまだ外にいます!」

「生きて戻れば、重い処罰を受けることになるだろう。もっとも、生きて戻れるとは思えないが」

私は彼を見つめた。

「感染者に殺されなかったとしても、ロシア人に殺されるだろう」

血が沸騰するようだった。

私の手が握り締められた。

「言いたいことはそれだけか?」彼は強調するように言った。

私は彼を殴った。

何も考えなかった。

ただ、殴った。

ハミルトンは床に倒れた。

「今すぐこいつをここから連れ出せ!」彼は頬を押さえながら叫んだ。

二人の兵士が私をテントの外へ連れ出し、その場で放した。

デレクとサムがそこにいた。

二人は私を見た。

「いつ始める?」デレクが尋ねた。

私はまだ息を切らしていた。

「聞いていたの?」

サムがうなずいた。

「聞いていた」

デレクは私の手を見た。

「何か計画はあるのか?」

「ハリーと話さなきゃ」

私は拘束者たちが連れていかれた場所を見た。

「ジェイコブの計画を知っているのは、彼だけよ」

サムが腕を組んだ。

「どうやって彼のところへ行く?」

「まず、目立たないように武装する必要がある」

私は兵舎のほうを見た。

「監視されている。明日の朝、行動を起こすわ」

私は再び日記に目を落とした。

馬鹿なジェイコブは、自分の計画をここに書き残していなかった。

午前9時。

目を覚まし、脱出の準備を始めた。

拳銃と弾薬をいくらか手に入れた。

警備兵たちは、私を過剰なほど監視していた。

大尉か大佐が、私を見張るよう命じたのだろう。

私はジェイコブのグループのテントへ向かった。

デレクはすでにそこにいた。

「ハリーと話せた?」

「いいえ」

「どうして?」

「誰も中に入れないの。警備兵がずっと張りついている」

サムが彼の後ろから現れた。

「それで、どうする?」

私は二人を見た。

「それでも行くわ」

デレクがわずかに微笑んだ。

「いいね。どこから?」

「ついてきて」

私たちは音を立てずに移動した。

誰にも気づかれないように。

いくつものテントの列を通り抜け、私がよく知っている場所にたどり着いた。

フェンスの隙間だ。

私は何度もそこから外へ出たことがあった。

開口部を隠していた茂みをどかした。

「ここよ」

私は動きを止めた。

隙間は塞がれていた。

新しいフェンスが設置されていた。

「何なの、これ……?」

「タバタ、お前の特徴を一つ挙げるとすれば、行動がわかりやすすぎるってことだな」

私は振り返った。

大尉が私たちの後ろに立っていた。

周囲には、何人もの警備兵がいた。

「彼女を独房へ連れていけ」

私は大尉に向かって一歩踏み出した。

「今すぐ開けなさい」

警備兵の一人を押しのけようとした。

無駄だった。

大尉は首を横に振った。

「すまない、軍曹。ハミルトンのやり方には私も賛成できない。だが、直接の命令を無視することはできない」

彼はフェンスを指さした。

「これが君にとって最善なんだ」

それからデレクとサムを見た。

「君たち二人については、大佐から何も指示されていない。だから、自分たちのテントへ戻れ。これ以上、今まで以上に事態を悪化させるな」

私は何も言わなかった。

同意したからではない。

これ以上話し続けたら、また誰かを殴ることになるとわかっていたからだ。

一日はあまりにも早く過ぎた。

午後8時。

私はここに置き去りにされた。

一人で。

ひどい独房の中に。

どれくらい書き続けているのか、もうわからない。

誰かが、座って待つことなどできないと決めたとき、こういうことになるのだろう。

脱出する方法を見つけるまで、日記を更新し続ける。

ハリーは別の独房にいる。

連絡を取ることはできない。

ジェイコブの計画がわからない。

そのことが、自分で認めたくないほど私を不安にさせている。

午前8時41分。

ハミルトンが私に会いに来た。

片目が青黒く腫れていた。

彼は鉄格子の前で立ち止まった。

「タバタ、君の言い分は理解している」

私は答えなかった。

「軍曹にとって、部下を守ることがどれほど重要かはわかっている。だが、これ以上、犠牲者を出すわけにはいかない」

私は彼をじっと見つめた。

「あの若者は死んだ」

私は歯を食いしばった。

「サラとケンから報告を受けた。あのプラットフォームは感染者の巣窟だ」

私は答えなかった。

言うべきことなど何もなかった。

私は鉄格子越しに唾を吐いた。

唾は彼の軍服に、忌々しい勲章にかかった。

ハミルトンは私を見つめた。

「わかった」

彼は背を向け、立ち去った。

午後10時04分。

誰も来なかった。

誰も知らせを持ってこなかった。

ジェイコブについて、何もわからない。

午後8時37分。

外で何かが起きている。

人の動きが多すぎる。

叫び声が聞こえる。

走る足音。

命令する声。

何が起きているのか、わからない。

私は立ち上がり、鉄格子に近づいた。

そのとき、廊下をこちらへ走ってくる足音が聞こえた。

大尉が現れた。

取り乱しているように見えた。

彼は鍵を取り出した。

私を見た。

「タバタ」

扉を開けた。

「来い。君が興味を持ちそうなことが起きている」

何が起きているのか、わからない。

だが、必ず突き止めてみせる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。