第七十八話 疾風と迅雷
アグリオスは焦っていた、目の前に鎮座する最強の老兵に…
「どうした、こんのか?ならばこっちから行く…」
それは一瞬、立った一本の緑の魔力の槍が彼を貫くのは瞬きすら許さぬ一瞬の出来事。
「ぐはぁ!」
胸を貫かれ、全身の皮を剥され、ニヒツとカポネが必死に遂げた偉業を一瞬で無しえる強さ。
「その”骨組み”、それがお前さんの姿ドナ?」
「初メテ、御目ニカカル…ゴ老公…」
「なんじゃ、もう壊れかけドナ?拍子抜けも甚だしい…」
「業火炎!」
一瞬の隙をついて放った、超巨大な火花。
「暴風」
それもまた、とてつもない突風を前に無力…
「知ってますドナ?魔法の属性の中で最も殺傷能力が高い属性…それが風なんですよ。」
現れたのは、無数の槍を周囲に展開し、突風を纏いてその背後に風の魔神を使えさせる最強の風使いの姿。
「わしが、伝説と呼ばれる前の名…それを…」
彼こそは…
「”疾風系最強の風使い”・暴風のガイル」
その名を聞いて、その姿を見て、アグリオスの全身が再び凄まじい炎に包まれる。
「温度を上げた、”プランク温度”でござる。」
「速度はどうする?」
燃え盛る黄金の骨、それを覆うように天空から呼び寄せられた漆黒の装備。
それは鎧の隙間からバチバチと電撃を走らせて存在し、あまりの高電圧に周囲の空間が歪む。
「”雷神の鎧!”、これを纏いし時、拙者の全身はプラズマと化しその速度は物理法則の枠から外れて無限の上昇率を誇る。さながら”宇宙速”!音も光も置き去りにした、宇宙の最大速でそなたを迎え撃とう…」
「そうか、それは楽しみだドナ…」
両者のあまりの気迫に空間は歪み、世界は震え、重力さらに重くなる。
そして両者、全くの同時にお互いに武器を重ねる。
「「いざ!尋常にぃぃぃ!!!勝負!!!」」
アグリオスが放つ剣をまるで決してつかめぬ空気の如く、のらりくらりと交わし、その隙をついてすかさず突きをかますガイル。
「鳴神ぃぃぃ!!!」
アグリオスが振り下ろした剣、それに込められた凄まじい電撃が落雷の如くのしかかり受け止めたガイルを襲う。
「乱回転!!!」
すかさずガイルは、受け止めた槍を回し、その強烈な突風で落雷を相殺。
「多段・疾風之槍!!!」
強力な一撃の後に必ずできる一瞬の間、そこですかさず高速で動く風の槍を量産しアグリオスに無数の槍を喰らわせる。
「烈火!灼熱演舞!!!」
それは火球、無数の火球の弾幕、それが無数の風の槍を相殺。
「喰らえ!!!これが拙者最大の一撃ぃぃぃ!!!」
ガイルは槍で作った隙を使って距離を取るが、アグリオスはそれを待っていたかの如く叫び、極限まで魔力を貯めて放つ。
「”極”!炎帝ぇぇぇ!!!火炎竜王ぉぉぉ!!!」
それは天高く宇宙から舞い降りたような火炎の竜、迸る熱気と纏いし電気、二つが合わさり凄まじい光速を超えた異次元の速度で、ガイルに襲い掛かる。
「速度よし、火力申し分なし…しかし兄さん、火属性にも”竜”があるように、風属性にも”同じ”もんがあるとは…考えなさんかったか?」
ガイル、防衛のために纏っている凄まじい風を止め、丸裸となった状態でその一撃を迎え撃つ。
「もらったぁぁぁ!!!」
「”暴風竜”…」
ガイルの放ったそれが出現すると同時に、周囲の空気が薄くなり、瓦礫達が引き寄せられて宙を舞い、巻き込まれてはみじん切りになる、天から降り立った宇宙の竜を迎え撃つため、その風は世界を揺らし、今世紀最大の天変地異を予感させる。
「地を這ってしか存在できぬ暴風がぁ!!!」
「天高き王座で踏ん反り帰った焔が偉そうに…」
二対の竜が互いを見合い、互いに近づきそしてぇ!
「「行くぞぉ!」」
「暴風竜ぅぅぅ!!!」
「火炎竜ぅぅぅ!!!」
二つの天災が衝突、その衝撃は眩い光を生み出し、凄まじいエネルギーの爆発を生みついに…
”天空都市・半壊”。
「はぁ~はぁ~若人よ、やはり歳は取りたくないもんじゃわい。」
「戯け!拙者は齢3千を超えとるでござんす…」
「ほう、それは飛んだ無礼を…先輩」
二人は無事、多少のかすり傷で済むとは、どれだけすればこの二人は倒れるのか…
少なくとも、すでに人の戦いではない。
そして当然、二人は自信の手で破壊した弱った地盤を踏みつけ…
「「はぁぁぁ!!!」」
両者一歩も引かず、その武器を再び交える。
「このままでは拉致があかんでござんす、ならば…」
アグリオスは再び天に手を上げ、空中にあるスーキズ・ブラズニルから魔道具の貯蔵を引き寄せようとする。
「ほう、なるほどあれか、無限に武器が出て来る貯蔵庫。」
「そうだ、あれがある限り拙者の武器、防具を何度壊して意味はなし…なんなら…」
アグリオスは、天に挙げた手平を固く閉じ、指を二本だけ立ててから曲げた。
「スーキズ・ブラズニル!!!惑星崩壊砲」
アグリオスの動作と同時に、船の砲台が全てこちらを向き、ガイルの方へと放たれる。
「誰」
ガイルはすかさず、背後に風神を出現させ…
「あいにくとこの地上を壊されちゃ構わんからな…」
捨て台詞を吐いて、それに指示をするかの如く指を船の方へ指を指す。
「風神之軟衣…」
桃色の風で作られた布は、向けられた光の砲撃を全て包み込み無力化。
最後に袋を縛り、それを”オブラート”に包まれた菓子のように風神が飲み込み、完全に消失させる。
(ドーン!)
飲み込んだ風神の体内で起きた凄まじい爆音、それは包んだオブラートが中で溶け、消火のさいに胃の中で爆発した事を表す。
「バカ…な…」
「悪いのぉ~うちの風神は喰いしんぼうなんドナ…」
アグリオスが現実を飲み込めない好きを付いて、ガイルはすかさず槍を腹に突き立て、半壊したことで出来た崖にアグリオスを連れて行こうとする。
「楽しかったぜ、先輩。でも、もうここで終わりドナ…」
「終わらぬさ…なぜって?もう気づいているんだろう?」
押し切ったガイルの槍の一撃により、アグリオスを崖から突き落とさせ、天高くそびえたつこの空中としから落下…
かに思われた。
「炎とは噴射力、全身を焼いた拙者は既に落ちぬ…なぜなら”飛べる”のだから…」
「ははぁ!…わしは風、風は飛べるねぇー」
両者、飛行能力あり!、つまり落下死による死は、両者の強大な魔力の枯渇が無い限りありえない。
「さぁ-!踊り明かそうじゃぁーないか!」
「お相手しよう…」
再び混じり合う、疾風と迅雷、しかしガリルはその構えた槍を下ろし、妙な手つきでアグリオスが予想だにしない技を起こす。
「暴風」
(突風!?血迷ったか、このアグリオスに同じ技が二度通じると…)
しかし、それが向けられたのはアグリオスでは無く、それが保有する戦艦。
「あの船じゃろ、武器の貯蔵をしとるのは…」
「補給地点を潰したか…」
アグリオスの一瞬の動揺、視線誘導、それにすかさずガイルは気づき一瞬で攻撃を終える。
(しまった!)
「”矛”は潰した、そして今…」
アグリオスの雷神の鎧が、木っ端微塵に粉砕され、その姿があらわになる…
「これにて、身を守る”盾”もない…」
「矛を潰しただと?剣はまだ拙者の手に握られて…」
掲げたそれに既に刃は無く、戦いの中ですり減ったことは明白であった…
(拙者の”雷神剣”が…この短時間で…)
「神話級の魔道具じゃったんだろうが、そんなもんはわしには関係ないドナ。とにかくこれでお前さんはもう…”後がない”。」
「戯け!!!」
武器、貯蔵、鎧を失ってなお、アグリオスに残された最終最後の凶器、それは…
「幻想魔法…”人外摩天・灼熱地獄”」
ガイルとアグリオスの周囲に展開された小さな結界、しかしその中は無限の空間が広がり、その見た目はまるで…
「吹き荒れる溶岩、燃え盛る炎、監視するは巨人の目…まるで地獄…ドナ…」
「さぁー!ここは拙者の”心象領域、ここに踏み入ったら最後、地獄から生者が生きるすべなし…でござんす。」
アグリオスの展開した幻想魔法の効果は不明、しかし領域内である以上、攻撃は絶対必中、ガイルがここで生き残るためには、アグリオスの総合魔力量”22万”中、残された”15万”の魔力が尽きるまで…
”絶対必中の炎の魔法を受け流し”ながら”アグリオスの猛攻を受けきらねばならない”。
「雷も、炎も、同じく”光”の派生、その性質は近い故に使いこなせば”無敵の手段とかす”」
「いいえて妙だな、お前の炎は”曇って”見えるドナ…」
ガイルは全身に風を纏うことで、空間ないで無限に放たれる絶対必中の炎の遠隔攻撃を無力化し、超超超光速で動きまわりながら、突進を続け、連撃を喰らわせてくるアグリオスの猛攻をその手に持った槍で対処し続ける。
しかし…
「どうした…もう終わりか?」
防御にしようする魔力の制御に頭の処理を咲かれ、その上での光速戦闘に、流石のガイルも隙がうまれたのかその一撃を受けてしまう。
「おいおい…老い先短い老兵の腕を…”取る馬鹿がいるかよ”…」
「”ここにいる!!!”」
ガイル、本日初めてのダメージ、それと同時に伝説と呼ばれた生涯初の…
”致命傷”である。
「ここまでだ”伝説”…積みでござんすな…」
「いやいや、まいったまいった…わしも侮られたもんだぁーこの程度の攻撃で…”勝った”と思われるとは侵害だ…」
撤回、ガイルのあれは致命傷などではない。
ガイルにとって武器を握れなくなり、出血死すらあり得る今の一撃は…
「”かすり傷だ”…」
ガイル、そう言い放って本日初、いやその生涯で二度とない”例の槍”に巻かれた赤い包帯を解く…
「ようやくか…」
「おい兄ちゃん、この景色…二度と忘れるなかれよ…”もう二度と見れねぇー”、”絶景”だからな…」
開放された槍の名は、”アロンダイト”、このメディウス・ロクスに伝わる名だたる魔導具の中でも…
かの”ライト・ドラゴンヘッド”が保有する聖剣・”覇王剣”に匹敵する神話級を超えた…
”超次元級の魔剣”
「換装ぉ!我、汝なり、我!、竜狩りなり!、我!!、天を貫く汝なり!!、我…願う…」
魔剣は、所有者に応じてその姿形を変え、現在はガイルの精神に呼応し”槍”に転じている。
そしてその名も当然、所有者が決める権利を持つ…
その名を…
「我が魔槍!”竜槍”・ジ・重装備」
槍の開放と同時に、纏とった鎧は深紅に光り輝く…
その深き赫は、裁かれた竜の返り血、その硬度は、原料である竜の遺骨、そしてその槍の一撃は…
「残念だったのぉーあんさん、もうお前さん…積んどるよ…」
「なにをほざこうがぁ負け犬の遠吠え…聞けるほど耳はよくない…」
「ならばなぜ、わしがこれを出し渋っておったと思う?」
「だから言っているだろう…」
動いたアグリオス
「夢見事を聞くつもりはない…と…」
アグリオス、渾身の間合いはその心臓に突き立てた剣、それを一瞬、迅雷猪突の一瞬で貫かんとする。
しかし…
(カン!)
鈍い音が周囲を包む…
「そんなはずは…」
「それはなぁーあんさん…この槍の一撃は”一国”を”撃つ”からじゃ…」
放たれた、ついに放たれた第一射、零距離で背中から、地面に向けて投げつけられた槍をアグリオスは当然よける事も出来ず直撃…
そしてその槍の先端から放たれた凄まじい光の粒子と共に貫かれ、アグリオスの胴体にぽっかり空いた穴と共に地獄の底まで貫かれた。
「二撃打てば…」
しかしガイル、鬼を超えた鬼畜、その猛攻はしかしの如く連鎖して止まらない。
「くっ!スルトぉぉぉ!!!」
動き出す、絶対必中の空間内での魔法による攻撃、監視していた巨人が動き出し、ガイルを一本地球サイズの世界を貫く無数の剣で、ガイルに襲い掛かる。
「”五大を撃つ!”」
しかしガイル、すかさず、音どころか光どころか時すら置き去りにした速度で、アグリオスの胴を貫いた槍を持ち、アグリオスの下に入っては、残った下半身に向けてさらに強力なもう一撃を放つ。
「ぐぉぉぉ!!!」
残された首、三撃目…
「三撃打てば…」
「ファーファッファ!全く面白い!こいぃぃぃ!!!」
残された喉で、最後に残った首で、威勢よく掛け声を上げるアグリオスにガイルは…
「”世界を撃つ!”
言い切った、ガイルがこれまで槍を振るわなかった理由、それは一撃で一国を崩壊させる…
魔槍に込められた魔力が怖いから、二撃目からは初体験だったが、打ってみてわかった、確かにこれは…
(気持ちいい…)
二撃目で、五大国崩壊、三撃目でこの直径約13万キロのこの星を撃つとまで言い切った。
「最後まで…やれてよかった…」
満足、しかし消えぬ幻想世界を消すため最後に打つ四撃目…
「四撃…”宇宙を撃て…”」
その槍は四撃を経てついに…この1千億光年の宇宙を…撃った
「楽しい余興であった、アグリオス殿…」
幻想魔法崩壊、本体死亡確定、これにてアグリオス…
”撃破”!
「ナメテイタナ…オートマタノ…自動蘇生能力を…」
幻想世界崩壊後、その背後に現れたのは全回復を遂げたアグリオス。
「オートマタは破壊されるほど進化し、その能力を飛躍的に向上させる…今私は…”超速再生”を手にいれた…」
アグリオス、全盛期の肉体にて復活。
「化け物めが…」
ガイル、現世に戻った事で槍の性能を考え封印、実質的弱体化を受けた上で…
(ブシャー!!!)
その利き手、欠損により使用不可、暫定…
”復活後アグリオス”が優勢である。
「これで負けたら、次こそ言い訳がたたんが、それはいいのか?」
「幻想魔法の使用は危険と判断した、次は”剣”のみで押し切る!」
アグリオス、剣を構えてその場に静止…
ガイル、槍を握ってその場に静止…
「全自動操縦モード、ON。」
「これは!」
アグリオス、握った剣の名前を叫ぶ。
「勝利を運べぇ!拙者之剣…」
その剣、無数に分裂、アグリオスの周囲を取り囲み防衛…
(嫌な予感がする!?試してみるか…)
ガイルすかさず無数の槍にてアグリオスを攻撃…
(キン!キン!!キン!!!)
構築した槍1千本、全て疾風の速度の槍ながら一撃も届かず…
(この剣、あんちゃんの意志に関係なく全自動で動いている!?)
それだけでなく…
「巨人殺しの大刀…」
スーキズブラズニル崩壊後、初の武器の補給、財源不明、しかしその大刀…
「ぐはぁ…」
ガイル命中…
(どうして!?風で守っていたはずドナに!)
「教えてやろうか?」
アグリオス、余裕に話す、しかし疑問、アグリオスの喋る頭と動く体…
「やはりな…お前…」
”全くかみ合わず”
「全自動、拙者は生まれ変わり傲慢を捨てた…”もう負けない…”」
「負け犬の遠吠えは…どっちじゃろうなぁ~…。」
まさかの立場大逆転!つくのかこの決着!疾風vs迅雷…
こっから先は泥試合…次回に刮目せよ!




