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第七十七話 最強の者達


一撃…今まであれだけの戦力をもってして、勝てない…”ガルズガンド”を一撃で屠った。


それは、この空中都市と同程度の大きさの蛇だった。


誰もが唖然として、声すら上げられず、ただ屠られるのを待つのみとなるはずの大怪獣を…


超熱光線スーパーレーザー


その一撃で溶かし殺したと言うのだから、この女…


「はぁ~…他愛ない。」


まさに”最強”、商国誇る世界最強の魔道具使い、魔法騎士ならば誰もが憧れる王の五剣、”赤騎士”の称号は、本当にだてではなかった。


「ワンパンってマジかぁー」


唖然とするリップ、自分も加勢して再び蛇と交戦すると思っていた矢先にこれであるから至極当然の反応だ。


「何を驚く、この程度の敵。油断さへなければこのように…」

【”このように…”なんでやしょうねぇ~】


その直後、二人の背後に凍てつく冷気が走り、冷気の方向から先ほど倒したはずのガルズガンドの声が聞こえる。


「なぜ、生きている。」

【生きてる?いや、そもそも”死んでなどいなかった”が正しいと思うぜぇー】

「死んでいなかっただと!」

「おい!テメぇ!、適当ほざいてんじゃねぇーぞ、コラァ!」


確かに死んだ、確かにその頭を溶かした、原型すら残らず、顔はただれて消え去った。


そのはずだ、だれがどう見てもそのはずだったがしかし…


「ない…」

「あ”?なにがだ?」

「ないぞ…こやつの”遺体”が!」


その場に、その背後に確かにあったはずの巨大な死体が…彼の登場と同時に跡形もなく消えている。


【ネタばらしをしやしょう、俺の体は無数の細胞レベル”極省蛇”で構成されていやす。そしてその一体一体が本体、そのどれ一人でも残ればこの通り…】


ガルズガンドがそう語ると、彼女らの周囲に無数のガルズガンドの分身と思わしき者達が連なる。


「つまり、頭一つでは死なないと言うわけか…」

【察すが旦那、察しがよくて助かるねぇー…でも!】


通常、人型生物の細胞の数は約60兆個、その全てが蛇で、その全てが本体であり、その全てが分裂し、氷の肉体を形成すると言うことは…


(なるほどの、60兆体のこやつの分身を全て殺さねば殺せぬと言うわけか…)

(そんなの無理ゲーじゃん、てかそもそも…)


【シャーシャッ!状況が飲み込めたようっすねぇー、そうでやす、俺の分身は60兆体、そしてその体のほとんどが氷で出来ている故に!】


「「氷の中から、本体である一匹を探し出して攻撃しないと、実質ダメージにならない」」


【そうでやす】

約60兆体の分身を倒すと言う無理難題、しかもその本体は極省の細胞、それを見つけて潰さなければ分身一人倒せないと言う鬼畜。


この状況に二人はおののくどころか…


「いい戦闘データになる」

「無理ゲーとか、クリアするのが楽しみになってきたぜ。」


ワクワクしていた…


【シャシャ!それでは早速…”抵抗させていただきやす。”】


ガルズガンドが下を向いて、両手を交差させて五本の指を不自然に動かすと同時に、分身含めた全員の背後から先ほどの超巨大な大蛇が無数に生成される。


「ほほう、それならばわらわにも”考えがあるぞよ”。」


ガルズガンドの放つそれは、一体一体がハットとブルーノを一瞬で瀕死に追い込んだ蛇。


それが一体一体無数に、しかもその攻撃を放つ者の数は約60兆体。


「開放プロトコル開始…」


しかし、それに臆さず立ちすくむ赤騎士のその自信の正体は…


”これだ”…


「”熱光線レーザービーム全方位射程フルオールレンジ”」


それは放たれた、リップはすかさずに放たれる予兆を感知しその場から遥か上空へ音速で移動し避けた。


あの血の気の多いリップが、迷わずそれを判断するほどの攻撃、それは無差別、かつ超範囲攻撃、自身を囲う360°全方位に死角を許さない圧倒てきなビームの数。


その数なんと…


「60兆体と言ったか、ならばわらわは”6千兆個”のビームで応戦しよう。」


まさに桁が違い、圧倒的な氷の巨蛇をもろともせずに溶かし殺し、本体を探す必要もなくあらわれた分身の全身を溶かしきる。


(これが…”王の五剣”)


その実力、常識はずれ、まるで小学生が考えたかのような規模の遥かに違う戦闘力。


まさに最強、それでこそ最強の騎士たる所以…


しかし…


【待ってました、貴方の無駄打ちをね…】


それは唯一の四角…


(蛇が…地面から!)


当然、彼女は地上に立っている、空中都市たるこの街のコンクリートの上に立っている。


そこを狙うことは決してない、その隙をついたこの奇襲、彼女はどう対処するのか…


【これはまさに予想外、対処できないでしょう、王の五剣!】


ガルズガンドは知っていた、この間合いは彼女にとっても都合が悪い、なぜならレーザービームをここで放てば、”彼女も巻きまれてしまうから…”。


「それは、どの”レーザー”のことだ?」


迷わず、再び放たれた熱光線レーザービーム、それは先ほどまで蛇の巨体を一撃で屠っていた巨大なビームや、今なお放たれる無数のビームとも違う。


「ビームを小さくしてしまえば、巻き込まれる心配などなくなると言うものよ。」


極省、それは凄く細い糸のようなビーム、しかしだからこそ狙いは正確に…


「キュウ…」


その本体を打ち抜いていた。


「シャー!シャッシャシャッ…シャー!シャッシャシャっ…」

「何がおかしい!」

「おかしいさ、なぜって?放ってしまったからだぜ、その”ビーム”…」


ガルズガンドは喋っている、本体を貫かれてなお話、行動し、激しく感情をあらわにし、甲殻を限界まで上げている。


(パリン!)


その瞬間だった、ラモラスが事実に動揺している最中に、身に纏っていた機械の鎧が内部から”何ものか”により”はだけ”させられたのだ。


「そなた…どうして本体が打たれたのに動けているぅ!」

「本体?あぁ~”身代わり”の事か…」

「身代わりだと!」

「まぁー無理もねぇー、だって60兆体とか普通数えねぇーもんなぁー、”数人誤魔化しても”バレるわけねぇーよなぁー!!!」


ガルズガンドがやったのはこうだ、彼は自信の体内に本体となる蛇を”三体”飼っていた。


一体は、彼女に打たれる身代わり用、もう一人は一体目が死んだ後、動き出して彼女の注意を引く用、そして三体目は…


「つまり!俺は本体である蛇を複数たい体内に抱え!そしてその一体を旦那の鎧の中に潜伏させたと言うわけさぁぁぁ!!!」


これにより、細胞サイズの小さな蛇は鎧の内部にある制御装置を全て破壊し、ラモラスの身を守る無敵の鎧を外させた。


「旦那を包み、守る鎧が消えた今、絶対零度の寒さが立ち込めるこの街の中で…旦那が動ける”道理”が消えた。」

「覚えておれよ…”卑しい蛇”め…」

「そうだな、気が向いたらな…ってあれ、誰だったけあんた…」

「舐め腐りおって…」


その身を包み、絶対零度をしのいだ鎧を失ったことで、商国最強は絶対零度の氷に包まれ戦闘不能…


「ちょっとちょっと、あたいのこと忘れて!」


決着の直後、再び音速飛行で空中蹴りをガルズガンドにかますリップ。


熱光線ビームの余波は残っていただろうに、無理やりわたってきたな、旦那…」

「当然、あたいの魔法”吸収ドレイン”は健在よ…」

「そうですか、それは良かった。でも残念だ、もう旦那は俺には勝てない…」

「なに寝言ほざいてんのよ?」

「あれ?気が付きません?」

「気づくってなにが…」


リップは気が付いた、今確かに蹴りこんだはずなのに…前まで、見切れてもいなかったはずなのに…


「あんた…なに”避け”てんのよ…」

「シャーシャシャッ!俺は、怠惰な方でしてね。”スロースターター”って奴です、それでね…」


リップは気が付く、よくみると身なりが変わっている。


白蛇の色が…


「新たな名は…”白金蛇プラチナムスネイク”、どうです?神々しいでやしょう…」


なんと、ガルズガンドの全身が突如として発光した。


否、光を直接放っているのではなく、そのあまりの美しさに光が屈折せざるを得ないのだ。


そして、そんないきなりの”変体”に、困惑するリップ。


しかしそれも当然、リップは知らないのだ、ガルズガンドの真の能力を…


「そんで、さっきの話の続きですが、俺は蛇…つまり”脱皮”をするんです。」

「脱皮…だと…」

「そう、一定周期でその皮を変える…俺の場合は細胞レベルで丸ごとね…」

「だからなんだ、それがどうした、あたいの攻撃を避けた理由にはならねぇーだろうが!」

「なるさ、言ったろ?俺はスロースターターなんだ。」


言ってる意味がまるでわからない、リップにとってはそうであろうが、一度めの進行で騎士団のホーク・リヒトとの戦いで見せたあれの能力には、”衝撃の真実が隠されていた。”


「俺の能力はね、脱皮をするごとに全身の約60兆個の細胞全てを組み換え、前回の経験を蓄積し、”進化”する。脱皮と言うよりは、”変体”に近い性質をもった能力なんでやす。」


それはつまり、前回の戦いで自信の弱点だった、速度、絶対熱、吸収…そして熱光線を…


”彼は既に克服した”。


「んな無茶苦茶が通っていいはずがねぇー、そんなクソッたれな理屈で!今までのあいつらの努力が無駄になっていいはずがぁねぇー!」

「無駄じゃないですぜぇー、ちゃんと俺の進化へのかてになっている。」


そして、今のガルズガンドは、前回までの音速すら見切れなかった”魔術師タイプ”の魔法使いではなく…


当然、”戦士タイプ”でもない…


「それを無駄って言ってんだよぉぉぉ!!!」


リップの仕掛けた攻撃、高速の速撃、それを糸もたやすく避けるどころか…


絶対零度之氷雪剣グラキエース・グラディウス


反撃し、その両手を切断した。そう、彼はすでに遠近中に対応できる”魔導士タイプ”へと進化を遂げていたのだ。


「旦那の吸収ドレイン、手からの発動やすよねぇー。つまりは両手を取れば魔法は使えない、足を奪えば目障りな機動力も出せない…積みって奴ですぜ、旦那。」


しかしリップには、まだ一つ武器があった。


「油断したなぁ!”翼”を喰らいやがれぇぇぇ!!!」


彼女には、天翼族の立派な天使の翼がまだある。


それさへあれば、羽を使った遠距離攻撃に加え、空中での音速を超える機動力はまだ残っている。


(気に喰わねぇーが、ここらで一旦引くしか…)


「いっけねぇ、天翼族には翼があるんだった…”ちゃんと斬っとかないとな”…」


ガルズガンドの手により、空中に出たリップは氷の刃で翼を切り裂かれ墜落。


しかしどうやって?ガルズガンドは地を這う蛇のはず、どうやって空を…


「”翼”…前回の経験の中に確かにあった俺の脅威、そもそも蛇は肉食の鳥に弱い。もう克服したから、関係ないけどなぁー。」


そう語るガルズガンドの背中には…立派な”銀翼”が生えていた。


「リップさん、もう大丈夫ですよ。」


その瞬間、空を飛べた事に喜び地面を見るのが数瞬遅れたガルズガンドが、落下して肉がぐちゃぐちゃに弾けとぶ姿を見ようと落下地点に目をやった直後…


「話は全て聞かせていただきました、あなたが…”ガルズガンド”、その本体で間違いないですね?」


細胞分裂した分身、脱皮と言う奥の手、全て出し切った後に現れた、今だ一度も交戦していない未知の相手…


「僕の名は、”ニヒツ”、十三騎士団No.12!ニヒツ・トリビライザです!」


白髪の少年”ニヒツ・トリビライザ”の登場である。


「どうして?お前はアグリオスと…」


ガルズガンドの疑問は、その研ぎ澄まされた魔力感知にうより程なくしてわかる事になる。


「”わしドナ”」


それは十数分前、カポネと共闘し、突如乱入したシグルーンとそれに対峙するヴァイパーの両者が、戦闘不能になった直後の出来事だった。


「僕にはもう見えている、貴方方への勝ち筋が…」

「戯言っすね…」


シグルーンがニヒツに襲い掛かる、その直後。


『待て』


それは殺気、凄まじく高重力を感じさせるほどの殺気、圧倒てきな強者が放つ絶対隷属の殺気。


「誰ですか!」


振り向くニヒツに答えて、その殺気の主は名乗りをあげた…


「わし”ドナ”、…”ガイル・ドナーク”、しがないただの老兵ドナ…」


商国最強、ラモラス・ランサドールを凌ぐ、上級者ハイレベルのこの男。


生きる伝説と呼ばれ、名だたる最強の、裏番、フェル、カポネ、タトゥー、王の五剣、ラモラス、それら全ての人物が彼にだけは頭が上がらない、それほどまでに偉大かつ”強大”なこの男…


「どうして…ここに…」

「あの金髪の兄ちゃんは知り合いかい?」


それは、ベシルと共に消えた”虚”と呼ばれる男のことだった。


「そうだ、そなたはあやつの魔法、”テリトリー”にかかり…」

「”出してもらった”…」

「誰に!?」

「彼女に…」


その発言で理解した、そうだ、虚は敗北したのだ…


「ベスル・ラブ・アンベシル!」

「そう、彼女が…あの人が…出してくれたのじゃ。”例の鎖”でな…」


ベシルの持つ、”罪之鎖クライムチェインはあらゆる異能を無効化してしまう鎖、これにより虚の魔力で作られたあの異空間を解除し、ガイルをこの場所に舞い戻らせたと言うことだ。


「ならば!彼女は今一体どこに!」


アグリオスは焦っていた、もしベシルが、世界最凶の彼女がこの地にすでに帰って来ているなら、早急に退散を選ばざるを得ないからだ。


「安心せい…”今は”わしだけドナ、彼女は後から追いつくと言っておったがな…」


と言うことはと思考するアグリオス、彼女が到着するまでにかかる時間を即座に計算し、残された時間は後…


(数刻!)


正確に言えば、30分程度である。


「ならば!早急に方を付けねばなぁ!」


例え不死身の機械兵士であるアグリオスでも、不死性すら無効化するベシルの攻撃にを受ければ死んでしまう。


「あのぉ~私もいるんですけど!」

疾風之槍ゲイル・ランス


直後、ガイルはとてつもない速度で風の槍を無数に生成し、シグルーンを串刺しにして瞬殺する。


「バカっすね…じぶんの能力は…」

「運命操作…じゃろ、不幸を相手に押し付け、自分はノーダメージで相手にダメージを移すか…しかしだ…」


直後に放たれた銃弾が、シグルーンに命中。


「な!なぜ能力が発動しない!」

「それは”風化弾”、わしの武器の持つ二つの武器の内の一つ…”禁忌銃・ドラグノフ”から放たれる一撃じゃ、そして…それは”概念、理、事象、現象…”あらゆる全てを”等しく風化”させる…」


故に能力は発動しない…


「そんな…」

「ワシの異名は、”竜騎士”…竜騎士とは片手に銃をたずさえる者の事を言うドナ…ちゃんとよく考えてから動くんじゃったな…」


シグルーン、戦闘不能。


「ファッファ!見たぞ、今の攻撃…」

「そうかい、でも安心せい、もうこの銃は使わん…なんせ弾が六発しかない上にもう作れんのでのぉ…」


ガイルは、銃を懐に引っ込める。


「ならば拙者には勝てぬなぁぁぁ!!!」

「拍子抜けじゃの、よもや戦う相手の実力すら測れんアホーだとは…」


アグリオスは、当然すかさずプラズマの速度で接近し、プラズマで強化された刃を振るう…


その速度、わずか0.000000001秒にてガイルを30憶回切断!


「この武器の名は、雷神剣。拙者の扱うプラズマの魔力をさらに強化して出力できる武器だ。」


アグリオスには今だ隠された力がある、それは呼び出したスーキズ・ブラズニルからの武器の永久補給である。


そして、武器はいつでも彼の手元に自然と一瞬で現れるのだから厄介極まりない。


「そうドナ、でも残念…」

「な…」


しかし、アグリオスの攻撃の直後に、ダメージを受けたのはガイルではなくアグリオス自身…


「やはり"迅雷"に勝てるのは、"疾風"だけドナ。」


なんと、ガイルの魔法は疾風、アグリオスの迅雷に勝るそれの速度とはいったい…

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