第七十二話 絶望!再び…
(心通による、精神干渉へのバリアか…)
場面はアグリオスとニヒツの戦場…
(この少年…)
アグリオスは驚愕していた。目の前に自身の腑を掻っ捌いた少年を見て…
その"眼"を見て…
「よもや…この土壇場で…一つ星!」
その時、彼の脳内での誤解が解けた。ニヒツの眼に宿る魔眼は左目の赤ではなく眼帯をした右目の青。
「その眼帯…どこで…」
「おばあちゃんから貰いました…」
(魔力封じの…そう言うことか…魔眼を宿せば否が応でもその力が漏れる。それを見れば騒ぎになる…だから封じたのか…水皇・ウィンディーネの眼…青の魔眼。)
長らく感じていた、アグリオスの違和感。アグリオスの魔力簡単が誤認した魔力のノイズの正体は魔力封じの眼帯によって感知が阻害されていたことを意味する。
そしてもう一つの疑問が、アグリオスの中で解決する。
(おかしいと…思っていた…これだけの才能がありながらなぜ魔力量が少ないのか…)
「そなた…不幸だな…その前身体に宿るほとんどの魔力を…その眼に持っていかれるとは…哀れ…」
魔眼とは、宿主に強力な動体視力、解析能力、視界拡張、視力操作、色覚感知、透過能力、追跡能力を得られる代わりに…宿すだけで、常に膨大な魔力を消費し続ける。
そして完全に魔力が底がをついた時、魔眼は代わりに宿主の"生命力"を喰らい続けて完全に無くなると死亡する。
生命力は人の寿命、100年生きる者は魔力量100相当、1000年生きる者は魔力量1000相当と識別し魔眼は喰らい続ける。
最低限魔眼を宿すのに必要な魔力量は2000!宿すだけではなく能力を発揮し運用する場合は最低でも5000以上の魔力が必要である。
(宿した時点で2000、無つ星で3500、一つ星で4000を超える…その上、あの陥没ぐ合いから見るに…幼い頃から付けている。つまりは暴走か…)
「するとそなたの真の魔力量は、5000~10000以上。その才能を全て魔眼の運用に消費仕切っている…例えベールで覆い隠そうと暴走する魔眼の成長は止められない。」
「さっきから、何の話をしてるんですか?戦闘中ですよ…」
それはゾーン、自身のなすべき事以外の全てを遮断し集中力を高める戦士のすべ…
「悪い、そんな目で見るなでござんす。真面目にやるとも、ただ…」
アグリオスは大きく手を広げ歓喜した。
「そなたの成長が!強者へと変わる様が!!嬉しくてたまらないってだけさぁぁぁ!!!」
「そうですか…よくわかりませんが…“僕のターンはまだ、終わってませんよ”。」
ニヒツが睨みつけると同時に、アグリオスの視界からニヒツが消える。
「光化」
それは光術による光速移動、本来の彼なら余裕をもってよけられていただろうがアグリオスは高ぶった感情と予想外の技に困惑し判断が一瞬遅れる。
BAD曰く…
「光術を教えろだぁ?やだね!ありゃ基礎が精神修行な上に、ありゃ本来身体能力の低い人間が作った弱者の技術。主体は逃げだ、だから3秒ラグなんて欠陥が許されるんだ。お前に弱者側の感覚を覚えて欲しくないんだ。」
しかしその忠告にニヒツは…
「今回は…“僕も弱者です”」
アグリオスとの戦闘力、技術の差を理由にニヒツが無理やり覚えた付け焼刃のなんちゃって光術。
そして現在…
「だからどうしたぁぁぁ!!!」
(ビリビリィ!)
走る閃光の稲妻。
「第四状態物質ぁぁぁ!!!」
何を血迷ったのか、見破られた技を叫ぶアグリオス。
(ちがうなぁ~)
しかし今回は自身の速度を上げたのではなく…
「剣」
なんとアグリオスは、超光速を実現するプラズマの魔力を剣に纏わせ剣速を高めたのだ。
「散れ…多連!!!」
それは超光速のつきの連撃。避けられない、そのはずのそれを…
(避けた!魔眼の異能認識と予兆の感知を利用したのか…)
「言ったはずです…まだ!僕のターンだと…」
背をそり、剣を避けたニヒツが睨むようにして仕掛けた次の攻撃。
「貴方の剣が雷鳴轟く稲妻の剣だと言うなら…僕の剣は…」
そう言い放つ彼の手元の刀が、紫色の輝きを放ってアグリオスに向けられる。
(なんだ?ただ魔力を纏っただけの剣ではないか…違いと言えば、鋭い?魔力で剣の刃を形成した?なんのために?)
アグリオスは知らないが、ニヒツの剣に刃は無い。だが、普通に考れば刃を持つ剣に刃の魔力を纏わせる意味はない…
「なんだか知らんが!」
アグリオス力を使うこともなく、容易く“紙一重”でそれを避け剣をニヒツの胴体に入れる…
「“魔剣”!」
しかし!!!
(グチャ!)
間一髪、アグリオスはその異変に気付いて攻撃をしていた右腕と右頬の皮を犠牲にニヒツの剣を避けた。
(どう言う…ことだ…)
それはアグリオスにとって信じがたい光景…
BAD曰く…
「これが…新技…」
「そうだ、そいつの名は“魔剣”。能力は魔力で作った刃の性質を利用して剣の長さや大きさを変えリーチを伸ばすことだ」
「リーチ?」
聞くと大したことなさそうな技、少なくとももったいぶっってお披露目するような技では無いように見える技だが…
「戦闘なれした強者ほど、“紙一重”をこのむ。なぜなら、無駄をなくして次の攻撃に繋げやすくするためだ。ただそりゃー逆に言えば…」
「「図った間合いが変われば、対応するのが困難になる」」
それはBADが編み出した対強者用の秘策にして、魔力の放出“外界”を不得意とするニヒツにが操れるように調整した魔力の技術。
(僕の魔剣はまず、限りなく薄く張った形状の中に最大まで外界の魔力を蓄積し相手にあたった瞬間に放出することで僕のよくやってしまう魔力の放電を直前まで抑えできる限り威力を減らさないようにする技。それに加え、外界の青い魔力に増強の赤い魔力を混ぜ合わせることで外界の魔力の放出力を3倍にして打ち出す…)
故に紫の魔力、しかしこれだけでは終わらないニヒツの“新技達”。
「失望したでござんす、赤き瞳の少年よ。こんな小細工風情でぇぇぇ生きがるとわぁぁぁ!!!」
激高するアグリオスをよそに、ニヒツはたんぱくな言葉で返す。
「まだです…」
次なるニヒツの新技を、剣の鞘を外して鞘と刀の二刀持ちとなり構えた奇怪な剣術。
「まずは…魔剣!!!」
刀に再び纏った紫の魔力。
「なめられた者だなぁ、このアグリオスに二度三度も同じ技が通じると…」
長さの変化を計算し、次は避けたアグリオス。残った片腕で挑む鬼神の如く重い大剣を軽々と振るい容赦なくニヒツの首を取ろうとするが…
「魔球拳」
それは拳に纏わせた球体の魔力、それだけなら脅威でもないと剣を止めることなく炎を纏い焼きはらおうとするが…
「拡大!!!」
ニヒツのその叫びと共に、纏った球体がアグリオスを包むように大きな球体となる。
(ジィ~)
焼けこげるよう音とともに、ボロボロになるのはその場でただ一人…
「なぜ…何をした?」
それはニヒツが纏った球体が起こした内部爆発。あれの中には無数魔力が放電状態のまま無理やり抑え込まれておりその中に入ると言うことはエネルギーの海に飛び込むようなもの。
「これが、僕の魔球拳です…」
しかし、なぜか同じように中にいたニヒツには一切のダメージがない。
(これは本来自爆技のはず…おそらくこの少年、自身に召喚術による“リスクとチターン”を賭けたな…)
召喚術によるリスク&リターン、それは世界や他の上位存在との契約。ニヒツが結んだのは世界との契約であり、球体は自身の中心としてしか発動できないと言うリスクと自身を半径4mを最大とする代償に自身へのダメージを0にする契約を世界と交わした。
(つまり、この技がある限り…この少年に近づくことは自殺行為に等しいと言うことか…)
前述したとおり、現在のニヒツの攻撃力は核爆弾に匹敵する。その爆心地の中心にいると考えればその恐ろしさは明白。
「そなたの技は理解した…だがその全てが近接攻撃への対策!つまり…」
アグリオスはそれを理解して一瞬で距離を取り。
「こうだぁぁぁ!!!第四物質砲」
遠隔から背後にいくつもの連弾を形成し、機械銃の如くそれを遠隔から放ち始める。
「まずは、被害は最小限に…」
ニヒツは魔球拳を広範囲に広げてそれらを全て無力化する。
「なに!街に被害が…」
「ない…ですよね…」
それはニヒツのかした第三のリスク「対象の最小化」。ニヒツの魔球拳はニヒツが目でみて指定した対象以外には一切の干渉力を持たない。そして、指定した対象が少なければ少ないほど本来の威力を発揮し多いと本来の威力から下がる。
(失望していた、リスク&リターンを威力強化に使わず。自身の護身に使った事実に拙者は失望していた。痛みを恐れてリスクを貸すなどと…しかし、これを見て確信した。)
「訂正しよう、君の強さとは勝つことでも殺すことでもなく…“守り抜くこと”そのための召喚術による契約か…」
そして再び一瞬で現れるニヒツ…
「まだ…」
ニヒツはアグリオスの背後を取り、アグリオスも超光速で対抗するがニヒツは見切り避けて先ほどの技を組み合わせつつアグリオスの動きを模倣し理解した上でその行動の隙を的確に狙って適格に一撃一撃を打ち込み続ける。
アグリオスも歴戦のもさ、相手の手の打ちをしれば対策も立てられるはずだった。しかし、それを不可能にしているのがニヒツがBADとともに編み出した技の数々による混乱を生むノイズ。
(少しのずれ…)
「まだ!」
(BADさんはこう言っていた…)
「まだまだまだ!!!」
(優秀な戦士ほど…)
「まだまだまだまだまだまだぁぁぁ!!!」
(大きなノイズより、少しづつのズレ、それによって起きる脳の混乱を…)
「まだまだまだまだまだまだだまだまだまだまだまだだだだっっっ…」
(生みやすい!)
「だぁぁぁ!!!」
少しづつ、少しづつ…動き、リーチ、自爆、
「逆手持ち!両手持ち!片手持ち!二刀流!!!」
剣技の変化に…
「ぐぅ…はぁ…」
脳が追いつけない。
(ズバズバズバ…)
めった刺しにされたアグリオスの肉体にはすでに右腕どころか四肢はなく、胴体と首、頭のみとなっていた…
「この程度では…死にませんよね?」
息も絶え絶えの中、ニヒツは無呼吸の集中を解いた。
実はニヒツ、丸々1日程度なら息を止められるためそれを利用し息継ぎすら省いて集中していた。
だが、あまりにも激しい戦闘に流石のニヒツもたったこの10分間だけで全身体に限界が来ていた。
(もう…指一本だって動かせる気がしない…)
それは、例えるなら長距離を全力で走りきった後にもしくは走っている最中に来る足が棒のようになる感覚。
それが今、ニヒツの全身に起きていた。
正真正銘全てを出し切れたわけじゃない、あと一つだけネタが残っているがそれを使うほどの体力がもうニヒツには残っていない。
そんな状況で…
(ジィ〜)
アグリオスの全身を覆う蒸気。
「認めよう、そなたは強い。勇猛果敢な良き戦士だ…才能も無いわけじゃない。例えばそなたに魔眼やDEMで無くても拙者はそなたを賞賛する。しかしなぁ〜」
アグリオスの全身体にから漏れ出る蒸気が、千切れた四肢を黄金の骨へと変えていく。
「だからこそ実に残念だ、そなたに…."属性が宿っていないことが…"。」
(外骨格…)
四肢の代用に現れた黄金の骨は肥大化しアグリオスの四肢の全てが太く強固な黄金の骨へと変化する。
「そうだ、外骨格でござんす。ちなみに拙者の外骨格は絶対熱おも無力おする耐熱性を持った外骨格。故にいかなる温度の上昇にも耐えられる…例え今ここに…」
現れたのは黒い球体。それが、アグリオスの全身つつむ。
「"太陽が現れてもなぁ〜"…"黒気太陽"」
その、黒い球体がアグリオスの全身を纏った瞬間。
「これで炎は黒く、今の火力は一兆度だ…」
その全身から黒い炎が溢れ出る姿へと変貌。
服装や髪の長さも黒い炎を纏って変化し、変化した外見のパーツは全て黒い炎でできている。
「これは…」
「黒気太陽を纏いし時、私の身体の温度は数段高くなる。そして現在の温度は一兆…その上で…」
大きく股を開き、天に手のひらを向けたアグリオスの腕の先に大きな太陽が…
「拙者の本来属性は炎!いや、太陽と言ったほうがただしいかな?太陽はプラズマの塊と言ったがあれは嘘だ。実際は太陽の周囲に発生する電流こそがプラズマ。つまりはあれらは拙者にとって…」
その言葉を綴りながら、その大きな炎の塊をニヒツに投げつけるアグリオス。
「"ただのお飾りに過ぎん"、ここからが本番だ。」
ニヒツはそれに対抗するため、魔球拳を両手に纏い迎え撃つ。
「ほほぉ〜一つ4m制限の魔球を両手に纏うことで倍の8mにしたか。考えたな…しかし、その技量!知識!!才能がどれだけ極まっていようとも…」
アグリオスの太陽を迎えうち、打ち消して安心したニヒツの腹にアグリオスの黒く染め上げた高温の手の平が向けられ…
「黒淵火龍」
腹に強力な一撃が、打ち込まれニヒツは瓦礫の中へと吹き飛ばされる。
「あ…あぁ〜」
その一撃に、ついにニヒツの意識が飛び白目をむいて泡を吹く。
「まだだ…まだ倒れるなニヒツ。」
先程まで一定のためが必要だったプラズマを、一瞬で纏い使うアグリオス。それが目の前に来てニヒツを遥か上空へ蹴り飛ばす。
「まだまだまだ!」
上空から落下してくるニヒツへ、炎の弾幕をいくつも飛ばしながら超光速でニヒツをフルボッコにするアグリオス。
「まだまだまだまだまだだまだぁぁぁ!!!」
炎と稲妻の同時攻撃。ニヒツは痛みと暑さのあまり息を吹き返す。
「だが!なぁ!!!」
その瞬間!ためた拳の炎でニヒツ意識を取り戻したばかりのニヒツを焼き殺そうとするアグリオス。
「光化!」
ニヒツもすかさずその攻撃をよけ、空中でも移動可能な光化で背後に回るり…
「斬る!!!」
しかし…
(カッキン!)
魔力の刃を纏った当たったら核弾頭レベルの威力を持つ剣の刃が最も容易く弾かれ傷どころか刃全く通らない。
「拙者の外骨格は女神ウィンディーネ柄もたらした女神の顎。」
アグリオスはニヒツの首根っこを掴み…
「そう簡単には傷付かんでござんす。」
再び、腕に太陽をまとって焼き払う。
「こん…なぁ…こと…」
ニヒツは枯れた声で何かを言おうとしているが途切れ途切れで聞こえない。
「非常に残念だ…」
再び瓦礫の方へニヒツを吹き飛ばすアグリオス。
「わかったろう、どらだけ基礎的な魔力の技量を上げようと属性がなくては話にならん。属性が一人一人の変化を生み、独自性と応用性、そして強さを生むのだ。」
アグリオスの言葉に、ニヒツはぐうのねも出ないが…しかし最後に残った勇気で、近づいてくるアグリオスに魔球拳をお見舞いするニヒツ。
「黒気太陽」
しかしその球体を同じく球体の黒き炎の魔力で一瞬で飲み込み相殺するアグリオス。
「わかるかな、属性さへあれば拙者のようにプラズマと火球を同時使用することもできる。それに、練度が上がれば相殺だって可能だ…だが!」
アグリオスは近づいてニヒツの髪を引っ張って吊し上げる。
「無属性ではそれと不可能、これ以上の手数もないだろう。ニヒツ…その名の通り…"無価値で無力な空っぽの器よ"。」
アグリオスは最後の止めた思い、髪を掴んでいる手とは逆の手に小さく圧縮した高密度の太陽を形成。
「無駄だったな、その努力。」
ニヒツはそのまま抵抗もできず、その業火の球体を受け入れ焼き殺される。
はずだった…
「無駄じゃないわ…」
気づくとアグリオスのニヒツを掴んでいた腕がない。
「カポネ…さん…」
ニヒツを抱き抱えるアルカポネがそこにいた。
次回はニヒツとカポネvsアグリオス!二人の共闘をお楽しみに!!!




