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第七十一話 絶対零度×絶対領域


「万薬は君にとっての蟲毒、死ぬまで“薬漬け”だよ。」


それは人にとって何おも治す万能薬、しかし彼にとっては猛毒の緑の霧…


「はぁ~」


それが充満するなかで蛇の鱗はボロボロとそぎ落ちていく、その生皮は人のそれではなく正真正銘の化け物。蛇のような鱗を持つ、奇怪なヘドロの蛇…目はギョロギョロと気色悪く動き、その舌先は蛇のように別れ長い、そして放たれる…


「シャーシャッシャァ!」


顔に張り付いた様に不自然なニヒルな笑いと、口から漏れ出る冷気。そしてガルズガンドはドクターに対して絶えず笑顔を浮かべたまま言葉を返した。


「身体!全身体の全神経!全細胞…そいつ全てに痺れる毒素。だが!毒も薬も極端な寒さに弱い。それも!俺の全身体中が絶対零度のそれだったらどうするぅ?」


毒だけじゃない、この世のあらゆるそれは温度に耐えきれない。高すぎる温度にも低すぎる温度にも全てに対応できる存在はこの世に無いと言えるほど温度と言うものは非常に重大な問題である。


しかし、いるはずがない。この世に体温ー275°cの生物になんて…存在するはずが…


「除菌だよ!除菌!冷たくして保管するだろ?食いもんだってよぉ〜…理解したか?俺はお前の"弱点属性(アンチスキル)"なんだよぉ〜」


弱点属性(アンチスキル)とは、その名の通り相対した魔法使いの弱点となる属性。しかしそれらは明確かされておらず、例によくでる水は火に強いと言った単純な話では無い。


それらはその能力の火力や練度によって上下するからである。火の火力が高ければ水は蒸発するし逆も同様にありえる。どちらも全く同じ場合は両者が打ち消し合う。


そう言ったものは弱点属性(アンチスキル)とは言わない、真の弱点属性(アンチスキル)とは…


(あらゆる条件下でも、相対すら存在の力を無力化してしまうほどの否定存在。それこそが弱点属性(アンチスキル)、しかもこの魔法僕の弱点属性(アンチスキル)と言うより…)


「"全生命体の弱点属性(アンチスキル)"…」


それはおそらく、ドクターが思い当たる限り最強の魔力。何故ならば、例えどんなに強力最強の概念能力だろうとその本体が生き物である限りその凍結からは逃れられない。それは不死者すら避けられない絶対零度、まさにこの言葉がよく似合う…


「俺ぇ~は…“氷雪系最強の魔法使い”、ガルズガンドですぜ旦那。よぉ~く覚えておいてくれぇ~よシャッシャッシャ!」


その直後に、ドクターはいったん身を引こうとするもすでにその足は氷ついて動けない。


(周囲の温度が…この男の口から漏れ出ているあの冷気のせいか!このままでは…)


花之園フラワーガーデン


周囲に咲き誇る花達。


「おいおい、花は温度変化に弱いだろぉ~常識だぜ。」

「あぁ~そうだ、だから先に手を打たせてもらう…」


その直後、その花全てが枯れる直前。花が皇后しい光に包まれその強大な光をガルズガンドに四方八方から放つ。


「くらぇ!これが太陽の光。光線花サン・フラワー


それから放たれる温度がかすかに男によって下げられた現在の気温を上回り男にもそれを浴びせ消し積みにしようよする。


「シャーシャッシャ!残念、言ったでしょぉ~俺ぇーの魔力は絶対零度…光線だって完全凍結…」


男に触れる直前で光線が凍り付いて止まる、そして…


「次はあんたの番だぜぇ~…」


そう言って男は深く息を吸い込み…


「フゥーーー!!!」


一瞬にして数十回建てのビルとその周囲と言うか戦闘していたストリート丸ごとを氷の世界と変えてしまった。(※1ストリート、東京一個分)


そして今に至る…


(たったの…一撃で…)


目の前にしたBADは誰よりも目の前の男のヤバさを理解していた…


「テメェーら!逃げるぞ!!!」


それを目の前にしてBADは大声で撤退を口にする。しかし、相手が逃してくれないのは当然理解していた。だから、最後の魔力で


(キラン!)


複数回に及ぶ光術の行使。それにより、光の速度でその場の全員を非難させた。


「兄貴ぃ!」


その時叫ぶノーズの悲痛な叫び。


「悪りぃ〜お前ら….」


(ここで魔力切れだ…)


先ほどの戦闘ですでに魔力は底をつきかけていた。そこから残った少量の魔力での光術の行使。

この時、BADは完全に魔力切れを起こしてその場に大の字に倒れる。


「おや?どうしたぁ〜策士の旦那。」

「ハハッ…状況は理解してんだろ?」

「シャー!シャッシャ…浅葱が良いゼェ〜でも良いのかい?頭がいなくなったら組織は回らないんじゃねぇ〜か?」

「ハハ!舐めんな…俺の"仲間"がそんなことで折れっかよ。」

「なるほどぉ〜」


それを最後の遺言と受け取ったガルズガンドはその口に空気を溜め込んで瀕死のBADに負けて冷気をから出そうとする…


「はぁ〜万策尽きたってのは…こう言うことを言うのかねぇ〜。でも死ぬなら、男のくっさい息じゃなくて…女の子の吐息で死にたかったなぁ〜」


そう、彼は悟った…


「フゥーーー!!!」


そして放たれる強力な冷気の猛攻。それに包まれて見えなくなるBADの全身。


誰もが彼の死を悟ったその瞬間!


(「すまない、遅れてしまった。」)


そこに現れたはドクター?ではなくBADの首に巻き付いた包帯。


立ち上がったBADはその状況を理解できずにいる…


「その声は博士公!どうしてお宅の声が…」

(「あれれ?聞いたことないかい?魔法関係の知識には詳しい方だと思ってたが…」)


BADが知らないのと無理わない、その道具(アイテム)はかつて魔女教が作り出した歴史から葬りさられた秘宝…


(「"魔力封じの白"と言うものでね。ボクの全身に刻まれな"ある陣"を封じるための道具(アイテム)だが…今回はそれにボクの魔力を流し込んでこうして対話していると言うわけさ…」)


「なるほど、それで博士公と密着してんのは嬉しいんだが?博士公は生きてんのか?それともこれは魔力の残滓を使ったビデオレコーダーかなんか?」


BADは、この対話が一時的なものなのか?ドクターが実際生きていて遠隔で会話をしているのか?と質問を投げかける。


(「それなら安心したまえ、ボクなら無事生きて入るよ。血は通っていないがね…」)


「血が通ってないのに生きてる?そりゃぁーどう言う…」


その時、やってきた再びの氷の牙。


(「話している時間はなさそうだね…」)

「そうらしい…」


その時、ドクターはBADに囁き声で作戦を伝える。


(「詳細は省くが、ボクの作戦!のるかい?」)

「のるかい?じゃねぇーよ!乗るしか…ねぇーんだろ!!!」


格団の頭脳と呼べる二人の共闘が今!始まる…


(キン!)


《その頃…商国最下層ブラックマーケット(崩壊後)》


で死合"二匹の獣"もまた…


「「うりゃぁーーー!!!」」


火花散る佳境を迎えていた。


(キンキン!)


交差する金属同士のぶつかり合い。


「せい!」


燃え狂う炎の斬撃。


「はぁーーー!!!」


魔力を纏ったその鞘付きの刃で斬撃を悉く打ち消すニヒツ。


「まだまだ…こんなものでござんすかぁーーー!!!」


燃え上がる炎が如く、加速する第四物質状態(プラズマ)の移動速。迫り来る超光速を目で見切り、事前に避ける動作を取って紙一重で対処するニヒツ。


(この男、見えているのはわかるがなぜ!どうして急に、肉体の速度も上がった?いや、上がっているのでは無い…予測したのか!)


そう、それはニヒツがBADから教わった予備動作を見て的な動きを予測すると言う技術。


人間は本来、次の動作の前に視線、重心移動、体のかすかな向きのズレで次の行動を全身で表現してしまうもの。

それを、完璧に読めたのなら…


(先に…行動を置いておく…)


それが、ニヒツのただ一つの思考。


さらに!


("心通(ハート)"…)


本来心通(ハート)とは、相手に自身の思いをぶつける。すなわち、何度も何度も無意識の中ですら漏れ出てしまう"殺気"や"狂気"を見せつけて相手を威圧する技術…と思われていた…


しかし!


(僕がケルピマさんから教わった心通は…「貴方の心に触れるもの…」)


その瞬間、頭がハイ!になっていたアグリオスの脳内に流れ込んだニヒツの声と言う異物。それと同時に完了する…


「条件は…揃った…」


それは魔力のアグリオスが早すぎ超光速を制御するため脳内で描いたプログラム。筋道通りに進むことしか出来ない代わりに脅威的な速度を可能にするアグリオスの仕組み。


(見える!見えるよ僕。その力の筋道が、彼の見ている視界が、思考が、手に取るように…まるで…"僕がアグリオスさんになったかのように…)


そしてそれを利用したニヒツの打撃は不可避、アグリオスの斬撃は虚空を切る。


(何が…一体…)


アグリオスは理解できずにいた、先ほどノイズのように入ったニヒツの声。

そして、今置かれている状況。それとは正反対にニヒツは理解していた…自身の技を…


その名を…


(侵通(ジャック))


その能力は心通の本来の使い方、心の押し付け合い、殺気、狂気。ケルピマから教わった後を還さない心の会話。


その両者の性質を悪辣に倫理観を省いた最悪最強の使い方。


"相手の心/脳内に無理やり侵入し覗き見る"。


そうすることで、相手はニヒツの行動も思考も読めないがニヒツは対象の次の行動、現在の思考が全て手に取るようにわかる。


《数時間前…》


「いいかニヒツ…」


新技の修業を終え、リップとの試合にシフトする前にBADがニヒツに放った一言。


「"戦場は情報戦だ"。相手の情報を多く盗み、自身の情報を悟らせない。今俺はそのための手数を揃えただけだ、どんだけスゲェー武器を持ってても使いこなす技術と隠し通す知恵がなきゃ戦場じゃぁー生き残れない。その上でお前のその才能は…いいアドバンテージになる。相手との実力差をひっくり返せるかはお前しだいそのための方法は教えた…まっがんばれ」


そう言っていた去る前のBADの後ろ姿を思い返しながら…ニヒツはその全てを"全身全霊"でぶつける。


「フハァ!ファッファ!そうかぁ~なるほど、それがあの黒き星の少年の言っていた心通ハートと言う技術でござんすな。」


それはスキーズブラズニルでのフラウトとの会話で聞いた、スターの使った奇怪な技。


(推察するにおそらくこれは“威圧”に似たもしくは同種の技術の応用。相手の心を盗み見る彼には“DEM”や“魔眼”などの後天的な素養の他に光る者を感じてはいたが…)


「心を盗み見みとは、そなたも随分と悪辣な下法を使うようになったでござんすな…」

「そうですね、かつての僕ならこんなことできてもしなかったでしょうが…“僕だって十三騎士団の団員です”。手段は選ばず騙し欺く、それがこの騎士団のやり方だって師匠から教わりました。」


その言動、発言の節々に喜びを隠せないアグリオス。


「そうか…だが読めたぞ!」


アグリオスは迷わず、先手を取ってニヒツはその行動を直前で察知し対処する。


(やはり、ただ打ち合っていてはらちがあかでござんす。だから…「拙者も真似させてもらおう」)


それは戦闘中の緊迫した紙一重の戦場で急に脳内に飛び込んできたノイズ。


「うわぁ!」


その一瞬の同様で、ニヒツの人体に深々と刃が刺さりその部位が真っ赤に燃える炎と化す。


「フハァファ!どうでござんすか?拙者の心通(ハート)はぁ!」


それは見様見真似の動作。一か八かの模倣(トレース)、しかし何百、何千の戦場!何万、何億の死合を繰り返し続けた彼にとってそれは…


"圧倒的に日常"


「さぁーーー!!!次は…拙者が覗かせてもらおうかぁ!!!その脳の…心の隅から隅まで満遍なく犯してやろう!!!」


そう言って、ニヒツの傷口から猛々しく漏れ出る炎の雄叫びが治るのを待つことなく、その超高温の刃をニヒツに…



("悟れ!少年…才能では、歴戦実力差は覆せん…")



しかし、刃その身に届くその瞬間。目の前が真っ白になった。脳みそが完全にフリーズした。先ほど自身がニヒツに仕掛けた一瞬走る電撃のような心のノイズ。


それをまさか…


やっている側の、仕掛けている側の、"自身が喰らおうとは微塵も思わなかったのだろう。"


故にそらは…


「うぉぉぉおぉぉぉ!!!」


才能の…



(壁…)



BAD曰く…


「ニヒツ・トリビライザ、あいつには他を寄せ付けない圧倒的な…"才能がある"。魔法の才能はてんでない、身体能力?ありゃあー!100%努力のそれ…人望?正義感?いやいやそんな抽象的で万人受けするようなもんじゃぁーない。」


ではなにを?


「あいつには、あいつの目は…"いつも決まって人の心を見透かしてやがる"そんでもって"共感する"。あいつ本にすら知らない本物の才能は、あの"類稀な吸収力"と"心を見透かす心通(ハート)の才能"。誰も気づかない、魔力の才能の中で一番不遇な力。あいつはそれが異常に高い。」


しかし、ニヒツなら起きていた変化はそれだけではない。


(見える….)


その時。突如としてニヒツの視界に現れた一筋の光。


(これは…"魔力の軌跡"…)


その才能の開花に加え


BADから学んだ、"相手の動作をよく見て次の動きを予測する。予兆(エフェクト)の技術"。



その二つ、天文学的な確率で一寸ズレもなく噛み合うことでその目に…その"眼"に…封じられしその眼帯の奥底に眠る"青き星に"…進化をもたらした。


(ジャキン!)


本日初めて、アグリオスの生皮に刃をぶち込んだ。


「ガハァ!」


その傷は、深く。アグリオスはその場に血反吐を吐いた。


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