第六十七話 後の祭り
《中央激戦区》
“神廼肉片”
それは、肉の塊。
しかし、それは人間の肉片に非ず発光するそれは神々しくまさに神の臓物、調理済み。
ピンクの鞭と、肉塊、空飛ぶスパゲッティーと言う神の贈り物。
「「こんなの…無茶苦茶だぁぁぁ!!!」」
逃げ惑うポイズンとニット。
「ヒャヒャ!」
それを上から目線で見上げ、嘲笑うレギンレイヴ。
「神ってる、神ってるよね…値」
「それはどうであろうか…」
「何が?」
彼女の才覚は神の贈り物。
それは、彼女にとっての誇りであり、傷つけられたくない絶対領域、地雷。
その場所に土足で踏みぬいた男が一人…
「小生には、わからん。英雄はおろか、神など見たことが無いからな。機嫌を損なってしまったなら、すまぬ。しかし…“神ならこんな下賤の怪物”に負けまいな」
「そう言う御託は…“勝ってから”言おうか」
ピンクの鞭が、目の前で腕を組んで立ちはだかるウルシーの元へ向けられる。
(鞭か、鞭は打たれる瞬間音速を超えるとも言う…)
それは、ウルシーですら再現不能、光術と言う移動速度と実体化にラグのある欠陥魔術を除き最速の攻撃。
よけること、反撃することも困難。
そんな中でウルシーはギリギリを狙って紙一重で華麗にその鞭をかわす。
(ズシャ!)
しかし、その瞬間避けたはず、確かに触れていないはずの鞭で肉体が皮を剥ぐかの如くいくつものミミズが張った道のような削りあとが浮き上がる。
「ホホォ~なるほど、ソニックウェーブか…」
ソニックウェーブとは、物体の速度が音速に達したさいに起きる衝撃のこと。
それは、風属性と同様の切り裂く性質を持ち、その影響範囲はマッハ10にして半径2キロに及ぶ。
マッハ1に至るそれでは、2キロとまではいかないものの少しずれたそれを狙う程度ならできる。
「強い奴ほど紙一重って好きだよねぇぇぇ!それって神ぽいけど…意味ないねぇぇぇ!!!」
上機嫌に高らかに、嘲笑うレギンレイヴ。
その鞭の硬度は神の硬度、決してちぎれも壊せもしない最硬度のそれ。
その硬度としなやかさ、それから発生する音速起動。それから生み出されるのは圧倒的な威力。
どうあっても防げず、反応できず、破壊もできない…どうするそれに、どう対抗する海の獣よ…
「水魔法・“大渦”」
ウルシーの手元に生成される大きな水の渦。
そらは、周囲の鞭を傷つけることなく集め回収し…
「お返ししよう…」
跳ね返す。
(こんなの…情報に乗ってない…)
ウルシーはこの数日、ニヒツに敗北したその後見つめていた自身の魔法の本質を…
(海の民として生まれた母、大地を駆ける獣の父。海翼の水属性、獣人の土属性、それが二つが合わさった…小生と泥属性。父からもらった大地を駆ける狼の力、海を泳ぎ水を吸い込み周囲のすべてを喰らいつくす鮫の力…)
見つめ直すのは自身の存在、血の理由…
“小生の水魔法は流れを制し、小生の土魔法は地脈を制し、それを合わせた泥魔法による海と大地どちらも泳ぐ力。”
時は現在へ…
(小生の魔法はどちらも、流れ。泳ぐ際に最も必要なのは流れに乗ること…)
「母から流れる海の血が、そなたの矛を砕く」
束になって跳ね返された鞭のそれは、レギンレイヴの全身を巻き付け身動きを封じる。
「はぁ~いいねいいねぇぇぇ!!!神ってるぅぅうぅぅぅ!!!」
「どうした、気でも狂ったか?」
「流れに逆らえぬのなら、流れなんてぶっ壊すぐらいにでかくやるだけ」
“神之肉片球弾”
生成するのは肉の塊、その重さは神の岩。
神以外には、決して破壊することも持ち上げることもかなわない絶対不可避の隕石の大群。
流星の宴、それを避ければ大地が抉れ街は崩壊かといって迎え撃つのもまた不可能。どうする?ウルシー。
「張り合おうか…」
その瞬間、ウルシーの全身にみなぎるありえないほどのエネルギー。
「無駄だよ、この肉塊は神でなきゃ壊せない…君は押しつぶされて死ぬしか無いんだヨォォォ!」
そんな忠告もいに返さず貯められた拳のエネルギー。
(何だあの強大な力は、この男の魔量量は見たところ800程度…あんなものを作れるはず…)
それはウルシーの持つ青き魔量とは異なる別の魔力。
一体あれは何だ、誰もが理解することなく隕石の方へ突き出された拳。
「地脈野顎」
そのエネルギーの行方を知らぬレギンレイヴは、避けることもなくそこから壊せるはずがないと鷹を括って見下すように上空にいた。
「な…に…」
しかしその一撃は周囲の全てを木っ端微塵に吹き飛ばし、隕石どころかレギンレイヴや街の地面すらも抉ってレギンレイヴ、その右半身をくらった。
「なぜだ…神でも無い神が…僕の才覚、"神々の残された者"を超えてくる…」
「フッ、それはこの力が地面の中に眠る地脈を利用したものであるからだ。」
「地脈?」
レギンレイヴは疑問であった、確かに地脈は神の力世界のエネルギーであるがそれをどうしてもこの人工天空都市まで吸い寄せることができたのか…
「渦巻、水の流れの如く地面に渦巻を起こしここまで地脈のエネルギーを運んだ…これぞ水魔法と土魔法の合わせ技、小生は生まれを憎まない。これは二人の友から教わった我が“人道”だ。」
「ヒャヒャ!面白いね、面白いぃぃぃ!!!」
決め顔で言葉を返すウルシーを見て、ハイ!になるレギンレイヴ。
「値のおもちゃと比べ会おうよ、神之大鉄拳」
ウルシーの周りを超巨大なストーンヘンジの如く、築かれたその肉腕に囲まれ自身の真上にもそれが降ってくる。
「フンゥ!!!」
神の拳と張り合う海獣の拳。
「無駄だよ、その鉄拳の囲いはただの囲いじゃない。」
「“五芒星”」
「大聖鉄拳」
集められた一点の聖なる力が、肉拳を聖銀のそれえと変えて破壊不能の神の一撃に聖なる力を付与する。
「ぶっつぶれろぉぉぉ!!!」
「断るぅぅぅ!!!」
絶対の拳と最狂の拳ぶつかり合うそれ…勝利したのは…
(ドバァン!)
「なん…で…」
「神は神でも、そなたのそれは練度が低い。そもそも、地脈を纏ったこの地脈野顎も神の力。世界そのもの力を流用した小生の力と与えられた神のおもちゃで遊ぶだけのそなた…武器とは、それを扱うものの技量を合わせて真の力を発揮する、そなたはそれの使い手として未熟すぎた…」
破壊された神の鉄拳、本来の破壊不能の性質も練度の高い古来から存在する地脈を利用したウルシーの力に相殺され崩壊。
同じ神の力を利用した二人の勝負、武器の性能差はほぼ存在せずその技量差にて決着。
「まだだよ…まだぁぁぁ!!!」
半身を吹き飛ばされ、死人と化したはずのレギンレイヴの肉体は16体同時撃破のそれによって復活し…
「神之受肉」
それは黄金の戦士の輝き、戦神。
『負けないよ、値は神ってるからね…』
神の闘気を纏った黄金の戦士と大地に眠る緑色の闘気を纏う大地と海の合わさった自然の化身。
ぶつかり合う二人の衝撃は…
《闇市場 第二地区》
「いい感じに轟いてるねぇ~」
大気を揺らし、空間を歪ませ、魔力の質をざらつかせた…
《闇市場 襲撃にあった集会上跡地》
「ガチャガチャに…しちゃっていいよねぇぇぇ!!!」
ピンクのオーラを纏った手のひらがダンサー、メット、ラップの3名に向けられる。
「なんだぁ〜そんな細い腕一つで何ができんだよぉ!」
それを迎え撃つようにダンサーは、腕でそれを受け止める。
「悪いけどな、お嬢さん。俺ら裏で生きてんだ…こんな 細腕じゃ何にも…」
その攻撃は軽かった、防ぐことは容易だった。その攻撃は遅かった、その攻撃は何てことない女の平手打ち、いや…結果として止められたそれは平手打ちにすらなっていない。
そんなその他愛ないただの女の拳が手が平手が…
「がっはぁ…」
目の前にいるその強靭な男の肉体に、血反吐を吐かせた…
「「ダンサーぁ!!!」」
目の前の現実、それは叫ばずにはいられない…仲間の死ぬかもしれない可能性。
(何でなんでどうして!あんな軽いパンチいや平手打ち!?あいつはまだまだ弱い。姉さんやハットの兄やんの足元にも及ばない。でもでもでも!あんなパンチに負けるわけ…)
「んぅ!」
ガキン!コギン!ガッシャン!そうやって周囲に響きわたる機械音とそれで変身するメットの黒い鎧の姿。
「早まるなダンサー!まだ敵の能力がわかってない!!!」
駆けだすメットはラップの制止を振り切り、近づき、蹴りこむ。
「ワァ~オ、カッコいいいいじゃんその姿。強そうだぽよ~…でも、関係ない❤」
《商都空中庭園》
「まぁ、その前に終わるかもしれませんがね。」
「どう言う意味じゃね。」
頭以外の部分を凍結させたアルヴィトと話しこむハット。
「残りの姉妹は厄介ですよ、特にレギンレイヴとフレックは…」
「どう厄介なんじゃね?」
「うふふ、レギンレイヴの神の肉片は言わずもがな神の力。セオリー通りなら壊すことも切り裂くことも防ぐこともできない。そしてフレック…彼女の能力はぁ~」
“触れた対象の一部をランダムに抜き取りガチャガチャのカプセルに閉じ込める。”
場面は闇市場へ戻る。
「がはぁ!これは、腎臓か…」
「きゃはは、面白いおもしろい。でも残念ぇ~腎臓なら二つあるから問題ないじゃぁ~ん。坊や、意外と悪運がついてるみたいだぽよ。」
“彼女の能力の弱点はそのランダム性にある。ランダムが故にどの部位にあたっても致命傷を与える可能性がある反面、逆にどの部位を攻撃してもその矛先はランダムに切り替わってしまう。どうです?脅威でしょ?”
“そうじゃね、でもうちの奴らも負けてないんじゃね。”
庭園での二人の会話、それに好悪する二人の衝突
(ガキン!)
圧倒的な機械の装甲と、強化された身体能力。
「久々に見たな、メットの強化外骨格。」
「でも改めて見てみると、すごいっすね。クロちゃん。」
「黒意炙心な、体の弱いメット専用に作られた全身の骨と一体化してその全てを支え強靭なものへと強化する。通常の化合アーマーと違って常時身体能力の強化がつくことと、一体型故に軽量かつ硬度が高い…それと」
「あの“変幻自在”さっすね。」
その力に無駄は無く、不必要なものは全てそいで必要な時に必要な力で迎えうつ。手の平を発動条件とするフレックの能力を強烈な足蹴りでいなす。
(フル!フル!フル!)
「そうだな、でもそりゃ~ちょとグロくないか?」
「何であんた、あれで会話できてんのよ!」
その瞬間メットが考え付いた最善の策、それは…
(グチャ…)
「発動条件が手のひらが発動条件なら、そこを削いじまえばいい。」
「両手を…」
吹き飛ばす。
「はーはん❤、いいわねそのやり方か・げ・き。」
「…」
(メット…無茶すんなよ…)
《100年前 商都ギャングストリート 闇市場》
(わいの親友は昔から体が弱かった。)
車いすに座る彼女の見た目通り、手足も動かない、声も出ない、耳も聞こえない、目も見えない、生きてるだけ。生かされているだけの毎日が彼女の人生。
(それでもいい、わいはただこの場所でこのどぶ川の緑とどぶネズミの這いよるこの場所で…ただ親友と一緒に、ずっとこの平和で楽しい日常を過ごす。それがきっとわいにとっても、こいつんにとっても幸せそれでいい…)
それは最も正解に近い人生論、当時15歳だった少年には早すぎる悟り。けれど、この残酷な世界を誰よりもしる貧民街のストリートチルドレン。だからこそ誰より感じている、平穏の安心感。
平和ボケした表社会の若人が思い焦がれる刺激的な日々なら目の前にある。最悪な形で、だからこそ彼は恋焦がれた刺激なんてない、ただ…“親友が入ればいい”。
しかし、日常は突如として奪われる。
「メットォ!!!」
声を荒げて、闇市場に存在する闇医者の病室に駆け込む少年ダンサー。
「治るんか…治せるんかっていってんだよぉぉぉ!!!」
医者の胸倉をつかんで叫ぶダンサーは正気じゃない。
目の前で自身を脅すように叫ぶ、そんなダンサーへ医者はこう伝える。
「あれは、全身の骨の骨密度が大幅に減少して起きた骨粗しょう症の最悪化版とでもいおうか。このままでは全身の骨が発砲スチロールみたいになって砕けて確実に死に至る。しかも、それに至るまであとたった一か月と数日でね。」
「治るんすか…」
「無理だね。」
それは信じたくない最悪の現実、決して受け止めきれない目の前の絶望。
(決して高望みじゃぁなかったはずだ。別に何か得ようたわけでも、何か求めたわけでもない。ただ…こいつとの平和が欲しかっただけなのに…)
この瞬間、人生で最初で最後その目から光を失い“何もかも諦めきって笑顔を失った”。
「一つだけ手がある、これはあまりおすすめしないが…」
「なんだよ!行ってくれ!!!なんでもする…」
その言葉にすがるように、ダンサーは先ほどまで胸倉をつかみ脅すように叫んでいた相手に土下座し、まるで神に願いを乞うような姿で男にすがった。
「強化外骨格の試験実験。国が我々貧民街の溝鼠達を中心に人体実験のためのモルモットを探していてね。もちろん無料だ、参加費も治療費もいらない。その代わり…」
“命の保証はないがね”
男の発言に迷うが、確実に一か月で余命宣告を受けている親友を可能性は低いとは言え助けられるかもしれない。それの選択に迷いはなかった。
《時は現在へ…》
(俺はあの時お前の命を賭けた、最低の親友だよな。でもよ、それでも俺はお前が生き残ることを疑わなかった。それは、お前が絶対に曲げないその強情で頑固でそんでもって強いメンタリティを持ってるから。お前は負けない、がんばれ親友。)
両腕を吹き飛ばされ、バンジキュースかに思われたフレックは今だその笑みを崩さない。
「あーはん❤、まだまだこれからでしょ。」
その瞬間、フレックのある詠唱と共にフレックがその膨らんだパンプキンパンツの中からガチャガチャのカプセルが落ちそれが開く。
「“不規則な力の矛先、可能性の結晶、この世に創造されしあらゆる刃よ、あなたに選択権は無い、私が嬢王よしたがいなさい”」
そうして開かれたカプセルの中身はどこかの騎士団員の腕、全く別人の二つの腕が彼女に吸い寄せられるようにその体を這って接合する。
「やっぱり便利ぽよ~、この力」
(あえて不自然な男の腕を選んだんすね、多分あの接合能力接合した肉体の性能もパクれるんすね。厄介すよ、そりゃ~つまり…)
「男の腕ってのはいいねぇーーー!!!力がみなぎるよ。」
男の腕、確か生身の戦いなら強力かもしれないが、今目の前にあるのは生物のように動き続ける異質な黒い鎧をまとった強化人間。
その剛腕はコンクリートや鉛、鋼鉄すら砕き割ってしまう。
「フン(剛力)フフフン(鉄拳)」
それから放たれる凄まじい破壊力、まるで軍用の装甲車の突撃。
「あっはん❤、ダメダメ。おいたはいけないぽよぉ~」
“羅ン駄無”
「取り除いてあげるわ、その装甲の内側にある大切なぁ~も・の」
彼女が抜き取ったのは、強化外骨格のエネルギー源。漆茈廼核心、それは外骨格の動力源。それが無ければ彼女の生命維持に必要な骨がなくなるつまり…
「あなたの心臓、み~付けた❤。」




