第六十六話 後始末
目の前にいる女の頭上に、後輪が出現し、碧色に染まるその身体を包む光を目の前にしてゲンドゥルは驚きを隠せないでいた。
「この…魔力は…」
いや、その見た目以上に、待機中のエーテルすら支配する彼女の魔法を持ってしても圧倒的な密度で押しつぶされそうなレベルの大天使のビジョン。
「ありえない〼…こんな密度の魔力…」
魔力密度
魔力とは、一つの核から発せられるエネルギーのこと。例えば、炎の玉を飛ばしたとして纏っている大部分の炎は本体ではなく中心にある小さな核から発せられた熱気である。太陽の周囲に炎の波が立つように、プラズマが発生するように太陽そのものの核が炎なのではなく巨大なエネルギーによって発せられる周囲の影響が炎やプラズマなのだ。
しかし、密度の高い魔力は核が一つではなく複数ある。そうすると、自ずと魔力消費が見た目以上に多くなるがその反面、多機能複合や威力の上昇が起きる。
そして、現在ゲンドゥルが目の前にしているのは、核の塊、エネルギーの最大集合体。
しかも、その形は…
(天使…)
「ぐちゃぐちゃにぶっ壊してやるよぉ、あたいの…この魔力でね…」
焦ったゲンドゥルは魔法を発動し反撃を試みる。
「七割解放!!!全方位爆撃光線」
それは、待機中のエーテル全てを光線状に放つ能力。光そのものを集め、高密度で圧縮。これにより、本来純粋なエネルギーであるエーテルを、対処を狙い撃つ殺人光線へと変えるのだ。
(待機中には、無数の空気ほどに充満したエーテルが数多く存在する〼。その全てを、光線に変える七割の力ぁ!絶対不可避、防御不可、絶対威力のこの複撃を受けて、耐えられるはずが…)
空気中に粒子の如く微量で充満したエーテル、その全てが光線となった。
それをまともに受けたリップ…果たして…
「吸収」
リップは、放たれたその中心で、天高く手を広げてその上には竜巻の如く集められた無数のエーテルの塊が…
「バカな…」
「渦巻!!!」
回転する、その光の塊がゲンドゥルの頭上に落とされた跡形も残さずその場の全てを焦土とかす。
「器は反逆、発言したのは7歳で、宿った力はあらゆる吸収性を操ること…これがあたいの魔法…吸収」
それが彼女の魔法、先ほどの竜巻の如き凄まじい回転のエネルギーは、ものを吸い込む際に起きる螺旋状の軌道を利用した攻撃。
「あ"ぁー!なぁ〜つまんねぇーぞ出し惜しみぃ!!!あと三段階残ってんだろぉ?だせよ…あたいに全部ぶつけてみなぁーーー!!!」
その瞬間、放たれた吸収大竜巻の起こした煙の中から、異様な形の機械の翼が出現し、そこから放たれる異様な力で周囲を覆い尽くす。
「大気中の全エーテルを一瞬にして吸い寄せる、竜巻として放つ大技…この周囲にエーテルが無いなら…YOが作るまで〼。」
それは、エーテルとも魔力とも違う特異なエネルギー。周囲数十キロ以内の魔力を奪われ手段を失ったゲンドゥルが起こした異様な力。
「八割解放…新天使」
その翼についた大きな紫の水晶から、とてつもないエネルギーが放たれる。
「新天使之銃火器」
二つの凄まじいエネルギーを言ってんの輪に集め、スナイパーの照準器の如きその輪から紫色のビームを放ちあたり一面ごと跡形もなく吹き飛ばす勢いでリップに放つ。
「天使之弓」
それを迎え撃つために、生成した白き弓から放たれるオレンジ色の小さな小さないや、サイズで言ったら何の変哲もないただの小さな矢でその巨大なビームを…
「でかけりゃいいってもんじゃない…」
貫いて、それは全て大気と紛れて分散する…
(なぜだ…)
「魔力密度、さっきあんたが見た天使の"姿"、あれと同じ密度の魔力をさらに圧縮して放ったのが今の矢だ。魔力の密度は、素体の面がデカけりゃデカいほど落ちる。逆に面が小さいと上がる、面が大きければ広範囲を攻撃できるが…小さければ範囲が減る代わりに、それ単体の威力や性能が圧倒的にダンチって話し、わかる?」
それは、密度と圧縮、体積と強度。高エネルギーを無駄なく一点に集めた最強の矢、一本を何層にも束ねて底上げした凄まじい力の集合体、棒を束にして強度を上げる…そんな、小学生でもわかる様なシンプルな算数がゲンドゥルにとって強さの世界を変えた。
「う"ぁぁぁーーー!!!」
"九割解放・連鎖爆撃弾"
それは紫色のグレードは、周囲に分散し放たれ恐ろしい威力と影響範囲を持ってリップもろとも街を…
「無差別爆撃?チープな技だねぇ。」
翼を大きく広げて、その光り輝く全身で先ほどを遥かに超えるマッハの速度で飛行するリップはその全弾を空気に付与した吸収の力で作り出した弾性により跳ね返す。
「吸収性っつったろ、ゴムの弾性も衝撃を掴む吸収力…だぜ。」
跳ね返されたそれは、一弾も地面にとどくことなく大空にその機械の翼を広げ浮かび上がるゲンドゥルの方へと向けられ衝突と共に凄まじい連鎖爆破を起こしそれによって生じた粉塵。
「覚悟はいいかぁ!嬢ちゃん」
粉塵に紛れ、天空のその場所で拳に白気を纏ってぶん殴る。
「一発で昇天させてやる…"天拳"」
その一撃は凄まじい衝撃と共に、進化し機械天使と化したその巨体を地面に向けて吹き飛ばしめり込ませる。
「…完,全,解,放,…"魔,法,少,女,(マジックガール)"」
エネルギーの源たる天使の翼は消え、フリフリのスカートを携えてオーラを纏い現れた楽園の使者。
「許,さ,な,い,」
しかし、それから発せられる声は天使とも楽園ともかけ離れたガラガラに錆びれた奈落の底から叫ぶ死神の声。
「"死,神,廼,贈,理,物,(デス・ボール)"」
破壊してきた地面を超える、数十キロメートルを誇る凄まじいスケールの紫の球体を生み出してそれをリップに向けて放り投げる。
「吸収」
目の前に広がる一面の絶望を、手を翳して吸い寄せる女。
「馬,鹿,な,ぁ",」
「"あんたの物は私の物、私の物は私の物"…それが私の魔法の本質…私を支配する?不可能なんだよぉバァーーーカァ!!!」
悔しい…悔しい…圧倒的な力。超自然的な力の操作、負けるはずがない、勝てるはずがない、隙なんてない…そんな力が…支配力が…
(通じない…)
"最強の支配欲ゲンドゥルが絶望したのは…"
「歯ぁ食い縛りなぁ、今度は本気でいく…」
"世界最強の我儘"
「"昇天拳"」
絶望し、地面に倒れる目の前の標的に容赦なく放ったその一撃は…
「あたいが連れてってやるよ、天国にねぇ〜」
世界最強の女喧嘩、決着ぅ!!!
《商国 天空街VIPエリア 中央庭園》
「大気中のエーテルが震えてやがるぅ、こりゃ姉さんの仕業だな。姉さんが全力をだすってこったぁ~…あぁ~あ、言っちゃたのね“禁句ワード”。あぁなったら姉さんは誰にも止めらんねぇ、にしてもシビレルゥ~こんなん感じちまったら…俺もやらねぇ分けにはいかねぇじゃね。」
ハットが駆け上がるその螺旋階段の先にあるのは、天空都市商都の最上階の中央庭園。
「ようこそ、丁度ティータイムですし貴方様もいかがですか?」
そこには、華やかな花が一面に広がり、その中央の白い机と三席の椅子に座った…
「アルヴィトぉ!!!お客さんだよぉお客さん!!!燃えてきたぁぁぁ!!!」
「ベルヴォル、落ち着きなさい。はしたないですよ…」
「はぁ~い」
庭園の中心で、凛々しく背筋をピンとして座るアルヴィトと不貞腐れて席に突っ伏すベルヴォル。
「おうおう、そりゃぁいいじゃね。ティータイムってんなら俺のダチ達も読んでいいか…そんで…セイラの事も、この国のことも子供達のこともなんもかんも全部諦めて、手ぶらで帰ってくれじゃね。」
「それはないな…それにお兄さん強そうじゃん、燃えてくるよねぇ」
「悪いじゃね、俺燃えちゃうと溶けちゃうからさ…」
平穏そのものだった天空庭園に今、”戦いの火ぶたが切られた”。
一瞬でお互いの間合いに移動した二人、冷気を纏った足蹴りを繰り出すハットと、それを盾で防ぐベルヴォル。
「無駄だよ、私の能力は“《軍勢の守り手》”守ると言う概念なのさ…絶対に越えられない」
「いや…」
その盾は、貫くことも破壊することも、威力、腕力、握力、衝撃、あらゆる力を無効とし、破壊、崩壊、倒壊、腐敗、あらゆる現実を受け付けない。
しかもその能力の範囲は多岐にわたり、物理的のみなたず機械の通信システムの間に盾をかませ情報を守ると共に外部との接触を断つ電波妨害的な使い方もできる。
「超えてみなよ、できるもんならねぇ~」
「時計廻理」
右回転で盾を蹴る。
「反時計廻理」
左回転で盾を蹴る。
「どうした、やけにでもなった?」
その行動は、誰がどう見ても越えられない壊せないその盾に蹴りを入れるだけと言うたいしたことのないまるで駄々をごねた子供のようなあまりにも弱弱しいい二撃、三撃、氷河を纏ったその足だとしても、凍らせることなどなんの意味も持たない…しかしそれは、連撃の如くとどまることなく続きそれは続けば続くほど
「がぁ!!!」
凶悪さを増す…
「腕が!」
「盾がどんだけ強くたって…それを持つ腕はそうじゃないじゃね」
盾が一切の衝撃を受け付けないそれはつまり、鉄の盾なら衝撃にとって変形していくことで衝撃を盾で軽減し腕に伝わる…しかし、この盾は衝撃を受け付けない、それはつまり盾に衝撃が吸収されず全ての衝撃が腕に伝わると言うことそれを上がり続ける威力の連撃を喰らったら…
“腕は…崩壊する”
「いいねいいねぇ!燃えてきたぁぁぁ!!!」
“盾の領域”
展開したそれは、盾の領域。青き盾の領域は半径10メートル距離にしてみればたいしたことはない。
だが…
「これる?ここまで…」
ベルヴォルは、上機嫌になり「上がってきたぁぁぁ!!!」とその声を高らかにその目を四泊に変え凶器すら感じるほどの完全興奮状態。
「そうだね…もう越えてるんじゃね」
その男はすでに背後に立っていた。
「どう…やったのぉぉぉ」
「簡単さ、僕は速いんだ」
それはフィギュアスケートと氷生成し操るその力をどこでもスケートリンクを形成できるそれは大気すら凍らせ空だって駆けることのできる移動系魔法。
その速度は凄まじく時速800メートルをほこり、ベルヴォルの目では追うことすらできない電工石化の速度。
「速度で勝れば、盾なんて関係ない」
背後からの蹴りに対応できないベルヴォルは背中を蹴られ自身の展開した結界に激突する。
「はは…来なよあるんだろもっと燃えるもの、私に見せてくれよ。」
「燃え尽きないでしゃね、お嬢ちゃん。」
戦闘はさらに激化、盾を駆使したトリッキーな戦闘で回し、ぶつけ
「破壊力之盾」
押し出す。
対するハットは氷のスケートシューズと冷気を纏ったそれで、蹴る!蹴る!!蹴る!!!
「三回転飛美・氷河」
「やっぱ…“最高ォ”」
一方それを見ているアルヴィトは…
「て言う茶番でした…」
そこは盾の領域の外、首元に向けられたその足は蹴る直前の足。
「なるほど、ベルヴォルの盾に細工をしましたね。」
「正解ぃ~」
盾に付着した氷、それが溶けて周囲に飛び散ってそこから再び冷気を纏って氷となり大きさと形状を変えて分身を生み出した。
「お嬢さんが戦ってるのは、僕の分身。そんでこっちが…ほ・ん・た・い」
「それも怪しいものだがね。」
「嘘じゃないよ、僕は女の子に二度も嘘はつかない。一日ね…」
決め顔で最低なことを言うハットと、不適に笑うアルヴィト。
「いいがね、わらわには戦闘能力がない。抵抗する気も起きないさ…」
「へぇ~随分といさぎがいいじゃないんじゃね。正直拍子抜けだぜ」
「なんとでもどうぞ、でもわらわらを捉え殺し続けたところで意味はない…なんの意味もね、“あの子”がいる限りね。」
《商都中央激戦区》
「「やべぇやべぇやべぇぇぇ!!!」」
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ、逃げるなんて神ってないねぇ~」
ピンクの鞭でポイズンとニットを襲い、それから必死に走って逃げる二人。
「小生ぇぇぇ!!!」
叫ぶ声は海獣の遠吠え…
「笑止千万不甲斐なし、それでもハート盗賊団の団員かぁぁぁ!!!」
「「そんなこと言われもよぉ~」」
海獣の遠吠えに、答えることもできず弱音を吐く二人。
「なになになぁ~に、なに神ってる的展開で盛り上がってやがんだよぉ、てかまさか値の技がこれだけとか…思ってないよね。」
“まだまだいくよ…”
続く戦場…
《裏社会》
「ぽよぽよぉ~ん、どうしたのかにゃ?もう…終わりかにゃ」
ピンクのモフモフツインテールが特徴てきな金目の少女が、蹂躙するのは世界の裏側。
天使、機械の天使が舞い降りるには分不相応な大地、そこにいるのは世界の掃きだめの蛆虫ども。
それは天の裁きが…それとも…
「まだ…まけてねぇーよ…」
先頭に立つダンサーはすでにボロボロ。
「うちのラップが、まるで…」
「だって関係ないもん、あーしの才覚ランダムだし…」
そばの瓦礫のそばで倒れて目を覚まさないメットの姿。
「さっもうしょうみ飽きたしぃ~…“死んじゃたらぁ~”。」
その凶悪な魔の手が、彼らを襲う。
「それは…困る…」
触れる間際の手を、それを差し出す女の頭に乗っかり突如として現れるキャップ。
「なんなの、あんた…」
「さぁ…俺にもわからん…」
激戦は続く…




