第六十四話 三途の川…
「ファウド…」
復活したスゲッギォルトは、油断したブルーノをその斧で真っ二つに切り裂こうとした。それを止めるため、ファウドが間に入って代わりに切り裂かれ…
「ファウドーーー!!!」
息絶える…
するとその瞬間、ファウドの持っていた火炎放射器が爆発して炎が周囲を囲む。
「ゴホゴホ、全く死にもの部類でやったことがただの目眩しだとはね。」
そう言って、死んだファウドのことを嘲笑って皮肉を口にするスゲッギョルド。
「うるせぇーよ…」
それに打ち切れるブルーノ…
「ナッシシ、君…どうなってるね?」
目の前に、直立不動で聳え立つブルーノは、火炎放射器から派手せられたその炎に全身を侵されていた。
「総長…」
死んだファウドが、あの世にある三途の向こう側で見た、人生最後の幻覚の中に映るブルーノの姿…
《100年前》
「おい、ファウド!!!」
(あの当時、魔力は俺にとって呪いだった…)
吹き飛ばされるファウドの目の前に立つのは、大柄な巨漢の男。
「ファウドォーーー!!!」
ファウドの父、ファーガスであった。
ファーガスは、毎日毎日息子であるファウドに暴行を加え続けた。いわゆるDV、ファウドの父はいわゆる魔力至上主義の親だった。そして二股上等の脳天チンポ野郎かつ根性論を提唱する厄介なクズであった。
そのため…
「気合いを!気合いを!気合いを入れろぉーーー!!!本気で!本気で!本気でやれぇーーー!!!」
殴って蹴って叩きつけて、何度も何度も鼓膜がぶっ飛ぶほどに叫び続けて、こんなどう考えても無意味な行為で息子の魔力を宿らせようとしていたようだ。
「ヴォーーー!!!」
その姿はまさに獅子、いや狂犬病の犬の様な見るに耐えない顔面からは炎が噴き出て全身をそれが覆う。
「鬼之業」
炎魔法の典型、古来からよくある使い方。応用性のかけらもないハズレ能力、そうやって内心父を蔑みながらファウドは今日も一日を過ごしていた。
「貴方、ファウドなんかの為に家を壊さないで!」
(なんか?そうだよな。俺は"なんか"だもんな。)
この当時、ファウドは自身に向けられ家族からの視線や扱いから自身を"生きる価値のない、とるに足らない存在"だと認識していた。
(不幸だ…)
同時にこうも感じていた。もっとまともな親元でそだっていれば、産まれる場所が違えば変わっていたかもしれない。自身がこんな目に遭うのは全て…
「環境のせい…」
ファウドは毎日、毎日、存在価値の無い自身への"自己嫌悪"の念と自身の存在を否定する家族への"蔑み"の心で満ちていた。
そんなある日のことだった…
「ファウドーーー!!!」
日常とかした、いつも通りのDVの最中…
(ブクブクブクブク)
「ん?」
突然、ファウドの身体から泡のようなもの溢れ出る。
「泡?まさか!まさかファウドにもついに魔力がぁーーー!!!」
それを見て、歓喜する父の直後。プシューと言う音を立てて吹き出る霧のようなもの。
その日、一件の家と共に…とある一家がファウドを残して全焼した…
(そうして俺に宿った魔力は、アルコール。水属性の器の一種で、火を灯せば倍で燃やして焼き殺す。つまりは、アンチ炎熱系魔法。それは、この国の人口のおよそ七割が火属性の器のこの国では即ち…"最脅"を意味していた。)
鳴り響く騒音、ラップ、DJ、麻薬のバイヤーにラリッタ女。家族殺しをしたファウドに残されたのは、裏社会的な生き方だけ。
「あ"?なんだテメェー」
「お坊ちゃんは、ママの乳でも飲んでねんねしなぁ〜」
訪れたのは、闇市場への一番通路ことタトゥーの経営するタトゥーショップ、ビューティフル・ヘブンの下にあるライブハウス"ヘルヘイト"の中で飲みまくる男達との絡み合い。
「退けよ…」
全員が、その言葉に席を立ち上がってその拳を向ける。
ファウドはそれを冷静に避けてそのうちの一人を机の方へ転ばし…
「消毒」
と言って、倒れた男は机を倒したことで飛んだ酒のグラスが頭から落ちて中のそれを浴びる。
「痛って!クソ!!!」
「知ってるか?酒は良く燃えるんだぜ…」
そこにマッチを一本落としてみると、倒れた男はあっちーーー!!!と叫んで悶え苦しむ。
「テメェ!そのままでいろ。それが身のためだ、店は燃やしたくないだろ?店主さん。」
店主である、セミリオン・モギレンヴィッチス。鉄血の魔法使い、最聡のギャングと呼ばれた男。堅気となった今、伝説に名高い最恐のアウトロータトゥーの弟分としてその地下このライブハウスのオーナーとなった男。
それが、その拳に纏った灼熱の炎おも閉じ込める鉄の檻のガントレットで放つ一撃。
「鉄血炎」
その一撃を、その言葉一つで片付けたのはファウド。
「アルコールはよく燃える、この霧の中でその鉄の檻炎を燃やせばこの店ごと灰にきす…あなたは強い、そして最聡と呼ばれますほどの賢人だ。どうか、その矛をお納めください。」
「何が目的だ…ファウド・ストライク。」
「だだ…悪名を轟ろかせにきた。行くあてもないのでな…」
「なら…いいところがある。紹介状を出すぜ…」
(そう言って、セミオの兄貴に紹介されたのが燃卑鑑だった。)
「俺はてっぺんを取る。入るなら総長、俺と戦え…」
入ってそうそう、二代目総長ブルーノに戦いを挑んだファウド。「ブラックじゃないのか、なんか残念だな」との発言もあり、ブルーノの怒りを刺激しつつのこのバトル。
どうせ、火の器の所有者なんて典型的なバカばっかだろうと、どうせいつも通り猪突猛進の精神で自身に返り討ちにしてやると思っていた。
「あ…」
その男は、立っていた。全身が焼き爛れるような業火の中で、その男は平然と立っていや…
「あ!そういえば言い忘れてたがよ…"ワシと戦う時は、時間をかけない方がいい〜"強くなっちまうからよ。」
(俺はこの時、初めて尊敬したんだぜ。汚物とまで蔑んだ炎熱系の魔法使い。その圧倒的な耐性力は絶対熱すら耐えきる完全無欠の炎の使い手。世界最強の熱血漢ブルーノ・ナックルジャブって男によぉーーー!!!)
時は、現在に戻る…
(プシュ〜)
ファウドが川を渡り切って、完全にこの世とは格別に空間、いわゆる"あの世"に旅立ち昇天したその瞬間。その肉体からは、大量の消毒と同様の成分の霧が生成され、あたりの炎をさらに強くする。
「まぁ〜要するに、燃えたぎったこのワシは最強ってことだ。なぁ〜ファウド…」
これがブルーノの能力、体温が上がれば上がれるほどその動作はより精密に、より俊敏に、その切れを増していく。この魔法を名付けて…
「蓮撃!!!」
カポネとは真逆の、当てれば当てるほど強くなる強さ。まさに蓮撃、まさに最強。限界など知らぬと、身体を動かす度にキレを増して確実に急所に入るその拳で放つ…
「絶対地点!!!」
その全てが規格外、必ず物体の、人体のあらゆる急所にあたり全ての斧を壊し、本体に当たるまで突き進む。
「待て待て待て!!!」
叫ぶスゲッギォルトの声も虚しく…
「今から入れる全弾、全てテメェーの急所に確実に入る、確定の絶対地点弾よぉ〜喰らいなぁ!!!」
そう言って放った、凄まじい連続のパンチ。
「我慢くらべと行こうぜ、不死身なんだろ。だったら…俺がバテるのが先か、テメェーが破てるのが先か…いざ尋常に!勝負しようかぁーーー!!!」
それは、耐えるにはあまりに地獄、火刑のそれに他ならない。
凄まじい灼熱の炎と、それに好悪するガス、一酸化炭素の息苦しさと何度も急所を打たれ死ぬ感覚。そして、それを味わせてるその男のパンチは、時間経過と共にキレを増しさらにさらにと強くなり続ける、温度の上昇が強さにかわる。そんな永劫に続くとさえ思える青天井の痛みの増し方に…スゲッギォルトの細胞一つ一つが絶望に染まり尽くしたと言う…
その連絡を受けた他のメンバーも、同じ回答をしていた…
「三回転飛美…」
さらなる回転がかかって、螺旋状に展開される広範囲にわたる凍結空間。
「豪結永久凍土」
それは、ミスチネの張った霧全域を凍りつかせ…
「復活してみろよ、その度に細胞事死滅するっじゃん」
中央激戦区…
「ウガァーーー!!!」
スルーズの才覚は、盾の破壊者。能力は防御貫通、あらゆる防御を貫通する。盾や鎧は勿論、腕による構えの防御すら貫いて破壊することができる凶悪な能力である。
「鮫狼…」
それに対抗するかの如く放つ、青き海獣の一撃。
「衝撃!!!」
しかし、重ねられた一撃同士は威力は互角でもその能力によってスルーズが圧勝。
重ね合った腕が、吹き飛んでしまう。
「ウガ!ガッ!ガァーーー!!!」
「吹き飛ばせて嬉しいであろぉ〜だが残念だ、この腕は既に…小生のものでは無い…」
「ウガァ?」
ウルシーの殴りつけた、"宝石"のように輝き飛び散ってそして…
「弾け踊る蛍」
戻る…
「ウギャァーーー!!!」
光の速度で動くそれに、対応できず喘ぎ続けるスルーズ。
「すまぬな、小生の左腕は帝国で既に粉々になって失われた。絶対反射、その能力を持つ女にな…」
ウルシーの腕は、帝都以降。ラインハイドの魔力のそれへと変質していたのである。
「ガバァ、ガッハッハ…」
唇から吹き出る血は滝の如く、その一撃は大ダメージを受けてなお、立ち上がる闘志を失わない破壊の申し子スルーズ。
「追い討ち…と言ってしまうと茶々な物言いだがな…」
その強靭な肉体で、踊り狂う蛍を吹き飛ばしウルシーに襲いかかる。
「泥之狂魚」
泥で作られたピラニア達は、その鮫狼衝撃と同様の攻撃力と極限まで高めた防御による強度と鋭い牙による殺傷力でスルーズの肉体を攻撃し続け食い破る。
「暴れるだけでは芸がない…"白髪の我が同胞"からそれを学び、鍛え、作り上げた泥魔法の新技。まだ未熟、魔法の扱い方をまだまだ研究せねばな…」
ワルキューレ姉妹と交戦中のBAD、スモーク、サラエボ、スコーピオン、リッチ、ブルーノ、リップ、ハット、ダンサー、メット、ラップ、ダイル、キャップ、ノーズ、ポイズン、ニット、ウルシーのうち、フリーとなったのはウルシー、ハットの二名。それに加えて、現在ホワイトとの戦いを終えたタトゥーとドクターの二名が他の支援に向かう。
そんな戦場の最中、突然とんでもない情報が舞い降りて来た…
(「おい(棒)聞こえますかい?(棒)」)
突然MEから聞こえてる棒読みの声。
「おう!キャップか、どうした!!!」
暑苦しい喋りのダイルが、敵であるスケグルを丸呑みにしながらそれに応じた。
他のメンバーも、その声を聞いて耳を傾ける。
(「多分、ORE達が戦ってるこいつら囮だ。(棒)」)
その言葉に、衝撃が走る。
「あ"どう言うことだい!キャップ。」
(「今ここで、この通信が聞こえてる奴ら名前言って。(棒)」)
そう言われて名乗り始めたのは、BAD、スモーク、ブルーノ、リップ、ハット、ダイル、ノーズ、ウルシーの八名。
視点は《キャップ》へ…
「やっぱりか…(棒)」
(「で、どう言うことなんだ。」)
BADが、質問の意図に対して問う。
「おそらくでやすが、この通信一部の奴だけ聞こえて無い。それは、機械の故障でもあいつらのME自体の通信の悪さでも無い。おそらくは、サイバー攻撃、通信が一部遮断されてるんだと思う。(棒)」
(「え〜と今聞こえて無いメンバーって〜」)
「サラエボ、スコーピオン、リッチ、ダンサー、メット、ラップ、ポイズン、ニット、ドクター、キッド、タトゥー、ハックの兄貴の12名です。(棒)」
(「で!その12名がなんなんだよ。」)
すると、キャップから衝撃の言葉が発せられる。
「おそらくっすけど…奴らの狙いは通信の繋がって無いメンバーにあります。」
その言葉に、一番驚いたのは路上の天使達の二人。
(「おい!そりゃーつまり…あたいらのメンバー三人が狙われてる…)」)
「そうすね、多分この狙われたメンバーが対象してる敵が本名で仮にこいつらを上位組と呼ぶなら、俺らが戦ってるこいつらは陽動用の下位組。戦闘中ずっと感じてた違和感の正体は、ワルキューレとか言うこいつら姉妹にはどう考えても実力に差がありすぎるって部分。」
確かに、考えてみればキャップの言うとおりである。現在の状況を整理すると、戦闘を終えたタトゥー、ドクターへの連絡を遮断することで現場の状況を教えず彼らの到着を送らせ、かつ全員同時撃破と言う不死性を利用して弱い連中を陽動として捨て駒にする。
これによって、本命であるヴァルキリー、フリスト、フレック、ヘルフィヨルト、レギンレイブの五名の元に駆けつけさせない。
「そんでもって、こいつら五人と対峙している奴ら全員(棒)…」
(「「戦闘経験が浅い!!!」)
そう、フリストと対峙するサルエボとスコーピオンはリーダーながらチームそのものが新米であるし、ダンサーとメットは路上の天使達の中でも若手の部類である。ラップとリッチ、ハックに関してはそもそも戦闘員では無い。
ポイズンとニットも、ハート盗賊団の中では下っ端の部類である。
「そもそもこいつらの撃破条件自体が時間稼ぎに最適なんですよ(棒)。だって…」
(「全員同時撃破ってことは、一人でも生き残ってればまたいくらでも復活できるわけだからな。次元の違うドクターやタトゥーには情報を与えず、俺ら手だれの団長、副団長クラスには捨て駒を当てる…よぉーく考えてられてんな。」)
「はい、そんでもっておそらくこの作戦のことを捨て駒の奴らには伝えてない。」
そんな会話の最中でも、キャップの目の前にいるエルラーズは攻撃の手を止めない。
(そしてこいつのこの動き…)
「これを仕掛けた奴がいる、そいつを叩きにいかねぇーと話が進まねぇー…今動ける奴は?(棒)。」
(「俺ならいけるじゃん。キャップ輩先。」)
(「同じく、小生も行ける。」)
そう言って答えるウルシーとハット。
「そうか…それじゃハットはこんなふざけた計画を企て奴のところに、ウルシーさんはそこから一番近いポイズンとニットのところに行ってくれ(棒)。」
(「あれ?他の奴らはいいじゃん?」)
「サルエボとスコーピオン、リッチとハックの兄貴はなんとかなるだろう。問題は、ダンサー、メット、ラップの三人…そいつらの助けはOREが行く…」
「いかせねぇーーーよ!!!」
連絡を終えたキャップを襲う、エルラーズ。
「テメェーの能力は知ってる…そんでお前の技には俺を永続的に殺せるようなもんはねぇーーーんだろ…炎場の踊り子…キャップ。」
「火属性魔法…火葬」




