第六十二話 援軍
「誰だ…おっさん。」
「私の名は、マキシム。マキシム・ジャンキー大佐だ。以後お見知りおきを、フロスト帝国最恐の犯罪者…ブラックナックルジャブ殿。」
その男の名は、マキシム。その二の腕は丸太のようで、その頭は鉄すら砕く勢いの中年。そして軍人、しかも大佐と来たもんだ。
これはただものではないと、警戒はさらに強まる。
「で?そのジャンクフードさんが俺になんのようだ。」
「いやはや、別に何も無いよ。君にはね…ただ…」
そう言ってマキシムは、先ほどインクと化したジャッキーに触れ…
「念写」
そのインクから、一枚の写真を作り出した。
「これが、何かわかるかな?」
「なんだい…そりゃ…」
二人は野良見合いながら、その場で立ちすくむ。
「これは、設計図の写真さ君が盗んだね。」
それを見た瞬間、タトゥーの目はその一点を注視した。
「これが、私の魔法…」
その丸太の様な両手を大きく開いて、マキシムタトゥーを見上げる様にして顎を上げてこちらを見る。
「さぁ〜君風情に何ができるかな?」
「待て!!!」
タトゥーの静止を振り切って、その場を去ったマキシム。
「瞬間移動の類か…」
こうして、設計図を奪われたタトゥーはマキシムの位置を魔力感知で探知し、そこへ向かった。
《軍隊総司令部・ジャックフロスト》
「へぇ〜随分とでっけーーー!!!…城だな…」
声を張って、見張りの多い門の前に立つタトゥー。
「誰だ貴様!ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」
「そうかい、じゃま…」
その瞬間、男はゆっくりと閉ざされた門の小人ですら到底入ることの難しい門の間をまるで当たり前かの如く通り抜け。
「なに!」
「貴様ぁ!!!」
銃を向ける兵士に対して…
「どうぞ?やってみろよ」
その言葉を引き金に、一斉放射が始まった。
「効かないねぇ〜」
「なぜ!」
「そんな茶々な豆鉄砲じゃよぉ〜」
そこから始まったのは蹂躙だった…
銃口を向ける兵士達の頭を掴み、腹を殴り、蹴り飛ばし、シンプルな体術の応酬で彼らを蹴散らした。
「ブラックゥ!」
「なんだい?」
「お前の魔法はインクだろぉ〜つまりは水分!液体!ならば…」
そう言って兵士が取り出したのは火炎放射器。
「強力な炎には勝て…」
しかし、その言葉を発そうとした瞬間に放たれたのは黒い弾丸。
「黒異弾丸」
墨の弾丸が、兵士の眉間を捉えて打ち抜き、そのまま絶命した。
「ヒィーーー!!!」
「化け物…」
慄く兵士達をよそに、ライターを片手に一服を始めるタトゥー。
「まったく…やれやれだぜ…」
そして10分後…
「随分と…カラフルに殺ましたね。」
マキシムが見つめるは、戦闘の後。そこに浮かぶ色は、言ったって真紅の赤色で無ければおかしい。しかし、広がる一面の色はとても鮮やかなインクのそれ…
「ここでナワバリバトルでもやったのかな?ブラック・ナックルジャブ」
「鮮やかなのが好きなのさ、色が一つじゃつまらない…」
「そうか…」
何がを察したかな如く、そう吐き捨てたマキシムの姿がぶれ始め。一人しか存在しないはずのそれが数十、数百、数千とまるで乱視の酷い視界の如く何十にも見え始める。
「連写」
「やれやれ、ナルトの一話かテメェーわ。」
襲いかかる大量のマキシムを相手に、ブラックは無数の銃を出現させそれを周囲のマキシム全員に乱射した。
「銃すら作り出せるのか、ではなぜ先の戦いで使わなかった。」
「そりゃぁ〜お前、魔力が持ったねぇーからだろ。つか、これは俺が描いた銃じゃねぇー」
「何?」
「おっさんとこの、可愛可愛い部下が断末魔と一緒に落としてくれた戦利品だぜ。」
「なるほどな…」
その様な会話の中、展開した銃は無限とも言える弾丸の数を誇り、それらが周囲を一掃するのにそう時間はかからなかった。
「残念、私は不死身なのだよ」
大量のマキシムの肉体が、みるみるうちに治ってて行く。
「そんなこったろーと思ったぜ…」
それは指先から放たれる指鉄砲。
「黒異弾丸」
その一撃、数の減ったマキシムから本体を捉え
「ガバァ!」
その眉間にヒットし、マキシムは地面に伏せた。
「なんつぅー頭の硬いおっさんだ。普通、弾丸打ち込まれて生きてるもんかねぇ〜」
「ハハ…君こそ、狙いはこれだったのか…」
そう、タトゥーの狙いは数を減らして本体をあぶり出すことであった。
「そうだな、そして再生は無駄だぜ。その弾丸は特別性でな、形状が特殊だから軍隊の再生細胞による肉体治癒じゃな簡単には治らねぇ〜」
「よかったよ…肉体防弾性薬を打ち込んでおいて…」
「薬品ね〜痛みなんざねぇーんだろ…」
「あぁ〜例えば四肢がもがれようとも、私の肉体から血は出ないし、それに痛みどころか痛覚が完全にイカれていてね…触れても、何も感じなくなってしまったよ…」
「"オーバードーズ"…か…」
オーバードーズ、それは。アイスフロー帝国兵士が軍隊学校入学時に課せられる最大の試練。新入生を薬漬けにして生き残れたものだけが、入学を許させる。
その痛みに耐えしものは超人となり、メラトニン分泌を抑え不眠不休で活動可能、アドレナリンを大量注入により常時肉体的最大パフォーマンスを獲得、基礎身体能力の向上はもちろん、傷や腕がもげたとしても再生し、再生が困難な状況でも一瞬で止血され血は出ない…何もかもが兵士よ理想と言えるそれを、持ってして全ての副作用が…
「痛覚の完全喪失」
「そう…もはや私は妻や娘に触れてもその体温すら感じ取れんのだよ…」
それは、強さの代償。
「この国では、失敗作は必要ない…君の相棒の様にね」
タトゥーは、その発言でもう一発その脳天に打ち込んだ。
「知っているよ、四つ耳の獣人は中途半端の証」
二発…
「獣人にも小人にもなりきれなかった出来損ない。」
三発、四発、五発、六発…
「本来獣人との混血は、獣化とその種族とを併用できるが、四つ耳の獣人は他の種族本来の姿と獣人の姿がそのまま融合した状態で、獣化が出来ない。つまりは常時中途半端な獣化状態…」
その後、タトゥーの怒りの上昇と共に段々と弾のスピードは上がり…
「その性能はいちじるしく低下する。まさに…」
そしてついに…
「ゴミ…だ」
絶命した。
「マキシムくん…」
その後、設計図は再びタトゥーの手で焼き払われ。一見落着かに思えたが、マキシムは設計図をすでに他国へと横流ししており結果…
「なんでだよ…」
予期した事態よりも悪い結果を招いた…
《時は、現在に戻る》
「だからだ…俺の力じゃ何も止められなかった。だが次は違う…」
広げた翼は、黒と虹。
「止めて見せるさ、今度はな…」
そう言って、空中に描き出したのは…
「MP5…」
「そうさ、あいつが欲しいと言ってた銃でな。」
両手に握ったそれで、ホワイトを追い詰める。
「フゥ!」
ホワイトも負けじと、メスを巨大化させ飛ばし始めた。
「やれやれ全くワンパターンだな。」
その瞬間、タトゥーが纏ったのは黒いドーム状のそれ。
「黒円」
それは途端に広がり、周囲を包み込んで飛んできたメスを吹き飛ばす。
「そんで持って…」
ドームの展開が終わると共に、ホワイトの視界には投げ出された銃のみが残り、タトゥーの姿が見えない。
「黒拳」
背後に回っていたタトゥーのその一撃を受け、ホワイトは遥か彼方へと吹き飛ばされる。
《ホームストリート・人工山》
凄まじい音と共に、ホワイトが訪れたのは小さな美術館。
「ここがどこだかわかるか?」
「美術館ですか…」
「そうだ、そしてここには俺が最も敬愛する絵がある。」
その美術館はとても小さく、展示された絵もそう多くない。しかし、その奥の奥にはとてつもない力らを持った絵が一つ…
「死を思え(メメントモリ)…死ってのはよ…どんな強者にも逆らえない現実だ。だから…この絵が何より好きだ…俺はよ…」
描かれたそれに触れ…
「まさか、具現化を…」
「そうだな、俺の魔法なら可能だ。他人の絵でもな…だがその前にあんたには聞いておきたいことがある。」
その言葉は、ホワイトに対しての最後の弔い。
「あんたは…あの人のことをどう思っていた…」
「またそれですか?」
「そうだぜ、大事なことだからな…」
ゴブニュ・ハンマー・ギアーク。その名を聞けば誰もが驚く有名人。人々を貧困から奴隷から救い出した奴隷解放の立役者で、世界で初めて共和国性を作った男。
《時は一瞬過去に映る》
「自身を責めるな責めるな、ブラック。お前は出来ることをした。その結果はどうあれその行動は何かしら未来に影響を与えたのだぞ。きっとな…」
「なんだよ…それ…」
「知ってるかブラック、世界は回ってるんだぜだぜ。商人は客がいるから成り立つし、客は商品があるから成り立つし、工場は人がいるから成り立つ。そうやって世界は回っているんだぜだぜ。だからな、俺は人の上に誰もいない国が作りたい。名は共和国。それが俺の夢じゃぜ。」
憧れたからこそ、その背中に救われたからこそホワイトに怒っている、憧れの喪失を悲しんでいる、だから白黒はっきりさせておきたいのだ…
《時は戻る》
「俺はあの人の作品が好きだった、あの人の作るものの全てが…ものがどうあれ芸術ってのはその人間の理想が現れるとの…俺は好きだったんだよ何よりあの人の理想がな…あんたはどうだい?マリオネットさんよ…」
「そうですね…」
ホワイトはゆっくりと口を動かしてこう告げた…
「都合のいい駒…ですかね…」
「そうか…」
絵画から、具現化したそれはホワイトを骨で包んむ様にして囲みそのまま絵画の世界へ彼を連れ去った。
「死んだな…」
それは何を思ってなのか、敵であるホワイトに対しての捨て台詞なのかそれとも…ゴブニュに対してなのか…
「はぁ〜はぁ〜」
視点はスモークとBADの対峙する、ヒルデへと切り替わる。
(この男…一体なんなのだ。闇が濃すぎる…)
「どうした?もうばてたのかな?」
「クッソ!」
ヒルデは、激昂してスモークへ特攻。
「フン」
スモークは、黒い煙で大線する。
(とは言ったものの、身共の身体は100%魔力で出来ている。脳も腎臓の鼓動も全ては身共の魔力をエネルギーとしてスチームパンカーが制御している以上。それが無くなることはすなわち死を意味する。彼女の魔力がどの程度かは知らんが、これ以上の死に直結する再生は魔力の消費が激しい…)
つまり、スモークもまた追い詰められていると言うことである。
(だからこそ…)
「まだか!BAD!!!」
「もうちょい待って、お兄たま。」
なんだその女子高生の言い訳みたいな口調は、と思いつつ仕方がないので時間稼ぎを続けようと再びヒルデに目をやったスモークだったが…
「ん!」
そこに、ヒルデ姿はなく…
「戦闘中によそ見とは…」
ヒルデはすでに、剣を片手に背後にいた。
「随分と余裕なのですね。ドン・スモーク。」
「ガッハ!」
スモークの身体は、よそ見をしたその瞬間。数秒のそれで全身を微塵切りになるまで切り裂かれていた…
「再生」
それでも、再びの再生を試みるスモーク。
「ハハ!馬鹿が…」
再生を行おうとコードが修復を始めた瞬間、体内からわたの抜けたぬいぐるみの如く大量の黒い血が周囲にばら撒かれ消費する煙の量が増大した。
「なっ…ぜ…」
「それは当然です。貴様が相手にしているの我が母上から授かりし最高峰の剣。"光剣・ブリュン・リ・エッダ"、その能力は対人干渉を持つ光の剣。」
干渉力、それは魔法や他の能力の影響範囲や影響対象。大きく二つ、個人干渉と世界干渉系に分かれる。例えるなら時を止められる能力者がいたとして、世界干渉で時を止めれば世界そのものの時がとまり個人干渉で時を止めれば対象物のみの時が止まる。
そのうちの今回は個人干渉の、さらに限定化した使用方法…それが対人干渉である…
「そして、この剣は対人のみに干渉できる。つまりは周囲の建物はもちろんあらゆる存在に影響しない。貴様だけが斬られる、光による30万連撃それを貴様は3秒耐えた…貴様は気づいているか?自身が致命的な命に関わるダメージを無意識で再生していることに…」
スモークの体は九割九部が魔力で動いている。つまり、魔力が無くれば死。再生の魔法は特に大量の魔力を消費し、それが死に直結するとなればその量は計り知れない。
しかし、生命維持装置である以上は、致命傷は防ぐが治すかを自動で行う必要があり、その結果気づかぬうちに大量の魔力を消費していたのだ。
「魔力切れとは、笑えない…」
「そうか?私的には面白いぞ、滑稽でな。」
性格の悪い捨て台詞を吐きながら、彼の体に最後の一撃を決めようと構えるヒルデ。
「最後は華やかにいきましょう」
出現させるは無数の光の巨大な剣。
「多連光剣戟」
「フュ〜これは、中々の弔いだ…」
「終わりです…」
光の剣の一斉射撃、それは光速を超える遥か彼方の速度でスモークを遅い。その数はなんと数千、数万を軽く超える。避け切れるはずがない、そう思い銃を捨て諦めたスモーク。
「帝国式剣術一之段!牛狩り!!!」
その瞬間のその掛け声と共に、向かってきていた無数の剣からキュピンと言う音がなりそして…
「なぜ…私が…」
放たれた光の剣が、全てヒルデの方えと跳ね返されていた。
「おせぇーぞ、馬鹿弟。」
「悪いなお兄様、久々でさ。感覚わすれちまってよ」
「貴様…何を…」
「何って…カウンターだけど?」
「カウンター…だと…」
帝国式剣術、それは荒れ狂う環境と自然の強大なエーテルの中強くなり続けたモンスターと日々対峙する妖精族に伝わる奥義である。
その一つである牛狩りは、闘牛士が赤いマントで暴牛を引き寄せそれを交わすかの如く対象の攻撃をあえて受け、それを利用して相手に攻撃を返す究極のカウンター技である。
「決まったな…」
「だな」
最後の決め手を決められ、完全に息絶えたヒルデ。二人はやった、確実に死んだと確信した…
しかし…
「まだ…ですよ…」
去ろうとした二人の背後に、ヒルデは立っていた。
「あらら…こりゃぁ〜随分なかまってちゃんだねぇ〜お宅。」
軽口で返すBADだったが内心は…
(あれぇ〜おかしいなぁ〜今の一撃の威力、気配、魔力、完全に途絶えたはずなのによぉ〜)
(ありえない…まさかこの女も再生を!)
にしてもおかしい、BADもスモークも圧倒的な違和感を感じていた。
「おいスモーク。」
「なんだ?」
「確かに息は途絶えてだんだよな?」
「そのはずだ、身共が確認した限りではな。」
スモークの魔法煙魔法は、一酸化炭素を操作する関係上。風属性ほどでは無いものの、呼吸や酸素の流れ、大気圧などの作用に敏感なのだ。
「随分と困惑されているようで…」
「そう見えるかい?」
「はい、凄く凄くすごーくそう見ええますね。」
BADのポーカーフェイスはヒルデに読まれていた。あるいは、先ほどの小声の会話がヒルデに聞こえていた可能性もある。
どちらにせよ、この状況に対する疑問は晴れない。
「そう、確かに私は死んだ。この場でさっきな、しかし私は今復活した。ありえないでしょうねぇ〜死んだ存在が復活するなんて…それもそのはずです、そもそも私…"本人"では無いんですもの…」
その言葉の直後、二人の疑問が晴れ身体に電撃が走る。いわゆるピント来たと言う奴が今起きたのだ。
「なるほど…」
「そう言うわけか…」
「お気づきになられたようですね。そうです、私達現在この場にいるヴァルキリー以外のワルキューレは…"思念体"なのです。彼女、ヴァルキリーの能力で作り出された…ね…」
その頃、商都上空には…
「なんだ…あれ…」
黄昏色の戦艦…
「「ルーン発動!!!」」
その出現と同時、黄昏なる者達全員がその言葉を発して続けた。
「ᚠ(フェオ)、神々之方舟
一人は、黄昏色の戦艦を出現させ…
「ᚷ(ギュフ)、姉達」
もう一人は、13人の姉妹を出現させた。
「ナリシッシッシ、斧の時代がきちゃったねぇ〜」
二つ編みのツインテールの金髪、スケッギォルド。
「何この気圧…キモ…」
第三目が書かれたローブ、ゲンドゥル。
「紫外線…嫌いだね…」
萌え袖のマスク、ミスチネ。
「うがぁーーー!!!」
まるでバーサーカー、スルーズ
「ぽよぽよ〜ガチャガチャにぃ〜し・て・あ・げ・る♡」
パンプキンパンツと三角帽子、フレック
「いいねいいねぇーーー!!!燃えてきたぁ〜」
大きな盾を持った鎧の女、ベルヴォル
「おいたはいけませんよ、皆さん。」
黄緑色の髪、アルヴィト
「おぉ〜すごいお客さんだねぇ〜。まっ、なんとかなるっしょ。」
マッシュルームヘア、シグ
「ぐるぐるぐるぐーるぐる?」
ぐるぐるメガネのボサボサ、スケグル
「マジで、早く返してくんない?」
赤い髪に黒いメッシュの尖った鉤爪とハイヒール、ヘルフィヨルト
「おっはようーーー!!!ござますーーー!!!」
首に猫の首輪をしたメロンパン色の服装、ゲル
「マジこのメンツ、神ってんでんすけど」
華やかな飾り物に身を包む、レギンレイヴ
「酒じゃー酒じゃぁーーーい!」
破けたミニスカにビキニアーマー、エルラーズ
新たな敵が"襲来"する…




