第四十五話 蠢く者
「おい!ダークロード。」
暗がりの残る地下室の扉の前の階段沿い。そこを上がろうとその大きな扉を開けた聞こえるのは赤い翼の彼の声。
「どうされました、レマルギア殿。」
「いや、別に…ただ再確認しとこうと思ってな。今回の作戦、あいつ様を使ってやるんだろ。良いのかい?お気に入りだっただろうに…」
「それについては、問題ない。ヨの方から承諾は既にとってある。」
「そうかい、ケッケ…皮肉なもんだな、レイのやろぉ〜も」
「そうだね、この件を彼が知ったら激怒するだろう。だって、"虚"は彼にとって最悪だからね…」
ーーーーーーー商都 ホワイトテラスーーーーー
「ふっ」
その屋上で、街を見上げ不適に笑う金髪ポニーテール、月明かりの刺繍にThe moonと書かれた黄色のスカジャンを着込む男。
(「計画通りにお願するっすよ、虚さん」)
「了解…」
MEから聞こえる般若の女の声に返答をした。
ーー商都 ショッピングストリート
五階フロアーー
一向は、ガイルへの依頼を完了させ、その報酬を受け取った後。ガイルからの報酬を生活費としてドクターが受け取り。スモーク達からもらった50億を使用し、闇が蠢くその時に買い物を楽しんでいた。
「ふっふっふ〜るんるんるん〜」
鼻歌を口ずさみながら、一文なしから解放された喜びに酔いしれるベシル。なにしろ10億と言う大金だ、そう簡単には使い切らないだろう。
「え〜とね〜、こっからここまで全部!」
「はい、かしこまりました。」
各国から、選りすぐりのブランド店ばかりが集まるこの商都の店々。そして、その高級感の漂う服屋の服を大量に買い込む様はまさに
「黒の魔術師ならぬ、ピンクの富豪だな。ありゃ〜」
「あははぁ…」
BADの背後からの言葉に耳を苦笑いのキッド。
「これは長くなるな、ベシルくん。ボク達は別の場所を見て回るよ。」
「了解、了解。あっそうだ、ドクターちゃんこれ!」
投げ渡されたのは、買い物袋。
「その格好じゃ目立つでしょ、服ぐらい変えとかないとさ。」
「そうだね」
(仮にも厳戒態勢中の今の各国をうろつくのに、このローブは目立ち過ぎるのは確かだ)
ドクターは、自己完結しながら袋の中を見ると、そこにはドクター、キッド、スター用の服が一式揃っていた。
「用意周到なこって」
「じゃ〜俺様もそろそろ…」
「BADお兄さん達は荷物あるからダメだよ」
「はいはい…」
「なんでおいどんまで…」
BADとノーズの二名は、ベシルの荷物持ちね係になっていた。
「ベシルさんは着替えなくて良いんですか?」
「ふっふふ〜甘いなキッドくん、既に着替えは終わっているのさ!」
ベシルは、ローブを脱ぎ捨て
「わーはっはっはー!どう、これ?名付けてベシルちゃん2.0!」
ぱっつんとした前髪が特徴的なピンクと水色の短髪にインナーが丸見えの肩とへその出た赤いシャツに黒い半ズボンとういう布の面積の少なさ、黒いリングピヤスを耳、口、鎖骨、へそ、右乳首に合計13個付けたイカツさと赤いスニーカーのカジュアルさを合わせ持つ新スタイルのベシル。
「はい、とってもお似合いです。しかし…」
「ん?」
「一応街中なので、服は脱ぎ捨てないでくださいね。」
「はーい!」
ベシル、キッドに褒められたことで、いっそう嬉しそうにしながら、スキップをしてその場を去っていた。
「凄いね、彼女は…」
「それじゃ、そこのお店の試着室で着替えさせていただくことにしようか。」
「うっす」
「はい」
かくして、三人はベシルと共に新スタイルいや…
"ストリートスタイル"となったのである。
(しまった、はめられた。この格好、明らかに布面積が小さい。)
全身の包帯と丸メガネは現在なものの、下は緑の短パン、上は紫のスポブラともうしわけ程度の胸のあたりで裾が終わった下乳丸見えのパーカー。普段、家に引きこもり寝て食って寝てを繰り返すドクターにはかなりハードルの高い衣装。 それらに添えられたふわふわのシュシュで作ったサイドツインテール。
「どうだ!これ、カッコよくね。」
いつも付けている黒星教団のバンダナの上にルチルからもらった黄色い星模様のヘアバンドを重ねたタンクトップにタブタブズボン、上に金の星のネックレス、下には黄色い星柄のスカーフを巻いたスタイル。
「皆さん、とてもお似合いです。」
白いシャツの上にストリートジャケットと足の付け根にかけて細くなるファスナーパンツ。もちろんシャツ以外全て黒である。
「これで、一応…準備は万端って感じだね。」
(やっぱりこの格好恥ずかしい…)
「そんな顔したってダメっすよドクター師匠。ベシルの姉ちゃん、俺ちゃん達が着替えてる間にアンキラ姉ちゃんに頼んで全部服持ってちゃったすから、これ着るしかないっすよ。」
「くっ!こう言うところだけ用意周到なんだあのくそアマは…」
「ドクターさん口が悪いですよ。」
三人は各々思うとこらはありつつ、その姿を受け入れ、ショッピングエリアを一通り回ることにした。
「うぉー!すげぇ〜」
そこは、ショッピングエリア三階ゲームセンターエリア。
「なぁーなぁーキッド!あの機会なんだ?どうやってやるんだこれ」
「え〜と、あれはクレーンゲームですね。中にある掴む機会があって、それで景品を掴んであの穴のところで落とすんです。」
「おーやってみてー!」
「何か欲しいものとかありますか?」
「う〜じゃっあれ!あの赤い奴。」
それは、大人気コミック"ヒーローズ"の主人公、ファイヤーボールのぬいぐるみであった。
「それじゃ、まずお手本を…」
キッドは、慣れた手捌きでなんなくその景品を取ってみせた。
「キッドうめぇーな!」
「えへへ、実は僕も昔初めて帝都に行って魔法騎士団要請学校に入学した時、休みの日にクラスの人と初めてゲームセンターって呼ばれる場所に言ったんです。その時色々教わりまして〜…」
「それでも凄いよ、まさか一発で取れちゃうなんて。」
「そんなことありませんよ」
キッドは嬉しそうな顔でそう言った。
その後も…
「おー!これなんだ。」
「新型のフルダイブゲームって奴ですね。確かダイバーポータルって言うゲーム機のはずです。」
「ここに試験用があるようだよ。やってみるかい?」
「おう!」
電化製品やゲーム機の置かれたエリアに行ったり
「こっこれは!」
「どうした、ドクターの姉御。」
ドクターが、目にした驚きのものとは
「安眠まくらですね。欲しいんですか?」
「まっまぁね。ボクの有いつの趣味だしね。」
雑貨や家具の置かれたエリア
「なんだこのキラキラした場所」
「宝石店ですね、僕の住んでいた帝国は鉱石採取とその加工を主な産業としていたので、なんかこう〜懐かしい感じがします。」
「おー!そうか。キッドはなんの宝石なんだ?」
「え?」
スターは、キッドにとって予想外の質問をした。
「宝石って…どう言う…」
「ん?ほらあれ、ヘマタイトって書いてあるだろ。」
スターの指刺す先にはヘマタイトのブレスレット。
「あれってさ、あの怖い〜叔母さんの名前だよな。俺ちゃんが相手したのもゴールドって奴だったしさ。」
その時、キッドは思った自身の名がどう言う意味を持つのか、自身が帝国の住みながらなぜ姓も名も宝石でないのかと言う疑問をその時初めて抱いた。しかし、ニヒツと言う名の意味を知ろうにも、もう既にそれを付けた老婆も親も既にこの世にはいないのだから、知る由もない。
「トッ、トリビライザと言う姓は、このメディウス・ロクスの中でも一番多い姓なんです。」
「おー!そうなのか」
「名の意味は"平凡"、トリビライザは世界でもっとも多くそして現在する中でもっとも古い姓と言われいているしね。かつて、天人族の長にして神樹の守り手皇樹セトが人間に与えた最初のスペルらしいから…。」
「皇樹セト?」
スターは、聞いたことの無い言葉に困惑する。
「皇樹というのは、この世界"メディウス・ロクス"に名を与え、十器教団の前身である神樹教の教祖にして、この世界でかつて最強種族と言われた神になることのできる種族、天人族の長の名です。」
「えーーー!!!神様になれんのか!」
「そうですね、伝承ではそう言われています。」
「まぁ〜平たくいうと、この世界の最初の統治者と言うことさ。だからこの世界で"皇"の名は皇樹しか持たない。神聖な名だからね。」
「皇?」
「ほら、帝国でも皇帝じゃなくて王帝と言う名前でしたよね。あれは皇樹様の権威を損なわないために、十器教団が改名したからだと言われています。あと皇帝は禁語なので言っちゃダメですよ。」
「へぇ〜色々あんだな〜」
そんな話しの最中、スターのお腹がぐぅ〜となった。
「そろそろ、食事にするかい?」
「「はーい!」」
スターのお腹を切っ掛けに、三人はフードストリートに足を運ぶこととなった。
ーー商都 フードストリート 二階フロワーーー
「おー店がたくさんいい匂い〜」
「こんなにたくさん飲食店があるんですね。」
「まぁーね、商都は7つのストリートと中央のホワイトテラス、国会の君主領域かはなる超巨大商業都市だからね。一ストリートにつき10階までの10フロワと15種以上のエリアからなるこの場所の商店規模は、計り知れないものがあると言わざるを得ない。だてに世界の物と情報が集まるとはうたっていないと言うことさ。」
ドクターが話を終わると同時に、スターのお腹が再び鳴った。
「すまない、話し過ぎてしまったね。」
「いーぜ別に、ただこんだけあっとどこに行っていいいか迷うな〜」
「それなら心配無い、ベシルくんからのお使いのついでに、おすすめの店は全てメッセージで送られて来ている。君らにこれと言った希望が無ければここにしないか?そうすればお使いもすむ。」
そのメッセージには、画像と共に大人気ハンバーガーショップ、マルクの文字がかかるていた。
「お〜ベシル姉ちゃんこう言うの詳しいんだな。」
「まぁ〜ね、旅行や食べ歩き、買い物はイメチェンの次に彼女が好きなものトップ3だからね。その手のものには詳しいのさ。」
(まっ、そのせいで毎度毎度大金が吹き飛ぶんだがね。)
ドクターは嫌な思いでを思い出しつつ、スターとキッドを連れてマルクへと入っていった。
「いらっしゃいま…」
「お兄さん!あたいピクス抜きって言ったじゃん!」
入店時に聞こえる店員の挨拶をかき消すほどの甲高い。
「申し訳ございません」
「姉さん、店員さん困ってますから」
「ほら、わいが食うんでガンマンしてくださいっすぜ」
「ざっけんな!ピクルスがこの表面についた瞬間、あたいのバーガーはすでにピクルスに汚染されているんだ。だからやだね!」
「姉さん〜」
大声で怒鳴る雪のように白い肌をした、腰までつくほどの長い白髪に短いタイトスカートととストリートクイーンと書かれたパーカーを羽織る女性。
「なんだか、騒がしいね。」
「すっすみません!僕止めてきます。」
「おっおい、キッド!」
問題が起きているとわかったとたん、キッドの善意はその身を動かした。
「あ"!てめぇちょっといい顔してっからって舐めてんじゃ!」
その拳が、若い男性店員に当たる直前
「やめてください…」
ニヒツの手の平は、白き魔力のこもるその手を受け止め、男性店員は思わずその場に倒れ込んだ。
「あ"?誰だテメェ…」
「暴力は…良くないです。」
その場で睨み合う二人
「あの…ガキ…」
「姉さんの攻撃を軽々と…」
((止めた!))
その光景に周囲にいたそれの仲間は、驚愕する。
(本気じゃなかったとは言え、あたいの拳を受け止めるなんてね。しかも魔力の防御無しに素手でね)
(この人、強いな。魔力は込められているが、意識的じゃない。おそらく、感情の昂りで流出した微量の魔力。それでこの威力だ、僕が止めていなかったら、この建物ごと吹き飛んでいた。)
キッドは、卯月流剣術を無刀状態で応用し、彼女から放たれた全ての衝撃を卯月流の軟化技術で自身の肉体を軟化させることで吸収、周囲への被害を最小元に抑えたのである。
「はいはい、そこまでそこまじゃね」
そうこうしていると、奥からピンクのタンクトップにダボダボのズボンを下げパンぎみに履き、ハット帽を被った3mはあるであろう長身の男。
「ん!なんだ、ハットか。今は取り込み中だあとにしな。」
「そうはいかんじゃね、姉さん。」
「あ"!」
「落ち着きなんせ〜ごめんな坊主、あとお兄さんも、周りの方をご迷惑おかけして申し訳ない」
ハットは全体にお詫びの言葉を告げ
「さっ、いきますぜ。姉さん。」
「はぁ!?嫌に決まってんだろ、こら離せ!」
店を騒がせた、五名の彼らが店を出る。それはまるで、吹き荒れた暴風が過ぎ去ったあとの虹の如き静けさと共に…
「キッドくん、全く君は、善意とは言え無茶は良く無いよ。ただでさえ、僕らは目立ってはいけない身なのだから…」
「あはは、ごめんなさい。」
キッドは、二人に向けて誤った。
「いや、にいちゃんすげーよ。あの人らに楯突くなんざ。」
「え…」
「そうよ〜、あれってストリートギャングでしょ。普通できないことよ。」
「ありがとう」
「ありがとう」
「ありがとう」
周囲にいた人達かや口々にお礼を言われるキッド。
「いえ、当然のことをしたまでで…」
「でも、なんかあのにいちゃん。見たことねーから。」
「そうね、確か…」
それは、おそらく手配書のことである。
「あ…」
「やばくね」
「やばいね」
「こっこれだ!こいつ…昨日ニュースになってた、手配書の少年だーーー!!!」
「うそでしょ、あんな優しそうな子が…」
「なにかの場違いじゃ」
「でも、昨日メールに来た手配書の奴と瓜二つだぜ。白髪とあの白い肌、それに赤眼なんて目立つ姿を間違えるわけないぜ。」
周囲が噂を立て始め
「あ…」
キッドは、初めての経験に気圧され静止する。
「キッドくん!こっち」
スターとドクターは、即座にその場からキッドの手を引き、店のガラスを割って逃亡する。
「騙されるなーーー!!!あのガキは、学徒の英雄と言う肩書きを利用して、俺達一般市民を騙していた。"ペテン師"だ!」
「え…」
野次を飛ばす男の言葉を聞いた、キッドの心に芽生えた…
「女の様な可愛い顔して、中身は怪物だ怪物。」
闇でも光でも無い、感情…
「そうよ、犯罪者なんて皆クズよ。」
「騙すために、わざわざあんな真似をして…本当に感動したのに、俺達の気持ちを返せー!」
"絶望"
fooisNG 悩み
「はぁ〜」
それは、早朝。キッドは眠そうにベッドを降りる。
「おっはよー!キッドくん。」
「おはようございます…」
ベシルは、キッドの異変に気づく。
「ありゃありゃ、キッド様もしかして寝不足?」
「あっはい、実は僕昔から不眠症気味で、ひどい時なんて一ヶ月以上寝られませんでしたから」
「そりゃ〜大変だね。うちには…」
ベシルが視線をやった先には…
「ふにゃふにゃ〜」
「良く寝る子がいるけどね。」
「あはは」
それから、ドクターは昼過ぎの3時まで、起きることはなかった。
ちなみにスターの悩みは…
「ん?」
「おう!ドクター師匠起きたか、早速稽古を…」
「獣臭い…」
「な!」




