第四十二話 異物
「"嫁狐ちゃん"」
そう発したのは、28種類の刺青と白眼が黒く染まり、その瞳孔はゴブリンを象った刻印が刻まれ。そしてこの世何より深い血の色をしていた。
「相変わらずだね〜でも嫁になった覚えはな〜いぞ。」
「あれれ?そだったけ、あっしの記憶が正しければ、結婚式挙げた覚えが…」
「捏造記憶?」
「ひでぇ〜」
赤い翼の彼と対峙したベシルの声は、いつもと少し声色が違っていた。
「で?それがお兄さんの新しい契約者。」
「そそ、さっすが〜話が早くて助かるね〜。さすがあっしの…よ」
その瞬間、ベシルは今までに無いほどの凄まじい速度でそれの首にその大剣を突き立てる。
「無駄話はやめよっか…」
「怖えぇな〜」
やはりどこかいつもよりピリピリしている
「ベシルさーん!」
「!」
その時、背後から聞こえる見知った声。
「キッドくん…」
それは背後の壁の向こう側にいるキッドの姿。
「ベシルくん」
「ベシルの姉ちゃんー!」
「ピンクの…女…」
「お客さん」
そこへゾロゾロと集まってくる仲間達。
「ドクターちゃんにスターくん!それにビリー少年とヴァイパーちゃんまで、これ〜どういうこと?」
「はいはいー!ご説明するっす。」
いつも通り、天上から突然登場ルーレットさん。
「このライフ・ゲームはリアルタイムバトルっす。つまり、ターンが回ってくるのはゲーム外ボード場にいるプレイヤーのみ。それではゲームプレイヤーはどうなるのか、そうそう、ゲーム内プレイヤーは迅速にゲームを終わらせないと〜先を越されちゃうすよ。テヘ♡」
ルーレットの衝撃の説明に対して
「え…えーーー!!!」
ベシルは驚愕した。
「そっそんなのずるいじゃん!説明は説明いー!」
「説明も何もちゃんとルールには書いてあったはずっすよ。」
「え?」
「はぁ〜君いや君らもしかしてSUDDEN DEATHゲームのルール説明読まなかったのかい?」
「あっそう言えばいきなり始まったから忘れてた」
「はぁ〜」
ドクターは、ベシルのあまりのテンションとノリで生きている荒っぽさと大雑把さに呆れて手で顔を抑える。
「えへへ〜」
「とにかくそう言うことだから、頑張りたまえよ。」
「応援してますからー!」
「やれやれー!フォアフー!」
「みんな…」
仲間達との久々の交流は、ベシルの落ちた心を振り払う様な希望の光になった。
「お話は済んだかい?」
その瞬間、どうやったのか瞬間移動ともまた違う。まるで止まった時の間に移動してそこにたどり着いたとしか思えないような速度で彼は誰にも気づかれず移動し、その膝でベシルを…
「マイスイートハニー…」
蹴り飛ばした。
「ベシルさーん!」
それは信じられない光景、ベシルがあのベシルが、ゲームだけでも信じられなかった"敗北"の二文字しかもそれを戦闘で…瞬殺で…
「ありえねぇ〜…」
「…」
端から端まで吹き飛ばされ見る影もない。
「きゃはは!どうしたんだよ…そんもんじゃねーだろ。」
「まぁ〜ね」
それもまた一瞬。
(ダン!)
ベシルが上から振りかぶるように放った蹴りは
「痛いな〜」
男に膝をつかせ。その男に対して、ベシルは問うた
「ねぇー、お兄さんには色々聞きたいことがあんだけどさ。」
「何かな、ハニー?」
「あんたはあの事件に関わっての?」
「あの事件?悪りぃ〜な〜ハニー。事件なら関わりすぎてちょっと覚え切れてないや。せめてどこでどんな事件だったかくらい…」
「帝国、麻薬に混ぜられた異物。」
「あ〜、ゾンパーのこと?ありゃあっしがやった。」
「ゾンパー…」
略されてはいたが、それがなんのことがニヒツはその後直ぐに察した。
「そんな…」
「いや〜だってさ、お金欲しかったんだもん。仕方ないじゃん。それにへたな薬と違ってありゃ〜」
「ギルティー…」
「あ"?」
「テメェは有罪だ」
その瞬間のベシルは、この世の誰よりも冷たく冷徹な声で、そして…この世の何よりも…凶気に満ちていた。
「ヒヒ!」
(ダン!)
その音は、とてつもないほどに響き渡り、周囲に衝撃を与え。
「まさに、異物。この世にあってはならない"歪な何か"…」
「しらねぇーよ…」
「ヒヒィ!こっちも本気で行かねーとなー!!!」
赤い翼の彼が大きく広げたその翼と舞い落ちる羽のと共に取り出した両手の魔道拳銃。
「この力に名前をつけよう…"魔弾の射出"」
そう名づけた次の瞬間、その両手の魔道拳銃が姿を変え生物の様な鼓動をならす赤紫色の狩猟用ライフルへと変え。
(バン!)
ゴブリンの刻印が描かれた魔法陣と共に、その一射を放つ。
「弾丸はハリネズミの様に鋭く」
当然ながら、それを避けるベシル。
(バンバンバン!)
近寄る彼女を気にせず乱射する彼
(シュ…)
ベシルは、その乱射された銃弾などもろともせず速接近。弾丸などベシルにとってなんの意味もない。
「当たれば蜘蛛の猛毒に犯される。」
(バキュン!)
その一射は、ベシルを通り過ぎたはずのそれは…銃の装甲に赤い烏の翼が開くと共になぜか、ベシルに当たった。
「ナノの世界を知ってるか?"テメェ様"」
それは、誰に対しての言葉だったのだろう。その視線は…
"「お母さんは?」"
ゾンビパウダー事件…あの時少女を救えなかった。それを思い出すキッドに向けられた。
「ありえねぇ〜」
その言葉先程よスターと同じ、しかし声が違う。
「物体が光を越えるはずがねぇ〜…つか光より早いものなんて!」
「光?テメェ〜らの世界は狭めぇーな〜。」
「何…」
「狭めぇーよ…例えるなら、音速を音速としか認識していないのと同じ。音速の中にはマッハと言う単位があってそこには、音速を上回る数値がある。それと同じよ〜光にだってマッハみてーなもんがある。つまりは光のランク、その単位の一つがナノつーわけだ。理解したか?」
「ナノ…」
「そうだぜ、そしてナノ秒。正確には1ナノ秒は、光が30cmしか動けない速度。」
((!))
それは、今までの常識を覆す言葉。その非常識な速度の弾丸はベシルに何発も突き刺さる。
「まっ、しかし"例の呪い"さへ無ければもっと楽しめただろうに、残念。」
「呪い…」
彼の発した不吉な言葉を、スターは聞き漏らさなかった。
「ごちゃごちゃうるせーぞ…」
だがその速度すら上回ってベシルは
「うぉー!」
周囲の壁、本来幻想空間内のルールで定められたその透明な壁。壊れるはずの無いそれは、赤黒い歪な何かとともに
(バリン!)
全てくだけちって、それと同時周囲の魔弾とともに幻想空間全域が吹き飛びその先、この商都最大のメガタワーの最上階120階の壁に風穴を開けた
「本当…規格外だね〜」
「テメェ…」
「ま〜少し寂しい気がするするけど、今回はここで御暇させてもらいましょうかね…」
「させるか…」
ベシルの速撃は一瞬で彼の首を吹き飛ばした。
「おうおう怖い怖い、暗殺武術。本来隠してはずのそれを前回で出すことで触れるだけで瞬殺か…」
それは、彼が自身に内包された数兆個の魂を犠牲に作り出した命ある分身。しかし、それだけしなければ今の冷たい怒りを見せるベシルは騙せない。
「バイバイ…嫁狐ちゃん」
そう言って彼は、地面に現れた黒い穴と共にその場から姿を消し…
「待てぇ"ーーー!!!」
それは怒りに濁った少年の叫び、そう…キッドは自身の手が血まみれになるほどの握力で拳を握りしめ、そして全力で叫んだ。
(…)
しかし、その扉は残酷にもその場から赤き翼の彼を連れ去った。
「…」
キッドは震えている。それは怒りを直ぐにであの男を追いかけたい。血走ったその目と、自身の握力で血まみれになったその手。いつもの彼とは正反対の…闇
「キッド…」
「キッドくん…」
ずっと頭の中で鳴り響く少女の声とともに、キッドは失意のどん底にいた。周りの者達が動揺する中…
(シュ…)
ベシルはいつもの音の無い高速移動でキッドの元に駆け寄り。だだ、キッドを抱きしめた。
「大丈夫…大丈夫だよ。一人じゃないから…」
"それはどう言う意味だったんだろ。この言葉の意味がわかる時…それが彼女の全てを知る時だっただろう。しかし、この時の僕はただ…彼女に甘えることしか出来なかった。いつかそれを悔やむ時が来るとも知らずに…"
そんなの頃、この世の闇の底にいる例の組織の会議室で…
「"女狐"が動いた」
そこに並ぶは黒の円卓と、その玉座に座る黒いジャケットを着込んだ者達。彼らは…
「うっうん…これより!"NO.NoS"特別集会を始めます。」
NO.NoS
メンバー数:10名 欠席2名
「そうか、よし!破壊しよう」
ガッツポーズの男
ディストラクト
称号:崩壊狂
座席:北北西
服装:黒のクロップジャケット(フード付き)
仮面:黒の仮面 赤字
「爆発!爆裂!爆撃!爆殺!」
手を組む大柄の男
ジャガーノート
称号:爆殺狂
座席:北北東
服装:黒のミリタリーロングジャケット
(フード付き)
仮面:黒の仮面 橙字
(…)
空席
スマイリー
称号:笑狂
座席:東北東(本日欠席)
服装:黒のボンバージャケット(フード付き)
仮面:黒の仮面 黄字
「任務…殺す…のみ…」
礼儀正しく座る女
ヘイソォ
称号:殺戮狂
座席:西北西
服装:黒のロングジャケット(フード付き)
仮面:黒の仮面 紫字
「ちょっと待っていただけますか!闇雲に武力を行使するのは得策では無いと思うのです。」
前のめりになって、手を前に突き出す女
バイソォ
称号:冷酷狂
座席:北
服装:黒のロングジャケット(フード付き)
仮面:黒の仮面 青字
「ドゥフドゥフ、ぼくもバイソォちゃんの意見に賛成なんだよ。ドゥフドゥフ」
手を口元に置く男
ストーカー
称号:監視狂
座席:南
服装:黒のトレンチコート(フード付き)
仮面:黒の仮面 水字
「うげぇ〜きもいだもん、ストーカーあんた死んでいいもんよ」
お菓子の散乱した席で、マカロンをモグモグ食う少女
ロリポップ
称号:甘党狂
座席:西南西
服装:黒のコーチジャケット(フード付き)
仮面:黒の仮面 金字
「そんな時は楽しんじゃえば良いと思うよ?マールは」
口の前で指を立てる女?
ジョーカー
称号:遊戯狂
座席:東南東
服装:黒のロングコーチジャケット(フード付き)
仮面:黒の仮面 銀字
「ちっ!テメェーら馬鹿か、策はどうした策はよぉ…」
頭の後ろで手を組み、足を机に乗せる黒毛混じりの金髪の男。
レイ
称号:復讐狂
座席:西
服装:黒のロングジャケット(フード付き)
仮面:黒の仮面 桃字
「つか…あのドラゴン馬鹿はどこ行きやがったよぉー!」
ドラゴンマキナ
称号:竜狂
座席:東(本日欠席)
服装:黒のストリートロングジャケット
(フード付き)
仮面:黒の仮面 白字
「彼なら基地の前で監視をしてもらっているよ…」
円卓の中央の黒い穴から、ウィーンと言う音を立てて現れる紫のラインが光る、黒い革のローブの男。
「そしてケイらも聞いている通り、彼女が動いた。あの"女狐"が…」
「ちっ!しかも"DEM"の側によぉ〜…」
「そう、一度は離れたと言うのに再びだ、ヨは"憤怒"ではないが流石に苛立ちを覚えてしまうよ」
そう話す茶色い眼光の黒いローブの男。
「D!!!ちっ!五択はいい。本題はつまりその女をどうやって殺るかって話だろがよぉ。なら俺ぇ〜に策がある。そこで一つ確かめたい、このノーナンバーズはナンバーズどもとは違う。序列はねーはずだよなぁ…」
「あ〜そうだね、ケイら10名の間に力関係は無い。そうれは事実だ、確かに…」
「そうか…ちっ!だったら、ジャガーノート、テメェを持っていく。協力しろぉ。」
「ん"」
ジャガーノートは動かない。
「しかしだ、レイ。同列の立場全員が持つと言うことは、ジャガーノートにもケイを拒否する権利があると言うことでは無いかね。」
「ちっ!…ジャガーノート。」
「ん"?」
「爆撃Okだ。」
「ん"…乗った!!!うん。乗ったぞその策戦。うんうん。」
「だとさ…」
レイは、黒いローブの茶色の眼光に目をやった。
「それじゃ、ナンバーズの奴らからも何人か…」
「待て、卿…」
その瞬間、立ち去ろうと席を立ったレイに向けられた。強大な殺意。いや…
(狂気…)
そして…彼女らもまた…
「ベシルさん…」
「うん、気分は落ち着いた?」
「はい、すみません取り乱してしまって…」
「ううん、当然だよ。辛い経験をしたんだから、もう立てる?」
「はい、お手数おかけしました。」
キッドは、ベシルに抱きしめられて気分が少し落ち着いたようだ。
「よし!それじゃ…ルーレットちゃん?もう一度聞くけどさ、このゲームお姉さん達の勝ちってことでいいのかな?」
「もちの論ですとも!」
「よっしゃー!」
ベシルは、天高くその拳を上げて勝利を喜んだ。
「と言うことは、スモークくん。お金のほうは…」
「はい、用意させましょう。」
スモークは、自身のMEを開き。
「これでよろしかったでしょうか。」
ベシルのMEを、カジノ内の保管庫から呼び出し手渡す。
「ほい、確かに50億クブルムいただきました。」
「それでは、我々は…」
(ピピー!)
スモークは、首輪の爆発ボタンを押そとする。
「ちょっと待ってください!」
その時、割って入ったのはキッド。
「ん?どうされましたかな?お客様」
キッドはその瞬間、誰も予想だにしていなかった一言を…
「僕達の対価がまだです。」
「「ん…」」
その場合の全員の顔が曇り。
「「はぁーー!!!」」
予想通りの反応である。
「あいつ…マジで言いやがった…」
「すっす見ませんお客様、我々は確かに対価を…」
「それはベシルさんの対価です。僕らのではありません。そもそも、僕ら乗るか乗らないかも明確にお返事致していませんし。」
「な…」
スモークすらその言葉のあまりの衝撃に、サングラスがずれ、変な顔になっている。
「まぁ〜いいでしょう。どうせ我々は死を待つ身。なにを失ってもこれより先は無い。なんです、出来る限りは叶えましょう。金ですか?武器ですか?それとも…」
「皆さんの命でお願いします。」
と、キッドは笑顔でいった。
「それはつまりどう言う…」
「ですから、遊戯の担い手の皆さん、そしてスモークさん。全員の命を救って上げてください。」
「それはつまり、爆弾を外せと…」
「はい、またヤングくんと走りたいので」
キッドは、ルールが根幹から揺らぐような驚愕の提案をした。
"「俺様の"王道"だ。」"
スモークは、BADの掲げた協力し合って最強。その戦いを思い出し。
「仲間か…いいだろう。」
スモークは、真っ赤な爆発ボタンの横にある青解除ボタンを押し。
「その願い聞き入れた。」
全員の首から爆弾が外れた。
「これでよかったかな。」
「はい、ありがとうございます」
キッドは、スモークに頭を下げた。
「つーことは…」
不適な笑みをスモークに向けるスター。
「俺ちゃん達の分もあるんだよな、当然。」
「そうだぞ兄貴」
「確かにそうだね。」
勝利した全員が話し始める。
「はぁ〜叶えられる限りなら…」
「それじゃ!俺氏は!」
ビリーが借金のことを言おうとしたその時
「ほい!」
(ピキャン!)
その瞬間、保管庫内の全員分のMEが出現。
「これは…」
「サンキュー!アンキラ。」
「オ安イ御用デス、マイフレンド。」
アンキラが、システムをハッキングし、倉庫から無理矢理全員のMEを取り出したのだった。
「おいおい、気軽にハッキングしないで欲しいな。」
「アンキラちゃん、ハッキングできのか…」
(ハックとどっちが上かな〜)
「で、これを返してどうしろと…」
「中、見てみな。」
ビリーが、自身のMEを見てみると、そこには
「残高…"10億"!」
「あーしもなんだよ」
「サプラーイズ、確かビリー少年の謝金は五億それで返せるでしょ。ヴァイパーちゃんのは占いのお礼も込めて…」
「いえ、そんな…」
ベシルは、どこか煮え切らないヴァイパーにウインクする。
「他四人は五億ずつだよ。」
「「え〜!」」
「仕方ないでしょ、二人はそれで美味しいもの食って、良い家すんで、今までの不幸なんでぜーんぶ忘れちゃうくらいに楽しんじゃってよ。」
「「あっ…ありがとうございます!」」
二人は、ベシルにお辞儀をした。
「良いよ良いよ、そのかし二人にはちょっとしたお願いがあるんだ。ドクターちゃんもね。」
「あっあ〜、なんだい?」
「三人のお願い…お姉さんにちょうだい。」
とベシル微笑みながらそう言った。




