第四十一話 王道
「悪の親玉(BAD・KING)になる男だー!」
そう意気込むBAD。
「痴れ…あの深手でどうやって…」
「深手?こんなもん…かすり傷だろ」
BADはスモークの言葉を突っ返すようにそう言い切った。
「くっ…クソがー!」
スモークのまたも、その尻尾のように生やしたコードの先をガントレットに変え。
「多連・滅打撃」
BADに放った。
(ジャキジャキジャキ)
しかしBADはそれを…
「な…」
切り裂いた。
「オラァーー!兄貴ー!」
「ちっ!配線尻尾の(テイルズ・)」
スモークは、加速を使い。高速で向かってくるBADを見て
「再生」
自身の体に生えた六本の配線の尻尾を切り離し、新たな12本の尻尾を生やし
「無差別銃撃」
その尻尾のうち10本から複数の銃撃を放つ。
(キンキンキン!)
それらを剣で捌きつつ加速を止めず接近してくるBAD。
「こんなもん…」
「だろうな、だから"駒"をよういした。」
その時、目の前に立ちはだかるは
「バンシー…」
闇落ちしたバーヴァンシー。
(キン!)
スモークは、その尻尾のように伸びるコードで周囲のバーヴァンシー達に闇を取り憑かせ操ったのだ。
「はは!痴れが、痴れが能力として保有する支配の力も、闇を極めし身共に容易に再現できる。どうだー!どうだ〜痴れの力が!」
「くぅ!」
「才能が否定される姿はー!きゃーはっはー!」
BADは高笑いを浮かべ、そう述べるスモークを横目に…目の前のバーヴァンシーの攻撃を反撃することなく捌いている。
ではなぜ、彼は反撃しないのか…
"男の傷は勲章だが…女の傷は…一生の傷だ"
それは、要するにプライドだ。姉に踏みつけにされた自分の人生に希望をくれたアッシュ。"あの事件"を境に、今度は仲間も巻き込んで踏み外した道を、叩き上げてくれたベシル。彼の人生を正してくれたのは、いつも…産まれながらに存在しなかった母のような母性を持って接してくれる女性。
だから…
(女を…あのクソ姉以外の女は、絶対に切らねー!…もう、踏み外しさないための誓いだ…)
そう…誓ってしまっていたのだ。
「ふん!」
その瞬間、目の前に現れる鱗を持った豹柄の足。
「ピンクちゃん…」
「うぉー!」
蹴り飛ばされるバーヴァンシー。
「大丈夫なん、BADっち。」
BADは黙って首を縦に振った。
「ガァー!」
向き合う二人に襲いかかる。5体ほどのバーヴァンシーの群れ。
「しまっ」
BADがやばいと思ったその時
「葉の斬撃」
背後から飛ばされた無数の自然魔法による鉄おも切りさく葉の攻撃。
「ハーブちゃん…」
BADは、助けてくれた二人にお礼の気持ちを込めて頷きつつ。
「あんがとさん、でも危ないから下がってて、こっからは俺様が…」
「何を言ってるんですけど」
立ち向かおうと前に一歩踏み出したBADの背後かな聞こえたピンクの声。
「え…」
振り返るBADの視線の先
「あなた様は、完全無欠の最強じゃない。あなた様の強さは、人を指揮し、策を講じて、ずる賢くもありながら、それを悪びれもなくやってのける合理的で冷静な最協です。」
「でーも〜、それを騎士であった時の倫理観や部下を思う優しさが邪魔してるって感じなんですけど。」
「「だから…」」
BADは、二人に背中を押され
「荒くてもいい、最低でもいい。だってあなた様は王。この裏世界の覇者となられるお方。我々下の者をもっと"利用"してください。こき使ってください…その冴えたお頭で…」
「その力で…」
BADは、頭を深く落とし拳を握りしめて
「あー!」
しかし涙は流さず、胸を張って毅然とした表情で
「女共ー!俺についてこーい。」
「「おー!」」
三人は声を張り上げその足を強く踏み締めて走りだす。
「はーはっは!だからどうした。たった三人、たった三人で何ができる。」
「BAD様、我々は闇落ちした者達を倒します。」
「だからBADっちは…」
「あーてる…」
三人は凄い勢いで闇落ちしたバーヴァンシーの軍勢を退ける。
「くっ」
(なんつー勢いだ、しかもあのタイトの女。いやに魔法に詳しいと思ったら葉を操る自然魔法。マーバンシーか。その横の豹柄女も厄介だ、奴にはモンスターとしての基礎スペックとあのやろーと同レベルの頭脳がある。そしてもっとも厄介なのは…)
(キンキン…ダン!)
周囲の者共をさっそうと蹴散らす剣技。
「BAD…」
「兄貴ーー!」
押し寄せる目の前の男に
「はは、でもま〜問題ねーな。」
スモークは周囲に黒い煙を発生させ。
「魔力量が違うんだよ。」
BADはその煙の中へと消えていく。
「はーはっは!見たことかこの強さ。身共の黒い煙が持つ毒性はさっきのまでとはレベルが違う。少量でも寸分でも摂取した瞬間に全身に一酸化炭素が回り死にいたる。しかし、先程までの痴れであれば光術を使い防ぐことができたはず、だが…気づいていないとでも思ったのか?、もう使えないんだろ。光術は…」
スモークは、すでにBADが光術を使えるほどの魔量が残っていないことを勘づいていた。
「だから先ほどから、加速を使ってわざわざ移動しているんだろ。まぁ〜痴れ程度の光術では使えたところで無意味だがな。」
(そう、魔力量だ、魔力量ー!。結局この世を滑るのは魔法の才能を持つ者。多芸に長けた道化風情がこの身共に叶うはずなど最初から無かったのだ。竜巻や地震の発生に人が抗えぬのと同じように、この天災とも呼べる力を持った身共に最初から叶うはずなどない。…だから…大丈夫だ。)
スモークは、勝ち誇ったようにしている反面、どこか不安を宥めるよな様子で自身にそう言い聞かせた。
「BAD様…」
「いや、大丈夫なんですけど」
その瞬間、煙から影が
「ん?」
その影か、大きな大剣が飛び出し
(キン!)
その影は、スモークの核を"光速"で切り裂いた。
「ありえん…」
「光術はもう使えないはずだって、ブラフさブラス、本当簡単にひっかかってくれるよな兄貴は…」
「しかし、光術には3秒のラグが…」
「あ〜それ、なんとか1秒まで短縮してみましたー偶然だけど」
(ありえん、この緊迫した状況化で力を成長させるなど…)
「はは、それでどうする?もう諦めちゃう。」
「馬鹿を言え!」
(こうなれば…)
「大・多連・滅打撃」
怒れるスモークの背後の六本の尻尾よ先が、全て大型トラックほどの大きさのガントレットへと変形し
「これでどうだー!」
BADに遅いかかる。
「…」
BADは、それを目の前に頭を下を向く
(ふっ、流石の奴もここまでか…)
「大丈夫だ、喜べ。早く死ねばそれだけ早く女と会える。」
「死ねば会える?そんな必要ねーよ。もうここにいる。」
そいって、BADがその親指で指し示したのは心臓側の胸。
(バーン!)
そんな、言葉も虚しく、BADはその巨腕になすすべなく激突した。
「ありえん…」
かに思えた…
「女が一度や二度死んだからなんだってんだ、死んだっていつでもあえるさ、心中に生き続けてる限り…な…」
BADの背後に立つは、ピンクの宝石にメイド服?と言うにはあまりに機械的な装備の巨人兵いや…
「誰か(サムワン)
「ピンポンピンポン!宝石メイド改、戦場メイドアッシュちゃん。ここに参上!」
(昔、親父は俺様に言っていた、女を"魔法"に変えてまで…と、魔法は精神の力。すなわち心の力、てーことは、アッシュは俺様の剣になったんじゃなく俺様の心になったわけだ。愛情という心に)
BADは少し、にやけずらで騎士快晴を喜びつつ、少し後悔ににた悲しみも覚えていた。
「さーさーどうする、来るかい?降参するかい?」
「ちっ!どう言う仕掛けか知らんが、たった二人で何ができる。器の破損で魔力消費が激しいとは言え、基礎的な魔力量が段違いなんだ。二人程度の小虫に負ける訳が…」
「確かにな、確かに俺達二人だけなら無理だろう。質じゃ兄貴に敵わない、かと言ってさっきバシーちゃん闇堕ちしちまって俺様にはもう駒がね〜…さっきまではな…」
その言い回しにスモークは少し疑問を抱いてあたりを見渡す。
(バーヴァンシー達がいない!)
その周囲を取り囲んでいたバーヴァンシー達が消えている。
(でも、いったいなぜ)
スモークの疑問はもっともだ、全員倒されたにしても、死体が残っているはずだ。なのにそれすら無い、これはどう言うことなのか
(奴の魔法か…まさか、あの時バーヴァンシーを攻撃するフリをして)
そう、BADはバーヴァンシーを切り裂くフリをして、能力により宝石に変えて吸収していたのだ。
それだけでは無い、今その事実に気づいたスモークの目には
「あのメス豚どもがー!」
それも見えていた。
「へっへ〜ひっかったひっかった〜ですけど〜」
「ふふ」
下で戦っていたピンクとハーブはピンクの宝石のダガーを持っていた。
「そもそもお宅、俺の剣の大きさが明らかに変わってること気づかなかったのか?」
「ちっ!こんなことをしてどうだと言うんだ、さっき同じように試して身共の闇に…」
「負けたってか、それは少し違うな。」
「なに!」
BADは人差し指を立てて小刻みに動かしつつ
「お宅は、俺様の魔法のことをなんにもわかっちゃ〜いない。」
「なんだと…」
「それならお宅質問だ、お宅俺様の魔法のエネルギーの出どころがどこにあると思う?」
「それは…愛情が…」
「のんのん、愛情を数値化なんてできねーだろ。そもそも、愛情が数値化できたとして、それをエネルギーとして消費してるんだぜ?完全に愛を失った人なんて想像したくもない。」
「ならばなんだ」
「それは…体力さ」
それは、愛を語る魔法とは思えないほど現実的な力。真逆とまでは言わないが、なんというか…理想や幻想的な美しさを追い求める愛と言う言葉には似つかわしく無いその力の真相。正直言って心と言った方がまだ綺麗に思える。
「体力…魔力では無くか…」
「魔力なんつーもんは、個体差が激しいだろ。それにそもそも、お宅の相手にしてるバンシーちゃんはモンスターだぜ。魔力は持ってねーよ。」
「だ…だからどうした、体力なんぞより天災級の身共の魔力の方が」
「上回っていた、さっきまではな。しかし、今のお宅は何もしなくても魔力を消費しちまう器欠損状態だ。まぁ〜本当に何もしなきゃー魔力の消費もここまで早くはなかったろ〜しかし、お宅は今絶賛戦いの真っ最中で、しかもあんだけどでかい魔法を連発した。」
「くぅ!」
スモークは、痛いところを疲れたのか口籠る。
「そらによ〜バンシーちゃんや他のモンスターは魔力で無く何を使って自身の能力を操ってると思う?」
「それは…」
「そう、体力さ。そしてその中でも凄まじい再生能力と血を操る力を持ち、あの高レベルモンスターの宝庫。神樹最強のモンスターとして君臨していたこのバンシーちゃんを相手にしてんだぜ。その意味がわかるか?」
そう言うとBADは…
「バンシーちゃん達!全力で頼むぜ!!!」
「「イェッサー!!」」
その刀身の周りに大きなこの場所60階あるビルよりさらにひと回りデカいピンクの刃を纏い。
「ちっ!!」
「スモーク…つれーよな頭ってのは…」
BADはそんな緊迫した状況化で、スモークに語りかける。
「頭ってのはよ〜体に指示出して働かせなきゃならねぇ〜そうしねーと死んじまうから。」
「今更なにを…」
「でもよ〜人生ってのは、んな上手く行かねーのよ。だから、時々大丈夫か?って体の調子確認してよ〜もしダメなら補助なり体のあちこちの細胞かき集めて対応すんのよ。人の細胞は60兆個だぜ?それ全部管理して指揮してなんなりマジ頭って大変なのよ。」
「なんの話を!」
「そんな大事な頭がよー!ふらついてどうすんだ、自身なくてどうすんだよー!!!。」
「うっ…」
その言葉で、スモークはそれが何を指して言っているのかを理解した。
「頭が冴えてなきゃ、下がどんだけよくたって宝の持ち腐れ、豚肉真珠なんだよ!。…テメェはよ…怖いんだろ?信頼されてねーんじゃねーか?裏番として自分は認められてねーんじゃねーかって!…そうやって疑心暗鬼になってる原因教えてやろーか?何でだれもテメェを信用しねーのか教えてやろーか?…"テメェが誰も信用してねーからだよ"。」
スモークは拳を強く握った。
「そりゃーそうだろ。誰も信用しねーやつを誰が信用するってんだ?…利益がなきゃ人はついてこねーぞ。社会の常識だろ…」
「黙れ…」
「テメェも頭なら!おどおどしてねーでてっぺんで胸張って生きろやーーー!!!」
「黙れーーー!!!」
スモークも怒りと共に、コードの尻尾6本を一つに集め。
「黒い煙の(ブラックスモーキー)…」
大型トラックほどの大きさにまでなったそれを一本に集めたことにより、BADと同格の大きさとなってその巨大な銃口を向ける。
「大砲丸!!!」
それを放つ
「全ての女は(ハーレム)…」
放たれた魔力の砲弾を、返すようにBADは
「俺のもの(ブレイド)!!!」
その巨大な刃を振るう。
「うぉーーー!」
「おらぁーーー!」
その瞬間、BADの脳裏に過ぎるのは
"仲間"
その瞬間、スモークの脳裏に過ぎるのは
"道具"
二人がその瞬間イメージしたのは、自分が指揮する組織のイメージ。しかし、その情景はまるで正反対のものだった。
「くたばれー!」
「これで…」
"アッシュ…"
「しまいだ!」
その一撃は、スモークの魔法の砲弾を砕くと共に、スモークの閉ざされた殻も
「ぐぅーーー!」
切り裂いた
「がはぁ…」
倒れ、ボロボロになったスモークのそばに
「はぁ〜はぁ〜マジパナイ」
「ですね」
「「疲れたー!」」
「もうマジ無理〜」
「動けないー!」
汗だくで座り込むバーヴァンシー達。
「お疲れさん」
それに一声かけた後BADは
「これが…」
スモークの胸に手を置いて
「俺様の"王道"だ。」
「ちっ!…楽しそうでいいな…」
スモークとBADの戦いは決着した。
そして…
「赤紫…あの声、あの喋り方…」
『赤黒い…その美声とそのイケてる喋り方』
この二人も…
『悪りぃ〜相棒。一緒とは言ったが、ちょいと変わってもらえねぇーか』
「嫌だ…とう言いたいところだが、トニー様は既に負けた身。潔く下がるさ」
『あんがとよ、相棒…』
それは、赤い翼とともにその身に宿るは…
「久しぶりー…あっしの愛しい愛しい…」
その異形は爆誕した。
「"嫁狐ちゃん"」
次回:異物
キャラ紹介
BAD
本名:ルチル・ゾンネ
誕生日:英王暦1年8月10日
年齢:215歳
身長:192cm
出身地:ゾンターク区城内
魔力量:2000以上
特徴:紺色のフード
のらりくらりとしたワイシャツ
ロングドレッド
宝石ブーツ
色黒(ゾンネ家の特徴)
特技:策略(悪知恵)、剣技
性格:狡猾、女好き、器用
好き:ピンク色、アッシュ、宝石
嫌い:姉と父、面倒事、ゲーム
趣味:手芸、ヘヤバンド集め
目標:悪の親玉(BAD・KING)になること
スモーク
本名:スモーキー・ゲッシュタルト
誕生日:戒王暦2980年4月9日
年齢:235歳
身長:136cm
出身地:ギャングストリートVIPテラス
魔力量:5万3千
特徴:V字の灰髪
金のサングラス
葉巻
特技:タバコでリングを作る、捕縛、尋問
性格:厳格、規律、こまめ
好き:タバコ、父からもらったリボルバー
サングラス
嫌い:義弟、チャラ男、味の薄い物
趣味:サングラス集め
目標:父に認められること




