第四十話 闇と光
「黒い…煙…」
BADは目の前の黒煙を見て理解する。それが一体何なのか…
「頂点だー!」
魔法の三大原則、精神、肉体、器。その内、器と言う第六感に置いて、二つの現象がその者の魔法の才を分ける。
一つ目は、母のお腹に宿った子供の器が、肉体とともに成長し産まれる頃にその大きさ、すなわち魔力量が決定する。これを人々は魔術的才能と呼ぶ。
二つ目は、物心が付く3歳から4歳時期に起きる。器の色付けである。
器の色は、その者の魔力の属性を決め、火なら赤、水なら青の用にその時期の精神状態に応じて熱血の火、冷静な青、これらが決定するわけである。
しかし、魔法と言う学問に置いてこれはあくまで基本でありその発展系が存在する。それはまだ純粋な3、4歳の子供では宿りにくい感情。成長とともに宿る二つの性質。これは、幼児期に宿る属性とは区別され、どんな属性の魔法使いだろうと必ず持つ、心がある生物なら必ず持つ二つの性質…
それが…
(闇!)
と光である。
「こーい、痴れ共ー!」
放たれるは凄まじい闇の瘴気が立ち込める。
「あれは…一体…」
立ち込める煙の奥に見えるスモークの姿は、以前とは別人と呼べるほどの変貌を遂げていた。
体内にある莫大な黒い煙が血中にまで影響を及ぼしたことにより。
白目と黒目は反転し、髪は黒く染め上がり、全身に通う青い血管がそうなるようにコードの中も黒くなり、スモークの激しい怒り…いや嫉妬心に影響されるように荒ぶっている。まるでそれは…
((怪物))
反転した目は鬼の形相、顔の黒い血管が浮き彫りになっている様はまさしく怪物のそれである。
「さー!どうした?…早く来いよ。」
「あれが…お宅の抱えたもんなのか…スモーク」
数十年の義弟への嫉妬心が、目に見える闇となって彼らを襲う。
「ならばこちらから行かせてもらう」
その踏み締めた足は大地を砕き
(ドゥン!)
その一歩は、一瞬で宝石の女アッシュの心臓部目掛けて
(!)
貫いた。
(バリン!)
「アッシュー!」
「ふっ!」
スモークは構わず貫いたその腕を上に上げてアッシュの上半身を砕き割る。
「アッシュさん!」
駆け寄るバーヴァンシー立ちと、その場に静止するBAD。
「かつて痴れは、身共から全てを奪っていった。だから、今回は…身共が痴れの全てを奪う番だ」
「テメェ…」
「どうした?ついにその飄々としたヤリチンメッキも落ちたか?焦りを見せろもっと焦りをよー!」
スモークは、アッシュの元に駆け寄るバーヴァンシーの後ろでBADを挑発し
「うぉー!」
アッシュを殺された怒りからか、BADは全身を黒く染め上げ闇をまとったその剣でスモークに接近し、切り掛かる。
「ダメです!BAD様。闇に闇で対抗しては…」
今のBADの耳には、タイトドレスのバーヴァンシーの言葉も届かず。
「多連・滅打撃」
スモークの背中、尻尾のように生えたその六本のコードが大きなガントレットえと姿を変えてBADをタコ殴りにする。
「グハァ…」
「「BAD様!」」
バーヴァンシーの心配の声と共に、その拳はやんだが、その中には血まみれのBADが白目を剥いて空中に投げ出される。
「ほらよ!」
そんなBADに追い討ちをかけるように、スモークはその巨大なガントレットでBADを奥の壁まで吹き飛ばした。
「BAD様が…あんなにあっさり…」
「当然です。人の姿形を異形に変えるほどの闇。それに真っ向から闇でぶつかって勝てる訳が無い。」
「闇って一体なんなんですけど」
そを聞く豹柄にタイトドレスは答えた。
「魔法の本質部分、属性とは別の誰もが必ず持つ性質。それが闇と光…」
「闇と光…」
「光はプラスの感情で闇はマイナスの感情から生まれて強くなる。光に近づけば近づくほどエネルギーに近く、闇に近づけば固体なり硬度が増す。その影響で悪魔と呼ばれる者達は皆、異形の姿形をしているのは生まれつき闇の力が強いため肉体が変貌を遂げてしまうから。」
「それが…あの姿の理由…」
「そうです…」
タイトドレスがそれを言い終わった後、バーヴァンシー達は、目の前の強大な敵を見つめていた。
「テメェー!よくも…よくもBAD様をー!」
フワクルちゃんが、その口を大きく開け、その鋭い牙でスモークに襲いかかる。
「闇に溶けろ…」
その瞬間、その牙がスモークの突き出した小指の先端にあたったその瞬間。
(フン!)
その全身を、黒い力が多い尽くす。
「「フワクル!」」
フワクルちゃんは黒い力が多い尽くすとともに、その全身を異形へと変貌させ全身真っ黒になって目は白く輝いている。
「あれは…」
「闇落ちですって!」
闇落ちとは、強大な闇の魔力によって精神が侵される闇に支配されてしまうこと。こうなれば、本能のまま暴れる怪物と化してしまう。
「あり得ない!肉体を変貌させるだけならまだしも、他人にまで影響を与えるなんて…これじゃ〜まるで…」
「悪魔…」
スモークの百年以上の間溜め込んだ義弟に対する嫉妬の心は、すでに悪魔の領域にまで至っていた。
「やれ…」
二人の驚愕の表情をよそに、スモークはフワクルに指示を出す。
「がぁ!」
その指示と共に接近してタイトドレスに襲いかかる。
(ダン!)
「危ないん…ですけど!」
すると、足を恐竜の様にして蹴り上げる豹柄のバーヴァンシー。
「ほほぉ〜まだ足のみとは言え、それが痴れ共の真の姿か…まさにモンスター。」
「真の姿?偽ってるつもりは無いんですけど!」
豹柄は、スモークから距離を取って
「血妖の短剣」
背後に血の短剣を作りスモークに攻撃する。
「ふっ、無駄な真似を…」
スモークは、尻尾のように伸びる六本のコードでそれらを捌いて見せた。
「ちっ、やっぱ効かないんですけど」
「そう自分を責めるな豹柄女。さっきのメンヘラ女と違って太刀筋、瞬時の判断能力。周囲を見る冷静さ。見た目の割にうざったいぐらいに優れているな。…まるでそこにのたれている奴のようだ」
「そりゃどうもなんですけど。」
二人は、見つめ合いながら戦闘体制に入る。
「ピンクさん、ダメです。危険すぎる」
「そんなこと言ったてやんなきゃ一このままですけど。それに、このまま防戦一方じゃー死ぬのは時間の問題。ほら、周囲の黒い煙もだいぶ周囲に広がってるし…」
「そうかもしれませんけど…」
「大丈夫なんじゃない?どうせやらずに後悔するなら…最後まで全力でやって後悔する方がいいと思うんですけど…ハーブっち」
豹柄ことピンクはタイトドレスことハーブにそう言った。
「わかりました…皆さん。私の指示に従ってください。」
「「はい!」」
「そうこなくっちゃ…」
ハーブは周囲のバーヴァンシーに指示を出す。
「全員戦闘モードに切り替え、スモークさんを全方位から攻撃します。左右に10ずつ真ん中にはピンクさん含めた7人でワタクシはBAD様の護衛と皆さんの援護をします。このミッションの最優先事項は、敵の討伐では無くBAD様から敵を遠ざける守る事です。…BAD様を…いーえ、ワタクシ達の"お頭様"を全力でお守りします。いいですね!」
「「はい!」」
バーヴァンシー全員が指揮を挙げ、目の前の強大な敵に向かっていった。
(頭…)
その時、気絶したと思われていたBADの薄れる意識の中で…
英王暦80年…
「あ〜あ、やめたはいいがこれからどうすっかな〜」
この日、BADは裏社会労働者組合をやめた。
「よし!とりあえず〜なんか俺様の有り余る才能を活かせる仕事は〜ん?」
そんな時、ふと目に入ったのは、町中の小さなウィンドウに映し出された賞金首の映像。
「ボンレス盗賊団に懸賞金287万クブルム…これだ」
BADはそれを見るや否や、走り出した。しかし、浮かれた中でも彼は冷静だった。自身も賞金首である事を理解していたため。前もって買って置いた紺色のフードを深く被り依頼書のデータをインストールしてその場所へ向かった。
「うっし、ここか。加速を使って急いで来たがそれにしても遠いな〜ここ。」
BADは、上空に浮く商都を降り。何もない平原の真ん中にいた。
「おいおい、見事に何にもね〜て感じだな。これなら流石に見つかんねーてか…」
(ブウォン!)
広範囲に放たれた、透明な円形の魔力。
「そこか…」
それは、BADの魔力感知の発動を示唆していた。
(ズッ!)
BAD何もない平原のど真ん中に剣を刺し。
「ラブ・シャワー(愛の弾雨)」
地面に、宝石の弾丸をぶち込んだ。
「だったれだ!」
それまで、平原の地下。盗んだ宝石やら女やらに囲まれ悠々不遜としていた盗賊達の前に現れた。
「誰って…俺様か?俺様はな…」
それから30分後
「よし!」
BADは盗賊達をボコボコにしていた。
「おーい、おみゃらなに騒いで…」
奥から現れたのは盗賊の棟梁
「一体…何が…」
「おっととまだ生き残りがいやがったか…」
フードを深々と被るBADと、ボンレス盗賊棟梁。
(ビコン!)
「ふん!」
打つかる
(ジャキン!)
棟梁は、自身の魔法でその拳を鉄に変え。対するBADは、その宝石の刃で棟梁の拳を受ける。
「流石に仲間がやられてるんだ、切れて突然ちゃ当然か…」
(見た目どおりのとんでも威力パンチ。しかも自然魔法の鉄。耳もなげーし妖精だな。"アイゼン家"の分家かなんか、それにしてもこの豚鼻どっかで…)
「おみゃーこそ、何晒してくれ飛んじゃい。」
(この男、太刀筋が全く見えんでごわす。この剣技はまるで…)
両者は、一歩も引かずその場でぶつかり合い、そしてそれぞれが相手に対する謎の既視感を感じていた。
「とりあえず!」
BADはその拳を受け流し、加速で接近しその剣を振り下ろす。
「鋼鉄の皮膚」
しかし、棟梁のとっさに使用した全身を鉄に変える魔法で防がれる。
「ちっ!」
「今度は」
棟梁は、突きつけられた剣ごとBADを突き飛ばし
「おわぁ!」
「豚鼻…」
その右腕を奥に引き、その拳を力をためるようにして一気に
「弾道」
空中に投げ出され避けることの困難なBADの度出っ腹に放った。
(ブヒブヒ!)
BADは、その衝撃で吹き飛ばされたが、直ぐに起き上がる。
「この匂い…」
BADは吹き飛ばされたBADは咄嗟に
「いって…」
と言って顔を上げた。しかし、先ほどの衝撃の影響で顔を隠すためのフードが取れてしまった。
「あっ…兄」
「何すんだ!」
BADは棟梁の頭をその大剣で上から叩きつけた。
「痛いすよ、兄貴」
「は?」
「おいどんすよおい!」
「おいどん?」
その時、初めてBADは目の前にいる大柄の男が
"豚鼻の少年が川のそばでブツブツ愚痴をこぼしていると、川から男の人が流れてきた。
「人が!かーちゃん!」"
ノーズであることをしった。
「ノーズ…お宅!ノーズか、あのちびすけの。」
「そうーすよ。おいどんがノーズすよ。」
BADは約20年振りに会ったノーズの成長した姿を見て驚いていた。
「いてて…あ"!テメェー!このやろー」
背後からハゲ頭の妖精族と思われる男が突進してくる。
「おいおい、まだ懲りて…」
「猪突猛進!」
男がそう言うと、先程までただのハゲ頭の妖精族だったはずの男が急に耳の長い猪に変わった。
「はぁ!」
向かってくる男にBADは同様する。
「待て!タックルズ!」
「うぉー!」
男は止まる気配を見せない。
「拘束」
BADは突進してくる目の前の猪をピンクのロープのような魔力で締め上げた。
「ちっこのやろ〜」
「おい!タックルズ、その辺にしとけ。」
「なんでっすか、棟梁。こいつ俺達を…」
「この人は、おいどんの兄貴分だ。事情が把握出来てないだけだ。とにかく止まれ。」
「へっへ〜い。」
ノーズは、タックルズと呼ばれるハゲ頭猪静止した。
「すみません!兄貴。」
「いやいや、別にいい、いい。俺様から仕掛けた訳だし…」
頭を下げるノーズに対してBADは頭を上げるように返した。
「はぁ〜」
ノーズはゆっくり頭を上げる。
「つーかよ、こいつらどうした。さっきの混血児だよな。他の奴らも見る限り平民や孤児の集まり…」
(しかも、妖精と獣人の混血児。さっきは咄嗟で気づかなかったが、魔力の質からしてこいつら三割はどっかとの混血。あとは、よくいる路上のごろつきども。)
BAD、その場の全員を分析していた。
「なんつーかもったいねーな。」
「といいますと?」
BADの口から出た言葉にノーズは質問で返す。
「だってよ、現生種族の中で魔法最強の妖精と肉体最強の獣人のハーフ。ごろつき上がりとは言え、あの地下室を作るレベルの魔法を行使できる土属性魔道士。さっき戦ってても思ったが、こいつらなんつーかもったいねーよ。ただその辺の奴らから金品奪うだけこんな仕事よりもっと稼げる仕事がいくらでもあるはずだ。」
ノーズはそれを聞いて面輝かせた。
「あんまり言いたくないが才能の無駄使い。あとこの地下室、あんなん魔力感知ですぐにバレちまうからもっと上手くわんねーよーに…」
BADが話していると、ノーズがもう一度頭を下げてきた。
「おいおい、だからさっきのはもーいいって…」
「そうじゃないでごわす。」
「…」
BADは、ノーズの言葉に同様している。
「兄貴に…おいどん達の頭になってもらえませんか…」
「俺様が…盗賊の頭」
周囲の盗賊達と共に、BADともノーズのまさかの発言に驚愕する。
「棟梁!何言ってんすか。俺らの棟梁は…」
「じゃかしー!おりゃーらは黙っとれ。…こりゃ…おりゃーらのためでもあるんだからよ〜」
「どう言うことだ…」
BADはノーズからその真意を聞いた。
「はい!兄貴の言う通り、こいつらもったねーんですよ。こんな才能溢れる奴らばっかなのに、おいどんみたいな馬鹿な奴の下じゃあまりにももったいない。でも、兄貴なら…」
"俺様なら"
「頭も技術も経験も、そして人を見る目もある!」
BADはその時、大きく目を開いた。
「だから…」
"だから…?"
「おりゃーらを、兄貴の子分にしてくだせー!」
"子分…"
その言葉は、BADの脳の片隅にある記憶を呼び起こす。
「…きさん、わーの下につかんかいな?」
"そう、あの時、誓った俺様の名の理由"
「は?」
「なにか不満でもあるんかいな。」
社長椅子に腰掛け、高級デスクの上で手を組む男。ドン・フェルは、BADの顔を見てそれを聞く。
「あたりめぇ〜だろうが…この俺様を誰だと思って嫌がる!」
「威勢の良いガキ…」
「ちげぇー!…俺は…」
"俺は…"
「俺様は!」
"俺様は…"
(ドン!)
BADは強く、自身の左胸に指を突き立て
「この裏社会の王!」
"そうだ…俺様は!"
時は現在へ…
「やー!」
「黒煙の(ブラックスモーキー)…拳」
スモークは、自身の周囲に描かれた。リング状の煙を腕から黒い拳を生成してバーヴァンシー達を一掃する。
「くぅ…強すぎる…」
「ふっふっ…ふははははは!どうだ!どうだ!身共が扱う煙は、父と同じ黒い煙は!。この世界に存在する世界三大勢力、五大国、聖貴族、そして裏社会。その一角の頂点ー!この裏社会労働者組合。その裏番であるこの身共こそが…」
スモークは、空高く手を広げ
「頂点だー!ひゃーははは」
その時
(ダン!)
大きなピンクの大剣がその脳天に向けて振り下ろされた。
「頂点頂点うるせぇーぞ!この俺様こそが…」
BADは右胸を強く親指で刺し
"そう、俺様は王!"
「仕方ねーな〜なってやらー!」
「本当でごわすか!」
「まっ、王には…使える者が必要だからな」
"魔法騎士団で…だだ、言われるがままの俺じゃない、俺様が抱いた最初の"夢""
「悪の親玉(BAD・KING)になる男だー!」




