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第三十五話 勝利の女神

これは、今から10年ほど前のこと…

「ここに入ってろ!」

「きゃ!」

そこは、商都8ストリートの一角。アダルトエリア(大人の領域)、その治安の悪さから、通称ギャングストリート(治安の悪い路上)と呼ばれるその場所に、一人の紫の髪をした少女ががたいのいい強面の男達に連れられ。ピンクの光が眩しいエリアの四階フロワ・SEX(風俗通り)の一点方に店を構える風俗店・リリー・ズ・ラブの奥の部屋に押し込まれていた。


"こんなはずじゃなかったんだよ…"

「お父ちゃん」

それは、麗しい家族の光景。

「お父ちゃん、こっちこっち!」

「お〜い、待っておくれ。」

そこは、いつも笑顔溢れる場所だった。

「はぁ〜はぁ〜、ヴェノちゃんは本当に元気だな、お父さん全然追いつけないよ。」

「あははは!お父ちゃん遅ーい。」

幼い少女とその父親は、二人で追いかけっこをして幸せな時間を過ごした。

「二人ともー!ご飯でできたわよ〜」

「「はーい!」」

"こんな平和な日々がずっとずっと続くけば…


よかったんだよ…"


「お父…ちゃん?…」

「ごめんな〜ヴェノ…」

外にいるのは、黒服の柄の悪い男達。

その男達を横目に、目の前の父が放った最後の言葉は…

「"お前は、お金になるんだよ…"」


"信じていた…信じていたのに!。あの男は…あの男はあーしを売った!"


「いや!」

「おいおい、お嬢ちゃん。お客様にそんな態度ダメだろ〜…」

「痛い!」


"強いちからで押さえつけられ、無理やりアソコに誰とも知らないおっさんの汚ねー棒を突っ込まれて…あーしの百合は、奪われた。"


(もう…誰も信じない…)


"大人はみんな、嘘つきだから"


"そうやって、全てを諦めどうでも良くなった。"


「あぁん!」


"あれから十年、もう何回やられたのかわからない。8歳からここにいる、そして今日で18歳になる私は、客の相手をする…そんないつもと変わらない毎日のはずだった…"


「デア、うちの女王様。今日もいい仕事ぶりだったぞ。」

「ん?」


"客の指名が来るまで、化粧室で待っていた。そんなあーしの前に現れたのは、金髪ブランドヘアーに黄金の目。全身から放たれる強力なフェロモンの匂いを漂わせ、そのスタイルはまるでモデル。そんな"俺の考えた最強の女"を体現したような美女"


(あの長い耳…妖精なんだよ?)

妖精族は、見た目が人間とそう対策ないが唯一耳が横に長いと言う特徴を持つ。この耳が長いほど寿命が長くなる。通常は800歳前後だが、妖精族の中にはなんと3000歳まで生きたものがいたと言う。ちなみに、妖精族は容姿の美しい者が多いのも特徴である。

「それじゃ御指名来るまで待っててね〜」

「はい、よろしくお願いいたします。」

そう言って、オーナーは扉を閉めた。

「よいしょ…」

女はヴェノの隣に座った。

「…」

周囲に気まずい雰囲気が漂う。

「あの〜」

先に声をかけたのは、デアだった。

「なんですか」

ヴェノはキレ気味に答えた。

「初めましてでしたよね。ラタくしの名はデア・バッカー。よろしくお願いします。」

「よろしく〜」

ヴェノのは、目を逸らして嫌そうに答えた。

(お高く止まってんじゃないんだよ。はいはい、お綺麗なエルフ様と違って小汚い小人のあーし共では、かないませんよ〜だよ。)

ヴェノのはその美しさに嫉妬と嫌悪の念を抱いていた。

「ラナタはいつからこのお店で?」

「8歳からです。」

「8歳!」

デアはヴェノの発言に驚いた。

(なに、8歳からやりまくってる淫乱さに引いちゃったわけ?は、これだからお嬢様は、あーしからしたら媚び諂って風俗店の看板女やってるあんやんの方がどうかしてるてんだよ。)

ヴェノは、デアの驚きにムカつきを覚えつつ呆れていた。

「…とても…大変な人生を送られてましたよね」

「え…」

しかし、それはヴェノの予想した反応とは異なっていた。

「ラタくしはこのお仕事を15歳の頃からやっておりますがそれでも辛いことの多いお仕事であることは痛感しております。しかし、機械化が進み、実力主義なこの世界で…その実力の秤の大半を魔力と言う潜在能力が占めている。そんなこの世界で、大した魔力も持たずしかも非力な女の身の上。身体を鍛えようとも、そこまで頑丈な身体をしていないラタくしに…まともなお仕事などありませんでした。」

その言葉はヴェノの心を女の方へと引きつけた。

「今はこんな身なりをしておりますが、一時期はそんな人生に嫌気がさして不貞腐れる時期もありました。…しかし、そんなある時そうですね。年齢で行くと18の時。ラタくしは出会ったのです。あのお方に…」


そこは、晴れやかな日のこと…

「俺と…結婚してくれねぇかい。」

目の前に膝を突き、花束を差し出す赤髪に青い目をした男。

「え!」

差し出されたデアは驚いた様子で口に手を当てて塞いだ。

「ラ…ラタくしそんな急に、それにラナたとは初対面でさよね。」

「はい!一目惚れです。」

と男は言い切った。

「えっ…え〜」

デアはその男の真っ直ぐな視線と思いに…困惑していた。


「え!それで結婚したんだよ。」

「うんう、断りましたわ。その時は…でも何度も何度もお断り致しても、諦めない方だったから。最後にはラタくしの方が折れてしまいましたわ。」

そう言って、デアは話を終えた。

(あ!しまった、ついつい話に乗せられて…)

その時ヴェノのは、自身がデアのペースに乗せられていることに気づき。恥ずかしかったのか一瞬赤面しつつ、咳払いをしてもとの体勢に戻った。

「そっ…それで、それがあーしと何の関係があるんだよ。」

ヴェノはデアの話の系を聞いた。

「ラタくしがあのお方と出会ったのは、18の頃。そして結婚したのが25の頃。そして…"あの子"を授かったのが、丁度28の頃でした…。」

「ん…だから何なんだよ」

ヴェノは今だ糸がわからない。

「…一つ、質問をしてもよろしいですか?」

「はい…」

「人にとって一番不幸なことはなんだと思いますか?」

ヴェノはデアの急な質問に…


"「お前はお金になるんだよ」"


(う!)

父の言葉を思い出し。

「お金が…無くなること…」

と答えた。

「はい、確かにお金は大事ですね。でも…人生にはそれより不幸なことがあります。」

「なんだよ…」

「"なにも信じてれなくなった時です。"」

「ん…」

デアの言葉に、ヴェノは少し困惑した。

「If you believe, your dreams will come true…」

「信じていれば…夢は叶う。」

その時、化粧室のドアが開き。

「デアちゃ〜ん、お仕事の時間ですよー!」

とオーナーが呼ぶ。

「はい!ただいま。」

女は椅子から立ち上がり、そのスラットした美しい美脚を覗かせ部屋を去る。

「"ヴェノ・ヴァイパーさん"。」

(どうしてあーしの名前を!)

そう、ヴェノはまだ一度も名乗っていないのだ。

「信頼は力になります。自分を押し出す原動力になります。だから…何か一つ、絶対に疑わないもの…信じて背中を任せられるもの。そんなものを、お探しください。」

デアはそう言って、扉を閉めた。


(だから…だからねビリー…)

時は現在戻る。

「絶対に…死なないで…」

ヴェノは、ルール違反のためゲームに参加できず。上の観戦室で皆を見守る中、願うように涙を流しながらそう言った。


そして…

「俺氏にターンを譲ったこと…後悔させてやる。

チートやろー!」

ビリーは、目の前の強大な敵、今…挑もうとしていた。

「ろーろろ、何をほざきやがるかと思へばいいぜ。じゃー証明して見せろよ…その妄言を…」

「妄言じゃね〜…」

ビリーは深く息を吸って構えた。

「現実だ…」

「は…」

スロットの顔から冷や汗がこぼれ落ちる。

(ちっ!ビビらせやがって、まぁ〜どうせ無理に決まってる。13と8の位置以前に、こいつの狙いのボールさっきのジャンプボールの着地の勢いでばらけた5と1が左右斜めに分かれた。3と2は台のはししかも左右で分かれている。この状況で一気にゲームが終わることはあり得ない…)

そう、スロットは自身に言い聞かせている。実際確かにそうだからだ。しかし、しかし、スロットの身体には焦りが止まらない。


その原因は一体…

(タン!)

その瞬間、キューからボールが放たれた。

(狙いはー!)

狙うは5…

「ろーろろ!血迷ったか。そこは壁沿いだろ、他の球には当たらねーし、ポケットもできねー!。そんなクソポジ狙って何しよーて…」

「黙って見てやがれー!」

「は!何がどうなだってあのボールは…」

しかし、ボールはスロットの想像を覆す動きをした。

(1番に!)

そう、5番を狙ったはずのボールは斜め上に存在する1番に向かって勢い殺さず動いている。

「バッ馬鹿な!どうやって…」

(まさか…)

スロットは何かに気づいたように

(カーブショット!)

そう、ビリーはそもそも最初から1番を狙う想定でボールをカーブさせていたのである。しかも…

(斜めに…だ…ろ)

ボールは5番の横側を掠めたしたに弾き、真の標的である1番を狙う。

(だが、だからなんだと言うだ1番ポケットしたところで無駄に終わる5番はポケットまで至らず。しかも、あの位置にキューボールが止まればさっきのおりゃぁのように8ボールが行くてを阻む。どっちにしろ詰みだ。)

自身にそう念じながら、何故か全身の冷や汗が止まらない。

(タン!)

そして、ビリーが放ったキューボールは…

(スネイクショットだとー!)

1番との衝突で跳ね返りそのまま真下へ

「な…」

「どうしたし?スロット…」

「…」

その時、ビリーはスロットのの焦りを感じ取ったのか…

「汗臭せーぞ…」

と、一言言い放った。

「うっ…うるせぇよ…ガ」

(ダン!)

「キ…」

そんな会話の最中、スロットが目を離した隙に1番は3番を巻き込みポケット。それだけでは留まらず。

「はっはは、まぁ〜これくらいやってもらわないとな〜…」

その時、焦りに焦ったスロットの目には見えていなかった…


"現実"


「8ボール!」

「へぇ?」

その時、審判役のルーレットが言い放った衝撃の言葉。

「な…何言ってやがる!こいつの残りポケット数はあと1つ!。まだ1つグループボールが残ってんじゃねーかよ!」

「いえいえ、よく見てくださいっす。」

「見ろって何を…」

その瞬間、スロットの全身に衝撃が走る。

「5番…か…」

「なんだ?…今更気づいたのかし。」

そう、さっき弾いた5番はその非力な力で2番をまるでゴルフのバターを決めるかの如くゆっくりと弾き5番と一緒にポケットしていたのだ。


「使えよ…テメェの力をよ〜…」

「…」

その時、タキシードがぐしょぐしょになるほど冷や汗すら引いて氷の様に冷たい絶望へと変化しつつあるスロットに対してビリーが放った一言。

「さっきから使ってんだし?そのよーわんねぇクソチート能力。」

「なっ…なんの話しを」

「とぼけんなし、気づいて無いとでも。んなわきゃねーし、でも安心するといいし。今回はちゃんとルールにに明記されてたからな。」

そう言ってビリーは、ルールの書かれたウィンドウをスロットの前に出してみせた。

「ここには、"魔法の使用を許可する。※魔道具は含まない"とある。つまりはテメェの使ってるそれは魔法なわけだし。」

「いつから」

「最初からだ。」

その発言はスロットの頭の中には無かった予想外の解答。

「お前らは確か、"許可されたエリア内でのみ"といっただけだし。なにも明記されたルールを対戦時に読み上げろなんて言ってねーし。だから黙って使ってたんだろ、その能力。」

ビリーは、初めからスロットの魔法使用に気づいていた。だからこそ、スロットの焦りを誘って判断を鈍らせ力を使わせなかったのだ。しかし、だとしたら何故今手の内を見せるような真似をするのか、その真意とは。

「でも意味なんてねーよなこんなルール。だって

魔法の使用のみが許可されたって俺氏みたいな魔力が少ない雑魚には何の意味も無いもんなー!。だから使えよ…テメェのチートこの俺氏がそれを技術で凌駕して、完封なきまで絶対的完全勝利を見せてやるし。」

このためである。

「ろっろっろ…」

(そうだ、そうなんだよな…)


その時、この男の小根の腐った諦めの悪さが…


(この力があるじゃーねぇかー!)


発動した。


「ろーろろ!、その発言。後悔させてやるぜ。」

「は!臨むところだし。」


そして、因縁の相手である両者の命をかけた最後の"勝負"が始まる。


(スッ…)

ビリーは静かに構え…

(そうは…させねー!)

スロットは、手を翳してこう叫んだ。

「固定しろ…」

そう、8ボールに命じたのだ。

(よし!勝った。勝ったぞおりゃぁはー!。そうだそうーだ。最初からこうしていれば良かったんだ。ボールを完全停止させればどんな技術だろが関係ねー!。おりゃぁの勝ちだぜ、ビリー…)

そう、この男8ボールをその場で固定し、完全に動かなくしたのである。そうすれば、どんなボールがこようと関係ない。そう、そのはずだった。

「フゥ〜」

顔に手を当て半分隠し、曇りなき清々しいほどの最姑(サイコウ)のにやけ顔をするスロットの目の前にいるその男は…静かに息を吸っていた。


最後にビリーは心に願った…

(父さん…力を貸してくれ…)

そう金のキューボールのネックレスを握りしめ最後に願った。


その瞬間、スロットの背筋が凍りついた。

「なんだ…」

ん?

「なんだその目はー!」

それは、いつも見える青い右目。その青き光とともに、ビリーの打ち出す右手にそっと手を置く父アートル・バッカーの姿。

「見るな…見るなー!。おりゃぁの女神を奪ったその目でおゃぁを見るなー!」


"おりゃぁは彼女が好きだった。"

これはアートル・バッカーが独身であった頃の話し。

「デアちゃーん!」

「はーい!」

"蛍光色の魔量の光が煌めくギャングストリート。その中でも男達の夢の詰まった場所風俗街。

臭っせーおっさんどもが群れをなす気色の悪いにやけ顔。

客に媚び売るヤリマンの女ども、そんな花を積むようなゴミ溜めに、たった一人…


"女神がいた"。"


「ヒューヒュー!今日もエッチだね。」

「よっ!女神様。」

"おっさん達チップ片手に群がるその中心で、ポールダンスを華麗に舞う女神。艶やかな肌、黄金比を描くように造形されたその体、そして…引き込まれるような黄金の目。おりゃぁは、ただ…惹かれていった。"


舞い踊る彼女にチップを投げるスロット。


"少しずつ少しずつ近づいて…"


「うふふ、本当にスロットさんは紳士なお方なんですね。」

「いえいえ、そんなことは…」


"ついに、勇気を出して使命した。その時は、少し喋ることぐらいしか出来なかったけど…このまま距離を積めればいつかきっと!。そう…思っていた。"


「俺と…結婚してくれねぇ〜かい。」


"それはあの青い目のように青い空が、一切の雲の混じりを捨て去った。快晴の日…花束とともに提示された回答。そう…


"あの男がぶち壊したんだ、おりゃの初恋を!"


そして時は現在へ…


(ドゥン!)

それと同時、ビリーはキューでボールを押しそれは凄まじい速度と威力でスロットを襲う。

「あの時から嫌いだった…空の快晴とそれに照らされ輝くその青い目がー!」

スロットは決意を先より強く固め。差し出した手に、強く怨念こもった魔力を込めた。

「うぉー!」

ビリーは、大きく力強く掛け声をあげ。真向から8ボールにぶつかった。

(血迷ったか、真向からぶつかったって絶対停止は…)

と思っていた。


その瞬間…ビリーの普段隠れた左目に宿った。黄金に輝く目がとともに…

(女神!)

はビリーに微笑んだ。


(ピキ!)

そしてその瞬間奇跡は起きた。

(そんな…馬鹿な!)

それは、ガラスが割れる様な音。

「うぉー!」

絶対停止の魔力は、その瞬間。産まれてくる雛鳥が蹴破ろうと、少しづつ割れる卵の如く…


"ひび割れて行く"


「お前もか…お前もおりゃぁから、女神を奪うのりかー!」

「奪う?違うし〜、女神ってのは…口説くもんだろ。」

その時、その一瞬。またもまたも、スロットの動揺に連動するかの如くその魔力にひびが広がる。

「ずっとひよってたんだろ、テメェは!」

「…」

「負けたく無い、失敗したくない、嫌われたく無い、そんな言い訳並び立てて負けるのを恐れて"勝負"しない!。」

(うるせぇ…)


(ピキピキ!)

魔力をのひび割れは止まらない。

「テメェのやってんのは"勝負(ゲーム)"じゃね〜…"ただのお遊戯だ"。」

(うるせぇ〜…)

(ピキピキピキ!)

「ごっこ遊びなんだよテメェのは!」

「うるせぇー!」

スロットの心の叫びとともに…

「止まり…やがれー!」

「貫けー!」

ぶつかり合う二つのボールは…

(パリン!)

その割れるたのカラとともに、決着をつけた。

(ドゥンーー!)

13を残して、8ボールはポケットされた。


「ビリーWIN!」

ルーレットさんは響き渡る黄色い声を上げ。ビリーの勝利を宣言する。

「ち!…また…負けちまった。」

(ダン!)

スロットは崩れるよう全身を地面につけて倒れる。

「魔力は…"精神"で扱うもの"。お前はどこかで恐れていたんだし。親父の勝負師としての腕を…」

揺らいだ心が最強を打ち砕た、その瞬間だった…

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