第三十四話 勝負師と細工師
これは、これから約60年前のファストフード店マルクでベシルが食事をしていた時のこと…
「ダブガン・ハッチ?」
ベシルの目の前に座る黒いタキシードに茶色のお団子頭の女性。
「"ダブルガン・ハッチ"ですよ。クイーン様。」
「ふ〜ん、なんかその子ヤバいの?」
「はい、今回そちら様に依頼したい案件と言うのが…
"ドン・フェル"彼の暗殺をご依頼させていただきたく存じます。彼はきっとその障害となるでしょ〜」
時は現在へ…
「ダブルガン・ハッチ…噂には聞いてたが、会うのは初めてだったけな…」
「そうすっね、クイーン。あの時は会えなくて残念した…せっかく…"いい遊び相手になりそうだったのに"」
「遊び相手?」
ハッチは不思議な事を口にした。かつてあっていたら確実に殺し合いになっていた相手に対して遊び相手と称すのは極めて不思議だ。いや…
"異常だ"
一方その頃ビリーは…
「あ"〜…」
地下労働施設マスの無限借金返済ループにはまって廃人と化していた。
「オイオイ!マダマダ借金ハ残ッテンダゼー!サッサト働キヤガレ〜コノドクサレ坊主。」
「うっせーし!」
ビリーは、ルーレットさんとそんなたわいもない会話をしている中
(ピー…ピー…ピー)
「オオット、官庁様ガオイデ擦ッタ見タイダネ〜」
「官庁?」
「コノ地下労働施設ヲ管理スル役職ノコトサ、シカシマズイネ〜…管理役ガ来タッテコトハ〜…」
「ことはなんでし?」
ルーレットさんの含みのある言い方に、ビリーは少し違和感を覚える。
「遊戯の始まりってこったろ…」
そこに現れたのは…
「スロットー!」
「ろろろ、親父と同じ所に送ってやるよ…さー!…テメェの命を賭けてこいよ!俺から金ぶんどってここから這い上がるって見せやがれー!」
スロットがここに来たのは、借金返済のためでは無い。それは…
"ビリーを父と同じように、ゲームで負かして殺すため"
「ドクズが…」
ビリーは、ただ目の前の男を睨みつけていた。
「ろっろ、覚悟は決まったろ?んじゃーまぁ〜…カードオープン…ゲームセレクト!」
すると、スロットの背後に現れる。巨大なジャックポッド…
「イッザ、セレクトターイム!」
ルーレットさんはそういうと、ジャックポッドのレバーを倒し
(ダンダンダン!)
「テッレテッテー!ゲームイズ…"ビリーヤード"」
その名は叫ばれた。
(キュイン!)
周囲がビリーヤードの為のフィールドに切り替わる。
「ビリーヤード…だと…」
「いい〜ね〜…因縁て奴を終わらせようや…ガキ…」
「ちっ!…望むとこだ…」
そして…ゲームは始まった。
「今回ノ審判ハー!」
天上の壁からクルクルと、何かが落ちてくる。
「この、ルーレットちゃ〜んがやるよー!」
そこに現れたのは、黒い髪に金髪の数本混ざったサイドポニーテール。そして、どこか面影のある顔付きの"天真爛漫"な女の子だった。
「うーす!てーことで、(コホンコホン)ゲーム説明は不要だと思うっす。なんで、早速〜…"バトル!タイム」
そうして、二人はキューを手に持ち。二つのビリーヤードボールを持ってブレイクを始めた。
「先攻はビリー選手!」
「しゃー!」
ブレイクに勝利したのはビリーだった。
「ハイ?&…」
「ロー!」
ビリーはローを選択。
ロー 1、2、3、4、5、6、7
ハイ 9、10、11、12、13、14、15
(ゴロゴロゴロ…)
ビリーが弾いたキューボールは、スロットが並べた。三角にまとまった、ボールの並びを崩し…
(カラン!カラン!)
ビリーは7と11を落とした。
「おうおう、上場じゃねーか。ビリ〜」
「るっせーし…黙って見てやがれ…」
「ろろろ、そうさせてもらうぜ」
ボールを落としたため、先攻は続けてビリーだ。
(今のボールの位置は…中央に12、5、中央奥に10、右に6、4、左に1、13、右奥に3、15左奥に9と14と2…)
ビリーは考えていた。ビリーヤードのキューを構えて…ただ真っ直ぐ…ボールを見ていた。
「ろろろ?打たねーのかよ〜…ガキ」
またあのにやけずらだ。しかし、ビリーは気にも止めなかった。
ただ…
(これだ!)
ビリーは、右の6、4を選択。しかし、だだ狙ったわけではない…
(トリックショット!)
「説明するっす、トリックショットとは、ボール二つのボール同士の距離が近い場合。その間を打って双方のボールにキューボール当てる事で二個同時にかつ、別の方向に弾く技術さんすよ。
なお、これらを行うにはどこに当たればどの方向に取るぐらいの勢いで行くかを把握し、正確にその場所に入れるだけの力、角度へのコントロール技術が必要てわけっす。」
ルーレットさんは突然の説明を挟三つビリーはポケット(ゴール)した。
残りボール数
ビリー 1、2、3、5 残り四
スロット 9、10、12、13、14、15 残り六
ビリーは得点を決めたため、ビリーのターンが続行される。
「良いねぇ〜…そうかなくちゃろ。ビリー…」
"おりゃ〜は…この目が嫌いだ…"
「おう!スロット。」
街を歩くかつてのスロットの背後から、肩にトン
と手を置く赤髪の男。
「なんのようろ?アートルさん。」
アートル・バッカー(155歳)
種族:小人 性別:男 独身
見た目:派手なアロハシャツ、白のネクタイ
白いピチッとしたズボン、手足のミサンガ
ビリーヤードボールの形状をした純金
ネックレス、ピヤス、指輪
「いやいや〜この後一勝負どうかな?ってさ。」
「嫌ですね、お断りします。」
「なんだよ〜…連れねぇ〜な〜」
"この男、この宝石の如く輝く青い目が…かつて画家たちがその美しさに筆を躍らせた。このラピスラズリが如き目が…だっ嫌いだ。"
(だから、潰すんだ…同じ目をしたあのヤローのガキをー!)
スロットは、ビリーの青い目を見つめてそう言った。
「機械運」
その時、スロットの大きく太い丸太の様な両手と額の円形の刺青の中がクルクルとジャックポッドが如く回り始め。
(カン!)
それと同時に放たれるビリーのビリヤードボール。
(コロンコロンコロン!)
狙うは…
(1と2!)
ビリーは、貪欲に二つ落としを狙う。しかし、その側には13。2の側には9と14が存在している。その壁をどうやって突破する。
(カン!)
まずは、1にヒットそのまま1番は右奥のポケットへその直ぐ側の3番に打つかる。そしてキューボールは力を少し弱め左側の2番に衝突し左のポケットへと入ろうとする。これは正しくスネークショットだ!
「説明するっす!スネークショットとは、ボール同士の衝突で起きる跳ね返りを利用して、キューボールの軌道を横に変えて、横側にあるボールを狙いもう一つのボールも落とす技術っす!」
「よし!」
ビリがガッツポーズは決める。それもそのはず、この三つを同時落とす事が出来れば、あとは中央の5番を落とすのみ。キューボールは2番に当たって完全に左ポケット前で静止したため、アウトの心配は無い。中央だって狙えない角度では無いことをビリーは拳さんずくでここまでやってきた。このままいけばスロットにターンが回る事なくゲームが終了する…そう、思っていた。
(チャリン!チャリン!チャリン!)
その瞬間三つの刺青は…
「グレープ…」
に…変わった…
(キュイン!)
「な…」
その瞬間、3番と2番のボールがポケットの方向から、真下に曲がった。1番は3番の急な方向転換により、吹き飛ばされ中央に…
(バン!)
本来行くはずの無い方向に、ゴール手前で…
「どう言う…ことだ…」
「残念だったな〜ビリー…」
ビリーはその男の顔を見た。その顔は…これまでのどの顔よりも…"最姑の笑み"であった。
(おりゃ〜のポッドタトゥー(機械運)は、発動後円形の刺青をジャックポッドに見立てて回転し、ランダムでどの目が出るかが決まる。目の種類は全部で五つ。ボールとボールの位置を切り替えるチェリー、ボールの向きを二つまで一回だけ好きな方向に変える事ができるグレープ、ボールの位置をシャフルし直すダイヤ、そして…
"どんなピンチも不可能も、絶対可能にする幸運の777(スリーセブン)"。発動する能力はゲームごとに変更されるが、777だけは絶対的幸運それだけは変わらね〜。テメェの敗北は、はなから決まってたってわけだろ。ざまぁーねぇな〜…クソガキ)
それは、絶対の勝利能力。まさに"チート"、この制約だらけのゲームと言うルール内空間に置いて絶対敵な能力。…だれも勝てるはずが無い、そう思えるほどに無敵、無双、無欠。そんな相手を前に、現実を知らぬ"愚か者"は今…
「さー!テメェのターンだぜ?…スロット…」
挑もうとしている…
「ろっろっろ…一つ!…宣言しておくぜ…」
「あ"?」
スロットは、ビリーの前に腕を突き出して、人差し指を一本立て…
「お前のターンはもう来ない…」
そう、宣言した。
スロットは、キューをもって姿勢を整え…構える。
(さ〜、どこを狙う〜か…)
「ちなみにっすけど、今のボールの位置は…中央に12、5、1、中央奥に10、左に13、右奥に15左奥に9と14、反左奥に2、反右奥に3、現在のボールの位置は左奥っす!」
ルーレットと配置の説明を終え、スロットがついに動き出す。
(よし…こいつだ!)
スロットが、狙うは中央!
スロットのボールは12番を弾き右奥のポケットに、そのまま中央奥の10番を狙う。
(スネークし?いや、でもあの角度じゃ〜)
そう、あの角度、周囲の状況では、スネークショットは狙ら得ない。ならば、いったいスロットは何を狙っているのか…
「機械…運」
(クルクルクル…チャリン!)
「ニヒャ〜…」
なんとその目は…
「777(スリーセブン)ーだ〜」
777(スリーセブン)とは、発動後。三回どんなピンチも打ち破り、どんな状況もひっくり返す。そんな奇跡を三度も起こす力。
それで彼が願う、最初の願いは…
「カーブ…」
(カン)
その奇跡は、キューボールが10番のボールに当たると同時に…
(キューン!)
ボールはまたしても突如軌道をかえ右奥のポケットに…
「ちっ!」
ビリーはスロットの方を不機嫌そうに睨みつけている。
(まだ終わりじゃないろ…ガキ…)
そしてスロットは、キューボールの止まった中央奥の地点からボールをカーブさせるカーブショットで左奥の9、14を2つのボールを同時に落とすトリックショットにより二つをポケット。その後またしてもボールは右奥に突然方向転換し、15をポケットする。
残りボール数
ビリー: 1、2、3、5 残り四
スロット: 13 残り一
スロットの残りポケットは1、それを終えれば8ボールを弾く権利。すなわち…ゲームを勝利する権利を持つ。どう考えてもピンチ、絶体絶命。しかし、そんな時たった一つ…
(あの位置か…)
スロットが悩むのは、13と8の位置である。
スロットの起こせる奇跡は残り一つ、しかし13の存在する左側に行くには…
(8…ボール…)
それは、スロットの狙う射線上に存在していた。
「ちなみに、現在の8ボール(エイトボール)と呼ばれるビリーヤードのルールでは、8番のボールは必ず最後に落とす必要があるっす!。それなら13番と一緒に落とせば良いんじゃ無いんすか?と思うかもっすけど〜実はそうもいかないんす。8ボールでは、ハイかローのどちらかのグループボールを全て落とした際に、"8ボールを落とす権限"が与えられるっす。なんで、必ず一ターンは待たないといけないって訳っす。」
(ち!あと777で叶えられる願いは一つ。必ずターンを跨ぐ必要がある以上。次の8ボールじゃこの手は使えねぇ〜てのに!)
そう、スロットにはもう二つ気がかかりなことがあった。それは8ボールの位置がどのポケットからも距離がありかつ、角度がきつくカーブショットかスネークショットを上手く決める他ないこと。しかも、一番直線で行けるはずの右ポケットの前には中央の5と1が行手を阻んでいる。ローボールである5と1を落としてもルール上は問題ないが、しかし弾いた8ボールが衝突の影響で威力が落ちてしまう。そうなると両サイドの中央奥ポケットがセオリーだが、それも少し角度がありただ真っ直ぐ弾くだけでは入らない。
精密な角度調整を要する8ボールか、はたまた13にジャンプボール決めるか…
「ジャンプボールていうのはっすね、目の前にある邪魔なボールを上から飛び越えて、狙いたいボールを当てる技術っす!」
しかし、皆思うだろ〜。777(スリーセブン)があと一回しか使えないのなら、13に最後の一回を使って8ボールの時にジャックポッドを引き直せば良いと…しかしそれが一番の問題だった。
(おりゃ〜の機械運は、幸運と一緒に不幸も運んで来ちまう諸刃の剣。不幸の確率上昇は下から順にチェリーが10%、グループが20%、ジュエリーが30%、777(スリーセブン)で50%確率が上昇する。そして上昇した確率は災厄の目スカルを呼び寄せ。そいつがでた瞬間今までの幸運が嘘のような不幸が訪れる。)
これがスロットの無敵とも思える能力の唯一無二の弱点である。
(そしてその確率がいま最初のチェリーとさっきのグループ、今の777(スリーセブン)ですでに80%に達している。だからこそ…ジャンプショット決めるろ!)
スロットはボールを…
(よし!)
上に放って飛び越えた。
(このまま13番に…)
しかし…
(タン!)
そこは…
「13番の…」
「裏…」
ビリーとルーレットさんは目を見開いて驚いた。
(しまった!力み過ぎて力が…)
スロットは動揺を隠せない。
(コロン!)
放たれたキューボールはそのままポケットに…
「ファール!」
ルーレットはそう叫んだ。
「ファールってのはすね。何個かのルールがあるすけど今回は今起きているファールのみを教えるっす!。今起きているファールは、キューボールと呼ばれる本来落とすはずの番号の書かれたボールで無いものを落とした場合に起きるファールっす。これをしてしまうと、例え番号の書かれたビリーヤードボールと一緒に落としたとしても無効点となり、次のプレイヤーにターンが移ってしまうっすから、皆んなもビリーヤードをやる時は気おつけて欲しいっす。」
(いや…落ち着けスロット、まだ大丈夫。焦ると時じゃない。どうせあのガキがこのボールのバラけた状況で勝てるはずがね〜んだからよ〜。)
スロットは、自身を宥めた。
「さー!ガキ…おめぇの番だろ。やれよ!…ここで勝てなきゃ負けちまうろ?」
スロットは、余裕を見せるためかいつもの様にビリーを煽った。
「カッコつけてんじゃねーよ…有言実行もできねーどカスが!」
「あ"?」
ビリーは、スロットに煽り返す。
「俺氏にターンを譲ったこと…後悔させてやる。
チートやろ〜…」
ビリーは、スロットからキューを受け取り…ボールの方へと構えてそう言った。




