第1章 冒険者 4. 宿
「えーっとね、薬草はね、葉っぱが尖ってて、ちょっと背の低いやつで、多分ここら辺にあるよ!」
「そ、そうか・・・どれかわからないから、1個摘んでくれないか?」
「うん!・・・えーと、あっ、これ!これだよ」
「お、どれどれ・・・なるほど、ありがとな」
そう言って、僕たちは薬草を探し始める。もちろん、何かあるといけないので見張りの目は欠かさない。途中、はぐれたサンドンが近づいてきていたので、サクッと倒してカバンにしまっておいた。これも、クロフにあげたら喜ぶかと思ったけど、冷静に考えて小さい女の子が背負って持って帰れるものでもなかった。5束程薬草が取れたので、声をかける。
「クロフ、5束くらい集めたよ」
「ほんと!?お兄ちゃん早いね!まだ私は2束くらいだよ」
「はは、目線が高いとよく見えるからかな」
「7束もあれば十分だよ!お兄ちゃんありがとう!」
おお、可愛い花のような笑顔だ。真心のこもった感謝と笑顔に、思わず顔が綻ぶ。これだけでも手伝った甲斐があったというものだ。
「じゃあ、危ないから一緒に戻ろうか」
「うん!」
そう言って、森の入口の方まで戻る。草原に出てしまえば、危険はほとんどないので、安心して歩ける。
歩いていると、すぐに森の入口に着いた。
「ここまで来たら大丈夫かな。気をつけて帰るんだよ」
「うん!ありがとうお兄ちゃん!」
またも花のような笑顔で送られた。良い子だったな。まだ昼過ぎではあるが、色々やることもあり、サンドンを放置する訳にもいかないので、1度ギルドに戻ることにする。
そういえば、鍛冶屋さんとかの店はどこにあるんだろうなあ。師匠の等級はいくつだったのだろう。そもそも冒険者だったのかな。
などと考えていると、ギルドに着く。
扉を開けると、なにやらコソコソ話し声が聞こえる。何かあったのだろうか。昼過ぎということもあり受付嬢の前は空いていたので、並んですぐ回ってくる。
「・・・こんにちは、ご要件はなんでしょうか?」
「こんにちは。あのー、何かあったんですか?」
「はあ、あなたの事ですよ。カイトさん、小さな女の子を連れているんですか?」
「えっ?」
もしかして、さっきのクロフの事だろうか。いや、それしかないか。それにしても、情報が伝わるの早くないか?
「ああ、多分薬草摘みを手伝った女の子のことですね」
「街に来て直ぐに、なんて怪しいことしてるんですか・・・」
「え、ええと、ごめんなさい?」
「謝らなくてもいいですけど、適正の件で一部の人には目をつけられてるんですから、気をつけてくださいよ。悪い噂でも立てられたらこの街でやっていけなくなりますよ 」
ああ、適正の件か。そもそも、森に行ったのもギルドから逃げてきたからだった。薬草摘みを手伝っていたら、そんなことすっかり忘れていた。
「善処します。ところで、ここら辺でいい宿はありますか?」
「はあ、まるで他人事のように・・・。宿ですか、宿なら1本入ったところの海山亭、さらにもう一本入ったところの幸食処でしょうか、海山亭は立地と対応、幸食処は名前の通り料理で評判がいいですよ。でも、他のシーカーからおすすめを聞くのもいいかもしれません」
「なるほど、ありがとうございます」
他のシーカーに聞くかどうかは分からないけど、とりあえず今日は幸食処にしてみよう。立地よりもサービスよりも、断然ご飯だ。あ、ご飯と言えば、サンドンはどうしようか。
「あと、サンドンはどうすればいいですかね?」
「もう狩ってきたんですか?サンドンなら、隣の建物に引き取り屋があるので、そちらでお願いします」
「はい、色々ありがとうございます」
「いえいえ」
受付嬢に言われた通り、隣の建前に引き取りをお願いしに行くことにする。宿は後でもいいだろう。一方、その頃の受付嬢というと、(あのシーカー、噂がまるで他人事であるかのような対応、ちらっと見えたサンドンの状態の良さ、そして中々かっこいい!これは大物になるわ!)と、1人意気込んでいるのだった。




