第1章 冒険者編 3.出会い
「わかりました。シーカーとしての登録と、ギルドカードの発行ですね。少々お待ちください」
そう言って、ギルドの受付嬢は手際よくカードの準備をし始めた。
「ここに、名前と出身地を書いてください。嘘は書かないでくださいね」
ギルドカードに嘘を書いたらどうなるのだろう。実際の名前とカードの名前の乖離に一生悩むのだろうか。と、どうでもいいことを考えながら、出身地フォカの街のカイト、と書き込む。
「カイトさん、ですね。では、ギルドはあなたがシーカーとして登録することを認めます。初めは赤等級からのスタートです。まずは簡単な依頼をこなして、緑等級を目指してください。ところで、適正の検査などはされましたか?」
「いえ、まだです」
師匠から雷の適正が高いことは聞いているが、実際適正を測ったことはない。でも、測ると雷の適正が強すぎて、何か面倒なことになりはしないだろうか。
「では、適正の方も軽く見ますね。わかっていた方が色々得ですからね。では、この水晶玉に触れてみてください」
ポンッ
と手を置いた瞬間に、水晶玉が真っ黒に染まって、ヒビが入る。壊れてしまったようだ。
「・・・・!!!」
「・・・・・・」
あまりの出来事に、僕も、受付嬢も、近くにいた冒険者も固まってしまう。
「雷・・・適正でしたよね?」
「分かりませんけど、多分そうだ思います・・・・」
「こ、これは、紫適正を超えた値・・・?」
突然、受付嬢の顔が引き締まって、カイトに向き直る。
「今のは見なかったことにします。あなたには雷の適正が少しあるようです。あと、風の適正も少しあるようです。おめでとうございます。次からは、他のところで適正を計らないようにしてくださいね」
受付嬢も、口調は抑えているが、顔は強張っている。紫を超えた適正・・・はすさまじいのかもしれない。というか、多分そうだ。急に居づらくなった僕は、依頼板の方に逃げるように駆け寄って、赤から緑等級で受けられる依頼を探す。先程から、何人かの冒険者がこちらを見ているようだ。これはまずい、好意的な視線も、悪意のある視線もある。依頼板にサンドンの肉集めという常時依頼があったので、場所だけ確認して、そそくさギルドを後にする。
「はあぁ~~、初日からやらかしちゃったなあ。そういえば、後ろのラインさんにもお礼出来てないや。今度お礼しなきゃ・・・」
少し離れて、落ち着いたら、ため息が出た。ラインさんはいい人だったが、そのためにギルドに顔を出すとなると、少し気が重くなる。とりあえず、逃げるようにして、バーズの丘に向かう。バーズの丘は、ダートの街の北に位置する小高い丘で、周りは草原で、奥の方に少し木が生い茂っている、初心者向けの場所だ。そこで取れる、今回の依頼品のサンドン、四足歩行のウサギのような獣だが、の肉は安く、シーカーたちに人気があるので、常時依頼となっているのだ。ギルドが買って、それをご飯どころや宿に回しているわけだ。
バーズの丘の手前の草原に着いて、落ち着いたので、さっきの出来事について考える。
「雷は紫以上の適正だったのかなあ」
ちなみに、適正の色も等級と同じである。カイトは、雷の中でも、白雷、青電、紫電の3つが使え、白が最も強く、紫が最も弱い。弱いといっても、威力は十分であり、師匠に「白は絶体絶命の時、青は危険ならば使っていいが、できるだけ人目につかないところで使いなさい」と固く言われていた。まだ白雷を覚えたての頃に師匠に隠れて使ってみたのだが、あまりにも力が溢れすぎてコントロールが効かず、挙句家の近くの木を折ってしまった。紫の制御を完璧にできるようになるまで、使っても意味がないということなのだろう。
平原を歩いてみるが、危険な獣もいなさそうで、サンドンも見当たらない。森の中の方にしかいないのだろうか。そう思って、森の方に近づいていくと、今、目の前の森の中で、屈んでいる少女にサンドンが飛びかかりかけていた。くそっ、距離が少し遠い。これは紫電では間に合わなそうだ。さっき師匠の言葉を思い出したばかりなのに、青電を使うことにする。(師匠、ごめんなさい)と、心の中で謝っておく。
「『雷駆』」
電気の反発の力で一気に加速して、サンドンに近づき、青電が迸る右手で殴り飛ばす。奥の方でドガーンという音が響いているが、どうやら間に合ったようだ。
「君、こんな森に1人で危ないじゃないか」
「ごめんなさい。助けてくれてありがとう、お兄ちゃん。私はクロフ」
「カイトだ。でも、どうしてこんな森に1人で?」
「お姉ちゃんが病気で、最近元気がないから、薬草でも取って喜ばせてあげようと思って・・・」
「なるほど、事情は分かったけど、この森に1人で来ちゃダメだ。君がいなくなったらお姉ちゃんはもっと悲しむよ?」
「はい・・ごめんなさい」
「それで、その薬草はどこにあるの?」
「・・えっ、お兄ちゃん手伝ってくれるの?」
「ああ、お姉ちゃんを喜ばせたいんだろ?」
「うんっ!お兄ちゃんありがとう!」
早速、薬草摘みの依頼みたいだ。
雷、大好きです




