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【番外編】台風の目の婚約者。①


読んでくださる方に感謝を。







頭をを撫でられる感覚に、意識が浮上する。



「おはようリシュルカ。」



ぼんやりと目を開けると、そこには婚約者(ロウン)が居て、自分の頭を撫でていた。

するりとその手が頬に掛かったとき、



「おはよう…ございます…」



リシュルカはそう言ってむくりと起きあがるとその手から逃れる。

そして、そのまま何故か前を向き頭を下げていき…そのままスヤスヤと寝息をたて始めた。



「リシュルカ?おおーい、リシュルカ。」



真っ赤になって驚くのを楽しみにしていたロウンがユサユサと肩を揺らしてもリシュルカは目覚めない。

スヤスヤと健やかな寝息しか聞こえてこない。



「ふふっ、ロウン義理兄(にい)様の敗けですね。

約束通り私も行きますわ!」



寝室の扉から暴れん坊天使な美幼女エスティアが進み出てびしりとロウンに指を突きつける。

ロウンはやれやれとため息をつきながら、約束を守ることにしたのだった。








本日は見事な晴天に恵まれたリシュルカ誕生日の翌日である。

真面目なリシュルカは、年下に見えない年下婚約者ができたからと学校をお休みする子ではなかった。

しかし一秒でも一緒に過ごしたい派なロウンは、義理父(予定)が酒を飲み過ぎて二日酔いで屍になっているのをいいことにリシュルカの寝室に突撃しようとして…あと一歩の所で義理妹(エスティア)に阻まれたのだった。


曰く、リシュルカといちゃつきたくば賭けをしようとの事。

目覚めてすぐロウンが居て照れたり赤面したりすればロウンの勝ちで単独でリシュルカの女学院の送り迎えの馬車に同乗する。

そうでなければエスティアも送迎にご一緒し、なおかつ買い食い代をロウンがもつという賭けだった。


昨日のリシュルカの反応を見ていれば、勝てると思って賭けに挑んだロウンだが当てが外れてしまった。

残念だがまぁ家族になる相手との親睦を深めると思えばよいしエスティアはこれまで協力的だったので大丈夫だろうと直ぐに立ち直った。



「朝からぼんやり二度寝するリシュルカを見られたのでまぁよしとするか。

では部屋の外で待つぞ。」



「それではサノを呼びにいきますか。」



「お呼びでしょうか。」




「「うわっ!!!」」



しゅたっと音もなく気配もなく二人の背後をとったリシュルカ命の過激派メイドのサノの登場に二人はビックリ飛び上がる。

エスティアは目も口も真ん丸にさせ、ロウンは咄嗟に跳びずさり懐のナイフに手を掛けている。



「さっ、サノ!

ビックリしましたわ!」



「二の姫様は驚かないのですから慣れてくださいませ。」



「危うく攻撃するところだったぞ…」



二人の非難はどこ吹く風で淡々とサノは言う。

リシュルカがやめてほしいと言わない限りはテコでも動きはしないのを知っていても言わずにはいられなかった。



「さて、お二人の賭けを黙認したのです。先に食堂でお待ちください。」



サノはそう言って二人をとっとと追い出した。

すかさず部屋の外に待機していたリシュルカの執事レンドルが二人を逃がさず誘導する。

見事なコンビネーションである。



「レンドル、ちょっとぐらいいいだろう。部屋の前で待ってたって。」



「そうですわ、そうですわ!」



「昨日の前科のあるお二人ですから。

あんまりおイタが過ぎますと、接触禁止令と懲罰房への宿泊プラス本気の奥様に吊るされますよ?」



人の良さそうな笑顔を張り付けてレンドルが言う。

だが、その目は全く笑ってない。

二人は静々と執事の後を付いていく事にした。










次の更新は火曜日です。



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