第28話「その数字、合ってますか?」
# 第28話「その数字、合ってますか?」
午前十時。
「課長、この見積もりなんですが」
ありさが資料を持ってきた。
「ん? 何か問題あった?」
「合計金額と、内訳を足した金額が合っていません」
課長が画面を確認する。
「えっ、ほんとだ。どこだろう……」
「この項目です。単価と数量を掛けた金額が、内訳の金額と違います」
「うわ、入力ミスか。助かったよ」
課長はすぐに修正した。
「ありさ、よく気づいたな」
「数字が合わなかったので」
「いや、見落とすこともあるだろ」
「そうですね。私も見落とすことはあります」
課長が少し驚いた。
「ありさも?」
「はい。だから、合計だけじゃなくて内訳も確認しています」
その日の午後。
悠斗が別の資料を持ってきた。
「ありさ、このデータを集計してもらえる? 来週の報告に使うんだ」
「分かりました」
ありさはデータを整理し、集計を始めた。
数分後。
「できました」
「早いな。数字も問題なさそう?」
「集計結果は出ました。ただ、ひとつ確認したいことがあります」
「何?」
「元のデータに、同じ会社の名前が二種類あります」
悠斗が画面を見る。
「『株式会社〇〇』と『〇〇株式会社』か。表記揺れだな」
「はい。同じ会社ならまとめていいですが、別の会社だったら数字が変わります」
「確かに。確認してからまとめよう」
二人で元データを確認し、同じ会社だと分かったものだけを統合した。
「これで正しい集計になったな」
悠斗が頷く。
「ただ足し算するだけじゃ駄目なんだな」
ありさは首を傾げる。
「足し算自体は合っていても、足すものが間違っていたら結果も変わりますよね?」
「……それ、当たり前だけど大事だな」
ありさは嬉しそうに笑った。
「よかったです!」
その直後。
美咲が隣から声をかけた。
「ありさ、今日のお昼代、いくらだった?」
「五百八十円!」
「じゃあ、私が立て替えた百円を引いて……」
「四百八十円!」
美咲が財布を取り出す。
「はい、四百八十円」
ありさは受け取って、少し考えた。
「あれ?」
「どうしたの?」
「私、百円じゃなくて五十円借りてなかった?」
「……」
美咲がじっとありさを見る。
「数字の確認、得意なんじゃなかったの?」
「計算は合ってるんだけど……」
ありさは困ったように笑った。
「何を借りたか、間違えちゃった」
「そこから確認してよ!」
オフィスに笑い声が響いた。




