第26話「そのバグ、再現できますか?」
# 第26話「そのバグ、再現できますか?」
午前十時。
「ありさ、ちょっと見てくれ!」
悠斗が急いでやってきた。
「どうしました?」
「お客さんから、画面が固まるって連絡が来たんだ。でも、こっちでは何度やっても再現しない」
「どんな操作をしたときですか?」
「それが、よく分からないらしい」
ありさは頷いた。
「分かりました。問い合わせ内容を見せてください」
メールには、短くこう書かれていた。
『操作中に画面が固まりました。確認をお願いします』
「……これだけですか?」
「うん。何をしたかは分からないって」
ありさは少し考えた。
「じゃあ、まず条件を絞りましょう」
「どうやって?」
「発生した時間、使っていた端末、操作の順番。この三つが分かれば、かなり絞れます」
ありさは問い合わせの返信を作成した。
しばらくして、先方から回答が届く。
「ありさ、返事が来たぞ」
ありさが内容を確認する。
「……あ、これかもしれません」
「何が分かった?」
「特定の画面で、検索したあとに戻る操作をすると発生しています」
「そこまで分かったのか?」
「はい。こちらでも同じ手順を試します」
ありさが操作する。
一回目。問題なし。
二回目。問題なし。
三回目。
「……出ました!」
悠斗が身を乗り出す。
「ほんとだ!」
ありさはログを確認する。
「検索結果を保持したまま戻ると、データの読み込みが二重に走っています」
「だから固まるのか」
「はい。原因は分かったので、修正します」
午後。
修正とテストが終わった。
「再現しなくなりました!」
悠斗が笑う。
「よし! これで解決だな」
ありさは頷いた。
「はい。でも、今回みたいに再現条件が分からないと、原因を探すのに時間がかかりますね」
「そうだな」
「だから、問い合わせするときに操作手順を残してもらえるようにしたいです」
「いいね。それ、仕組みにしよう」
ありさは嬉しそうに笑った。
「次からは、もっと早く解決できますね!」
悠斗が立ち去ろうとした、そのとき。
「……あれ?」
「今度は何?」
「さっきのバグ、私のパソコンでもう一回だけ確認します」
「もう直ったんじゃないの?」
「はい。でも、念のためです」
ありさは再び操作を始めた。
一回目。問題なし。
二回目。問題なし。
三回目。
「……大丈夫です!」
悠斗は苦笑した。
「ありさ、確認が丁寧なのはいいけど、もう昼だぞ」
「えっ!?」
時計を見たありさは、慌てて立ち上がった。
「お昼ご飯、買いに行ってきます!」
悠斗がぼそっと呟く。
「バグは見つけるのに、時間は見つけられないんだな……」
「何か言いました?」
「いや、何でもない!」
ありさは不思議そうに首を傾げながら、急いでオフィスを出ていった。




