第25話「直したのに、壊れました」
# 第25話「直したのに、壊れました」
午後二時。
「ありさ、ちょっといい?」
悠斗が困った顔でやってきた。
「はい」
「さっき修正したところなんだけど、別の機能が動かなくなった」
「えっ?」
ありさはすぐに画面を確認した。
「……本当ですね」
「修正前は動いてたんだけどな」
「はい。確認します」
ありさは修正したコードと、動かなくなった機能のコードを見比べる。
数分後。
「あ、分かりました」
「もう?」
「今回の修正で、この共通処理の動きが変わっています」
「共通処理?」
「はい。別の機能も、ここを使っていました」
悠斗が頭を抱える。
「うわ……そこまで見てなかった」
「私も修正したところばかり見ていました」
ありさは少し反省したように画面を見る。
「影響するところも確認しないと駄目ですね」
「原因が分かったなら、元に戻す?」
「それだと、最初の問題も戻っちゃいます」
「じゃあ、どうする?」
「修正の目的はそのままにして、共通処理を使っているほかの機能もテストします」
ありさは影響範囲を洗い出し、テストを実行した。
「ここは大丈夫。こっちも大丈夫です」
最後のテストが終わる。
「……直りました!」
悠斗が画面を覗き込む。
「よし!」
「ただ、今回の修正で分かったことがあります」
「何?」
「この共通処理、どこで使われているか分かりにくいです」
「確かに……」
「一覧を作っておきます。次に変更するとき、確認しやすくなるので」
悠斗は感心したように頷いた。
「問題を直すだけじゃなくて、次に困らないようにするんだな」
「はい。同じことで困るの、もったいないですから」
「その考え方、いいな」
ありさは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!」
そして、退勤前。
ありさはテスト結果を保存しようとして、手を止めた。
「あっ……」
「今度は何?」
「テスト結果のファイル、上書きしちゃいました」
「ええっ!?」
「ひとつ前の結果、残してなかったです……」
悠斗は思わず笑った。
「そこはバックアップ取ろうよ!」
ありさはしゅんとした。
「……次から取ります」
「まずは、今の結果を保存して!」
「はいっ!」
仕事のミスは、仕事で取り返す。
でも、保存ボタンを押す前の確認だけは、ありさもまだ練習中だった。




