第21話「私が悪いんですか?」
# 第21話「私が悪いんですか?」
午後四時。
ありさの席に、課長がやってきた。
「ありさ、ちょっといいか?」
「はい」
「さっきの取引先から連絡があってな」
「何かありました?」
「昨日の件、向こうでは設定を変更していないって言ってる」
「……」
ありさは少し考える。
「でも、ログには変更されています」
「うん。ただ、先方は『そんな操作はしていない』って」
悠斗もやってきた。
「じゃあ、誰が変更したんだ?」
ありさはログを確認する。
「このアカウントです」
「先方の担当者?」
「はい」
「本人が触ってないって言ってるのか……」
ありさは少し考えてから、
「じゃあ、本人が操作したとは限らないです」
「え?」
「このアカウントで操作されたことと、本人が操作したことは別なので」
課長が画面を見る。
「……確かに」
ありさはログをもう一度確認する。
「同じ時間に、別の端末からログインされています」
「別の端末?」
「はい」
悠斗が身を乗り出す。
「じゃあ、共有アカウント?」
「たぶん違います」
「なんで?」
「この時間だけ、普段と違う場所からアクセスされています」
「……」
ありさは続ける。
「誰かが勝手に使った可能性があります」
課長の表情が変わる。
「それは、先方に伝えたほうがいいな」
「はい。ただ、まだ断定はできません」
「分かった」
その日の夕方。
先方から連絡が入った。
「原因が分かりました」
担当者の声が聞こえる。
「社内で別の担当者が、そのアカウントを使って設定を変更していました」
悠斗が小さく息を吐く。
「やっぱりか……」
ありさは黙って聞いている。
「こちらの確認不足でした。申し訳ありません」
「いえ」
ありさが答える。
「原因が分かってよかったです」
電話が終わる。
悠斗がありさを見る。
「最初に『向こうが悪い』って決めつけなかったの、よかったな」
「はい」
「普通なら、ログ見て『先方の操作です』って言っちゃいそうだもんな」
ありさは首を傾げる。
「でも、ログに書いてあるのは『そのアカウントで操作された』ですよ?」
「……」
「誰が操作したかまでは、書いてないので」
悠斗は少し笑った。
「ありさ」
「はい?」
「やっぱり、お前にトラブル任せるの正解かもな」
ありさは嬉しそうに笑う。
「ありがとうございます」
そして、また一つ。
問題は、誰かを責めることなく解決した。




