第11話「質問するの、難しい」
# 第11話「質問するの、難しい」
午前十時。
ありさはパソコンの画面を見つめていた。
「……」
隣の席では、美咲が黙々と作業をしている。
ありさは一度キーボードに手を置いて、それから離した。
また画面を見る。
そして、悠斗の席を見る。
「……」
「どうした?」
悠斗が気づいた。
「先輩」
「ん?」
「ちょっと質問していいですか?」
「もちろん」
ありさは自分の画面を見ながら話し始めた。
「昨日教えてもらった処理なんですけど、ここだけ動きが違うんです」
「どこ?」
「この部分です」
悠斗が席を移動してくる。
「……ああ」
「私の書き方が間違ってますか?」
「いや、そこじゃない」
悠斗が画面を指差す。
「このデータだけ、元の形式が違うんだよ」
「……あ」
ありさが画面を確認する。
「だから同じ処理をしても結果が変わるんですね」
「そうそう」
「分かりました」
ありさはすぐに修正を始める。
悠斗が戻ろうとすると、
「先輩」
「ん?」
「もう一つあります」
「はいはい」
「この場合は、こっちの処理にしたほうがいいと思うんですけど」
「うん」
「でも、私まだ全体を把握できてないので……」
ありさは少し迷ってから、
「先輩なら、どうしますか?」
悠斗が少し驚いた顔をした。
「……ちゃんと質問できるようになったじゃん」
「そうですか?」
「うん。最初は全部自分で考えてから聞こうとしてただろ」
「だって、忙しそうだったので」
「気を遣ってたの?」
「はい」
「そこは気を遣わなくていいよ」
「分かりました」
ありさは少し笑った。
「じゃあ、これからは分からないことがあったら聞きます」
「うん」
「すぐ聞きます」
「……いや、五分くらいは自分で考えて」
「分かりました」
ありさは真剣に頷いた。
そして五分後。
「先輩」
「早いな!」
ありさは少し申し訳なさそうに笑った。
「五分経ちました」
「律儀だな……」




