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氷の王子は恋を知ったら止まらない  作者: S@Y@


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第六十話 本当の標的


 その夜。


 王宮の会議室に、再び人が集まっていた。


 机の上には、侯爵家で見つかった紙が置かれている。


「侯爵家を疑わせるために、わざと証拠を残した……。」


 国王陛下が呟く。


「はい。」


 騎士団長が頷いた。


「侯爵家を調べさせることで、こちらの捜査を別の方向へ向けるつもりだったと思われます。」


 クリス殿下は黙って紙を見つめていた。


「つまり。」


 レオン殿下が口を開く。


「本当の目的は、侯爵家を潰すことじゃない。」


「そうです。」


 クリス殿下が答える。


「私たちが侯爵家を調べている間に、別のことをするつもりだった。」


「何を?」


「それはまだ分かりません。」


 部屋に沈黙が落ちる。


 すると。


「殿下。」


 騎士団長が一枚の書類を差し出した。


「こちらを。」


 クリス殿下が受け取る。


「これは……。」


「過去一週間の王宮への出入り記録です。」


「フランの予定表が流出した可能性がある時間帯と照合しました。」


 クリス殿下が目を通していく。


「……。」


 ある名前のところで。


 手が止まった。


「この者は?」


「王宮付きの文官です。」


「何を担当している?」


「各部署の書類整理と、王宮内の予定管理を担当しています。」


 クリス殿下の目が鋭くなる。


「予定管理……。」


「はい。」


 レオン殿下も気づいた。


「フラン嬢の予定を知ることができる立場だね。」


「その可能性があります。」


 クリス殿下が立ち上がった。


「すぐに調べます。」


 ◇ ◇ ◇


 その頃。


 私は客室で一人、窓の外を眺めていた。


 クリス殿下はまだ戻ってこない。


 何か分かったのだろうか。


 そう思った時。


 コンコン。


 扉が鳴った。


「はい。」


「フラン様。お食事をお持ちしました。」


「ありがとうございます。」


 扉が開く。


 侍女が食事を運んでくる。


「こちらへどうぞ。」


「はい。」


 私は椅子に座る。


 侍女が料理を並べていく。


「今日は遅い時間まで大変でしたね。」


「……え?」


 私は顔を上げた。


「どうしてですか?」


 侍女の手が止まる。


「……。」


「私が遅くまで起きていたこと、知っていたんですか?」


「い、いえ……。」


 侍女が目を逸らす。


「ただの勘です。」


「そうですか。」


 私は少し不思議に思った。


 その時。


 侍女が持っていた皿を落とした。


 ガシャン!


「申し訳ありません!」


「大丈夫です。」


 侍女が慌てて片付ける。


 その手が。


 小さく震えていた。


「……。」


 私はその様子を見つめる。


 何かがおかしい。


 ◇ ◇ ◇


 しばらくして。


 扉が開いた。


「フラン。」


「殿下。」


 クリス殿下が戻ってきた。


「遅くなってすみません。」


「大丈夫です。」


 クリス殿下が部屋の中を見る。


「食事を?」


「はい。」


「誰が持ってきましたか?」


「侍女の方が。」


「名前は?」


「そこまでは……。」


 クリス殿下の表情が変わった。


「フラン。」


「はい。」


「その侍女は、何か変なことを言いませんでしたか?」


「……。」


 私は少し考える。


「一つだけ。」


「何ですか?」


「私が遅くまで起きていたことを知っていました。」


 クリス殿下が黙る。


「……やはり。」


「何か分かったんですか?」


「その侍女のことを、騎士が探しています。」


「え?」


「今日、あなたの部屋へ食事を運ぶ予定だった侍女とは別の人物です。」


「……。」


 クリス殿下が私の前に立つ。


「その女性は?」


「さっきまでここにいました。」


「どこへ?」


「分かりません。」


 クリス殿下がすぐに扉を開ける。


「騎士!」


「はい!」


「この階の廊下を封鎖してください!」


 騎士たちが走り出す。


 クリス殿下が私の手を取る。


「フラン、私から離れないでください。」


「はい。」


 その時。


 廊下の奥から。


 誰かの走る音が聞こえた。


「いたぞ!」


 騎士の声。


 続いて。


「待て!」


 複数の足音が遠ざかっていく。


 私はクリス殿下の手を握った。


「殿下……。」


「大丈夫です。」


 そう言いながら。


 クリス殿下の目は、廊下の先を鋭く見つめていた。


 ついに。


 王宮の中にいる内通者へ。


 捜査の手が届き始めた。

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