第五十九話 黒幕の正体
翌朝。
王宮は、いつもより騒がしかった。
廊下を行き交う騎士の数も多い。
昨夜の暗殺未遂。
そして。
私を狙っている人物。
何も解決していない。
「フラン様。」
侍女が部屋へ入ってきた。
「クリス殿下がお呼びです。」
「分かりました。」
◇ ◇ ◇
案内されたのは。
昨日とは違う部屋だった。
中にはクリス殿下とレオン殿下。
そして国王陛下がいた。
「フラン。」
クリス殿下が私を見る。
「来てくれてありがとうございます。」
「何か分かったんですか?」
「はい。」
クリス殿下が頷く。
「昨夜の男についてです。」
私は息を呑んだ。
「捕まったんですか?」
「本人は捕まっていません。」
「……。」
「ですが。」
クリス殿下が一枚の紙を机に置く。
「男が使っていた宿を見つけました。」
「宿……?」
「そこから、いくつかの物が見つかりました。」
紙には。
私の予定表。
花屋の場所。
王宮の見取り図。
そして。
貴族家の名前が書かれていた。
「この名前は……。」
「はい。」
クリス殿下が答える。
「以前、あなたに声をかけてきた令嬢の家です。」
「……。」
胸が冷たくなる。
「やっぱり……。」
「まだ、侯爵本人が関わっているとは断定できません。」
陛下が言う。
「だが、関係者がいる可能性は高い。」
「では、どうするんですか?」
私が尋ねる。
クリス殿下が答えた。
「侯爵家を調べます。」
「私も行きます。」
「駄目です。」
即答だった。
「危険です。」
「でも……。」
「フラン。」
クリス殿下が真剣に私を見る。
「あなたは、もう十分巻き込まれています。」
「……。」
「これ以上、危険な場所へ連れて行きたくありません。」
私は黙って頷いた。
「分かりました。」
すると。
「兄上。」
レオン殿下が口を開いた。
「侯爵家だけじゃなく、王宮の中も調べた方がいいんじゃない?」
「もちろんです。」
「昨夜の侍女もまだ見つかってないんだよね?」
「はい。」
その時。
国王陛下が静かに言った。
「ならば、両方から調べろ。」
「はい。」
クリス殿下が頷く。
◇ ◇ ◇
その日の午後。
侯爵家へ向かった騎士たちは。
屋敷の中を調べ始めた。
しかし。
「何もありません。」
「こちらにもありません。」
証拠は何一つ見つからない。
侯爵も。
令嬢も。
何も知らないと主張している。
「やはり、違うのか……。」
騎士団長が呟く。
その時。
一人の騎士が声を上げた。
「団長!」
「どうした?」
「地下室で、これを。」
差し出されたのは。
一枚の紙。
そこには。
『フランを王宮から連れ出す』
と書かれていた。
「……!」
さらに。
紙の下には。
一つの名前があった。
侯爵家の令嬢の名前。
騎士団長の顔が強張る。
「これは……。」
しかし。
その紙の筆跡を確認した騎士が首を横に振った。
「違います。」
「何?」
「この文字は、令嬢のものではありません。」
「では誰だ?」
「分かりません。」
その時。
屋敷の外で馬の音が響いた。
「誰か来たぞ!」
騎士たちが外へ出る。
しかし。
馬車はすでに走り去っていた。
地面には。
一枚の紙が落ちている。
拾い上げる。
そこには。
『侯爵家を疑わせれば、計画は成功する。』
と書かれていた。
「……!」
騎士団長は息を呑んだ。
侯爵家は。
黒幕ではない。
誰かが。
侯爵家を利用している。
そして。
本当の黒幕は。
まだ王宮のどこかにいる。




