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氷の王子は恋を知ったら止まらない  作者: S@Y@


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第五十四話 疑われた侯爵家


 王宮の会議室。


 国王陛下とクリス殿下。


 そして数名の重臣たちが集まっていた。


 机の上には、昨夜見つかった銀色の指輪が置かれている。


「この紋章は、間違いなく侯爵家のものです。」


 騎士が報告する。


「しかし。」


 別の重臣が口を挟んだ。


「紋章だけで、その家が関与していると決めつけるのは危険です。」


「分かっている。」


 陛下が答える。


「だからこそ、慎重に調べる。」


 クリス殿下は黙って指輪を見つめていた。


「殿下。」


「はい。」


「どうされますか?」


「まず、侯爵家を直接問い詰めるのは避けます。」


「なぜですか?」


「証拠が足りません。」


 クリス殿下が指輪を手に取る。


「これが盗まれた物である可能性もあります。」


「確かに。」


「それに。」


 クリス殿下の目が鋭くなる。


「本当に侯爵家が黒幕なら、今ここで動けば証拠を隠されます。」


 陛下が頷いた。


「その通りだ。」


「内密に調べます。」


「頼む。」


 会議が終わる。


 ◇ ◇ ◇


 一方。


 私は王宮の客室で待っていた。


「……。」


 昨夜のことが頭から離れない。


 あの男。


 そして。


 クリス殿下が言っていた、貴族の関与。


 扉が開く。


「フラン。」


「殿下。」


 クリス殿下が入ってきた。


「お待たせしました。」


「何か分かりましたか?」


「少しだけ。」


 クリス殿下が私の隣に座る。


「昨夜の男が、侯爵家の紋章が入った指輪を落としていました。」


「侯爵家……。」


「はい。」


「それって……。」


「まだ、その家が犯人だと決まったわけではありません。」


 クリス殿下はすぐに言った。


「ですが、調べる必要があります。」


「怖いですね。」


「……はい。」


 クリス殿下が私を見る。


「ですが、必ず終わらせます。」


「殿下。」


「はい。」


「私も何か協力できますか?」


「フランは何もしなくていいです。」


「でも……。」


「危険だからです。」


 少し強い口調だった。


「私は、あなたにまた危険な目に遭ってほしくありません。」


「……分かりました。」


 私は頷く。


「でも、何か分かったら教えてください。」


「約束します。」


 クリス殿下が私の手を取る。


「何も隠しません。」


「ありがとうございます。」


 その時。


 扉がノックされた。


「殿下。」


 外から騎士の声がする。


「入れ。」


 騎士が入ってきた。


「ご報告があります。」


「何だ?」


「昨夜の男を追っていた騎士が、王宮の外で不審な馬車を発見しました。」


「馬車?」


「はい。」


 騎士が続ける。


「その馬車の中から、こちらが見つかりました。」


 差し出されたのは。


 一枚の紙だった。


 クリス殿下が受け取る。


 紙を開く。


「……。」


 表情が変わった。


「どうしました?」


 私が尋ねる。


 クリス殿下は答えなかった。


 ただ。


 紙を握る手に力が入っている。


「殿下?」


「……これは。」


 ようやく口を開く。


「フランの予定表です。」


「え?」


 私の背筋が凍る。


 そこには。


 私が花屋へ行く時間。


 帰る時間。


 そして。


 王宮へ来る予定まで。


 細かく書かれていた。


「どうして……。」


 私の声が震える。


 クリス殿下は紙を見つめたまま。


「誰かが、ずっとあなたを監視していた。」


 静かに言った。


 その瞬間。


 ただの嫌がらせではない。


 そう確信した。

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