第四十一話 王宮からの呼び出し
翌日の午後。
花屋で仕事をしていると。
カラン。
扉のベルが鳴った。
「いらっしゃいませ。」
顔を上げる。
「フラン様。」
「……はい?」
そこにいたのは、昨日とは別の王宮の侍従だった。
「突然の訪問をお許しください。」
「何かあったんですか?」
「国王陛下より、お話がございます。」
「……陛下?」
思わず声が小さくなる。
国王陛下から呼び出される理由なんて、私には一つも思いつかない。
「私、何かしましたか?」
「いえ。」
侍従はすぐに首を横に振った。
「そのようなことではございません。」
「では、どうして……。」
「詳しいことは、陛下から直接お聞きください。」
「……分かりました。」
不安を抱えたまま頷く。
◇ ◇ ◇
王宮へ向かう馬車の中。
私は落ち着かなかった。
何度考えても、理由が分からない。
やがて。
馬車が王宮へ到着した。
案内されたのは、謁見の間ではなかった。
そのことに、少しだけ安心する。
扉の前で侍従が立ち止まった。
「こちらです。」
扉が開く。
「失礼いたします。」
中へ入る。
そこには。
「フラン嬢。」
国王陛下がいた。
「お呼びいただき、ありがとうございます。」
「急に呼んでしまってすまない。」
「いえ。」
私は緊張しながら頭を下げる。
陛下はしばらく私を見つめた。
そして。
「クリスから聞いている。」
「……?」
「お前たちが恋人になったことを。」
「……!」
一気に顔が熱くなる。
「殿下が……。」
「嬉しそうに話していたよ。」
「……。」
あのクリス殿下が。
父親である国王陛下にまで話していたなんて。
「クリスは昔から、自分のことをあまり話さない子だった。」
陛下が静かに続ける。
「だが、お前の話になるとよく話す。」
「……。」
「だから、一度会っておきたかった。」
私は少し驚いた。
「私に、ですか?」
「ああ。」
陛下は穏やかに笑う。
「息子が大切にしている女性だからな。」
「……ありがとうございます。」
胸が温かくなる。
その時。
扉の外から声がした。
「父上。」
聞き慣れた声。
扉が開く。
「クリス殿下。」
「フラン。」
クリス殿下は私を見ると、少し安心したような顔をした。
「来ていたんですね。」
「はい。」
「陛下から呼ばれたと聞いて、急いで来ました。」
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ。」
「ですが。」
クリス殿下が私の隣に立つ。
「あなた一人で陛下と話すと聞いたので。」
「……。」
陛下が笑う。
「心配性だな、クリス。」
「当然です。」
クリス殿下は真顔で答えた。
「フランは私の大切な人ですから。」
「……。」
まただ。
この人は。
父親の前でも平然と言う。
陛下が楽しそうに笑った。
「なるほど。」
「何ですか?」
「お前が変わった理由が、よく分かった。」
「……。」
クリス殿下が少しだけ気まずそうに黙る。
私は思わず笑ってしまった。
すると。
クリス殿下も私を見て、ほんの少し笑った。
穏やかな時間だった。
けれど。
この日、陛下から告げられた話は。
私たちの関係を、大きく変えるものだった。




