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氷の王子は恋を知ったら止まらない  作者: S@Y@


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第四話 変な王子様


 翌朝。


 私は店先に花を並べながら、大きく伸びをした。


「今日もいい天気。」


「そうですね。」


「ひゃっ!?」


 突然返事が聞こえ、飛び上がる。


 恐る恐る振り返ると、そこには見慣れた白銀の髪。


「ク、クリス殿下!?」


「おはようございます。」


「お、おはようございます……。」


(またいる……。)


 昨日は偶然。


 きっとそう。


 でも今日まで来るなんて、本当に偶然なのだろうか。


「本日も花をご覧になりますか?」


「いえ。」


「え?」


「今日は違います。」


 そう言うと、クリスは私の持っていた木箱へ視線を向けた。


 木箱には、朝届いたばかりの鉢植えが入っている。


「重そうですね。」


「え? あ、大丈夫ですよ!」


「運びます。」


「だ、大丈夫です!」


「大丈夫ではありません。」


「大丈夫です!」


 私が箱を持ち上げようとすると、クリスは自然な動作で反対側を持った。


「では、一緒に。」


「えぇっ!?」


 結局、二人で店の中まで運ぶことになる。


 店主はその様子を見て目を丸くした。


「殿下が荷運びを……。」


 クリスは気にした様子もなく箱を下ろす。


「これで終わりですか。」


「は、はい……。」


「そうですか。」


 それだけ言って店を見回す。


 そして、いつものように花を一束選び、代金を支払った。


「失礼します。」


 今日も静かに帰っていく。


 私は店の前でぽかんと立ち尽くしていた。


「フラン。」


 店主が肩を叩く。


「はい?」


「殿下、毎日来てないか?」


「……ですよね。」


「しかも今日は荷物まで運んでくださったぞ。」


「たまたま手伝いたかっただけですよ!」


 そう言いながらも、自分で言っていて苦しい。


 王太子が花屋の荷物を運ぶ理由なんて、普通はない。


 ◇ ◇ ◇


 その日の帰り道。


 夕焼けに染まる街を歩いていると、


「フラン。」


 聞き慣れた声がした。


「ひゃっ!」


 振り向くと、やっぱりクリス殿下だった。


「クリス殿下!?」


「お仕事帰りですか。」


「はい。」


「家まで送ります。」


「えっ!?」


 思わず変な声が出る。


「だ、大丈夫です!」


「ですが、日が暮れます。」


「まだ明るいですよ?」


「もうすぐ暮れます。」


「それでも大丈夫です!」


 クリスは少しだけ考えるように黙った。


「そうですか。」


 断ってくれた。


 よかった……。


 そう思った次の瞬間。


「では、後ろを歩きます。」


「はい?」


「送るのが嫌なら、見守ります。」


「見守らなくていいです!」


「何かあれば対応できます。」


「何もありません!」


 真顔で言い切るクリス。


 私は思わず額を押さえた。


(この人、本当に変な王子様……。)


 結局。


 家の近くまで、一定の距離を保ったままクリスはついてきた。


 もちろん本人は終始真顔だった。

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