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氷の王子は恋を知ったら止まらない  作者: S@Y@


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第二十七話 弟王子は見抜いていた


「兄上が毎日出かける理由って、この人だったんだ。」


 レオン殿下の言葉に、私は目を瞬かせた。


「……王宮でも、ご存じだったんですか?」


 思わず聞き返す。


「え?」


 レオン殿下が首を傾げた。


「だって、殿下が花屋へ通われていたことは……。」


 私はそこで言葉を止める。


 クリス殿下が静かに私を見る。


「フラン。」


「はい?」


「その話は。」


 一拍。


「少しだけ秘密にしていただけると助かります。」


「え?」


「王宮では、あまり話していません。」


 私は驚く。


「でも……。」


 レオン殿下がすぐに口を挟んだ。


「兄上。」


「何ですか。」


「全然隠せてなかったよ。」


「……。」


 クリス殿下が黙る。


「毎朝、普段より早く準備して。」


「……。」


「花屋から戻ってくると、少しだけ機嫌が良くなって。」


「……。」


「分かる人には分かるって。」


 レオン殿下は楽しそうに笑った。


「兄上が誰かのために時間を使うなんて、今までなかったからね。」


 私はクリス殿下を見る。


 確かに。


 最初に会った時。


 この人は誰にも興味がないように見えた。


 冷静で。


 近寄りがたくて。


 まさに『氷の王子』だった。


 でも。


 今、私の隣にいる人は。


「兄上。」


 レオン殿下がにやりと笑う。


「まさか、自分がこんなに分かりやすくなるとは思わなかったでしょ?」


「……。」


 クリス殿下は少しだけ視線を逸らした。


「そうでしょうか。」


「そうだよ。」


 即答される。


「兄上、フラン嬢の話をするときだけ返事が少し早いし。」


「……。」


「花屋に行く日は、朝から妙に準備が早いし。」


「……。」


「あと。」


 レオン殿下が私を見る。


「兄上が女性の名前を呼ぶところ、初めて聞いた。」


「……。」


 私は思わずクリス殿下を見る。


「そうなんですか?」


「はい。」


 クリス殿下は平然と答える。


「今まで、女性と親しく話す必要がありませんでした。」


「……。」


「ですが。」


 私を見る。


「フランとは、話したいと思いました。」


 また。


 この人は。


 何でもないことのように言う。


 レオン殿下がため息をついた。


「兄上。」


「はい。」


「それ、本人の前で言うの?」


「事実です。」


「そこなんだよなぁ……。」


 私は思わず笑ってしまった。


 氷の王子。


 誰も近づけないと言われた人。


 でも。


 家族の前では。


 少しだけ普通の人に見えた。


 ◇ ◇ ◇


「ところで。」


 レオン殿下がふと思い出したように言う。


「フラン嬢。」


「はい。」


「兄上から、婚約の話は聞いた?」


 心臓が跳ねた。


「え!?」


 思わず声が裏返る。


「レオン。」


 クリス殿下の声が少し低くなる。


「え?」


 レオン殿下が首を傾げる。


「違った?」


 私はゆっくりクリス殿下を見る。


「殿下。」


「はい。」


「弟殿下にまで知られているんですか?」


 クリス殿下は少し黙った。


「……。」


「殿下?」


「隠していたつもりでした。」


「全然隠せてないよ!」


 レオン殿下が笑う。


 私は思わず一緒に笑ってしまった。

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