表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷の王子は恋を知ったら止まらない  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/60

第十二話 手をどうぞ


「努力しなくていいです!!」


 市場中に私の叫び声が響く。


 周りの人たちがくすくすと笑う。


 クリス殿下だけが、不思議そうに首をかしげていた。


「何か間違えましたか。」


「全部です!」


「そうですか。」


 本当に分かっていない顔だ。


 ……この人、天然なのかな。


 ◇ ◇ ◇


「次はこちらです。」


 私はクリス殿下を市場の奥へ案内する。


 雑貨屋や洋服屋が立ち並び、夕方ということもあって多くの人で賑わっていた。


「今日は人が多いですね。」


「いつもこんな感じですよ。」


 すると。


「きゃー!」


 子どもが勢いよく走ってきた。


「危ない!」


 私はとっさに避けようとする。


 その瞬間。


 ぐいっ。


「え……?」


 腕を軽く引かれ、気づけば私はクリス殿下のすぐ隣にいた。


 子どもはそのまま駆け抜けていく。


「大丈夫ですか。」


 クリス殿下が静かに尋ねる。


「は、はい……。」


 心臓がどきどきしていた。


 子どもにぶつかりそうだったから。


 ……それだけじゃない。


 腕を引かれた距離が、近すぎた。


「失礼しました。」


 クリス殿下はすぐに手を離す。


「咄嗟に体が動きました。」


「い、いえ! 助けていただいてありがとうございました!」


「当然です。」


 その言葉に、少しだけ胸が温かくなる。


 ◇ ◇ ◇


 市場を歩き続けていると、小さな石橋へたどり着いた。


 川幅は狭いが、人が多く、橋の上は少し混雑している。


「お気を付けください。」


 クリス殿下が先に橋へ足をかけた。


 そして。


 私へ向かって、すっと右手を差し出す。


「……え?」


「手をどうぞ。」


 私は固まった。


「だ、大丈夫です!」


「橋は滑ります。」


「毎日渡ってます!」


「今日は人が多いです。」


「それでも大丈夫です!」


 クリス殿下は差し出した手を引っ込めない。


「転んでは危険です。」


「転びません!」


「絶対ですか。」


「た、多分……。」


「では。」


 真顔のまま。


「手をどうぞ。」


「だから大丈夫ですって!」


 思わず一歩下がる。


 すると後ろから、


「あっ!」


 誰かに軽くぶつかられた。


 体勢が崩れる。


「きゃっ!」


 倒れる。


 そう思った瞬間。


 ふわり。


 腰に腕が回り、体が支えられた。


「危ない。」


 目の前にはクリス殿下。


 息がかかりそうなくらい近い。


「……っ!」


 顔が熱くなる。


「ほら。」


 クリス殿下は何事もなかったかのように言う。


「危険でした。」


「うぅ……。」


 反論できない。


「ですので。」


 また手を差し出す。


「手をどうぞ。」


 私は真っ赤な顔で小さく頷いた。


「……少しだけ、ですよ。」


「はい。」


 クリス殿下は優しく私の手を取る。


 その手は少しひんやりしていて。


 でも、不思議と安心する温もりがあった。


 二人は並んで橋を渡る。


 その様子を少し離れた場所から見ていた護衛騎士アレンは、小さく拳を握った。


(殿下……!)


(初めて女性と手を繋げましたね……!)


 まるで自分のことのように感動していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ