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相談屋の日常‐日常の終わり-

「クリビアさん。例の者が逃げ出しますよ。それにより、それでなくても崩壊しつつあるここですが、もう止めようがありません。しかも、これまたややこしい人間の元にいるようですし。ああ、もうおしまいですよ。貴方もあなたで、なかなかやってくれていますよね。わかっています。以前から我々は気が付いておりましたとも。そもそも貴方がここに来たのがすべての崩壊の原因だったかもしれませんね。ええ、今更の話ですが。本当に。貴方のおかげで、例の者が生まれてしまったのにも関わらず、どうにかなっていた所もありますから、ええ、そこは感謝しております。しかし、それは一時の幸せ。安らぎ。前々から思っておりましたが、貴方はきっと生まれてはいけなかった人間だったのかもしれません。そう、例の者と等しくして、きっと。貴方を人間と称するのもおかしいかもしれませんねえ。ええ。ふふふ。ねえ。化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物……はあ、もう帰ります。終焉はまもなく訪れることでしょう。それまで精々これまで通りの現実逃避でもしておりなさい」


カランカラン


 前髪を瞼に掛かるほどに一直線に切り揃え、その長い直毛の黒髪を後ろで低めに一つにまとめ、釣り目の気味の瞳と真っ赤な紅を唇に乗せていた女性は、相談屋に来るなり、言いたいことだけその口から吐き出して、言い終えるや否や早々と立ち去ってしまった。沈黙があたりに広がる。今日に限って三人とも出払っており、クリビア一人のみこの家にいる。暫しの静寂の後、笑い声が聞こえてきた。言わずもがな、クリビアが笑っているのである。それも盛大に。あまりのタイミングの良さと、その内容の滑稽さにクリビアは、内から湧き上がってくるものに対し、逆らうことが出来ず、止められず、制御できず、ただ只管に笑い続けた。

 長いこと笑っていたであろう。ようやくそれが収まったころには、高い所にいた太陽が沈もうとしているところであった。西日と共に禍々しい黒雲が迫っているのが見えた。今日は晴れたがずいぶん前から梅雨入りしていたことを忘れていた。明日は雨か。そのようなことを考える事で、迫りくる終焉から目を背ける。一度始まってしまった事物には必ず終わりが訪れる。当たり前であるその摂理が、今度ばかりは憎ましく、そして悲しく思えるのだ。心中、馬鹿みたいにそんな感情を抱いて、そして考えていた訳であるが、その行為がこれまた実に滑稽に思われて、クリビアはまた笑いだすのであった。


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