相談屋の日常‐生誕を祝えど、温かみを授けるはいつも貴方‐
♪~
「……兄様」
「」
「うん」
「」
「クリビアには相変わらず、迷惑かけっぱなしだよ」
「」
「……そう、『クリビア』だよ。前はなんだったなんて忘れちゃった」
「」
「兄様も覚えていないの?」
「」
「不思議だね」
「」
「!」
「」
「そこに穴があるのかな」
「」
「穴探しをしている訳ではないけれど、そうせざるを得ないような気がしてならないの。そうすることで、現状打破ができる気がするの」
「」
「うん、変わらなくてはいけないから」
「」
「ありがとう」
「」
「あたしは、“自由”なのだとやっと気が付いたんだ」
「」
「うん、兄様はやさしいよ」
「」
「妹の特権?」
「」
「にゃはは」
「」
「あたしね、友だちができたの。本当の友だち」
「」
「泣きたくなったよ。大好きなの」
「」
「だから、あの子には幸せになってもらわなくてはいけないと思うし、あたしも幸せになりたい」
「」
「どうすればいいのかな?」
「」
「そんなことでいいの?」
「」
「うん、やってみる」
「」
「ありがとう」
「」
「おやすみなさい」
「」
「うん」
優しい手つきで、携帯電話を撫でる。闇に染まりながらも温かみを与えてくれたのは、兄であった。大好きな兄。髪型も兄とおそろい。兄の容姿は、サロン受けしそうな美男子そのものである。目元も母に似てたれ目気味。酷いつり目の三白眼である父とは大違いである。しかし、その腕は確かのもので、時にその容姿を巧みに遣い、人を闇へと誘い込む。父とは系統は違うけれど素晴らしい殺し屋である。この家に来てから初めて身内に仕事以外の電話をした。大好きな兄へ。
泡沫のような現。どこからが夢幻であるのか。知りうる者はいるのだろうか。嗚呼、不安定。強い日差しを受け、汗をかき、だるさを覚える。きん、と冷える氷菓子の冷たさ、潤う身体。嗚呼、どれも確かに感じているのに、時々可笑しい。あたしだけなのか。私だけなのか。あたしは、推測に推定を繰り返し概算していく。私は、違和感以外気づけない。俺は、どこまで知っているのか、どこまで知らないのか、悟られぬ、無情の顔。
音声は近くて遠く感じる。会いたいけれど、会えないと分かっている。あたしが変わっているから。全てはあたしのために。しかし、あたしは苦しくて仕方ない。苦しみを乗り越えて、何があるのか。そこには絶対兄の姿はないことは確か。
小さな紙の箱。胸に抱きつめてリボンを結う。ディフィニウムを添えて。
愛しき、わが親愛なる兄様、デルフィ




